銀翼の奇術師【完結】
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快斗side
俺の仕事は早々に無くなった。女優牧樹里の身につけているスターサファイアが偽物と分かった瞬間、すぐにでもずらかっても良かったが
─── この飛行機には憐が乗っている……
それだけで残る理由が出来た。で、実際残って正解だった。飛行機で牧樹里が殺害される事件が起きるわ、機長が毒にやられて飛行機を操縦出来なくなるわでアクシデントの連続だ。
これは憐がというより、あの小さな名探偵が呪われているせいではと最近考えている。俺達といる時はそこまでではないのに、名探偵達と絡んでいると憐は悲運な出来事に巻き込まれていることが圧倒的に多いからだ。名探偵達と一緒に行動する憐が、事件に巻き込まれる可能性も考えて、俺は新庄に変装し飛行機に乗り込んだ後も、そのまま残ったのだ。座席が幾つか空いている所もあったが、何かあった時の為にすぐ対処出来るよう憐の隣に座った。
こうして憐との会話を楽しんだ。他者の視点から見る俺達幼馴染の話をする憐の姿に、つい頬が緩んでしまう。また憐と話す中で、何故コイツが俺と青子がなんて勘違いをしているのか、原因に当たらずとも遠からずの理由が分かった。
恐らく憐の思い込みによって生まれた勘違い。今は他者に変装しているから、訂正することが難しい……だけど、それとなく軌道修正させることは出来る。だから俺は憐に、ちゃんと本人達に確認するよう促した。
(これで勘違いを撤回を出来るチャンスが出来たらいいんだけどな……)
こうして憐達との空の旅は続いてく。色んなアクシデントがあったが、最大のピンチと言えば、俺の宿敵である名探偵が俺の正体に王手をかけようとしていること。
俺の名前は出していなかったから、名前自体はまだ分かっていない。しかし、俺の憐に対する想い、俺と憐の関係性を特定出来ていた。直に辿り着くだろう……。
───〝怪盗キッド〟の正体は、神崎憐の幼馴染の〝黒羽快斗〟であると……
……薄々分かっていた。あの名探偵なら、己の正体がバレるのも時間の問題だと……だが、俺にも切り札はある。もし名探偵が、俺の正体をバラそうもんなら俺にも考えがある。それを実行するかは名探偵の動き次第にはなるがな……。
緊張感のある名探偵との会話は終わり、その後もアクシデントは続いてく。燃料が残り少なく、滑走路が使えなくなり、無線も自動操縦装置 も駄目になった。その度に解決策を考え対処してきた。憐とそばにいた女の子のお陰で、埠頭に着陸することを決めた俺達。だがしかし、この埠頭には欠点があった。明かりがなく、一寸先は闇の場所……一般人の名探偵の彼女が着陸させるには、最悪な条件だ。
今、あの暗闇を照らすことが出来るのは俺だけ……そう考えて俺は名探偵達が止める声も聞かず飛び降りることを決意する。だがそうすると俺はこの飛行機に残れない……。もしこの飛行機が墜落すれば……言葉にもしたくない……!
────── アイツを失うことだけは絶対に……
キ「さぁ私の手を取ってください!貴女一人なら、抱えて飛び降りることが出来ます……!
憐嬢、私は貴女を助けたいのです……!」
貴「な、何を……」
お前が動揺するのは分かる……
でも、正体を知らなくても……
事情が分からなくても……
怪盗キッド のことを理解しようとしたお前を……
何より大切なお前を……
──────〝快斗っ!!〟
キ「頼む!……俺と一緒に来てくれっ……!」
────── 絶対に……失いたくないんだ……!!
憐へと手を伸ばす……俺は彼女の返答を待った。なんと憐は、驚いた顔をした後に……笑ったのだ……
(……は?)
……何で笑ったんだ……?
貴「あはははっ!……貴方の左腕は強打したんでしょ?なら私を抱えて飛ぶことなんか無理だよね〜……面白い冗談でつい笑っちゃった!」
キ「はぁっ?!冗談なわけ……なんでそんな笑っているのですか……?」
冗談な訳ねーだろ!それに凄く不安なんだろ……?彼女の手は震えていた。
貴「ありがとう……赤の他人の私を助けようとしてくれて……。無理やり連れていくことが出来るのにそれをしなかったのは……私の意思を尊重してくれてるんでしょ?
