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玲於side
快くんとの通信を切断した僕は、これから青ちゃんの家へ向かうべく準備を進めていた。その準備も終わり、後は快くんを連れて青ちゃんの誕生パーティーに参加するだけなのだが……
玲「……おかしい。もうとっくに快くんから連絡が来てもいいはずなのに……全く来ない。どうしたんだろう……まさか、快くんの身に何かあったんじゃ……?!」
考えすぎかな……今だ鳴らない携帯を手に持ち、僕はただひたすらに連絡がくることを静かに祈った。
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青「今日はみんな色々ありがとうね……楽しかったよ!」
青子のパーティーは、終始楽しい雰囲気で終えた。……楽しかったけど、ひとつ気になることと言えば……
(全く……青子の話じゃ一応快斗と玲於はこのパーティーに参加するって話じゃなかった?それが何で2人とも来ないのよ……!)
参加すると聞いていた快斗と玲於が、青子の誕生パーティーに来なかったからだ。
青子大好き男で人を喜ばせることが何より好きな快斗と、青子命で真面目な玲於が、大切な人の誕生パーティーをドタキャンするなんてことあるのだろうか……いや、今更考えた所で何になるの。今は2人の事じゃない……青子のことよ。
恵「快斗くんと玲於くんが来れば、もっと盛り上がったのにね……💧」
恵子にまで言われる始末……はぁ……どうしてこうなったの。
青「いいのよあんな奴ら……なんか、用があるって言ってたし……」
(本当は良くない癖に……)
恵子達に心配かけまいと気丈に振る舞う青子の姿を見て、益々私は心配になった。
恵「じゃーねー青子!憐もまた一緒に遊びましょうね!」
「また明日ねー!」
貴「……うん!ま、またね……」
青「おやすみー!」
私達は帰る恵子達を見送りに家の外まで出る。みんなの姿が見えなくなるまで、見送った後青子と2人で、青子の自宅に戻る。
パタン……
青「……」
青子は扉に持たれかかり、俯いていた。
貴「……パーティー、楽しかったね!」
青「……うん」
貴「あ、青子の言った通りみんな良い子達だったから、臆せず話せたよ!」
青「……うん」
何とかいつもの明るい青子に戻って欲しくて、なるべく明るい話題に持っていきたかったけど、上手くはいなかった。
(そりゃあそうよ……来るって言ってたのに玲於だけじゃなく快斗も来なかったものね。悲しいに決まってるよ……)
悲しそうな青子の姿に私まで落ち込み出している。……いや、私まで落ち込んでてどうする!今1番辛いのは青子なんだから……!
貴「と、とりあえず……私は部屋を片しちゃうね……!このままの状況じゃ銀三さんがびっくりしちゃうから!」
青「青子も……」
貴「何言ってるの……!今日のパーティーの主役なんだから、ゆっくりしてて……」
青子は責任感がある子だから、絶対手伝うって言ってくれるけど、私は部屋で休むよう促す。意気消沈の彼女に頼むことは出来なかった。
(……せめて青子の為に、自分の出来ることをしよう……!)
元気づけられなくても、後で青子が苦労しないように私はパーティー会場である部屋を片付けることにした。この時既に、時間は23時半をまわっていた。
貴「……」
青「……」
あれから私は、気を引き締めて部屋を片付けた。そのおかげで、散らかっていた部屋も、前の部屋と変わりない所まで綺麗になった。その間青子は私のお願いを聞いてくれて、椅子に座り、机に伏せていた。……結局あの後声をかけられないまま、片付けだけが終わってしまった。
パタン
私は片付けたゴミ袋を持って廊下に出る。
貴「はぁ……ったくもう……快斗と玲於は何やってんのよ。もうすぐで青子の誕生日が終わっちゃうのに……」
青子に聞こえないように小声で愚痴を零す。今回のパーティー……青子も楽しみにしてたけど、私だってアイツが来るって知って少しだけ……ドキドキして待ってたのにな……
貴「もうすぐで青子の誕生日も終わる。銀三さんも帰ってこないし、私まで帰ったら青子が1人になっちゃうよね……誕生日の夜を1人で過ごすというのは寂しいと思うから……うん、私だけでも最後まで青子の傍にいよう」
そう決めた私は再度部屋の中へと入る。俯いている青子の前に静かに座った。椅子を引いた音で青子が顔を上げる。みんなの前では笑っていたけど、今の彼女はとても悲しそうだ。
貴「改めて青子……誕生日おめでとう!……私はずっと傍にいるからね!」
青「……」
貴「身内では無いけど、もう長い付き合いになるじゃない私達って……小さい頃から傍にいた家族みたいなものなんだから……。私の前で我慢しなくていいの。悲しいならちゃんと悲しんでいいの……ね?」
そう彼女の手に触れると、青子は瞳に涙を浮かべて「ありがとう……っ……憐っ……」と静かに泣き始めた。……私まで貰い泣きそうになってしまう。
(こんな大切な日に、私の親友を泣かせるなんて……………あの2人、絶対許さない……!)
