銀翼の奇術師【完結】
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最初に目覚めて思ったこと……一番会いたかった人が目の前に居て……嬉しくて堪らなかった。私はあの飛行機事故から生きて帰ることが出来た……あの怪盗に宣言した事が守れたことに歓喜した。それ以外にも家族や親友の所に戻りたかったことも理由の一つだけど、でも一番は……彼に会いたくて……震える手を抑えて、飛行機を操縦する友人の隣に座ったのだから……今もまだその喜びを味わっている……はずだった。
ちゃんと会えたのに……嬉しかったのに……現実はそうでもなかった。
貴「ねぇ、青子……」
青「なぁに?」
貴「私は何日意識がなかったの……?」
青「5日間かな?もう起きるのが遅いのよ〜!青子も玲於も快斗も!み〜んな心配してたんだからね!」
貴「……そうなの」
私の問いかけに親友は、強い口調で話し始める。皆に心配をかけていた……それは疑ってはいない……でも、何で……
(何で、何も言ってくれないの……快斗……)
目が覚めた後、彼は泣き出しそうな笑顔で私の名前を呟いた。でも……それだけだった。冷静にナースコールを押して、お医者さんが来るまで彼はひたすら黙って座り込んでいた。その間彼は私の事を見てすらくれなかったのだ。……心配してくれていることは伝わった。あんな泣きそうな笑顔を向けてくれたから……でもそれだけじゃない気がする。
一体何故……私が眠っている間に何があったの?
その後お医者さんと看護師さんが現れて、快斗は状況説明し、その間に青子と玲於がやってきて今に至る。喉が渇いたからと席を外した快斗だが、絶対それだけの理由で病室を出ていったとは思えなかった。何かあったとしか思えない。私が眠っていたとされる5日間の間に何があったのか……青子に聞こうと思ったのだ。
貴「青子、快斗の様子がおかしいの……何か知らない?」
私がそう青子に伝えると、青子は強く主張してきた。
青「そりゃそうよ!!だって憐が全然目を覚まさないんだよ?!?!いつも明るい快斗が、凄く憐の事を心配していて、見ていられないほど元気なかったの!!憐にも見せたかったよ〜!!」
快斗の様子が可笑しいと青子も感じていたけど、それは私の事を心配しての事らしい……幼馴染の青子がそう言うのなら、そうなんだろう。快斗はやっぱりちゃんと心配してくれてたんだ……私の勘違いだったのかな
青「憐の事を心配していたけど、でもなんかちょっと快斗変だよね……」
貴「??」
青「快斗に聞いた訳じゃないから分からないけど、何か凄く後悔している感じだったな〜……」
……後悔??
貴「後悔……??何で??だって快斗は何も関係ないじゃない……」
青「そうよね〜……ただ憐も知ってると思うけど、アイツ素直じゃないからさ……最近の憐って何かと事件に巻き込まれてるじゃない?憐には言わないけど、快斗凄く心配してるんだよ……!
でも学校の友達と楽しそうに旅行に行く話をしてくれる憐を見たら、そんな事言えないし、純粋に楽しんできて欲しいから何も言わないんだろうね〜……」
貴「……まぁ、それは否定しないわ。確かに最近事件に巻き込まれること多いもの……心配かけてるかな〜とは思ってたけど、でもそれで何で後悔に……それに何で私を避けるのよ……」
青「え?!快斗ったら憐の事避けてるの……?」
貴「……うん。目が覚めて以降全然話しかけてくれなかった……」
今迄快斗を避けた事はあっても、避けられた事なんてなかった……昔から変わらず気にかけてくれていた。彼はぶっきらぼうだけど、昔から人を大切にする人間だ。例え〝幼馴染〟だとしても、急に脈絡もなく自分を避けるような態度を取られれば、嫌でも分かるし、傷つく……今更私は過去の自分の行いを悔やんだ。
中学生の時、私は自分が傷つきたくない一心で、快斗を避けてしまったことがある……青子が快斗の事を好きだと気づいた私は、彼女の為……なんてのは体の良い言い訳で、当時お似合い夫婦だと言われていた快斗と青子を見ることが辛くて、距離を置いたことがある。私と快斗さえ絡まなければ、青子にも誤解させずに、私だって二人の姿を見て無闇に考えたり、傷ついたりすることなんかないと思い、それが最善だと思ってやっていたけど……間違いだったんだと、自分が受けた時に気づくなんて、本当に最低だ……何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
快斗は何も悪くないじゃん……因果応報ってやつだ……。
青「落ち込まないでよ〜!うーん……考えられる理由はひとつ……それは、快斗が素直じゃないからよ!!」
貴「……え??」
青子の言っている意味が分からず、気の抜けた声が出てしまった。
青「ほんっと憐って自分の事に関してになると鈍感になるよね〜……」
しかし、その様子に青子が呆れたようにため息をつく。
貴「えっ?!……まさか、青子に呆れられるとは思わなかったわ……」
青「だって〜〜〜憐と快斗って、お互い大好きな癖に素直になれなくて、つっけんどんな態度しちゃって、後から物凄く後悔してたりと似た者同士なのに全然気づく気配がないんだもん〜!そりゃあね?快斗はお子ちゃまで、ぶっきらぼうだから、素直に言えないアイツだって悪いけど、憐の事になるとあからさまに心配してるのに、憐は全然気づいてないんだもん!
