銀翼の奇術師【完結】
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快斗side
憐の病室を出た俺は、静かな病院の廊下を歩く。憐の病室を出た理由は、喉が渇いたから飲み物を買ってくる……という理由で間違ってはいない……でも厳密に言うと少し違う。
(アイツが目覚めることを望んでいたのに……いざ対面すると、何て声をかけたらいいのか分かんねぇ……)
目覚めを望んでいた彼女といざ対面した時にどんな言葉をかければいいのか分からなかったからだ。倒れている姿を見た時は、最悪な想像をしてしまい、生きた心地がしなかったが、幸い憐の症状は、異常がなければ2〜3日で退院出来る程度のもの。それなら他の奴が見ていても心配はない……。青子と玲於も丁度良いタイミングで帰ってきたから、このまま憐を任せ、ただ一人病室を出た。
親友の慰めに幾度かマシになるも、やはり消えない罪悪感、後悔の念……護ると言ったのに、彼女は傷を負い地に伏していたことが重くのしかかる。
もう傷ついて欲しくなかった……涙を流させたくなかった……なのにどうしてアイツばかり危険な目に合うんだ。
─── 俺は好きな女さえ、ろくに護れねぇのかよ
自分の不甲斐なさに腹立ちながら、歩いているとお目当ての自販機にたどり着く。病院の自販機とあって、ジュース、炭酸となる飲み物は少なく大体飲料水か、珈琲缶などが主なラインナップだ。自販機に小銭を入れ、迷うことなく、飲料水のボタンを押す。ガゴンッと音ともに自販機の取り出し口に飲料水が落ちた。取り出す為に、しゃがもうとした瞬間、背後に人の気配を感じ、動きを止める。
少し顔をずらし、背後を確認する。足元しか見えなかったが、見えたのは小さな赤と白のシューズ。……何だか見覚えがある。自分はいつもこのシューズを履いた少年に、苦戦を強いられ追いかけられていた……ような……
そこまで考えて小さく唾を飲み込む。嫌な可能性に思い当たってしまった……いやまさかそんなはず……
「そこのお兄ーさん!ちょっといい……?」
この声は……あぁ、嫌な予感が当たってしまった。己の予想が正しければ、きっと後ろには奴がいる……子ども特有の声色で話しかけているが、俺は奴の本性を知っている。
振り向きたくない……出来ればずっと……出会いたくなどなかった。
過去に怪盗キッドの名前が勝手に使われて、数ある探偵達が招集された晩餐会があった。その時の首謀者の一人、千間婆さんに対して言ったことが、いまだに己の中に強く残っている。
婆さんは、飛んでいるヘリから態と自分が飛び降りることで、逃げ場のなかった俺が逃げられるようにしてくれた。あの時は、毛利探偵に化けていて、探偵達に囲まれて座っていたから、抜け出すのに骨が折れそうだと考えていたが、婆さんのおかげでヘリコプターから脱出出来たのだ。
婆さんを助ける為、ヘリコプターから飛び降りた時、奴は俺に向かって妙な時計で狙っていたと婆さんは言っていた。瞬時に変装をといた俺に対して、躊躇なく攻撃しようとしていた小さな探偵を主に指して婆さんは俺に問いかけた。
千『何者だい……あの子達』
何者か……俺にとって奴は一体どんな存在なのか……出来るならもう二度と関わりたくない厄介な存在……。しかし、運命 がそれを許してはくれない……いずれは巡り会う運命 だった。
俺が〝平成のアルセーヌ・ルパン〟なら、奴は〝平成のシャーロック・ホームズ〟……対を成す存在だ。
だから俺はこう答えた……
キ『最も出会いたくない……恋人ってところかな』
俺と奴の関係性を表すうってつけの一言だろう。その存在が、今正に俺の背後に立っている。
快「どうした坊主……初対面の俺に何か用か?」
どんな時でも冷静に……〝いつ何時たりともポーカーフェイスを忘れるな〟……強く俺の心に刻まれている親父の教えに倣い、毅然とした態度で振り返る。
やはり俺の思った通り……そこには、いつも俺を追い詰めて捕らえようとする眼鏡のガキ……名探偵が立っていた。
コ「実はね〜僕ここに入院している憐姉ちゃんの知り合いなんだ!お見舞いに行こうとしてたんだけど、その憐姉ちゃんの病室からお兄さんが出てきた所を見かけたから、ちょっと話をしたくて、声をかけたんだ!
