銀翼の奇術師
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亡くなった牧さんの遺体にシーツが被さる。飛行機の中で知っている人が死ぬなんて予想出来ただろうか。小五郎さん達は、何故牧さんが亡くなったのか、原因は直前に食べていたチョコレートの中に毒物が入っていたのではないかと推理している。
でも蘭のお母さんが言っていた、小五郎さんも食べていたのにも関わらず何故牧さんだけのチョコに毒物が入っていたのか。私の考えでは全く検討もつかない……ただひとつ言えることは……
(しばらくチョコレートを食べるのは控えようかな)
この事件も軽くトラウマになっていた。
小「現場を保存する為に皆さん、後ろの席に移動してください!……それと前のトイレは使用禁止にします……」
小五郎さんの案内に素直にみんな従った。前に移動しても隣の席は変わらず新庄さんが座った。そこから進展もなく、ただ時間だけが過ぎていく。ふと窓の外を見ると、真っ暗な夜空は白んでいて、真っ赤に燃える太陽が昇っているのが見えた。
(……こんな状況じゃなければ、この景色も素直に楽しめたのに……)
流石に殺人事件が起きた後で、綺麗な景色を楽しむことは出来ない。そんな中、小五郎さんが大きな声をあげて立ち上がる。
どうやら今回の事件の犯人が分かったようだ。亡くなった牧さんが、この飛行機に乗り込んでから2種類の物しか口にしていない。その2種類とは亡くなる直前まで食べていたチョコレートと田島さんがあげていたビタミン剤。
チョコレートに関しては、小五郎さんも一緒に食べているのに何ともないことから、除外されてビタミン剤を渡した田島さんが犯人という訳だ。
しかし、当然だけど田島さんは言いがかりだと反論する。牧さんを殺す動機がないのだと主張していた。しかし、その主張に意義を唱えたのが、牧さんのヘアメイクを担当していた酒井さんだ。
酒井さんは、牧さんと一緒にいる時間が長かったから彼女を取り巻く人間関係についてよく分かっているとのこと。
伴さんは演出家でありながらも実際ほとんどの演出は牧さんがやっていたこと。その牧さんを女優として育てていたのにも関わらず、最終的には彼女に逆らうことが出来なくなっていた。
そんな伴さんを夫人の田島さんがきつく詰っている所を何度も見かけていること。
ナポレオン役の成沢さんは、元々牧さんと夫婦関係だったが、牧さんに望まれて協議離婚をするも、牧さんに対して未練があり、何度も復縁を迫っていたが断られていたこと。
そして牧さんの恋人だった新庄さんも、牧さんに飽きられていたらしく、他の若い男性がいないか酒井さんに聞いていたこと。
隣に座る新庄さんを思わず見るが、新庄さんは変わらず微笑を浮かべたままだった。
マネージャーの矢口さんは、牧さんに性格が暗いことや気が利かないことを、他の人の前で言われて恥をかかされていたこと。
そして酒井さん自身も牧さんに振り回されて、他の仕事をしたくても邪魔されて、嬉しい反面恨んでいたこと。それぞれの事情を赤裸々と話してくれた。
(誰もが牧さんを殺してもおかしくは無い理由……)
牧さんがそんなにも色んな人から恨まれていたなんて、……あんな素晴らしい演技をしていた人なのに、少しショックだった。
暗い空気の中、元太くんが美味しそうにお菓子を食べているのが見えた。光彦くんはそれを咎めていたが、元太くんは素直に感想を述べて楽しんでいた。その様子に、私は声を出さないよう笑った。確かに光彦くんの言う通り、呑気に食べている場合ではないのかもしれないけれど、ずっと気が張っていては疲れてしまう。その姿を見て、そっと息をつく。今の私には、とても有難く思えたのだ。
そんな時、コナンくんの声が機内に響き渡った。
コ「あれれぇ?おじさん、あれなんだろう?」
小「なんだ?なんにもねーぞ?」
声をかけられた小五郎さんは、コナンくんが指さした天井を見上げる。
蘭「えっ?」
園「何?」
歩/光/元「「「??」」」
田「えっ?」
貴「?」
小五郎さんだけでなく、蘭や園子等他の皆、私も小五郎さんにならって天井を見上げる。
新(どうやら始まるみてーだな……)
新庄さんだけは、意味深に瞳を閉じて笑みを浮かべたままだったが、天井を見上げていた私は気づかなかった。
コ「僕の見間違いだったみたい……トイレ行ってくる!!」
しかし、コナンくんは見間違いだと告げてトイレに向かって行ってしまった。
(……なんだ。頭の良いコナンくんだから、何か分かったと思ったのに……)
期待して高揚しかけた気分を落ち着かせて、皆の様子を伺う。
英「貴方、もったいぶるのはそれぐらいにしてそろそろ真相を話したら?」
すると意外な人物が口火を切る。何と小五郎さんの奥さんであり、蘭のお母さんでもある弁護士の英里さんが、話し始めたのだ。どうやら今の言葉を聞くと、英里さんと小五郎さんは今回の事件の犯人が分かったみたいなのだ。
英「まぁ、眠りの小五郎が出るほどの事件じゃないわね……いいわ、私が真相を話しましょう……」
