銀翼の奇術師【完結】
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コナンside
コ「……俺がその〝工藤新一〟だからだよ」
虎穴に入らずんば虎子を得ずという諺がある。危険を犯さなければ大きな成果も得られない。
相手はあの怪盗キッド……そう簡単に認めさせる事なんて出来ないと考え、覚悟を決めて乗り込んできたのだ。例え己の正体を明かしてでも、挑まなければならない相手だと分かっている。
そして恐らくコイツは俺の正体に気づいている……だから今も奴は驚いた表情をしていないのだ。
コ「どうせオメーは気づいてたんだろ?俺の正体に……」
臆せずに答えれば、神妙な表情を見せているキッド。そういえば互いに名を名乗らずにここまで会話が進んでいるのも、可笑しな話だ。
快「……」
コ「だからあの時の工藤新一は、キッドだって分かったんだ」
コ「そしてこれは俺の推理だが……怪盗キッドは、神崎の親しい関係にいる人物ではないかというもの。高校の時から知り合って仲のいい蘭や園子達よりも、神崎の異変に先に気づくことが多かった。神崎の事を好きだったとしても、蘭達よりも後に知り合っているキッドが短期間で神崎を把握できるなんて現実的では無い……だからきっと神崎と縁が長く深い人物であると……」
快「……」
コ「並外れたマジックの腕を持ち、工藤新一に似ていて、神崎と付き合いの長い人物……そう考えると当てはまる人物はお前だけなんだ……」
怪盗の時のいけ好かない態度と違って、いつになく真剣な表情を見せているキッド。園子に新一くんと似てるなんて言われた時は、思わなかったが、こうして目の前で見ると、確かに似ている。
コ「お前こそどうした……?いつもみたいにお得意のマジックで煙に巻いたり、余裕そうな態度はどこいった……」
俺に煽られたキッドは、やっと口を開く。
快「へぇー……オメーみたいな小学生のガキが高校生探偵を名乗るなんてな……いつもだったら付き合わねーんだが、お前の気高き覚悟に免じて付き合ってやるよ」
普通の人間だったら、こんなガキの妄言を信じたりしないんだが、硬い表情の俺を見て信用したようだ。
快「だがな……お前の話を認めた訳じゃねーよ。そこまで俺をキッドにしたいなら、証拠はあんのか?俺とキッドが同一人物だという証拠が!」
待ってたぜ……お前の口からその言葉が出るのをな……!
コ「証拠ならあるぜ……これだよ!!」
俺はポケットから、例の物を取り出す。そしてコイツの目の前に突きつけた。
───────────────────────
快斗side
コ「証拠ならあるぜ……これだよ!!」
そう言って意気揚々と名探偵が取り出した〝証拠〟は紫水晶……アメジストのストラップだった……
快「!?」
どうして……何でそれをお前が持ってるんだ……?!思いもよらない証拠品に、俺は表情を少し崩してしまった。
コ「これはあの飛行機を着陸させた後、蘭が拾った物だ。何でも救急隊員に変装していたキッドが離れた後に足元に落ちていたらしい……だからこれはキッドの持ち物だった可能性が高い……」
そうか……名探偵の彼女の足元に落ちてたのか。俺が去った後に落ちて、あの子が拾ったのか。話しかけたのは、単純に憐を救ってくれた礼と本当に素晴らしい着陸技術だったと言いたかったから。俺だと気づかれても良いから、彼女に伝えたかったのだ。だけど、まさかそこで落としてたなんて……?!ただそれだけで認める訳にはいかない。
快「……お前の知り合いの女の子の足元に落ちてただけで、キッドが本当に持ってたどうかなんて分からないだろ!しかも話しかけた救急隊員が本当にキッドだったかどうかも……」
コ「蘭はその救急隊員から褒められたらしいぜ……あの着陸を。蘭が飛行機を操縦してたなんて知ってたのは、俺達の関係者とCAとキッドだけだ」
快「……!!」
クソ……確かにそうだ。乗客の混乱を招きかねないと思い、俺から提案したことで、彼女が操縦していたことを知っていたのは僅かな人間のみ。まさか自分の行動で首を絞められるとはな……
