銀翼の奇術師【完結】
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コ「園子姉ちゃん、憐姉ちゃん、どんな感じ?」
園「全然ダメ!」
貴「所々にライトはあるけど、殆ど真っ暗でよく見えないよ」
私と園子は改めて傍にある飛行機の窓から見下ろした。埠頭にはそれぞれ道に沿って赤と緑のライトが等間隔に置いてあるが、弱々しい光であまり意味をなさない。またそれ以外の光源が無いため、辛うじて道がある事が分かるくらいだ。そんな中の着陸はハードルが高い。
コ「クソッ!!」
蘭「……」
コ「!?」
貴(!?……蘭の手が震えてる……)
操縦桿を握る彼女の手は震えていた。表情も心做しか暗い。
コ「大丈夫?蘭姉ちゃん」
園「どうしたの?蘭」
貴「……」
私は二人のように声がかけられなかった。だって私も同じ立場なら、気丈に振る舞えるかどうか……いや無理だろうな。きっとずっと震えて不安になりながら操縦桿を握るだろう。そう考えると蘭は十分凄いのだ。急に指名されて、無理だと断っていても結局頼まれれば、引き受けてしまうのだから。
蘭「分からない……何だか急に体が……
コナンくん……やっぱり私、無理だよ……」
彼女は普通の女子高校生なのだ。急に飛行機を着陸させろなんて精神的に負担が大きい。……これ以上蘭の精神が心配だ。私が変われるのならどんなに良かっただろう……直接キッドから操縦方法を教えて貰っていたのは蘭だけ……即席の私じゃ話にもならないだろうから。
貴「蘭……」
蘭「ごめんね憐……せっかく着陸する場所の案を教えてくれたのに……」
貴「謝らないで……!十分蘭はやってくれてるよ!」
蘭「ありがとう憐……」
駄目だ……私じゃ蘭の元気を取り戻せない。どうしよう、このままじゃ蘭の心が……
コ「憐姉ちゃん、ちょっと変わって!僕トイレ行ってくる!」
貴「!?……うん、行ってらっしゃい」
園「トイレェ!?」
コナンくんがいきなり私に副操縦士席に座るように言ってきた。園子は驚いてたけど、こんな時だからこそ行ける時に行って欲しい。
コ「すぐ戻るけど、無線が復活するかもしれないから、二人ともヘッドセットつけててね!」
コナンくんは足早に席を抜けてコックピットを抜けていった。私は笑顔で見送ったけど、園子は呆れた様子だった。
園「あっ!ちょっと……ったくこの大変な時にトイレだなんて……これだからガキンチョは……」
貴「まぁまぁ……私がそれまで座ってるんだから大丈夫だよ!」
園「憐!アンタあのガキンチョに甘すぎるわよ!」
貴「そ、そうかな〜……あっ!ヘッドセット付けておかないと……」
ピーーーーッ!!
貴/蘭「「!?」」 園「??」
私達の動きが止まる。ヘッドセットから聞こえた機械音……恐らくキッドが駄目になってしまったと言っていた無線機が復活したのだ。園子はヘッドセットを付けていない為分かっていない様子だった。私は片方を園子に耳に当てさせた。
貴「もしもし!もしもし!……」
無線が繋がったということは、管制塔の通信機が復活したと思い、必死に呼びかけた。しかし、応答した声はある人物の名を口にする。
「蘭!聞こえるか蘭……!」
蘭「……新一!」
貴/園「「!?」」
蘭の名を口にした人物……無線で繋がった相手はまさかの工藤くんだったのだ。
新「今札幌コントロールからかけてんだ……何だか大変なことになってるみてーだな……けど、もう大丈夫だ…」
ジョゼフィーヌの演劇の際に会っているとは言え、またすぐ他の事件で外すことになってしまった工藤くん。工藤くんは恐らく私達の状況を何処からか聞きつけ、わざわざ私達にかけてきたのだ。蘭の事を励ます為だと思うが、工藤くんの励ます声とは、逆に蘭の顔はどんどん俯いていく。
新「落ち着いて俺の言う通りにすれば必ず着陸できる!……絶対守ってやっから、心配すんな!」
蘭「…………」
新「……?聞いてっか蘭?」
園「蘭……返事しなよ……」
(……蘭)
工藤くんが語りかけても蘭は声を出さない。園子が心配して、返事をするよう促した。私はそんな様子を黙って見守っていた。これは二人の問題なのだから……外野が口を挟むことではない。
蘭「何よ……カッコイイこと言っちゃって……分かってるの?私の両腕には、乗客みんなの命がかかってるのよ!?