でもちょっとムカつく!……キッド!貴方この飛行機が落ちて、私達皆助からない!って思ってない?」
キ「っ!!」
そんな訳ないだろうと否定出来た筈なのに、否定出来なかった。はっきり断言出来なかったのは、どんな時も常に最悪な状況を想定して動くようにしているからだ。その可能性が少しでもある限り、俺は手放しに希望には縋れない。
貴「管制塔の人達が、少年探偵団の皆が、コナンくんが、蘭や園子が……そして貴方が……色んな人のおかげで、今もこの飛行機は飛んでいる……そして無事に着陸出来るよう頑張っている。きっと大丈夫だよ!」
そんな俺の心の内を分かっているのか、心強くも穏やかに話す憐。そして彼女は続ける。
貴「だからごめんなさい、貴方とは一緒に行けない……でも私は絶対生きて帰って見せる!それで帰ったら、貴方のアドバイス通り幼馴染達に聞いてみようと思うの……本当はどう想っているのか……!」
それは……俺が新庄に変装していた時に、憐にした助言だ。
新『幼少期からずっと一緒に居たとしても、他人であることには変わりない。家族だって結局自分とは違う……他人なんだ。幾ら深い関係だったとしても、本人にしか本当の気持ちは分からないものだよ。
敢えて問おう……君はちゃんと確認したのか?』
貴『そ、それはっ…………』
新『どれだけ一緒にいたって、ソイツの全部が分かる訳じゃない。意外と知らないこともあるもんだぜ?もしかしたら君がそう思っているだけで、実際は違うのかもしれないしな……もし自信が無いなら一度、本人達に聞いてみな』
貴『……はい』
貴「私も皆も絶対死なない……生きて帰るから!お願いキッド……力を貸して!この飛行機が無事に着陸出来るよう、サポートして!」
キ「!!」
あの時と同じ眼だ……キッドが生死不明の時、生きていると信じていた彼女。その時と同じような真摯でひたむきな強さを感じる眼差しでこちらを見つめていた。その様子に、俺も覚悟を決めた。
幼い時に比べて、離れることが多くなった俺達……俺の知らない間にコイツは少しずつ強くなっているのかもしれない……自分の知らない彼女の一面を見れることが嬉しくもあり、少し複雑でもある。だが、今はそうも言ってられない……
貴「キッド!……私は貴方を信じてる!!
だから貴方も……私を信じて……!!」
憐は大胆不敵な笑みと共に手首のミサンガとムーンストーンを強く握った。お前がそこまで言うのなら……信じてやろうじゃねーか!
キ「……やはり貴女には敵いませんね……良いでしょう!私は貴女を信じます……そして必ずやこの怪盗が暗い闇を明るく照らし、道を作って見せましょう……!」
俺は左胸に手を当てて、軽く礼をする。手を当てた左胸には、内ポケットがあり、そこには交換した憐のアメジストが入っている。彼女を護る為に、気合いを入れる為、俺は強めに左胸を押した。そしてようやく俺の調子が戻ったと思った憐は、また嬉しそうに笑ったのだ。
キ「ではお嬢さん……」
貴「キッド……」
キ「いつか必ず……月下の淡い光の下でお会いしましょう……」
貴「うん!……生きてまた会おうね」
互いに再会することを誓い、俺は壁を掴んでいた手を一気に離した……。
──────────────────────
ハッチの方を見遣る。先程までいた白き怪盗は暗い夜へ飛び立っていった。不安で仕方なかったのが、あの怪盗のおかげで、今の自分は強い意思を持つことが出来た。不安を完全に克服出来た訳では無いけど、でも目は覚めた。私はこんな所で終わりたくない……キッドに宣言した通り、生きて帰ってみせる……!