お兄さんは、憐姉ちゃんのお友達?それとも……恋人さんなのかな」
名探偵の口調には疑問符が付いていない……何の目的で俺に着いてきたのか大体予想がつく。どうやらコイツは素直に話をしにきたって訳ではなさそうだな。声のトーンも急に低くなって、顔つきも年相応ではなく、鋭い顔つきになっている。
快「へぇ〜そうか。だが残念だけど、俺はお前のいう憐姉ちゃんの恋人じゃないぜ……」
自分で言っていて悲しくなる。俺も憐も素直ではないけれど、俺は俺なりにアイツにアピールしているのに、結局この前俺と青子の関係を勘違いしていたから、全く伝わっていなかったことがつい最近判明した。まぁ、他にはアイツが名探偵の事をあんなにも語るから、もしかして奴に惚れているのかと疑った事もあったが、それも俺の杞憂に過ぎなかった。結局の所、全然進展は無い……精々俺とアイツは友達以上恋人未満の関係……って所だろう。
コ「??……じゃあお兄さんは一体……??」
快「友達ってよりかは……長い付き合いの腐れ縁……幼馴染だよ」
結局の所、俺とアイツの関係性を表そうとしたら〝幼馴染〟がしっくりくるだろうな。小さい頃からずっと一緒にいた存在……友達よりは近くて、恋人よりは遠い……そんな関係性だった。
コ「……ふーん、そうなんだ。お兄さん、何だか悲しそうだね」
快「別にそんなことねーよ……それよりオメーの話はそれだけか?それだけなら俺は帰るぜ……」
コ「えっ?憐姉ちゃんの病室に戻らなくて良いの?」
名探偵は不思議そうな顔をして問いかけた。
快「今は別の奴がアイツの面倒見てるからな。俺が居なくとも問題ねーよ……」
コ「ふーん……ならさ!その前に僕に着いてきてくれない?」
快「何でだよ……」
さり気なく抜け出そうとしたが、この小さな探偵はそれすらも許さなかった。
コ「いいじゃない別に……!どうせこのまま帰る予定なら暇でしょ?ならさ、僕に付き合ってよ!」
快「だから何でお前に付き合わなきゃなんねーんだよ……」
やはりなかなか食い下がろうとしない名探偵に対して、段々と俺も痺れを切らしてそうだ。いや駄目だ……俺達はまだ〝初対面〟という設定なのだから……。だが、先に本性を見せてきたのは名探偵の方だった。
コ「いや、俺に付き合ってもらうぜ……何せ俺は神崎じゃなく、オメーに用があってここに来たんだからな……キザな大泥棒さんよぉ……」
快「!!」
どうやら本当に、この俺に辿り着いたようだな……。何と末恐ろしい……ガキの姿は見せかけで、本当の姿は膨大な知識と、どんな違和感をも見逃さない観察力、並外れた推理力持った高校生探偵……俺の仕事の邪魔をする厄介な名探偵。
奴は不敵な笑みを浮かべ、逃げることを許さないように威圧して言い放った。奴は俺を追い詰める為に、わざわざ姿を見せて俺の元にやってきたのだ。
……やはりどう足掻いても逃げられそうにない。それならばと改めて奴と対峙する。そっちがその気なら、俺も覚悟を決めて精一杯やらせてもらうだけだ。
快「……なるほど。込み入った話になりそうだな。それなら場所を変えようぜ……周りに邪魔されないような場所……屋上とかでどうだ?」
名探偵も訝しげな顔をしながら、俺の提案を承諾する。こうして俺達は、病院の廊下から屋上へと場所を移した。
─────── 病院 屋上
カチッ
俺と名探偵は話し合いの為、病院の屋上へとやってきた。俺が屋上に先に入り、名探偵が後から入った。どうやら屋上に入る為の扉の鍵を閉める為に、後から入ったようだ。
……俺を逃がさないようにする為か。まぁ、そうだろうな……俺だって伊達に怪盗をやっていない。何度もコイツを出し抜き、逃亡に成功している。奴が警戒するのも無理も無い。
だが今回は俺も逃げる気はない……恐らく逃げでも無駄だろうからな。覚悟を決め、俺はフェンスに寄りかかりながら、奴に問いかける。
