銀翼の奇術師【完結】
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コ「まずい!!ねぇ!!さっき機長さん達に持っていったお菓子、食べないように言って!!」
「……え?」
コ「早くしないと機長さん達が危ないんだ!!」
コナンくんが血相を変えて、CAさんと共にコックピットに入っていく。小五郎さんも後を追って入っていった。しかし暫く待っていた後、急に機体が傾き不安定な状態になった。
元「うわ〜〜〜〜っ!!」
バランスが保てず、元太くんは尻もちついてしまっていた。元太くんの他にもそれぞれ皆この機体の不安定さに必死に耐えていた。
貴「うっ……あっ!!」
私も立って座席にしがみつきながら耐えていたけど、耐えられず手を離してしまう。その反動で立っていられず不自然な格好のまま、座席に倒れそうになる。
(当たる……!)
このまま行けば顔に座席の角が当たる。尖っている訳では無いけど、それなりの痛みがあるかな。その痛みを覚悟して、目を瞑って倒れた。
ポスッ
待っていた痛みはなく、少し柔らかい壁のようなものに顔が当たっている。疑問に思って目を開けると、新庄さんの顔が真上にあった。
新「大丈夫かい?」
貴「新庄……さん……?」
新庄さんは優しく微笑んでいる。どうして新庄さんがこんなに近くに??
新「君が倒れそうになっていたから、咄嗟に身体を挟ませて支えたんだよ。君の可愛い顔に傷がついちゃ勿体ないからな」
どうやら新庄さんは私が倒れ込むのを見て、咄嗟に座席と私の間に体を滑らせて抱きとめてくれていた。……だからこんな抱き寄せられているような格好だったんだ……
貴「っ!!……あ、あの!ありがとうございます!!もう大丈夫ですから!!は、離してください……」
助けて貰ってなんだけど、この格好は非常に不味い。不可抗力とはいえ、これじゃまるで私が新庄さんに抱きついているみたいで、凄く恥ずかしい!新庄さんの恋人の牧さんにとてつもなく申し訳無いので、新庄さんに早々にお礼を言って離れようとするが、私を見下ろしている新庄さんは、更に笑みを深くした。
新「大幅に機体が傾いたってことは、どうやらコックピットで何かあったようだな。もう少し君とこうしていたかったが、残念。僕は様子を見てくるから、大人しく座ってるんだよ」
そう言って支えてくれていた私の体を離すと、コナンくんと小五郎さんが入っていったコックピットへと向かった。
新庄さんが居なくなった後、私は力が抜けたように座席に座り込む。
(本当に何なのっ?!良い人だけど、新庄さんを恋人に持つ人って色々大変そう……)
新庄さんの行動にドギマギしていると、自分に視線が集まっていることを感じ取った。ハッと顔をあげれば蘭と園子と目が合う。蘭は困ったように笑っていて、園子は面白くなさそうにこちらを見ていた。
園「……何でアンタだけラブコメやってんのよ。緊急事態なのよ!」
ラブコメって……そんな風に思われてたなんて心外だ。今のやり取りは違うでしょ!
貴「なっ!ラブコメって……そんな訳ないでしょ!」
私の反論にも、ものともしていない園子。そこに仲裁役の蘭が間に入る。
蘭「まぁまぁ園子!憐は態と倒れた訳じゃないんだから……」
ありがとう蘭……私の味方でいてくれて……私は、密かに蘭の対応に感動していた。
園「んなもん分かってるわよ!僻みよ僻み!あ〜〜もう!新庄さんと言い、キッド様と言い何でアンタの周りには良い男が寄ってくるのよ!」
貴「ちょっと?!?!」
園子の言い方には語弊しかない内容にすかさず声を上げる。何故今まで関係なかったキッドの名まで出てくるのだろうか。
園「アンタにはあの幼馴染君がいるんだから!これ以上よそ見してんじゃないわよ!」
貴「なっ!……だ、だからアイツは違うって言ってるでしょ!」
私達のやり取りは、はたから見たらなんて不毛なやり取りだろうか。もういい加減にやめてしまいたい。アイツは関係ないしキッドはともかく、新庄さんは牧さんの恋人なんだから!新庄さんは誰に対しても優しいんだよ!これが普通なんだよもう!