貴「よし!蘭のサポートしなくっちゃ!」
そう思い、後ろを振り返ると園子が驚いた顔で私を見ていた。
貴「どうしたの園子?」
園子に近づいてに聞いてみると、彼女は私の肩をガシッと掴んで喚き始めた。
園「ちょっとちょっとちょっと!!今の何よ?!一体どういうこと……?!」
貴「へっ??」
園子の様子がおかしい……物凄く息が荒くなっている。どう見たって正常ではない……
園「私憐の様子が心配で追いかけてきたの。そしたら新庄さんがキッド様になっちゃってて!そのキッド様と憐は、まるで知り合いみたいに話しているし、しかもキッド様に熱烈に誘われてるし……やっぱりキッド様は憐の事が好きだったのね!あんな想われてて……勝てる訳ないじゃないっ!!」
貴「えっと……園子?大丈夫……?」
俯いていたと思ったらガバッと顔をあげた彼女は、凄く悔しそうな顔をしていた。瞳には涙が見える……泣いてるの?!
園「でもキッド様は、好きなアンタを残して自分一人で飛び降りた訳でしょ?……きっと墜落するのが怖くて逃げたんだわ!ファンだったのにサイテー!」
……なんだ、そういう事か……
貴「園子!!キッドが私の事を好きとか変なこと言わないでよね!キッドはただ、心優しい怪盗なだけよ……それにキッドは他人を見捨てて逃げるなんてこと、絶対しない……!」
園「じゃあ今のはどう説明すんのよ〜……」
貴「大丈夫!彼は助けになってくれるから!
そしたら園子……キッドのこと惚れ直しちゃうかもね〜!」
園「えっ?!」
今私が説明しなくても直に分かる。彼が何故飛び降りたのか……言葉で説明するよりも自分の目で見てもらった方が早い。そしたらきっと園子も、キッドのことを見直すならぬ惚れ直すかも…?
貴「それより早く!!私達も蘭とコナンくんのサポートする為に戻るよ!!」
園「はぁ〜?!それだけじゃ意味分かんないわよ!!ちゃんと説明しなさいよ〜!!」
私はやいやい騒いでいる園子の手を引っ張って、元きた道に戻って行った。
──────────────────────
コ「新庄さんが飛び降りた!?」
私達はコックピットに戻った後、コナンくんに詳細を伝えた。新庄さんはキッドだったこと、キッドは一人飛び降りたことを……
園「そう!!新庄さんキッドだったのよ!!」
コ(それで与圧を下げるスイッチを……)
園「きっと怖かったのね!それで憐だけでも連れ去ろうとしてたのよ!?」
コ「えっ??」
誤解がうまれそうだった為、慌てて説明する。
貴「ちゃんと断ったからね!?寧ろ念を押しといたのよ!私達が無事着陸できるようにサポートしてって!」
コ(……アイツ、神崎だけでも助けようとしたのか)
コ「そうだったんだ」
弁明みたいのようになってしまったが、コナンくんにはちゃんと伝わったみたいで安心。一息ついた。
園「でも結局一人で飛び降りたのよ!!墜落するのが怖くて逃げたんだわ!!ファンだったのにサイテー!!」
コ「園子姉ちゃん、まだ墜落すると決まった訳じゃないよ 💧」
蘭「でもコナンくん……これからどうしよう」
園子の発言は置いといて、私は蘭の方を見た。元気いっぱいな蘭が不安そうな面持ちで、コナンくんに聞いていた。
(蘭……)
コ「こうなったら僕達の手で降ろすしかないよ蘭姉ちゃん」
蘭「……」
園「大丈夫だって蘭!!」
そんな蘭のことを察して園子が励ますように明るく声をかけていた。底抜けに明るい園子の存在はきっと蘭にとって救いになっていると思う。
園「三人寄れば真珠の知恵って言うじゃない!