快「それで?……話って何なんだ坊主。言っとくが、初対面のお前に〝キザな大泥棒〟なんて呼ばれる筋合いはねぇぞ……」
まだ俺達は自己紹介すらしていない、言わば今日初めて出会った者同士なのに、決めつけるような物言いはどうなのだろうか。あんまり褒められた言動では無い。
しかし、そこは名探偵……俺の正体に確信を持っているからか、偉そうな物言いを止めなかった。
コ「フン……オメーはさっきから初対面を強調してるみたいだけどな……俺達は初対面じゃねーだろ?今迄に何度か会っているはずだぜ……」
快「会ってねーよ!お前みたいな態度がでかいガキは1回会ったら忘れねーよ……そこまで言うなら、お前は俺の何を知ってんだ?俺の名前とか知ってるのかよ……」
いつまでもデカイ顔でいられるのはムカつくんでな。名探偵が俺についてまだ知りえていないだろう情報についてつついてやる。案の定、名探偵は口を閉じた。……どうやらこの態度を見るに、俺の名前までは分かっていないらしい。
快「そりゃそうだろうな……俺達は今日初めて出会ったんだから。憐の知り合いだか何だか知らねぇが、俺は憐から小学生のガキの話は聞いてないし、俺もお前の名前を知らねぇ」
俺が責めるように言い続けていれば、名探偵の表情が変わる。
コ「確かに俺もお前の名前は知らねぇよ……だが、俺達は何度も対峙している……今のお前ではなく、別の姿のお前の方にな」
快「別の姿って何だよ……俺は今の俺以外に存在しないぜ」
コ「……幾つもの声色と顔を持ち、平成のルパン、月下の奇術師と呼ばれ、警察や俺を何度も欺き逃げ失せる変幻自在、神出鬼没の大泥棒……怪盗キッド……それがお前のもうひとつの姿だ!」
……遂に正体を突きつけられた。正直ここまで早く、この黒羽快斗の俺に辿り着くとは思いもしなかった。飛行機の中の会話では、ここまで確信を持っていなかったはず……一体何故自信に満ち溢れた表情で俺だと確信しているんだ?
あの時コイツに足りていなかったピースは……俺とキッドを繋ぐ確固たる証拠……
(まさか……見つけたのか?俺へと繋がる証拠を……!!)
快「へぇ〜……俺が怪盗キッドね……坊主!お前面白いこと言うな〜!怪盗キッドって、狙った獲物は逃がさない、数々の宝石を思いもよらない方法で盗み出す有名な怪盗だろ?そんな有名人の正体がこの俺だなんて、何でそんな考えになったんだ?」
表情には決して出さない……出したら最後、余計に確信を持たせるだけだ。何があっても常に冷静に、しなやかに対応する。例え正体がバレかけていたとしてもだ。
コ「俺から見ても奴の変装やマジックの腕は一級品、何度も逃げられてその度に悔しい思いもさせられて、色々とムカつく野郎だがな……時折人間らしい部分が見えることがある。自分では隠しきれてると思っているのかもしれねーが、ある人物が関わると途端に別の本性を出すんだ」
快「ほぉ〜……?」
コ「その人物とはお前の幼馴染である神崎憐……神崎がいると、何故かキッドは必要以上に彼女を気にかけたり、護るような不自然な行動をするんだ」
……恋は盲目といった言葉があるように、どれだけ完璧なポーカーフェイスを保っていても、憐が関わるとそれが崩れてしまう。やはりそこは俺も人間なのだと理解させられる。気をつけているつもりだが、憐が関わると変装していても気になってしまい、つい他人よりも気にかけてしまったり、時には護るような行動をしてしまうのは自分自身でも自覚している。
玲於から指摘されることはよくあれど、常人より鋭い観察力を持つ名探偵に指摘されるということは、本当にそうなんだろうと改めて認識する。
……簡単な話、憐が居ても、必要以上に関わらず仕事をこなせばいいだけの話。黒羽快斗としてアイツの傍に居れば良い……と頭では分かっているんだけどな……
コ「今迄の奴の行動から、神崎に気があると確信した俺は、キッドに認めるよう話したが、奴は俺がまだ確固たる証拠がないことを良いことに、飄々とかわしてくる」