コ「それで蘭はこうも言っていた……〝これ……憐が買ってたのと似てる気がする〟……と」
快「?!」
コ「このアメジスト……本当は神崎のアメジストなんだろう?聞けば神崎は、大阪旅行の際お土産でパワーストーンを買っていた。全部で4つ、どうやら自分用と幼馴染用に買ったんだってな。それぞれパワーストーンは、青いサファイア、黄色のキャッツアイ、白のムーンストーン、紫のアメジスト。それぞれ贈る人物の誕生石で選んだのだと……」
快(ヤベぇ……)
まさかパワーストーン迄知っていたなんて……本当に予想外だ。
コ「神崎の誕生月は2月だと聞いている……今あげたパワーストーンの中だと、2月の誕生石はアメジストとキャッツアイ。そして蘭は神崎が自分用にアメジストを買っていることを聞いているから、必然的に神崎はアメジストを持っている筈。キャッツアイは恐らく双子の兄弟用。前の奇術愛好家殺人事件の時に、迎えに来ていた家族に双子の弟がいるのを見かけていたからな」
玲於の存在まで知られていたとは……予想外のことばかり起きて、身が持たなくなりそうだ。己の首筋に汗が流れたような気がした。
コ「で……当然お前は神崎からお土産として貰ったはずだ……アメジストとキャッツアイ以外……つまりムーンストーンかサファイアのどちらかを……さぁ、出してもらおうか……お前が神崎から貰ったパワーストーンを!!」
名探偵は自信に満ち溢れた表情で言い放つ。
快「おいおい……仮にそのアメジストがキッドの所有物だとしよう……憐の購入したパワーストーンに似てるからなんだよ……それはキッドのであって憐の物じゃないだろ?!それにパワーストーンなんて何処にでも売っているし、確かに俺も憐から貰ったが、俺のを見せて何になるんだ……」
そうだ……ただ似てるというだけで、一緒にされては困る。俺は笑みを浮かべながら反論した。しかし、名探偵は怯まない……まるでそう言われることを予想していたみたいに……
コ「本来神崎は、アメジストを自分用に購入していた。しかし、実際彼女が所持していたのはアメジストではなくムーンストーンだった
己の誕生石をちゃんと把握しているのにも関わらず、何故自分と異なる誕生石のムーンストーンを持っていたのか……それはお前と交換したからだ!」
快(……チッ!)
やるな名探偵……何で交換したなんて分かるんだよ……まぁ、ここで俺のを見せろと言われても今は名探偵の手元にあるのだから、難しい事には変わらないが、今だ危機的状況なのは変わらず……
コ「それに本来このアメジストが神崎の物だったという証拠もある……!」
快「 ……?!」
至ってシンプルなパワーストーンのストラップに、憐の持ち物だという証拠が何処に……
コ「その様子だと気づいてないみてーだな……このアメジストをよく見てみると、小さく文字が彫られてるんだぜ……イニシャルがな」
快「イニシャル?!」
コ「彫られていたイニシャルはR.K.……このイニシャルは神崎と同じイニシャル……だからこのアメジストは神崎の物だと考えた」
……あぁ、奴の推理は悔しい程に完璧で、隙がない。結構頑張ったな俺と自分自身を心の中で褒める。
コ「この前、入院している神崎の手首を確認した。手首に嵌めていたミサンガにムーンストーンがついていて、そのムーンストーンにもイニシャルが刻まれていた……ただあれは神崎のイニシャルじゃなかった……刻まれていたイニシャルはK.K.……」
イニシャルまで言われちゃ詰みだ。例えここで逃げられたとしても、このアメジストを憐に見せられたら終わる……チェックメイトだ
快「K.K.……Kaito・Kuroba……俺のイニシャルだよ……」
静かに笑って名探偵に自身の本当の名を告げる。俺と名探偵の真実の探り合いは、名探偵の勝利で終わった……。
────────────────────────
コナンside
快「K.K.……Kaito・Kuroba……俺のイニシャルだよ……」
遂に奴は認めた……このアメジストがコイツの物ならやはり怪盗キッドの正体は、コイツ……神崎の幼馴染!