蘭「(さっきまで他の男の人も見なきゃいない……なんて言ってたのは園子なのにね💧)
2人ともそこまでよ!ほら、新庄さんも言っていた通り、大人しく座ってよう?」
蘭の一声に流石に罰が悪かった私達は、大人しく座席に座ることにした。
するとコックピットに入っていった小五郎さんと新庄さんが、機長さん達を連れて
蘭達がコナンくんに機長さん達が苦しんでいる理由を聞き出している。どうやら牧さんが亡くなる前に、コックピットに入った。その時に牧さんへの挨拶として機長さん達は、指に口付けをしていた。その時指に付着していた毒を摂取してしまったようだ。哀ちゃんの言う通り、牧さんへの挨拶を指に口付けではなく握手であれば、機長さん達も苦しまずに済んだかもしれない……。
お医者さんの話によれば、摂取した毒は微量だったから命に別状はないけど、とても操縦出来る状態ではないとか……
(……ちょっと待って。機長さん達がここにいるなら、今誰がこの飛行機を操縦しているの……?)
この異常事態で、誰がこの飛行機を……
先程機長さん達を戻ってきた人物がいない事を考えて、私はコックピットの方へ向かった。
新「というわけで、僕が操縦席に座ります。副操縦席には……そう、君に座ってもらおうか……」
コ「えっ!?」
……何で戻ってこないのかと思ったら新庄さんが操縦する展開になっていた。どういうこと……?ただの役者さんじゃないの?
新「さっきの操縦桿さばきは、なかなかのモンだったからね……」
コ「…………わぁい!!」
しかも副操縦席には新庄さんから指名されたコナンくんが座ることになった。コナンくんは1回黙った後に、元気な声を出して喜んでいた。……状況が掴めない。新庄さんがさっき言っていた操縦桿さばきって……さっき機体が傾いた時に持ち直したのってコナンくんが操縦したからなの?!
コ「僕、ゲームセンターで何度も操縦したことあるんだ!!」
ゲームセンターのゲームで何度かやっただけで、実際の飛行機の操縦って出来るの……?相変わらずコナンくんって凄いな……快斗と工藤くん、そしてここにも小さな天才くんがいた。
歩「コナンくんずるーい!!」
元「俺も座りてぇ!!」
天才とはいえコナンくんは小学生……まだ小さな子どもだ。子ども1人だけ特別扱いのようにしたら、当然他の子達も黙ってはいられない。コナンくんだけ操縦席に座れることに、羨ましがっていた。
新「これは遊びじゃないんだ!!」
歩/光/元「「「!!」」」
しかし新庄さんは譲らなかった。ゲームセンターのゲームとは違う……大勢の人間の命を乗せた大きな飛行機。一歩間違えれば、飛行機は墜落し多くの人の命が失われる。そんなリスクの高いことを、小さな子どもにはさせられない。
新「それにもう操縦してもらう必要はない……ILSでも着陸する時は、いくつかの操作が必要で、それを彼に手伝ってもらうだけだよ!」
(何だ……コナンくんが操縦するんじゃないんだ……ちょっと安心)
普通の子じゃなくても、小さい子に飛行機の操縦を任せるなんてこと、手放しに応援出来なかったから、不安だったけど、新庄さんの補助で座るのなら安心だ。
小「だからって何もそんなガキを……」
新「とにかく僕に任せてください!!さぁ、あと15分ほどで着陸です。皆さん、
結局私達は新庄さんとコナンくんを残して
貴「……っ」
何か気の利いた言葉をかけられたら良かったけど、かえってプレッシャーになっても申し訳ないからと、開きかけた口を閉ざす。こんな自分が情けなくて視線を下に逸らそうとするが、その前に新庄さんと視線が交わる。
新「……」
新庄さんは何も言わず、微笑んで立っていた。まるで私が言いたかったことも全て分かっているように小さく頷いた。
何も言わなくても伝わっている。新庄さんの笑みは、先程私を安心させようとしていた時の笑い方と似ている。
私の思いは彼に伝わっている。それなら無理に何か言う必要もないと感じ、私もコックピットを後にした。
蘭「あれ?お父さん、お母さん眠っちゃったみたい……」
小「なにぃ?」
眠りの小五郎さんみたいに、まるで眠っているような体勢で今回の事件の推理を話してくれた英理さんは、本当に眠っているようだった。
「皆さん、急いで席についてシートベルトをしっかり締めてください!」
CAさんのアナウンスに従って、立っていた人達は座席に付き、座っていた人達と同様シートベルトを締めた。
蘭「お父さん、お母さんの隣に座ってあげて!!
小「……ったくしょうがねぇなぁ……」
小五郎さんは蘭の指示で、英理さんは隣に座り自分のと英理さんのシートベルトを締める。
私も座席に座りシートベルトを締める。
貴「…………」
さっきまで隣にいた人は今、飛行機の操縦席に座っている。この飛行機が無事に着陸出来るかどうかは、彼ら次第になる。
(……何事もなく飛行機が着陸出来ますように)
私達はただ無事に、家に帰れることを祈るしか出来ないのだから……。