快「お前の話を信用するなら、キッドは憐を好いているって事になるが、それでどうしてキッド🟰俺だと結びつくんだよ」
コ「……キッドの特徴で分かっている事実は主に二つある。
一つ、さっきも言ったがマジックの腕がプロ級もしくはそれ以上の実力があること。
二つ、高校生探偵の工藤新一と顔が驚く程に似ていること。キッドが工藤新一に変装した時があったが、その時に中森警部に顔をもみくちゃにされても変装がとけなかったことからも証明される」
そう堂々と話す名探偵は、静かに俺に歩み寄る。
確かにどの要素も俺を表してるな。だけどそれを突きつけるのなら、俺も言わなきゃならないことがある。
快「キッドのマジックの上手さは俺も知ってる。俺もそれなりにマジックをやってるんでね。だがキッドと工藤新一が似ている……ね。
工藤新一のことは知ってるぜ。憐から聞いてっからな。憐のクラスにいた頭のキレる探偵。だけどな変装がとけないなら、それは本人だって思うのが普通だろ……?
何で赤の他人の……しかも小学生のガキのお前に……工藤新一の変装がキッドだと確信が持てるんだよ……!」
……あの時の工藤新一が、怪盗キッドだったと主張するなら、お前は自分の正体を自分自身で認めなければならない……
─── 己の正体が〝工藤新一〟であることを……
快「さっきまでの勢いはどうした……?探偵気取りくん……」
静かに俺の目の前で止まった名探偵。陽の光で眼鏡のレンズが反射してどんな表情をしているのか、いまいち読み取れないが、名探偵はゆっくり俺の顔を見上げた……
コ「……俺がその〝工藤新一〟だからだよ」
己の最大の宿敵 は、覚悟を決めた表情で、自らの正体を明かしたのだった────
憐の病室を出た俺は、静かな病院の廊下を歩く。憐の病室を出た理由は、喉が渇いたから飲み物を買ってくる……という理由で間違ってはいない……でも厳密に言うと少し違う。
(アイツが目覚めることを望んでいたのに……いざ対面すると、何て声をかけたらいいのか分かんねぇ……)
目覚めを望んでいた彼女といざ対面した時にどんな言葉をかければいいのか分からなかったからだ。倒れている姿を見た時は、最悪な想像をしてしまい、生きた心地がしなかったが、幸い憐の症状は、異常がなければ2〜3日で退院出来る程度のもの。それなら他の奴が見ていても心配はない……。青子と玲於も丁度良いタイミングで帰ってきたから、このまま憐を任せ、ただ一人病室を出た。
親友の慰めに幾度かマシになるも、やはり消えない罪悪感、後悔の念……護ると言ったのに、彼女は傷を負い地に伏していたことが重くのしかかる。
もう傷ついて欲しくなかった……涙を流させたくなかった……なのにどうしてアイツばかり危険な目に合うんだ。
─── 俺は好きな女さえ、ろくに護れねぇのかよ
自分の不甲斐なさに腹立ちながら、歩いているとお目当ての自販機にたどり着く。病院の自販機とあって、ジュース、炭酸となる飲み物は少なく大体飲料水か、珈琲缶などが主なラインナップだ。自販機に小銭を入れ、迷うことなく、飲料水のボタンを押す。ガゴンッと音ともに自販機の取り出し口に飲料水が落ちた。取り出す為に、しゃがもうとした瞬間、背後に人の気配を感じ、動きを止める。
少し顔をずらし、背後を確認する。足元しか見えなかったが、見えたのは小さな赤と白のシューズ。……何だか見覚えがある。自分はいつもこのシューズを履いた少年に、苦戦を強いられ追いかけられていた……ような……
そこまで考えて小さく唾を飲み込む。嫌な可能性に思い当たってしまった……いやまさかそんなはず……
「そこのお兄ーさん!ちょっといい……?」
この声は……あぁ、嫌な予感が当たってしまった。己の予想が正しければ、きっと後ろには奴がいる……子ども特有の声色で話しかけているが、俺は奴の本性を知っている。