快「恐れ入ったぜ名探偵……まさか本当にこの俺に辿り着くとはな……。
あぁ、そうだよ……俺の名前は黒羽快斗……。今世間を騒がしている月下の奇術師、怪盗キッドだ」
あれだけ抵抗していたキッド基黒羽は諦めたように笑いながら、己の正体を明かした。
快「よく気づいたな〜……このパワーストーンに文字が彫ってあるなんて……俺は気づかなかったぜ」
コ「証拠品を注意深く観察し、手がかりがないか徹底的に調べるのは探偵の基本だ。それにキッドの所有物の可能性が高いなら、より神経を尖らせて見るに決まってんだろ」
快「そうか……で、どうするんだ?このまま俺を中森警部にでも突き出すのか?」
黒羽に言われた事……それはここに来る前から考えていた事でもある。もし、この男が自分の正体を認めた時……次の手段としてどうするのか。
コ「いや警察には突き出さねーよ……そんな事したら、お前俺の正体を蘭にバラすつもりだろ」
快「ご名答……やっぱバレてたか〜」
本当なら警察に突き出したい所だが、コイツは俺の正体を知っている……万が一そんな事をすれば、コイツは俺の正体を蘭にバラすだろう……俺が必死に己の正体を隠していることは知っているからな。奴を捕まえることと、蘭達を危険に晒すことを天秤にかけるなら、迷わず蘭達の身の安全を選ぶに決まっている。
こんなおちゃらけた態度をとっていても、いまだ警察に尻尾を掴ませない切れ者の国際指名手配犯なのだ。奴にキッドであると認めさせたが、結果的に俺の正体まで明かす羽目になった……完全勝利とは言い難い。
快「でも何で俺が、お前の正体を知ってると分かったんだ?」
そんなの簡単だ……俺は呆れたような視線を奴に送る。
コ「舞台ジョゼフィーヌの観劇前に、俺が神崎の足にしがみついて頼み込んでたのを、お前が無理やり引き剥がしたことだな。あとはその後のお前が、俺の事を凄まじい形相で睨みつけてたこと……今考えると、お前の正体が神崎に気づかれると困るから俺の邪魔をしていた……そして俺の正体が、本当は小学生ではなく男子高校生だと分かっていたから……想いを寄せている神崎に絡んで欲しくなかったから、俺の事を睨んでいたんだろう?……つまり嫉妬だな」
からかいを含めた視線を送れば、黒羽は顔を歪めて言い返す。
快「チッ……オメーほんと良い性格してるよな」
コ「オメー程じゃねぇけどな」
快「お前の彼女やお友達に、お前の本性見せてやりてぇよ」
軽く舌打ちした黒羽。よく言うぜ……
コ「……俺だって神崎に教えてやってもいいんだぞ。お前の正体は……」
快「おっと気をつけな名探偵……それ以上口に出せば……」
カチャッ
突如自分に向けられた銃口。キッドが使用しているトランプ銃だった。黒羽は俺にトランプ銃を突きつけてきた。
コ「…………」
銃を突きつけられても態度を崩さず、視線を送り続けると奴はフッと笑ってその引き金を引いた。
バンッ!!