いい加減なこと言わないでよ!!」
蘭の悲痛な思いが伝わってくる。
蘭「大事な時にいつもいなくて、電話ばっかりじゃない!!たまに帰ってきたってすぐにいなくなっちゃうし……
いつも……いつも……いつも私だけ置いてけぼり……」
蘭の話によると、大体蘭から電話することが多く、しかも留守電になることが殆ど。かと言って工藤くんからの電話は、本人の都合でかかってくる時だけで、頻度はそんな多くは無い。
そしてたまに帰ってくることもあるけど、すぐにまたどこかへ行ってしまう……。きっと蘭は、その度に言いたいことをぐっと堪えて、彼を見送っていたのだ。
蘭「私のこと何だと思ってんのよ!!」
───── 待っていて欲しい……
彼の願いを素直に聞き入れて、泣き言も吐かず、ずっと待ち続けている……。いつかの時、穏やかな顔で待つことが好きだと言っていた蘭……それは彼女の本音なんだろう。でも、この叫びも彼女が溜めていた紛れもない本音……工藤くんには耳が痛いだろうな。それでもちゃんと蘭の想いを受け止めて欲しい……私があの時彼に話したように、もう少し蘭のことを気にかけてくれてもいいのではと思っていた。
……何処か快斗と青子に似ているこの二人が、以前のように仲睦まじく一緒にいる光景が好きだから……二人が幸せになれる結末を、私は望んでいる。
蘭「……私は好きだよ……新一……」
新「!!!」
……この時工藤くんは何を思っただろう。気になるところではあるが、事態は急変する。
蘭「明かり……明かりが見える!」
俯いていた蘭が、声色を明るくして告げた。
蘭「赤い光が帯みたいに動いている!」
新「何っ!?」
蘭の声に私達も窓の方を向き見下ろした。蘭の言う通り、真っ暗だった地面に赤い光が帯状に並んでいた。
(沢山の赤い光……まるで進むべき道を照らしてくれているよう…………
道……、照らす…………っ!!)
私は私で何て愚かなのだろう……彼の思惑に今更気づくなんてね……
新「蘭、神崎!着陸態勢に入るぞ!!」
蘭/園「「!!」」
貴「……」
新「恐らくその光は……」
貴「キッド……」
新「!!……そう、キッドが引き連れてきたパトカーだ!!」
工藤くんも言うのなら間違いないわね。
蘭「じゃあ、キッドが飛び降りたわけって……パトカーの光で滑走路を作る為よ!!」
園「さすが私のキッド様♡ そうだと思ったのよ!!」
彼女達の言葉に、自分の事のように嬉しくなる。
キ『……やはり貴女には敵いませんね……良いでしょう!私は貴女を信じます……そして必ずやこの怪盗が暗い闇を明るく照らし、道を作って見せましょう……!』
貴「ありがとう……キッド」
――― 私を信じてくれて……
私は先程の怪盗とのやり取りを思い返し、静かに呟いた。
園「憐はさ、キッド様がどうして飛び降りたのか分かってたから、私が惚れ直すって言ってたのね!もう!!それならそうと言いなさいよ〜!」
蘭「憐は分かってたの?」
園子が私の背中をバシっと叩き、蘭は疑問の声をあげる。私は背中を押さえながら答える。
貴「ううん、全然分かってなかった……彼はちゃんと教えてくれてたのに、今になってやっと分かったの……。でも分からなくても、私は彼に生きて帰ると伝えたから……!彼が私を信じてやってくれたように、私もキッドを信じていたから!