青子に言わせればどっちもどっちね……!! 」
……ん?!?!
貴「そ、そんな事ないよ!!か、快斗はずっと青子の事ばっかり……ちょっかい出したり、大切にしてたり……私なんかただの〝幼馴染〟としか見てないって!……」
まさかの青子の言い分に慌てて否定する。だってそんな言い方……まるで快斗が私の事が好きだから、心配している……みたいになってしまう。それだけは青子を好きな快斗の名誉を守る為に全力で否定しなくちゃ!そんな思いで必死になって青子に伝えていると、青子が急に私に指を指してこう言った。
青「もう〜!憐の分からず屋!!どうしてそうなっちゃうの!!青子と玲於はずっとヤキモキしてるのに〜〜……憐は全然分かってない!!
良い?!快斗はね!!小さい時から憐の事を………………あっ?!?!」
貴「……??ど、どうしたの青子??」
青子の様子が変わっていく……あんなに大きい態度を取っていたのに、急に血相を変えて私に背中を向けた。いきなりどうしたんだろう?
青(駄目よ青子!!幾ら憐と快斗の仲が進展しないからって、快斗の気持ちを言おうとしちゃうのは駄目!!これは青子が伝えて良いことじゃない!!憐気づいちゃったかな〜……?)
チラッ
青「…………」
貴「??」
背中を向けつつもチラッとこちらの様子を伺う青子。その態度によく分かっていない私は首を傾げるしかなかった。
青「(何とか誤魔化さなくちゃ……!!)い、今のは……何でもないっ!!と、とにかく憐はもう少し周りを見て、自分の事をちゃんと大事にしてよね!!」
貴「……いや絶対さっきと違うこと言ってるじゃん!?!?えっ?!どういうこと??快斗が私の事を何?!?!」
何今の青子の挙動不審な態度は……?!頑張って誤魔化してるけど、最初と今の内容が全然違う!凄く気になること言ってたよね?!快斗が私について青子にどう思っているか話してるってことよね??めちゃくちゃ気になるよ……!