快「なーんてな!驚いたか?」
破裂音と共に出てきたのはトランプではなく、旗と少量の紙吹雪。旗には〝ドッキリ!〟の文字が載っていた。……しょうもねぇな
コ「どうせそんなこったろうと思ったぜ」
快「おいおいもっと素直に驚けよな〜驚かしがいのない奴だな……」
コ「うっせぇ!ほっとけ……」
快「名探偵!オメーが俺の正体をバラすなら、俺もオメーの正体をバラすまでだからな……くれぐれも内密に頼むぜ……」
黒羽は自身の口元の近くで人差し指を立てて、俺に釘を刺してきた。そんなこと重々承知だが、俺もコイツに言っておきたいことがある。
コ「お前の正体をバラすことはしない……だけど盗みは別だ。お前がどんな事情で怪盗をやっているのか知らないが、どんな理由であれ俺はお前の犯罪行為を見逃さない。お前が盗みを働くなら、容赦なく現行犯で捕まえるからな……覚悟しとけよ」
俺もしっかりと釘を刺しておく。窃盗は現行犯以外でも捕まることはある。だが、現行犯であればこれ以上にない証拠であり、しっかりと捕まえることが出来るのだから容赦はしない。例え友人の大切な奴だとしてもそこだけは譲れない。
快「げっ……お前がいると面倒だからもう関わってくるなって言いたいが、聞くような人間じゃねーからな……あぁ、いいぜ!俺はどんな奴相手でも……例え名探偵が相手でも絶対捕まらねぇからな!受けて立つぜ!」
小さな名探偵と白き怪盗は密約を結ぶ。内容は互いの裏事情に干渉しない、正体を他人にバラさない。しかし、探偵と怪盗は相容れぬ存在であるが故に、目的が重なった際は互いにぶつかり合うことは避けられない。だが今回は互いに話し合うことを目的とした為、二人の密談は穏やかに終わりを迎えた。
話を終えたコナンは、目的を終えたと言わんばかりに足早に屋上から出ていく。快斗は引き止めることなく、屋上からコナンが病院の外へと出ていく姿を見下ろしていた。背後で扉の開く音が聞こえる。
快「……お前の存在が名探偵にバレなくて良かったぜ」
その言葉と共に彼の隣に並び立ったのは、神崎玲於だった。
玲「……状況が掴めないんだけど、その言葉が本当ならもしかして快くんの正体……あの眼鏡の少年にバレたの?」
快斗は何も発せずただ静かに頷く。
玲「ふーんなるほどね……何処かで見たことあると思ったらキッドキラーの少年か……まぁ、しょうがないよ。でもこれからどうする??快くんの正体より僕の存在がバレた方がマシだったと思うんだけど……」
快「これでいいんだよ。だってお前は変装出来ねーだろ?俺なら変装でどうとでもなるからな……それにアイツだって無闇に警察に垂れ込めねーようにしたから大丈夫だよ。それより憐の所に戻るぜ。長時間居ないと青子が探しに来ちまう」
玲「そうだね……でも後でゆっくり聞かせてもらうからね。君の言う〝名探偵〟と何を話したのか……」
快「わぁーってるよ!!」
玲於は瞳を鋭くさせて、快斗に伝える。快斗も面倒そうに返答し、二人は憐の病室へと踵を返した。
コ「……俺がその〝工藤新一〟だからだよ」
虎穴に入らずんば虎子を得ずという諺がある。危険を犯さなければ大きな成果も得られない。
相手はあの怪盗キッド……そう簡単に認めさせる事なんて出来ないと考え、覚悟を決めて乗り込んできたのだ。例え己の正体を明かしてでも、挑まなければならない相手だと分かっている。
そして恐らくコイツは俺の正体に気づいている……だから今も奴は驚いた表情をしていないのだ。
コ「どうせオメーは気づいてたんだろ?俺の正体に……」
臆せずに答えれば、神妙な表情を見せているキッド。そういえば互いに名を名乗らずにここまで会話が進んでいるのも、可笑しな話だ。
快「……」
コ「だからあの時の工藤新一は、キッドだって分かったんだ」
コ「そしてこれは俺の推理だが……怪盗キッドは、神崎の親しい関係にいる人物ではないかというもの。高校の時から知り合って仲のいい蘭や園子達よりも、神崎の異変に先に気づくことが多かった。神崎の事を好きだったとしても、蘭達よりも後に知り合っているキッドが短期間で神崎を把握できるなんて現実的では無い……だからきっと神崎と縁が長く深い人物であると……」
快「……」
コ「並外れたマジックの腕を持ち、工藤新一に似ていて、神崎と付き合いの長い人物……そう考えると当てはまる人物はお前だけなんだ……」
怪盗の時のいけ好かない態度と違って、いつになく真剣な表情を見せているキッド。園子に新一くんと似てるなんて言われた時は、思わなかったが、こうして目の前で見ると、確かに似ている。
コ「お前こそどうした……?いつもみたいにお得意のマジックで煙に巻いたり、余裕そうな態度はどこいった……」
俺に煽られたキッドは、やっと口を開く。
快「へぇー……オメーみたいな小学生のガキが高校生探偵を名乗るなんてな……いつもだったら付き合わねーんだが、お前の気高き覚悟に免じて付き合ってやるよ」
普通の人間だったら、こんなガキの妄言を信じたりしないんだが、硬い表情の俺を見て信用したようだ。
快「だがな……お前の話を認めた訳じゃねーよ。そこまで俺をキッドにしたいなら、証拠はあんのか?俺とキッドが同一人物だという証拠が!」
待ってたぜ……お前の口からその言葉が出るのをな……!
