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貴「頑張りなさいよ……!その気持ちが届くことを願ってる。万が一駄目だったとしても、その時は、姉さんが慰めてあげるから安心しなさい」
激励の気持ちを込めて、私は玲於を青子の元に送り出した。弟は覚悟を決めた顔をしていて、青薔薇の小さな花束を持っていた為、これから青子に自分の気持ちを伝えるんだなと彼のやりたいことが分かってしまった。
それならばと弟の背中を叩き青子の元へと送り出す。そして私は結果を見届けることなく、家へと帰る。夜遅くに帰宅しても母には青子の誕生パーティーのことは話してあるので、問題は無い。
お風呂に入りながら、今日のことを振り返る。正確に言うと昨日のことだけど……
貴「玲於、上手くいったかな……?」
結局私はあの場に残らなかったから、あの後どうなっているのか分からない。玲於の恋は無事実ったのか、それとも青子は玲於の気持ちを受け入れなかったのか……もしくは、途中で帰ってきた快斗と鉢合わせして三角関係になったりして……まぁ、予想はつかないけどでもこれで、私達の関係性が少しだけ変わるような気がする。変わることが良いことなのか、悪いことなのか……分からないけれど、ずっと願ってるのは、あの3人がそれぞれ幸せな結末を迎えることだ……。
お風呂から上がり、歯を磨き、寝る準備さえ整えば、あとはそのまま自分のベッドにダイブ。そしてあっという間に睡魔に襲われ……
と思ったら鳴り出した私の携帯電話。その音にすっかり目が覚める。……だってこの着信音は他とは違うものだから。なんでよ……なんで私にかけてくるのよ……
少し時間を置いてから着信ボタンを押す。
貴「もしもし……」
快「お〜憐か〜!どうだった?俺と玲於のスペシャルマジックショーは〜!!」
予想通りの人物の声だった。容疑者No.1……声を聞く限り、私と違ってテンションが高い。何故こんなにも温度差があるのだろう。
貴「そうね〜最高だったよ!……って素直にいう訳ないでしょ!!このバ快斗!!」
快「うわっ!!っと……(やっぱりキレてんな)」
貴「青子から聞いたわよ!学校でみんなの前で、そのマジックショーをやると宣言したそうじゃない……なのに23時過ぎても連絡ひとつ寄越さないなんて何を考えてるの!?」
快「そ、それは……」
貴「あれだけ期待させておいて、来ないなんて……友達みんなが祝いに来てくれても、アンタ達が来ないと、悲しいに決まってるじゃないっ!青子ずっと待ってたのよ!!……文句ひとつ零さずに……」
快斗が何か言いかけていたのも気にせず私は思いの丈を彼にぶつける。今日のことを弁解するのであれば、もう夜遅い為明日でも良いのに、わざわざこの時間に電話かけてきたということは、少なからず彼は今回のことで悪いと思っているから、電話をかけているのだと理解している。それに青子の方に先に電話かけていると思うから、その青子にめちゃくちゃ怒られてるに決まってる……分かっているけれど、私の怒りは収まらない。
貴「分かってるのよ……あれだけの大掛かりな仕掛けなら、準備だけでも手間がかかってることは……!でも、それならどうして……どうして連絡ひとつ寄越さなかったのよっ……!来れないのなら尚更どうして……」
私が怒るなんて筋違いだ……でも、大切にしている人が悲しむ姿を傍で見ていた私はとても許せなかった。感情が昂って詰めるような言い方になっていた。涙も溢れ出てしまう。今日は駄目だ、彼に酷く当たってしまう。本当は彼に伝えたいこと、他にいっぱいあったのにな……快斗と玲於のマジックショー、素晴らしかったよって……私も素直に伝えたいのに……こんな状態で言われても、きっとアイツだって気分は良くない。
貴「ごめん……今のっ……私は冷静じゃないから……もう切る」
これ以上快斗に当たり散らしたくなくて、感情のままに電話を切ろうとすると、「待てよ!」と声が入り、私の手は止まった。
快「なんで憐が謝るんだよ。……今回は俺のせいなんだから、お前が謝る必要ないだろ。悪かったな…青子とオメーを泣かせちまって……」
貴「っ!!」
電話越しの会話だけで、顔を見ていないのになんで分かるのよ。……幼馴染が優秀なのも考えものね。
貴「……ちゃんと青子に謝ったの?」
快「あぁ、夜遅い時間だったから電話で謝ったけど許してくれたぜ」
貴「そう……それならいいの。全くあの子を泣かせないでよね……」
やっと自分の気持ちが落ち着いた。快斗とも冷静に話すことが出来そう。そう思ったのに、意外にも今度は彼の方が声を荒らげて言葉を繋げた。