青「や、やだな〜……青子そんな事言ったかな??憐の空耳だって……!!あっでも快斗が最近の不運な憐を見て心配してるってのは本当だからね!(これぐらいは伝えてもいいよね?快斗……!)」
焦っている青子の様子を見て詰め寄ろうとしたけど、諦めた。青子ってこうと決めたら絶対変えないのよね。口を割らすのも時間かかるし、青子が話したくないのなら無理強いして聞くのは気が引ける……しょうがないか。
貴「不運は余計だから!でも分かった……快斗が心配してるのね!そういう事にしておく!……それより青子!!私聞きたいことがあるんだけど……」
青「な、なぁに憐っ?」
貴「こんな時に聞くことでは無いけど、二人きりになれた今がチャンスだから聞くね……」
青「う、うん!……」
快斗が不自然な態度をとっている事、青子が言いかけた事、それらの話題は置いといて、ずっと聞きたかった事実を彼女にぶつける。
貴「青子ってさ、好きな人いるよね……??」
青「えっ!?!?」
貴「隠さなくていいよ……中学の時から知ってるから!その人ってさ……快斗だよね??」
青「……えっ?!」
青子に聞きたかったこと……それは彼女の好きな人物について……幼き頃より一緒にいる私達。揶揄うように持て囃すことはあれど、ちゃんと面と向かって話し合ったことってあったかな……互いの好きな人なんて……。
子どもの定番らしいけど、私達って割と中学生になるまで特に気にせず遊んでいたからね。周りからどっちが好きなんだとか、本当は付き合ってるんでしょとか疑惑をかけられてた事もあったけど、気にしていなかった。でも大切な親友に、他の友人達同様、小さな春の訪れが分かった時、絶対応援しようと決めていたのだ……
―――例え自分の好きな人と被っていたとしても……
青「……何言ってるの!!違うってば!!!」
彼女の声は想定したよりも病室内に響き渡った。
貴「ちょ、ちょっと青子?!声!!大きいって……」
青「だって憐が変な事言うからよ!!」
貴「変な事?!?!」
変な事……なの……??
青「何か噛み合わないな〜と思ってたら、青子が快斗の事好きだと思ってないっ?!?!」
貴「えっ……違うの?!?!」
青「違うもん!!全然違うよー!!」
火を見るより明らかだった青子の好きな人は……快斗じゃなかった……??
貴「どういうこと……」
青「確かに!!……ちょっと前まではか、快斗の事……好きだったよ……!!で、でも今は違うの!!青子の好きな人は他にいま〜〜す!!」
貴「…………えぇええええええ!?!?」
大どんでん返しだ。天変地異でも起きたんじゃないかって感覚……此処は病室なのだから大声は厳禁!でもあまりにも驚いてしまってつい自分も大声を出してしまった。というか今……青子が言った!!ちゃんと快斗の事が好きだったって!!……でも今は違う……??彼女の告白は、私の常識を大きく覆していった……。
貴「それはマジ……なの……??」
青「マジよマジ……!!」
貴「じゃあ青子の好きな人って誰?!?!」
青「それは……!!」
貴「ゴクリ……それは……?!」
固唾を飲み込んで青子の言葉を待つ。
青「…………ヒミツ!!」
貴「…………へっ?!」
それだけ溜めての言葉がヒミツ……?!
青「安心して!!快斗じゃないから〜!!」
青子は人の気も知らずケラケラ笑っている。
……ちょっと?!?!
貴「な、な、何言ってるのよ〜!?というか安心って……!?」
私の好きな人……青子に伝えてないはず……段々と自分の体温が上がっていくのを感じた。
青「兎に角!!憐の大好きな快斗じゃないから安心してよ……!お互い片想い同士……頑張ろうね〜!!」
貴「!?!?!?」
私はとんだ思い違いをしていたようだ……自分だけがこの関係性を理解していると思っていたが、彼女もなかなかの策士だったらしい……。自分の好きな人は、快斗ではなく別にいると告げた青子は、私にニッコリ笑ってピースサインをしていた。
(っていうか私が快斗を好きな事……青子にバレてる〜〜っ?!?!)