コ「証拠ならあるぜ……これだよ!!」
俺はポケットから、例の物を取り出す。そしてコイツの目の前に突きつけた。
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快斗side
コ「証拠ならあるぜ……これだよ!!」
そう言って意気揚々と名探偵が取り出した〝証拠〟は紫水晶……アメジストのストラップだった……
快「!?」
どうして……何でそれをお前が持ってるんだ……?!思いもよらない証拠品に、俺は表情を少し崩してしまった。
コ「これはあの飛行機を着陸させた後、蘭が拾った物だ。何でも救急隊員に変装していたキッドが離れた後に足元に落ちていたらしい……だからこれはキッドの持ち物だった可能性が高い……」
そうか……名探偵の彼女の足元に落ちてたのか。俺が去った後に落ちて、あの子が拾ったのか。話しかけたのは、単純に憐を救ってくれた礼と本当に素晴らしい着陸技術だったと言いたかったから。俺だと気づかれても良いから、彼女に伝えたかったのだ。だけど、まさかそこで落としてたなんて……?!ただそれだけで認める訳にはいかない。
快「……お前の知り合いの女の子の足元に落ちてただけで、キッドが本当に持ってたどうかなんて分からないだろ!しかも話しかけた救急隊員が本当にキッドだったかどうかも……」
コ「蘭はその救急隊員から褒められたらしいぜ……あの着陸を。蘭が飛行機を操縦してたなんて知ってたのは、俺達の関係者とCAとキッドだけだ」
快「……!!」
クソ……確かにそうだ。乗客の混乱を招きかねないと思い、俺から提案したことで、彼女が操縦していたことを知っていたのは僅かな人間のみ。まさか自分の行動で首を絞められるとはな……
コ「それで蘭はこうも言っていた……〝これ……憐が買ってたのと似てる気がする〟……と」
快「?!」
コ「このアメジスト……本当は神崎のアメジストなんだろう?聞けば神崎は、大阪旅行の際お土産でパワーストーンを買っていた。全部で4つ、どうやら自分用と幼馴染用に買ったんだってな。それぞれパワーストーンは、青いサファイア、黄色のキャッツアイ、白のムーンストーン、紫のアメジスト。それぞれ贈る人物の誕生石で選んだのだと……」
快(ヤベぇ……)
まさかパワーストーン迄知っていたなんて……本当に予想外だ。
コ「神崎の誕生月は2月だと聞いている……今あげたパワーストーンの中だと、2月の誕生石はアメジストとキャッツアイ。そして蘭は神崎が自分用にアメジストを買っていることを聞いているから、必然的に神崎はアメジストを持っている筈。キャッツアイは恐らく双子の兄弟用。前の奇術愛好家殺人事件の時に、迎えに来ていた家族に双子の弟がいるのを見かけていたからな」
玲於の存在まで知られていたとは……予想外のことばかり起きて、身が持たなくなりそうだ。己の首筋に汗が流れたような気がした。
コ「で……当然お前は神崎からお土産として貰ったはずだ……アメジストとキャッツアイ以外……つまりムーンストーンかサファイアのどちらかを……さぁ、出してもらおうか……お前が神崎から貰ったパワーストーンを!!」
名探偵は自信に満ち溢れた表情で言い放つ。
快「おいおい……仮にそのアメジストがキッドの所有物だとしよう……憐の購入したパワーストーンに似てるからなんだよ……それはキッドのであって憐の物じゃないだろ?!それにパワーストーンなんて何処にでも売っているし、確かに俺も憐から貰ったが、俺のを見せて何になるんだ……」
そうだ……ただ似てるというだけで、一緒にされては困る。俺は笑みを浮かべながら反論した。しかし、名探偵は怯まない……まるでそう言われることを予想していたみたいに……
コ「本来神崎は、アメジストを自分用に購入していた。しかし、実際彼女が所持していたのはアメジストではなくムーンストーンだった
己の誕生石をちゃんと把握しているのにも関わらず、何故自分と異なる誕生石のムーンストーンを持っていたのか……それはお前と交換したからだ!」
快(……チッ!)