トゥルルルル……トゥルルル……
貴「!!」
静寂の中で、青子の携帯が鳴り響く。青子が出ようと動くけど、手で制した私が代わりに着信ボタンを押した。表示されている名前は予想通りの人物……容疑者No.2
貴「もしもし。どうしたのこんな夜遅い時間にかけてきて……非常識だと思わない?……愚弟」
玲「その声は姉さん?!どうして?!青ちゃんの携帯にかけたのに……」
貴「そんなことはどうでもいい……何で今更かけてきたのよ……」
玲「ごめん、姉さん!後で全部説明する!だから今は青ちゃんに変わって!!」
貴「アンタね……」
玲「早く!!もうすぐ青ちゃんの誕生日が終わっちゃうから!!」
貴「……」
玲「頼むよ姉さん……」
いつもスマートで何でもそつなくこなす玲於が、
いつにもなく焦っていた。そして小さい子供のようなか細く泣きそうな声をあげる。
全く青子の方が泣きたいでしょうに……はぁ……
貴「……これ以上悲しませたら承知しないから」
玲「……うん、ごめん。ありがとう姉さん」
ため息をついた私は、携帯を持ち主へと返す。
貴「青子、玲於から……」
青「……」
貴「どうしても変わって欲しいだって……もし嫌なら私がこのまま切るけど、どうする……?」
例え玲於に変われと言われようとも本来のこの携帯の持ち主は青子である。電話に応えるか応えないか、主導権は彼女が握っている。
青「ううん、青子出るよ。ありがとう憐」
青子が力なく手を差し出す。私は青子に携帯を返した。ここからは青子と玲於の問題。私は青子から離れて、大人しく青子の後ろ姿を見守った。
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玲於side
玲「もしもし、僕だよ青ちゃん……」
姉さんに変わってもらい、本来僕が話したかった彼女へ呼びかける。
青「……玲於」
少し時間をあけて返事をする青ちゃん。表情を見なくても分かる……天真爛漫な声ではなく、少し掠れて鼻声になっていた。
大事な人が生まれた大切な日に、泣かせてしまった事実は重くのしかかる。
玲「ごめん青ちゃん……パーティーに行くって言ったのに間に合わなくて……」
沈んでいても仕方ない……1番辛いのは青ちゃんなんだから誠意を示して謝るしかない。
青「ど……どうして……どうして来てくんなかったのよ!!青子、ず──────っと待ってたのよ!!玲於!!約束したじゃない!絶対行くって……言ったじゃない!!」
耳元から聞こえる彼女の悲痛な叫び。本当にそうだ……僕から絶対行くと宣言したのに、ドタキャンしてしまった。期待させて、落とすなんて最低だ。それに青ちゃんは、文字通りずっと待ってくれてたんだと思うと余計に心が痛い。
青「それなのに……それなのに……嫌い!快斗もっ……玲於もっ……大嫌いっ!!」
玲「っ……」
思わず携帯を耳から離してしまいたくなるような大きな声。それは彼女の悲しさの表れ。裏切られた悲しみ、憤りが全て彼女の言葉となって僕の胸に突き刺さる。突き刺さった言葉によって実際僕の胸はズキッと痛んだ。
遅れてしまったことを言い訳するつもりは無い……彼女からの非難は全て受け入れるつもりだ。だけど、まだ終わっていない……僕は哀しませたかったわけじゃない。君を喜ばせたくて……この日を忘れられない夜にしたくて……快くんに手伝ってもらったんだ。このまま哀しい思い出で終わらせたくない……!
玲「自分でも最低だって思う。自分でした約束すら守れず、君を悲しませて……本当にごめんなさい。でも、もしまだ僕にチャンスをくれるなら、窓の外を見て欲しい……」
大切な君を悲しませてしまった僕だけど、この気持ちに嘘偽りは無い。見られなくても自業自得だから、彼女を恨むなんてことはしない。だけど、もし許されるなら……
青「……窓の外?」
彼女の電話からカーテンを開けるような音が聞こえた。よし、今だ……!