快「良くねぇよ!……青子が悲しめば、アイツを大切に思っているオメーだって悲しむことを分かっていたのにな……」
貴「!!」
快「だからお前が謝る必要はねーよ……ごめんな、憐……」
……電話越しでも分かる。反省している声色に、何だかおかしくて笑みがこぼれ始める。
貴「……ふふっ!快斗が素直に謝るなんてね……」
快「なっ!人がせっかく……まぁ、でも今回は俺の責任だからな……大人しく笑われてやるよ……」
快斗は潔く諦めたようだ。今回のこと、彼なりに本当に悪いと思っているんだろう。声色で反省しているのも分かったし、青子が許しているのなら、私が怒る理由はない。だから素直に言ってあげた。
貴「……最高だったよ」
快「えっ」
貴「快斗と玲於のマジックショー……とっても綺麗だったよ!」
反省ムードはもう終わり。今回の2人のマジックショーの感想、やっと伝えられた。顔は見えていないけど、今頃電話越しの快斗は鼻高々になっているのだろうと予想が着く。
快「……ケケッ!だろ〜!青子の誕生パーティーに相応しく盛大なショーにしたんだぜ!」
ほらやっぱり……お調子者の彼の事だから褒めれば自信満々な態度でかえってくると予想していたから。でも全然気にならない……だってあんなに悲しんでいた青子が一瞬で笑顔に変わっていたもの……本当に素晴らしかった。私も感動してまともな言葉が出なかったもの。
快「それに……アイツに頼まれたんだ。鳶っきりのマジックショーで、忘れられない夜にして欲しいってな」
貴「それって!!……」
快「アイツの想いが青子に届くよう、上手くいくよう……俺も気合い入れて準備したからな!」
そっか……玲於は快斗に協力を仰いでいたんだ。玲於に頼まれた快斗は、玲於の頼みとあらば頑張ってくれたんだろうけど、青子の為でもあるから俄然気合い入っただろうな。その時の2人の状況が容易に思いつく。
貴「……快斗はさ、玲於の告白……上手くいったと思う?」
私が快斗に尋ねる時って、肯定して欲しくて敢えて彼に聞いているんだと最近気づいた。それに玲於の依頼を快斗が手を抜くはずがないもの……きっと……
快「当たり前だろ?……何たって俺と玲於が青子の為に、時間をかけて用意した仕掛けだぜ!上手くいくしかない…!」
ここまで自信満々だと、こちらも清々しいね。盗一さんと同じく、年若い天才手品師がそこまで言うのなら、間違いはない。
貴「うん、そうね。だって快斗は、天才手品師なんだもんね……いつか、盗一さんをも超える……みんなを笑顔にする
快「憐!……」
いつも素直になれなくて、喧嘩ばかりしちゃう私にしては頑張った方だと思う。だってちゃんと伝えなきゃ駄目だもんね……
快「あ、あのな憐……!玲於がやったから俺も便乗ーって訳じゃねーけど……俺も、お前に言いたいことがあってな……」
貴「快斗はさ……青子の為に……頑張ったんだもんね……玲於の為にも、上手くいって……欲しいな……」
快「へっ?……お、おい憐?」
この際だから言っちゃえと、快斗の言うことを聞かず自分の話したいことを伝えた。この時には首がコクコクと揺れ、船を漕ぐ。もう深夜過ぎてるからか、瞼が重い。
今日は青子の誕生パーティーで祝ってはしゃいで楽しかったけど、飾り付けや部屋の片付けも頑張ったからからか、身体は凄く疲れていることを忘れていた。それなのに寝ようと思ったら、快斗からかの電話が来て、つい話に夢中になっちゃって……気づいたらこんな時間。いい加減寝たいって身体が訴えかけている。
快「───!…───!!」
快斗が何か必死に話しているけど、眠過ぎて頭に全く入ってこない。ごめん快斗……なんて……言ってる……の………──────
それから私の記憶は次の日の朝まで全くなかった。
──────────────────────
快斗side
快「あ、あのな憐……!玲於がやったから俺も便乗ーって訳じゃねーけど……俺もオメーに言いたいことがあってな……」
気づいたら口から言葉が勝手に出ていた。決して親友の一世一代の告白に、自分も乗っかったとか、アイツの素直な賞賛の言葉に浮かれて出てしまったとか、そんな浅い理由では無い……いや気づいたらなんて口走っていた時点で、説得力の欠片もないか。
とにかくこの時の俺は、憐に自分の想いを伝えようとしていた。もうここまで来たら引き下がる訳にはいかない。俺は息を飲んで、憐からの返答を待った。
貴「快斗はさ……青子の為に……頑張ったんだもんね……玲於の為にも、上手くいって……欲しいな……」
………………!?