やるな名探偵……何で交換したなんて分かるんだよ……まぁ、ここで俺のを見せろと言われても今は名探偵の手元にあるのだから、難しい事には変わらないが、今だ危機的状況なのは変わらず……
コ「それに本来このアメジストが神崎の物だったという証拠もある……!」
快「 ……?!」
至ってシンプルなパワーストーンのストラップに、憐の持ち物だという証拠が何処に……
コ「その様子だと気づいてないみてーだな……このアメジストをよく見てみると、小さく文字が彫られてるんだぜ……イニシャルがな」
快「イニシャル?!」
コ「彫られていたイニシャルはR.K.……このイニシャルは神崎と同じイニシャル……だからこのアメジストは神崎の物だと考えた」
……あぁ、奴の推理は悔しい程に完璧で、隙がない。結構頑張ったな俺と自分自身を心の中で褒める。
コ「この前、入院している神崎の手首を確認した。手首に嵌めていたミサンガにムーンストーンがついていて、そのムーンストーンにもイニシャルが刻まれていた……ただあれは神崎のイニシャルじゃなかった……刻まれていたイニシャルはK.K.……」
イニシャルまで言われちゃ詰みだ。例えここで逃げられたとしても、このアメジストを憐に見せられたら終わる……チェックメイトだ
快「K.K.……Kaito・Kuroba……俺のイニシャルだよ……」
静かに笑って名探偵に自身の本当の名を告げる。俺と名探偵の真実の探り合いは、名探偵の勝利で終わった……。
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コナンside
快「K.K.……Kaito・Kuroba……俺のイニシャルだよ……」
遂に奴は認めた……このアメジストがコイツの物ならやはり怪盗キッドの正体は、コイツ……神崎の幼馴染!
快「恐れ入ったぜ名探偵……まさか本当にこの俺に辿り着くとはな……。
あぁ、そうだよ……俺の名前は黒羽快斗……。今世間を騒がしている月下の奇術師、怪盗キッドだ」
あれだけ抵抗していたキッド基黒羽は諦めたように笑いながら、己の正体を明かした。
快「よく気づいたな〜……このパワーストーンに文字が彫ってあるなんて……俺は気づかなかったぜ」
コ「証拠品を注意深く観察し、手がかりがないか徹底的に調べるのは探偵の基本だ。それにキッドの所有物の可能性が高いなら、より神経を尖らせて見るに決まってんだろ」
快「そうか……で、どうするんだ?このまま俺を中森警部にでも突き出すのか?」
黒羽に言われた事……それはここに来る前から考えていた事でもある。もし、この男が自分の正体を認めた時……次の手段としてどうするのか。
コ「いや警察には突き出さねーよ……そんな事したら、お前俺の正体を蘭にバラすつもりだろ」
快「ご名答……やっぱバレてたか〜」
本当なら警察に突き出したい所だが、コイツは俺の正体を知っている……万が一そんな事をすれば、コイツは俺の正体を蘭にバラすだろう……俺が必死に己の正体を隠していることは知っているからな。奴を捕まえることと、蘭達を危険に晒すことを天秤にかけるなら、迷わず蘭達の身の安全を選ぶに決まっている。
こんなおちゃらけた態度をとっていても、いまだ警察に尻尾を掴ませない切れ者の国際指名手配犯なのだ。奴にキッドであると認めさせたが、結果的に俺の正体まで明かす羽目になった……完全勝利とは言い難い。
快「でも何で俺が、お前の正体を知ってると分かったんだ?」
そんなの簡単だ……俺は呆れたような視線を奴に送る。
コ「舞台ジョゼフィーヌの観劇前に、俺が神崎の足にしがみついて頼み込んでたのを、お前が無理やり引き剥がしたことだな。あとはその後のお前が、俺の事を凄まじい形相で睨みつけてたこと……今考えると、お前の正体が神崎に気づかれると困るから俺の邪魔をしていた……そして俺の正体が、本当は小学生ではなく男子高校生だと分かっていたから……想いを寄せている神崎に絡んで欲しくなかったから、俺の事を睨んでいたんだろう?……つまり嫉妬だな」
からかいを含めた視線を送れば、黒羽は顔を歪めて言い返す。
快「チッ……オメーほんと良い性格してるよな」
コ「オメー程じゃねぇけどな」
快「お前の彼女やお友達に、お前の本性見せてやりてぇよ」
軽く舌打ちした黒羽。よく言うぜ……
コ「……俺だって神崎に教えてやってもいいんだぞ。お前の正体は……」
快「おっと気をつけな名探偵……それ以上口に出せば……」
カチャッ
突如自分に向けられた銃口。キッドが使用しているトランプ銃だった。黒羽は俺にトランプ銃を突きつけてきた。
コ「…………」
銃を突きつけられても態度を崩さず、視線を送り続けると奴はフッと笑ってその引き金を引いた。
バンッ!!