振り向きたくない……出来ればずっと……出会いたくなどなかった。
過去に怪盗キッドの名前が勝手に使われて、数ある探偵達が招集された晩餐会があった。その時の首謀者の一人、千間婆さんに対して言ったことが、いまだに己の中に強く残っている。
婆さんは、飛んでいるヘリから態と自分が飛び降りることで、逃げ場のなかった俺が逃げられるようにしてくれた。あの時は、毛利探偵に化けていて、探偵達に囲まれて座っていたから、抜け出すのに骨が折れそうだと考えていたが、婆さんのおかげでヘリコプターから脱出出来たのだ。
婆さんを助ける為、ヘリコプターから飛び降りた時、奴は俺に向かって妙な時計で狙っていたと婆さんは言っていた。瞬時に変装をといた俺に対して、躊躇なく攻撃しようとしていた小さな探偵を主に指して婆さんは俺に問いかけた。
千『何者だい……あの子達』
何者か……俺にとって奴は一体どんな存在なのか……出来るならもう二度と関わりたくない厄介な存在……。しかし、
俺が〝平成のアルセーヌ・ルパン〟なら、奴は〝平成のシャーロック・ホームズ〟……対を成す存在だ。
だから俺はこう答えた……
キ『最も出会いたくない……恋人ってところかな』
俺と奴の関係性を表すうってつけの一言だろう。その存在が、今正に俺の背後に立っている。
快「どうした坊主……初対面の俺に何か用か?」
どんな時でも冷静に……〝いつ何時たりともポーカーフェイスを忘れるな〟……強く俺の心に刻まれている親父の教えに倣い、毅然とした態度で振り返る。
やはり俺の思った通り……そこには、いつも俺を追い詰めて捕らえようとする眼鏡のガキ……名探偵が立っていた。
コ「実はね〜僕ここに入院している憐姉ちゃんの知り合いなんだ!お見舞いに行こうとしてたんだけど、その憐姉ちゃんの病室からお兄さんが出てきた所を見かけたから、ちょっと話をしたくて、声をかけたんだ!
お兄さんは、憐姉ちゃんのお友達?それとも……恋人さんなのかな」
名探偵の口調には疑問符が付いていない……何の目的で俺に着いてきたのか大体予想がつく。どうやらコイツは素直に話をしにきたって訳ではなさそうだな。声のトーンも急に低くなって、顔つきも年相応ではなく、鋭い顔つきになっている。
快「へぇ〜そうか。だが残念だけど、俺はお前のいう憐姉ちゃんの恋人じゃないぜ……」
自分で言っていて悲しくなる。俺も憐も素直ではないけれど、俺は俺なりにアイツにアピールしているのに、結局この前俺と青子の関係を勘違いしていたから、全く伝わっていなかったことがつい最近判明した。まぁ、他にはアイツが名探偵の事をあんなにも語るから、もしかして奴に惚れているのかと疑った事もあったが、それも俺の杞憂に過ぎなかった。結局の所、全然進展は無い……精々俺とアイツは友達以上恋人未満の関係……って所だろう。
コ「??……じゃあお兄さんは一体……??」
快「友達ってよりかは……長い付き合いの腐れ縁……幼馴染だよ」
結局の所、俺とアイツの関係性を表そうとしたら〝幼馴染〟がしっくりくるだろうな。小さい頃からずっと一緒にいた存在……友達よりは近くて、恋人よりは遠い……そんな関係性だった。
コ「……ふーん、そうなんだ。お兄さん、何だか悲しそうだね」
快「別にそんなことねーよ……それよりオメーの話はそれだけか?それだけなら俺は帰るぜ……」
コ「えっ?憐姉ちゃんの病室に戻らなくて良いの?」
名探偵は不思議そうな顔をして問いかけた。
快「今は別の奴がアイツの面倒見てるからな。俺が居なくとも問題ねーよ……」
コ「ふーん……ならさ!その前に僕に着いてきてくれない?」
快「何でだよ……」
さり気なく抜け出そうとしたが、この小さな探偵はそれすらも許さなかった。
コ「いいじゃない別に……!どうせこのまま帰る予定なら暇でしょ?ならさ、僕に付き合ってよ!」