快「おい、憐……?憐!」
貴「……スー……スー……」
呼びかけても電話口から聞こえるのは、穏やかな寝息だけ……どうやら憐は、自分の言いたいことだけを言い残し、寝入ってしまったようだ。
快「おいおい嘘だろ……!!なんでこのタイミングなんだよ!」
確かに……もう夜も遅く、普段こんな時間まで起きない憐にとっては、時間的にも起き続けるのは厳しいと思っていた。しかしだからと言って、これはあんまりだろう……あの緊張感は何だったんだ。
快「はぁ……マジかよ……」
バカデカいため息が出る。……これはあれか、罰が当たったのだろうか。親友と違って雰囲気や場所を考えず、想いのまま電話で伝えようとしたのがいけなかったのか……どちらにせよ、本人が聞いていなければ伝える意味もない。俺は少し残念に思いながらも、電話を切ろうとする。
しかし、寝入った筈の電話口から微かに声が聞こえてその手を止めた。
貴「……えへへへ〜……かいとぉ……」
快「!!……」
それから俺の記憶は次の朝まで全くなかった。
玲「つまり……僕に便乗して、姉さんに告白しようとしたけど、伝える前に姉さんは寝てしまって、起こそうとしたけど、その可愛さに起こせず気づいたら朝になってたって話でいいかな……」
快「バーロー!!……全然ちげーよ!!」
次の日快斗と玲於は、昨夜の各々の結果について話し合った。
玲於は、無事青子に想いを伝えることが出来て、付き合ったと快斗に報告した。頬を赤く染めながらも幸せそうな玲於の表情に、協力した快斗は満足気に答え、祝福する。大体自分がここまで協力したのだ……上手くいかないわけが無い。自信を持ってそう玲於に伝えた所、玲於も笑いながら納得した様子。
今度は玲於が快斗に昨夜の事について尋ねた。聞かれたことに驚く快斗に、玲於は物知り顔で笑った。
憐から話を聞いたのか、そう予想つけて玲於に尋ねるも笑みを深くするだけで何も答えなかった。これはこっちから話さないことには、話さないと考えた快斗は、照れくさそうに少しぼかして話す。……玲於に影響されて自分も憐に告白しようとしたなんて、馬鹿正直に言えなかったのだ。
その結果がこれである……
(結構ぼかしたのに、何で分かんだよ!恐ろしい奴だな……💧)
玲於の鋭さに密かに戦く快斗だった。ちなみに、昨日青子の誕生パーティーに無事遅れた二人は次の日に揃って憐に叱られた。憐曰く
貴『いい!いくら青子の誕生日プレゼントにマジックショーを用意していて、それが凄く大掛かりだったとしても、二人揃って来ないのはありえないの。せめて連絡くらいくれても良かったんじゃない?いつまで経っても来ないし、連絡もないから青子も私も心配したのよ!』
快/玲『『すみませんでした……!』』
次の日の朝、学校は休みだが、いつもの習慣で青子と快斗は神崎家へと向かった。そこではいつものように玲於が優しく出迎えると同時に、背後に仁王立ちで待っていた憐の姿があった。
即座に後ずさる快斗だが、いつの間にか背後に回っていた青子に捕まり、憐の部屋に直行。朝食前で空腹なのに、二人揃って正座させられ、昨日のことについて説教が始まる。
心配をかけたことを申し訳ないと思っている快斗と玲於は、素直に憐の説教を受け入れた。
その後、二人の誠心誠意の謝罪のもと憐の許しを貰った。そして玲於と青子は改めて憐と快斗の前に立ち、お互いに想いを伝え合い、お付き合いが始まったことを告げる。その様子に憐と快斗は互いに顔を見合わせて、盛大に祝福した。
その後憐が青子を連れて、外に出ていく。聞けば、「ショッピングに行くのよ〜じゃあね」と手を振って出かけて行った。男二人残された玲於と快斗は、これ幸いと昨夜のことを話し合っていたのだ。
玲「……ありがとう快くん。僕のお願いを聞いてくれて……青ちゃん、すっごく喜んでくれてた。大きな瞳を輝かせて、泣いていたけど……でも最後には笑ってくれてた!君のおかげだよ!本当にありがとう……」
玲於は改めて今回の功労者、幼馴染の黒羽快斗にお礼を伝えた。幸せそうなその様子に快斗はこう答えた。
快「確かに俺は玲於に頼まれて、あのマジックショーをやった……けど本命は一世一代の告白だった。お前が頑張った結果が今に繋がってんだ。それだけでじゅうぶん……お前らの笑顔が依頼の報酬だよ」
快斗は腕を組んで格好つけて言い放つ。このような彼の言動を調子に乗るなと諌める者がいる。それは彼の双子の姉だったり、幼馴染の少女だったり、時には玲於自身が止めることもあるのだが、今回は思う存分誇って欲しいと思っている。
玲「快くん……君ってやつは最高の相棒だね!」
―――君のおかげで……僕はこうして笑っていられるのだから……