快「なーんてな!驚いたか?」
破裂音と共に出てきたのはトランプではなく、旗と少量の紙吹雪。旗には〝ドッキリ!〟の文字が載っていた。……しょうもねぇな
コ「どうせそんなこったろうと思ったぜ」
快「おいおいもっと素直に驚けよな〜驚かしがいのない奴だな……」
コ「うっせぇ!ほっとけ……」
快「名探偵!オメーが俺の正体をバラすなら、俺もオメーの正体をバラすまでだからな……くれぐれも内密に頼むぜ……」
黒羽は自身の口元の近くで人差し指を立てて、俺に釘を刺してきた。そんなこと重々承知だが、俺もコイツに言っておきたいことがある。
コ「お前の正体をバラすことはしない……だけど盗みは別だ。お前がどんな事情で怪盗をやっているのか知らないが、どんな理由であれ俺はお前の犯罪行為を見逃さない。お前が盗みを働くなら、容赦なく現行犯で捕まえるからな……覚悟しとけよ」
俺もしっかりと釘を刺しておく。窃盗は現行犯以外でも捕まることはある。だが、現行犯であればこれ以上にない証拠であり、しっかりと捕まえることが出来るのだから容赦はしない。例え友人の大切な奴だとしてもそこだけは譲れない。
快「げっ……お前がいると面倒だからもう関わってくるなって言いたいが、聞くような人間じゃねーからな……あぁ、いいぜ!俺はどんな奴相手でも……例え名探偵が相手でも絶対捕まらねぇからな!受けて立つぜ!」
小さな名探偵と白き怪盗は密約を結ぶ。内容は互いの裏事情に干渉しない、正体を他人にバラさない。しかし、探偵と怪盗は相容れぬ存在であるが故に、目的が重なった際は互いにぶつかり合うことは避けられない。だが今回は互いに話し合うことを目的とした為、二人の密談は穏やかに終わりを迎えた。
話を終えたコナンは、目的を終えたと言わんばかりに足早に屋上から出ていく。快斗は引き止めることなく、屋上からコナンが病院の外へと出ていく姿を見下ろしていた。背後で扉の開く音が聞こえる。
快「……お前の存在が名探偵にバレなくて良かったぜ」
その言葉と共に彼の隣に並び立ったのは、神崎玲於だった。
玲「……状況が掴めないんだけど、その言葉が本当ならもしかして快くんの正体……あの眼鏡の少年にバレたの?」
快斗は何も発せずただ静かに頷く。
玲「ふーんなるほどね……何処かで見たことあると思ったらキッドキラーの少年か……まぁ、しょうがないよ。でもこれからどうする??快くんの正体より僕の存在がバレた方がマシだったと思うんだけど……」
快「これでいいんだよ。だってお前は変装出来ねーだろ?俺なら変装でどうとでもなるからな……それにアイツだって無闇に警察に垂れ込めねーようにしたから大丈夫だよ。それより憐の所に戻るぜ。長時間居ないと青子が探しに来ちまう」
玲「そうだね……でも後でゆっくり聞かせてもらうからね。君の言う〝名探偵〟と何を話したのか……」
快「わぁーってるよ!!」
玲於は瞳を鋭くさせて、快斗に伝える。快斗も面倒そうに返答し、二人は憐の病室へと踵を返した。