私の予想だと、真っ赤に染まった青子が、快斗を好きであることを必死に隠しつつも、いじらしく認めてくれると思っていたのに、自分が予想していた結果とは異なる展開を迎えている。疑問に思いつつも、私は自分の体温を下げようと、必死に自分の手で顔を仰いだのだった……。
────────────────────────
ガラッ
玲「ごめんごめん〜母さんに電話してたら遅くなっちゃって〜」
玲於は屋上で話していた快斗と合流した後、早速自分の母親に電話をかける。憐が目を覚ました事、恐らく数日くらいで退院出来る事を伝えた。玲於と憐の母親は、その報せに感極まって涙を流して喜んだ。「私もすぐ行くから待ってて!」と母親は玲於が返す暇もなく、電話を切った。そこで玲於と快斗は憐の病室へと戻り、母親との電話の内容を憐と青子に伝えた。
玲「だからもうすぐ母さんが来るんだけど…………??」
貴「……」/青「ん??……」
玲於はある事に気づく……病室を出ていく前の憐と青子の雰囲気と、今の二人の雰囲気が違うのだ。青子は音符が頭の上に出てきそうな浮かれ具合でニコニコしていて、憐は心做しか顔が紅い……一体何を話していのだろうか。その真意を探る為、まずはご機嫌な青子に話を振ってみる。
玲「何だか凄く嬉しそうだね、青ちゃん……」
青「えへへ〜……分かる〜??さっき憐と女子トークしてたの!」
思った通り、青子は素直に教えてくれたが、女子トークとは一体……内容についてはよく分からなかったが、待ちに待った姉が目覚めた為、嬉しくて仕方がないんだろう……玲於は青子の満面の笑みにニコニコしながら「そっか」と答える。憐は和やかな雰囲気を横目で見つつも、逸らしていた視線を快斗に向ける決心が付いて黙っていた口を開こうとした瞬間、快斗が青子に声をかける。
快「おい青子!俺達は帰るぞ!コイツはまだ完全に回復したって訳じゃねーからな。いつまでも俺達がここに居たら休めねーし、おばさんももうすぐ来るからな……」
貴「!!」
青「えっ?!でも…………」
快「いいから早く行くぞ!!……じゃあな玲於、憐……おばさんによろしく伝えておいてくれ……」
青子の返答を待たずして、快斗は背を向けて病室のドアの方へと歩き始める。青子は心配になり、咄嗟に憐の方に視線を向ける。
貴「……っ……!!」
白い掛布団をギュッと握りしめ、俯いて必死に涙を流すまいと耐えている憐の姿があった。避けられているとは言っていたが、目も合わせないとは……幾ら何でもあんまりではないかと思い、青子が快斗に文句を言おうとするも、玲於が青子の肩に静かに手を置く。
玲(駄目だよ青ちゃん……)
青(玲於……でも!!これじゃ憐が……!!)
青子がアイコンタクトで玲於に伝えようとするも、玲於は首を横に振る。
玲(二人の問題だから僕らは暫く様子を見よう……)
瞳を見て玲於の思いが伝わった青子は後ろ髪引かれる思いで出ていった快斗の背中を追いかけた。
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────── 真夜中 病室
(眠れない……ずっと眠っていたからかな)
時刻は真夜中を過ぎた頃……私はベッドの上でゴロゴロと左右に寝返りをうっていた。どれだけ目を瞑っても意識は落ちない……どれだけ考えないようにしても、頭から離れない……もうお手上げ状態だ……
(私……何かしちゃったのかな……)
意識が戻っていなかった私に何が出来たというのか……快斗と青子が帰った後、お母さんがやってきて私の目覚めを喜んでくれた。そして母が忙しい父の携帯にかけてくれて、少しだが父と電話で話すことが出来た。そんな事もあって私の心は比較的穏やがだが、完全に傷が癒えたかと言えばそうでも無い。私にだけ態度が違い、何より避けられている事実を思う度に涙があふれる。こうなる原因を考えてみても、全く分からない……途方に暮れていた。
貴「私が何かしたなら謝るから……だから避けないで……、置いて行かないで……快斗……」
目を閉じて、頭の中に浮かんだもの先程の記憶……目も合わず、背を向けて去ってしまう幼馴染の姿。自分の頬をつたう雫が静かに流れ、シーツに染みを作った……。
バサッ
その時僅かに音が聞こえた。窓がある方向から音は聞こえ、何故か視界も少し暗くなる。瞼の性質上、閉じていても光は通す。この病室は個室で、窓から優しい月光が降り注いでいる。視界が暗くなったということはその月光が遮られたということ……おかしいな、カーテンは閉めてないはずなんだけど……でもどうせ起きたってしょうがない……真夜中に活動する人なんて限られた人達だけ。だから気にしなくたって良いんだと自分に言い聞かせて再度眠りを再開した。
しかし、そうも言ってられない事が起きる。
ガタン
先程よりも少し大きめに音が聞こえた……気の所為だろうか……先程よりもすぐ側で聞こえたような……??
恐る恐る閉じていた瞼を開ける……
「……キッドっ……!!」
そこには……あの日私達を助ける為、飛行機から飛び降りた白き怪盗の姿があったのだ。