ちっとも疑ってなんかなかったよ……!」
彼のことを幻滅したとか、信用出来ないといったマイナスな感情は持っていない。
寧ろこんな一般人のお願いを聞いてくれたあの怪盗の為、私の帰りを待っている家族や快斗、青子の為……そしてちゃんと快斗の想いを知る為に……私は絶対に生きて帰るの……。
──────────────────────
闇の中を飛ぶ飛行機から遥か真下にある崎守埠頭。この埠頭の両端にはサイレンを鳴らしたパトカーが1台ずつ並んでいた。パトカーの赤く輝く赤色灯が2列に並んでおり、突如暗闇に赤い道が浮かび上がった。こんなにも多くの警察官が、この埠頭に集まっているのは理由がある。
警察官達はある人物を血眼になって探していた。
中「キッドだ!!キッドを探せ!!必ずこの辺りにいるはずだ!!よく探せ!!」
警視庁捜査二課の中森は他の警察官達にキッドを探すよう大声で指示を出す。また中森だけでなく目暮、羽鳥、高木といった警視庁捜査一課の面々も揃ってその人物の行方を追っていた。
中「おい、いたか!?」
「いません!!」
中「そっちはどうだ?!」
中森は諦めなかった。あのコソ泥は必ず宝石を盗みにやってくると考え、コナン一行がやってくる函館にある牧樹里の別荘へと先に向かっていた。そこで色々あってやっと怪盗を捕まえたものの、結局の所その怪盗は本人ではなく、怪盗に扮した俳優、新庄功だったのだ。しかし、相手は変幻自在の大泥棒。お得意の変装では疑ってかかるも、その途中上空で紙飛行機のような白いハンググライダーが飛んでいる所を発見……本物の怪盗キッドが、いつものように不敵な笑みを浮かべてこちらを見下ろしていたのだ。
その時、やっとこの新庄功が偽物の怪盗に扮していたことを理解する。そして今度こそ空を飛んでいるあの怪盗は、間違いなく本物の怪盗キッドだと確信し、その怪盗キッドを追って、中森は大量の警察官を引き連れて、崎守埠頭にやってきた。
そんな警察官達の様子を、白きマントを靡かせた年若い少年……怪盗キッドは離れた所でその様子を見ていた。彼は警察官達の動きを操り、暗闇で何もなかった所から飛行機を着陸させる即席の滑走路を作り出したのだ。
彼は、己の計画通り事が運んだことに安堵していた。
キ(後は任せたぜ……名探偵)
怪盗と探偵……自分達は決して相容れない存在。相手を如何に
普段は顔も会わせたくない相手だが、しかしその実力は目を見張る物があり、こういった点で信頼が出来る最も敵に回したくない好敵手だ。その名探偵が飛行機にいるならば、必ずや飛行機を無事に着陸させてくれると信じて後を託した。
そして……己の不安を最大限隠し、自分の前で生きて帰ると笑って宣言した憐……
彼女の意志関係なく連れ去ってしまえば、少なくとも彼女の身は無事助かることは確実だった。しかし、誰より彼女の方から自分を信じてくれと強く頼まれたら、断れなかった。断腸の思いで彼女の意思を尊重したのだ。
快(俺はお前を信じている……だから絶対……生きて帰ってこいよ……憐)
彼は自身のポケットから紫水晶を取り出す。それは己の手の中で鈍く光っていた。怪盗キッド基黒羽快斗は、そのアメジストを強く握り締め、遥か上空を飛行している飛行機を見上げていた……想い人が無事帰ってくるよう、ただ静かに見守っていた……。