快「だから何でお前に付き合わなきゃなんねーんだよ……」
やはりなかなか食い下がろうとしない名探偵に対して、段々と俺も痺れを切らしてそうだ。いや駄目だ……俺達はまだ〝初対面〟という設定なのだから……。だが、先に本性を見せてきたのは名探偵の方だった。
コ「いや、俺に付き合ってもらうぜ……何せ俺は神崎じゃなく、オメーに用があってここに来たんだからな……キザな大泥棒さんよぉ……」
快「!!」
どうやら本当に、この俺に辿り着いたようだな……。何と末恐ろしい……ガキの姿は見せかけで、本当の姿は膨大な知識と、どんな違和感をも見逃さない観察力、並外れた推理力持った高校生探偵……俺の仕事の邪魔をする厄介な名探偵。
奴は不敵な笑みを浮かべ、逃げることを許さないように威圧して言い放った。奴は俺を追い詰める為に、わざわざ姿を見せて俺の元にやってきたのだ。
……やはりどう足掻いても逃げられそうにない。それならばと改めて奴と対峙する。そっちがその気なら、俺も覚悟を決めて精一杯やらせてもらうだけだ。
快「……なるほど。込み入った話になりそうだな。それなら場所を変えようぜ……周りに邪魔されないような場所……屋上とかでどうだ?」
名探偵も訝しげな顔をしながら、俺の提案を承諾する。こうして俺達は、病院の廊下から屋上へと場所を移した。
─────── 病院 屋上
カチッ
俺と名探偵は話し合いの為、病院の屋上へとやってきた。俺が屋上に先に入り、名探偵が後から入った。どうやら屋上に入る為の扉の鍵を閉める為に、後から入ったようだ。
……俺を逃がさないようにする為か。まぁ、そうだろうな……俺だって伊達に怪盗をやっていない。何度もコイツを出し抜き、逃亡に成功している。奴が警戒するのも無理も無い。
だが今回は俺も逃げる気はない……恐らく逃げでも無駄だろうからな。覚悟を決め、俺はフェンスに寄りかかりながら、奴に問いかける。
快「それで?……話って何なんだ坊主。言っとくが、初対面のお前に〝キザな大泥棒〟なんて呼ばれる筋合いはねぇぞ……」
まだ俺達は自己紹介すらしていない、言わば今日初めて出会った者同士なのに、決めつけるような物言いはどうなのだろうか。あんまり褒められた言動では無い。
しかし、そこは名探偵……俺の正体に確信を持っているからか、偉そうな物言いを止めなかった。
コ「フン……オメーはさっきから初対面を強調してるみたいだけどな……俺達は初対面じゃねーだろ?今迄に何度か会っているはずだぜ……」
快「会ってねーよ!お前みたいな態度がでかいガキは1回会ったら忘れねーよ……そこまで言うなら、お前は俺の何を知ってんだ?俺の名前とか知ってるのかよ……」
いつまでもデカイ顔でいられるのはムカつくんでな。名探偵が俺についてまだ知りえていないだろう情報についてつついてやる。案の定、名探偵は口を閉じた。……どうやらこの態度を見るに、俺の名前までは分かっていないらしい。
快「そりゃそうだろうな……俺達は今日初めて出会ったんだから。憐の知り合いだか何だか知らねぇが、俺は憐から小学生のガキの話は聞いてないし、俺もお前の名前を知らねぇ」
俺が責めるように言い続けていれば、名探偵の表情が変わる。
コ「確かに俺もお前の名前は知らねぇよ……だが、俺達は何度も対峙している……今のお前ではなく、別の姿のお前の方にな」
快「別の姿って何だよ……俺は今の俺以外に存在しないぜ」
コ「……幾つもの声色と顔を持ち、平成のルパン、月下の奇術師と呼ばれ、警察や俺を何度も欺き逃げ失せる変幻自在、神出鬼没の大泥棒……怪盗キッド……それがお前のもうひとつの姿だ!」
……遂に正体を突きつけられた。正直ここまで早く、この黒羽快斗の俺に辿り着くとは思いもしなかった。飛行機の中の会話では、ここまで確信を持っていなかったはず……一体何故自信に満ち溢れた表情で俺だと確信しているんだ?