僕は快くんから預かった機械のスイッチを押す。そうすると遠くのビルにメッセージが浮かび上がった。
青「えっ?」
聞こえてきた驚くような彼女の声。今頃青ちゃんもビルに浮かび上がったメッセージを見ている頃だろう。それと同時に僕は、快くん家を出て、青ちゃんの待つ家へと向かった。
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青「……窓の外?」
青子達のやり取りを後ろの方で静かに眺めていた。今回ばかりは私は完全に青子の味方だ。あの叫びが青子の本心。察するに今日学校で交わした約束なんだろう……絶対行くと告げておいて来ないなんて……最低よ。どんなことがあろうと彼女の味方をするつもり……と考えていた所で、青子が携帯を持ちながら窓の方へと歩く。
貴「??」
不思議に思っていると、青子がカーテンを開けた。すると窓の向こうに真っ暗なビルに灯りがつく。その灯りはあるメッセージを示していた。
青「え?」
貴「ハッピーバースデー……青ちゃん……?」
何で普通のビルの灯りがそんなメッセージを??と思っていたら、そのビルの上の夜空に白い筋のものが上がっていくのが見えた。
ヒュ〜……ドーン!
そしてその光は弾け、夜空に大輪の花を咲かせた。一発だけではなく、多くの花火が打ち上げられていた。その花火の音で、目を覚ました住民達が次々と明かりを付ける。
青「わぁ〜♡」
(これってまさか……)
先程のメッセージとド派手な演出の花火。そしてこのタイミングで窓の外を見るよう指示を出したとなれば……間違いない……こんなことをするのはあの2人しかいない。
(……なんだ、ちゃんと用意してたんじゃない。快斗と玲於ったらもう……)
正直こんな夜中に勝手に花火あげてしまうなんて近所迷惑だろうけど、街中の光と相まって、街全体が綺麗にライトアップされているみたいだった。これが快斗と玲於から青子に贈る誕生日プレゼントだったんだろう……。
貴「良かったね……青子っ!」
青「うん!」
しばらく私と青子は、この素敵な夜景を楽しんだ。
──────────────────────
玲於side
ヒュー……ドーン!
青ちゃん家に向かっている途中に見えた花火。僕が頼み、快くんが仕掛けを作り作動させてくれたおかげで打ち上げられたものだ。僕達の計画では、ビルの明かりを使いメッセージを作り、更に花火を打ち上げるというもの。そうすると、音に目覚めた付近の住民達が何事かと暗くしていた部屋を明るくさせる。続々と色んな所から明かりがつき、街全体が光輝いていることだろう。
そうこうしているうちに青ちゃんの家に着いた。そこから窓の方を見ると、青ちゃんが夜景に見蕩れている姿が見えた。
(笑ってくれている……良かった)
涙に濡れている彼女はもういなかった。その事に心底安心した。一息ついていると、同じく家の中から夜景を見ていた姉さんが僕に気づく。僕を見るなり、すぐさまその場から動いた。
あー……恐らくお説教タイムだな。でもこれは僕が悪いので、大人しく待っていると、青ちゃん家の扉が開かれる。
ガチャ
扉を開けた姉さんが、顔を顰めながら僕に入るように促した。
……ガチャン
僕は大人しく一緒に入れてもらう。姉さんは鋭い眼光で僕を睨みつけていた。怖い……!分かっていたけど、凄く怒っている。久々に見たな……快くん風に言うならガチギレモードの姉さんが、小声で一言放った。
貴「……何か言うことは?」
玲「……本当に申し訳ございませんでした」
僕は言い訳も反抗もせず素直に謝る……土下座スタイルで。古来日本から伝わる最上級の謝罪って土下座だから。僕の土下座スタイルに姉さんは、顰め面から驚いた顔になっていた。
貴「土下座するってことは、本当に申し訳なく思っているのね……まぁ、今回は私じゃなくて青子だから許すかどうかは青子次第よ」
そう言った姉さんは僕を立たせる。
貴「……来たのは玲於だけだったみたいね」
玲「快くんは!……えっと……」
貴「分かってるわよ、あの夜景を作る為に準備してたんでしょ。今来ないのはその仕掛けを片付けているって所でしょ?」
本当は違うけど、まぁ快くんが不在の理由も良い感じに理解してくれて助かった。
貴「でも青子を悲しませた事に変わりないからね、お説教は快斗が揃ってからするとして……さぁ、行ってきなさい…!アンタの大好きな〝青ちゃん〟がお待ちかねよ」