何とかなるって!!」
……ちょっと惜しい。
コ(オイオイ……それを言うなら)
蘭「それを言うなら〝文殊の知恵〟でしょ?」
貴「それにここにいるのは4人なんだけど……」
園「そうだっけ?まぁ細かいことは良いのよ!」
貴「え〜〜……」
蘭「ふふふ……!」
結果的に園子のおかげで蘭は少しではあるが、笑顔を見せていた。流石園子ね……私達の存在が少しでも蘭の気が楽になってくれればいいな……。
コ「とにかく埠頭の周りを旋回して、様子を見てみよう!!」
コナンくんの指示を聞いて、私と園子は埠頭周りの様子を探る為、近くの窓から見下ろした。
俺の仕事は早々に無くなった。女優牧樹里の身につけているスターサファイアが偽物と分かった瞬間、すぐにでもずらかっても良かったが
─── この飛行機には憐が乗っている……
それだけで残る理由が出来た。で、実際残って正解だった。飛行機で牧樹里が殺害される事件が起きるわ、機長が毒にやられて飛行機を操縦出来なくなるわでアクシデントの連続だ。
これは憐がというより、あの小さな名探偵が呪われているせいではと最近考えている。俺達といる時はそこまでではないのに、名探偵達と絡んでいると憐は悲運な出来事に巻き込まれていることが圧倒的に多いからだ。名探偵達と一緒に行動する憐が、事件に巻き込まれる可能性も考えて、俺は新庄に変装し飛行機に乗り込んだ後も、そのまま残ったのだ。座席が幾つか空いている所もあったが、何かあった時の為にすぐ対処出来るよう憐の隣に座った。
こうして憐との会話を楽しんだ。他者の視点から見る俺達幼馴染の話をする憐の姿に、つい頬が緩んでしまう。また憐と話す中で、何故コイツが俺と青子がなんて勘違いをしているのか、原因に当たらずとも遠からずの理由が分かった。
恐らく憐の思い込みによって生まれた勘違い。今は他者に変装しているから、訂正することが難しい……だけど、それとなく軌道修正させることは出来る。だから俺は憐に、ちゃんと本人達に確認するよう促した。
(これで勘違いを撤回を出来るチャンスが出来たらいいんだけどな……)
こうして憐達との空の旅は続いてく。色んなアクシデントがあったが、最大のピンチと言えば、俺の宿敵である名探偵が俺の正体に王手をかけようとしていること。
俺の名前は出していなかったから、名前自体はまだ分かっていない。しかし、俺の憐に対する想い、俺と憐の関係性を特定出来ていた。直に辿り着くだろう……。
───〝怪盗キッド〟の正体は、神崎憐の幼馴染の〝黒羽快斗〟であると……
……薄々分かっていた。あの名探偵なら、己の正体がバレるのも時間の問題だと……だが、俺にも切り札はある。もし名探偵が、俺の正体をバラそうもんなら俺にも考えがある。それを実行するかは名探偵の動き次第にはなるがな……。
緊張感のある名探偵との会話は終わり、その後もアクシデントは続いてく。燃料が残り少なく、滑走路が使えなくなり、無線も
今、あの暗闇を照らすことが出来るのは俺だけ……そう考えて俺は名探偵達が止める声も聞かず飛び降りることを決意する。だがそうすると俺はこの飛行機に残れない……。もしこの飛行機が墜落すれば……言葉にもしたくない……!
────── アイツを失うことだけは絶対に……
キ「さぁ私の手を取ってください!貴女一人なら、抱えて飛び降りることが出来ます……!
憐嬢、私は貴女を助けたいのです……!」
貴「な、何を……」
お前が動揺するのは分かる……
でも、正体を知らなくても……
事情が分からなくても……
何より大切なお前を……
──────〝快斗っ!!〟
キ「頼む!……俺と一緒に来てくれっ……!」
────── 絶対に……失いたくないんだ……!!
憐へと手を伸ばす……俺は彼女の返答を待った。なんと憐は、驚いた顔をした後に……笑ったのだ……
(……は?)
……何で笑ったんだ……?
貴「あはははっ!……貴方の左腕は強打したんでしょ?なら私を抱えて飛ぶことなんか無理だよね〜……面白い冗談でつい笑っちゃった!」
キ「はぁっ?!冗談なわけ……なんでそんな笑っているのですか……?」
冗談な訳ねーだろ!それに凄く不安なんだろ……?彼女の手は震えていた。
貴「ありがとう……赤の他人の私を助けようとしてくれて……。無理やり連れていくことが出来るのにそれをしなかったのは……私の意思を尊重してくれてるんでしょ?