あの時コイツに足りていなかったピースは……俺とキッドを繋ぐ確固たる証拠……
(まさか……見つけたのか?俺へと繋がる証拠を……!!)
快「へぇ〜……俺が怪盗キッドね……坊主!お前面白いこと言うな〜!怪盗キッドって、狙った獲物は逃がさない、数々の宝石を思いもよらない方法で盗み出す有名な怪盗だろ?そんな有名人の正体がこの俺だなんて、何でそんな考えになったんだ?」
表情には決して出さない……出したら最後、余計に確信を持たせるだけだ。何があっても常に冷静に、しなやかに対応する。例え正体がバレかけていたとしてもだ。
コ「俺から見ても奴の変装やマジックの腕は一級品、何度も逃げられてその度に悔しい思いもさせられて、色々とムカつく野郎だがな……時折人間らしい部分が見えることがある。自分では隠しきれてると思っているのかもしれねーが、ある人物が関わると途端に別の本性を出すんだ」
快「ほぉ〜……?」
コ「その人物とはお前の幼馴染である神崎憐……神崎がいると、何故かキッドは必要以上に彼女を気にかけたり、護るような不自然な行動をするんだ」
……恋は盲目といった言葉があるように、どれだけ完璧なポーカーフェイスを保っていても、憐が関わるとそれが崩れてしまう。やはりそこは俺も人間なのだと理解させられる。気をつけているつもりだが、憐が関わると変装していても気になってしまい、つい他人よりも気にかけてしまったり、時には護るような行動をしてしまうのは自分自身でも自覚している。
玲於から指摘されることはよくあれど、常人より鋭い観察力を持つ名探偵に指摘されるということは、本当にそうなんだろうと改めて認識する。
……簡単な話、憐が居ても、必要以上に関わらず仕事をこなせばいいだけの話。黒羽快斗としてアイツの傍に居れば良い……と頭では分かっているんだけどな……
コ「今迄の奴の行動から、神崎に気があると確信した俺は、キッドに認めるよう話したが、奴は俺がまだ確固たる証拠がないことを良いことに、飄々とかわしてくる」
快「お前の話を信用するなら、キッドは憐を好いているって事になるが、それでどうしてキッド🟰俺だと結びつくんだよ」
コ「……キッドの特徴で分かっている事実は主に二つある。
一つ、さっきも言ったがマジックの腕がプロ級もしくはそれ以上の実力があること。
二つ、高校生探偵の工藤新一と顔が驚く程に似ていること。キッドが工藤新一に変装した時があったが、その時に中森警部に顔をもみくちゃにされても変装がとけなかったことからも証明される」
そう堂々と話す名探偵は、静かに俺に歩み寄る。
確かにどの要素も俺を表してるな。だけどそれを突きつけるのなら、俺も言わなきゃならないことがある。
快「キッドのマジックの上手さは俺も知ってる。俺もそれなりにマジックをやってるんでね。だがキッドと工藤新一が似ている……ね。
工藤新一のことは知ってるぜ。憐から聞いてっからな。憐のクラスにいた頭のキレる探偵。だけどな変装がとけないなら、それは本人だって思うのが普通だろ……?
何で赤の他人の……しかも小学生のガキのお前に……工藤新一の変装がキッドだと確信が持てるんだよ……!」
……あの時の工藤新一が、怪盗キッドだったと主張するなら、お前は自分の正体を自分自身で認めなければならない……
─── 己の正体が〝工藤新一〟であることを……
快「さっきまでの勢いはどうした……?探偵気取りくん……」
静かに俺の目の前で止まった名探偵。陽の光で眼鏡のレンズが反射してどんな表情をしているのか、いまいち読み取れないが、名探偵はゆっくり俺の顔を見上げた……
コ「……俺がその〝工藤新一〟だからだよ」
己の最大の