しかし、小五郎さんが出る幕ではないと、代わりに英里さんが今回の事件について全容を語るようだった。英里さんの姿を見ると、小五郎さんや園子が推理を披露する時のように、まるで眠ったように今回の事件の真相を話し始めたのだ。
蘭「……え?…嘘…」
園「やったぁ!!今日はおばさまの推理ショーだ!!」
あまりない事なのか、蘭は驚いていて、園子は感激している。私は蘭ほど頻繁に事件に遭遇しないから、英里さんが推理を披露することが珍しいことなのか分からなかったけれど、この緊張感を終わらせてくれるなら誰でも良かった。
今回の事件の犯人は誰なのか……何故牧さんを殺害したのか……。法廷に立ってからいまだ負け無しの〝法曹界の女王〟の異名を持つ英里さんの、華麗なる推理劇が幕を開けたのだった。
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結論から言うと犯人は意外な人物だった。
英「樹里さんを死に至らしめた犯人……
それは酒井なつきさん!!貴方よ!!」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
英里さんが話し始めた今回の事件の真相、毒を持った手口、その全てが意外な方法で、話を聞くまで想像が出来なかったけれど、英里さんの隙のない理論を聞けば、納得出来た。
毒が入っていたのは、酒井さんがメイクに使ったファンデーション。牧さんは、気分が悪くなった時や耳抜きをする時に、顔に触れていた。当然顔に塗られていたファンデーションを触った事により、牧さんの指には毒が付着する。そして、その触った指でチョコレートを食べる、その時に牧さんは癖でチョコレートを触った指を舐めてしまった。毒の着いた指を舐めた事で、牧さんは亡くなってしまったのだという。
しかし、そうなってくるとあの時の光景を思い出して、私は途端に怖くなり顔が青ざめる。
(楽屋に入った時、化粧品をいじろうとしていた歩美ちゃんと哀ちゃんを、酒井さんは叱っていたけど……もしかして、あの化粧品のファンデーションに毒が塗られていたってこと?)
それを知らずに、あの子達が開けて触れてしまっていたらと思うと、有り得たかもしれない未来に、怖くなって俯く。
やはりあのファンデーションに毒が入っていたのは事実なようで、現に英里さんも歩美ちゃんと哀ちゃんが、酒井さんに叱られたのは、毒を仕込む殺人の当日に子供達が悪戯でもして、万が一にもそれを触れないように釘を刺したと話している。
当たっていた事実に尚更心震えるも、真実を知りたくて事の行く末を見守る。
酒「じゃ、じゃあちゃんとした証拠を見せてみなさいよ!」
犯人だと疑われた酒井さんは、激昂して反論する。しかし、予想出来ていたのか英里さんは淡々とその訳を話し始める。
英「毒を混ぜたファンデーションの瓶とスポンジ……賢い貴方はその2つを機内に持ち込んでいないはず……かと言って空港内のゴミ入れに捨てて来るのは危険……そう、私なら送るでしょうね……自宅宛に郵便で……」
酒「!!」
酒井さんの瞳が大きく見開く。図星のようだった。
英「まぁ、空港の郵便局に連絡して、郵便物を調べて貰えば分かること……さぁ、教えてくれるかしら?貴方の自宅の住所を……」
この言葉により、言い逃れができないと思った酒井んは反論せず項垂れた。そして静かに話し出す。何故牧さんを殺害したのかを……。
酒「あの女は私のメイクとしてのプライドを……」
ペタっと座り込む酒井さん。牧さんを殺害した理由……それは、ハリウッドでメイクとして活躍する酒井さんの夢を、牧さんが裏から手を回し潰したから。
(本当に辛かったんだろうな……諦めたように笑って話していた酒井さんが、最後には泣きながら激昂して話していたから。牧さんがやった事は、恨まれてもしょうがない事だと思う。
でも、どんな理由であれ、人が人の命を奪ってはいけないんだよ……)
ましてや自分の夢だったメイク道具を使って、牧さんを殺害している。メイクを夢だと語っている人がやっていい事じゃない、自ら夢を汚してしまっているように感じた。
小「メイクとしてのプライドだ?!笑わせんじゃねぇ!!」
小五郎さんのキツイ言葉が酒井さんにぶつかる。
小「それならどうしてメイク道具を凶器に使ったんだ?」
酒「!!」
小「今のアンタにプライドなんて言葉を使う資格はねェ!!」
小五郎さんの言う通り、メイクとしてプライドがあるなら、大切な商売道具を殺人の道具に使わないよ。
酒「……私……私……」
阿「アンタはまだ若い……罪を償って、もう一度やり直すんじゃ……」
小五郎さんと阿笠さんの言葉が響いたのか、酒井さんは後悔するように啜り泣いた。
今回の事件も無事解決した……そう思った私は静かに肩を撫で下ろした時、酷い焦りを見せたコナンくんの一声によって、事態はより深刻な状況へと変わっていくことになる。
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