でもちょっとムカつく!……キッド!貴方この飛行機が落ちて、私達皆助からない!って思ってない?」
キ「っ!!」
そんな訳ないだろうと否定出来た筈なのに、否定出来なかった。はっきり断言出来なかったのは、どんな時も常に最悪な状況を想定して動くようにしているからだ。その可能性が少しでもある限り、俺は手放しに希望には縋れない。
貴「管制塔の人達が、少年探偵団の皆が、コナンくんが、蘭や園子が……そして貴方が……色んな人のおかげで、今もこの飛行機は飛んでいる……そして無事に着陸出来るよう頑張っている。きっと大丈夫だよ!」
そんな俺の心の内を分かっているのか、心強くも穏やかに話す憐。そして彼女は続ける。
貴「だからごめんなさい、貴方とは一緒に行けない……でも私は絶対生きて帰って見せる!それで帰ったら、貴方のアドバイス通り幼馴染達に聞いてみようと思うの……本当はどう想っているのか……!」
それは……俺が新庄に変装していた時に、憐にした助言だ。
新『幼少期からずっと一緒に居たとしても、他人であることには変わりない。家族だって結局自分とは違う……他人なんだ。幾ら深い関係だったとしても、本人にしか本当の気持ちは分からないものだよ。
敢えて問おう……君はちゃんと確認したのか?』
貴『そ、それはっ…………』
新『どれだけ一緒にいたって、ソイツの全部が分かる訳じゃない。意外と知らないこともあるもんだぜ?もしかしたら君がそう思っているだけで、実際は違うのかもしれないしな……もし自信が無いなら一度、本人達に聞いてみな』
貴『……はい』
貴「私も皆も絶対死なない……生きて帰るから!お願いキッド……力を貸して!この飛行機が無事に着陸出来るよう、サポートして!」
キ「!!」
あの時と同じ眼だ……キッドが生死不明の時、生きていると信じていた彼女。その時と同じような真摯でひたむきな強さを感じる眼差しでこちらを見つめていた。その様子に、俺も覚悟を決めた。
幼い時に比べて、離れることが多くなった俺達……俺の知らない間にコイツは少しずつ強くなっているのかもしれない……自分の知らない彼女の一面を見れることが嬉しくもあり、少し複雑でもある。だが、今はそうも言ってられない……
貴「キッド!……私は貴方を信じてる!!
だから貴方も……私を信じて……!!」
憐は大胆不敵な笑みと共に手首のミサンガとムーンストーンを強く握った。お前がそこまで言うのなら……信じてやろうじゃねーか!
キ「……やはり貴女には敵いませんね……良いでしょう!私は貴女を信じます……そして必ずやこの怪盗が暗い闇を明るく照らし、道を作って見せましょう……!」
俺は左胸に手を当てて、軽く礼をする。手を当てた左胸には、内ポケットがあり、そこには交換した憐のアメジストが入っている。彼女を護る為に、気合いを入れる為、俺は強めに左胸を押した。そしてようやく俺の調子が戻ったと思った憐は、また嬉しそうに笑ったのだ。
キ「ではお嬢さん……」
貴「キッド……」
キ「いつか必ず……月下の淡い光の下でお会いしましょう……」
貴「うん!……生きてまた会おうね」
互いに再会することを誓い、俺は壁を掴んでいた手を一気に離した……。
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ハッチの方を見遣る。先程までいた白き怪盗は暗い夜へ飛び立っていった。不安で仕方なかったのが、あの怪盗のおかげで、今の自分は強い意思を持つことが出来た。不安を完全に克服出来た訳では無いけど、でも目は覚めた。私はこんな所で終わりたくない……キッドに宣言した通り、生きて帰ってみせる……!
貴「よし!蘭のサポートしなくっちゃ!」
そう思い、後ろを振り返ると園子が驚いた顔で私を見ていた。
貴「どうしたの園子?」
園子に近づいてに聞いてみると、彼女は私の肩をガシッと掴んで喚き始めた。
園「ちょっとちょっとちょっと!!今の何よ?!一体どういうこと……?!」
貴「へっ??」
園子の様子がおかしい……物凄く息が荒くなっている。どう見たって正常ではない……
園「私憐の様子が心配で追いかけてきたの。そしたら新庄さんがキッド様になっちゃってて!そのキッド様と憐は、まるで知り合いみたいに話しているし、しかもキッド様に熱烈に誘われてるし……やっぱりキッド様は憐の事が好きだったのね!あんな想われてて……勝てる訳ないじゃないっ!!」
貴「えっと……園子?大丈夫……?」
俯いていたと思ったらガバッと顔をあげた彼女は、凄く悔しそうな顔をしていた。瞳には涙が見える……泣いてるの?!
園「でもキッド様は、好きなアンタを残して自分一人で飛び降りた訳でしょ?……きっと墜落するのが怖くて逃げたんだわ!ファンだったのにサイテー!」
……なんだ、そういう事か……
貴「園子!!キッドが私の事を好きとか変なこと言わないでよね!キッドはただ、心優しい怪盗なだけよ……それにキッドは他人を見捨てて逃げるなんてこと、絶対しない……!」
園「じゃあ今のはどう説明すんのよ〜……」
貴「大丈夫!彼は助けになってくれるから!
そしたら園子……キッドのこと惚れ直しちゃうかもね〜!」
園「えっ?!」
今私が説明しなくても直に分かる。彼が何故飛び降りたのか……言葉で説明するよりも自分の目で見てもらった方が早い。そしたらきっと園子も、キッドのことを見直すならぬ惚れ直すかも…?
貴「それより早く!!私達も蘭とコナンくんのサポートする為に戻るよ!!」
園「はぁ〜?!それだけじゃ意味分かんないわよ!!ちゃんと説明しなさいよ〜!!」
私はやいやい騒いでいる園子の手を引っ張って、元きた道に戻って行った。
──────────────────────
コ「新庄さんが飛び降りた!?」
私達はコックピットに戻った後、コナンくんに詳細を伝えた。新庄さんはキッドだったこと、キッドは一人飛び降りたことを……
園「そう!!新庄さんキッドだったのよ!!」
コ(それで与圧を下げるスイッチを……)
園「きっと怖かったのね!それで憐だけでも連れ去ろうとしてたのよ!?」
コ「えっ??」
誤解がうまれそうだった為、慌てて説明する。
貴「ちゃんと断ったからね!?寧ろ念を押しといたのよ!私達が無事着陸できるようにサポートしてって!」
コ(……アイツ、神崎だけでも助けようとしたのか)
コ「そうだったんだ」
弁明みたいのようになってしまったが、コナンくんにはちゃんと伝わったみたいで安心。一息ついた。
園「でも結局一人で飛び降りたのよ!!墜落するのが怖くて逃げたんだわ!!ファンだったのにサイテー!!」
コ「園子姉ちゃん、まだ墜落すると決まった訳じゃないよ 💧」
蘭「でもコナンくん……これからどうしよう」
園子の発言は置いといて、私は蘭の方を見た。元気いっぱいな蘭が不安そうな面持ちで、コナンくんに聞いていた。
(蘭……)
コ「こうなったら僕達の手で降ろすしかないよ蘭姉ちゃん」
蘭「……」
園「大丈夫だって蘭!!」
そんな蘭のことを察して園子が励ますように明るく声をかけていた。底抜けに明るい園子の存在はきっと蘭にとって救いになっていると思う。
園「三人寄れば真珠の知恵って言うじゃない!
何とかなるって!!」
……ちょっと惜しい。
コ(オイオイ……それを言うなら)
蘭「それを言うなら〝文殊の知恵〟でしょ?」
貴「それにここにいるのは4人なんだけど……」
園「そうだっけ?まぁ細かいことは良いのよ!」
貴「え〜〜……」
蘭「ふふふ……!」
結果的に園子のおかげで蘭は少しではあるが、笑顔を見せていた。流石園子ね……私達の存在が少しでも蘭の気が楽になってくれればいいな……。
コ「とにかく埠頭の周りを旋回して、様子を見てみよう!!」
コナンくんの指示を聞いて、私と園子は埠頭周りの様子を探る為、近くの窓から見下ろした。