姉さんに背中を強く押される。
貴「頑張りなさいよ……!その気持ちが届くことを願ってる。万が一駄目だったとしても、その時は、姉さんが慰めてあげるから安心しなさい」
姉さんは僕がこれからすることを分かっているみたいに、応援してくれる。
互いに似てない所が多くて、本当に双子なのか問われることが多々ある。僕自身も偶に僕と姉さんは本当に双子なんだろうかと疑問に思うことがある。そっくりな部分は殆どないし、双子あるあるのシンクロして言葉が揃ったりということも少ない。しかし、ふと片割れの気持ちや、今何をしたいのか分かる時がある。条件なんて分からない……本当に突然に分かる時があるのだ。
……だけど今回は分かりやすかったかな。僕の手に持ったある物を見て、僕のやりたいことを察した姉は、快く僕を送り出してくれた。姉の応援を勇気の糧にし、静かに廊下から部屋の中へと入る。中にいた彼女は今だ光り輝いている街を見ていた。その背中に声をかける。
玲「青ちゃん!……」
青「!!……玲於っ!」
彼女が振り返った。やっと視線が交わる……本当なら、パーティーに途中参加して、最高の夜景をプレゼントした後、僕の気持ちを彼女に伝える予定だったが、現実はそう上手くはいかなかった。
涙に濡れた後がある。泣かせてしまったのは事実……まずは彼女にちゃんと謝罪が必要だ。
玲「本当にごめんね青ちゃん……僕は君にパーティーに絶対行くと伝えたのに、間に合わなくて……」
青「……そうだよ!青子ずっと待ってたのに……馬鹿!玲於の馬鹿!」
彼女の罵倒も正当な主張だ。素直に受け入れる。瞳に涙が溜まりそうな青ちゃんに、僕は続けて言葉を伝える。
玲「うん、そうだね。君の言う通り、僕は馬鹿な男だよ。大切な約束すら守れない最低な男だ。本当ならこれを君の誕生日の日に渡そうと思っていたのに、渡すことが間に合わず過ぎてしまった。
だけど……馬鹿で最低で、肝心な時に何も出来ない情けない男だけど、それでも君を想う気持ちは誰にも負けない。青ちゃん、改めて誕生日おめでとう……!僕は君のことが大好きだっ!」
僕は右手に持っていた小さな花束を彼女の目の前に差し出す。彼女は大きな瞳を更に大きくさせて驚いていた。
青「玲於……」
玲「分かってる!……君が誰を好きなのか。ずっと小さい頃から見てきたから知ってる!僕じゃないことも分かってる……だけど、いい加減知って欲しかった!君は意識してなかったと思うけど、本当に僕は君のことしか見ていなかったから!……例え君が快くんを好きでも、伝えたかったんだ!」
青ちゃんは怒涛に話す僕の勢いに驚いて言葉を出せずにいた。だけど僕も必死で彼女を見ているようで見ていなかった。断られるのは分かっていたから、せめて断られる前に、後悔のないよう伝えたかったのだ。でもこれで言いたいことは全て伝えた、後悔はない。
玲「……僕の想いを聞いてくれてありがとう。覚悟は出来ているから……君と快くんの仲を応援しているから……キッパリと振って欲しい」
後悔のないよう言い切った。スッキリとした表情で返答を待つ僕に、青ちゃんは……怒ったような表情で声を荒らげた。
青「青子の気持ちをちゃんと分かってない癖に、自分の言いたいことだけ言って、勝手に諦めようとして……玲於は自分勝手すぎる!」
玲「!!」
青ちゃんは、瞳に涙をためながら僕に強く訴えかけた。その内容に驚いた僕は差し出していた花束を持つ腕を下げる。……彼女の気持ちを分かっていない……?
青「……確かに小さい頃から快斗が好きだった……いつも楽しませてくれるアイツが好きだったよ!でも心の中で、何か足りないような感覚があった。最初は分からなかったけど、だんだん気づいたの……青子が好きな相手は違うんじゃないかって……」
玲「!!……」
何だこの展開……僕だけがこの関係性を1番理解していると思っていた……なのに、予想していた展開とは違った方向へと進む。
青「やっと気づいたの……ずっと傍で青子を守ってくれていたのは玲於なんだって……!本当に求めていた好きな人は貴方だったんだって分かったの……ありがとう、玲於!いつも青子を気にかけてくれて!青子も大好きだよ……!」
青ちゃんは、僕が差し出した小さい花束を受け取ってくれた。こんなことって……有り得るのだろうか……?
玲「……本当に?本当に僕のことを……?僕は青ちゃんのことを恋愛の意味で好き……なんだけど、青ちゃんの〝好き〟は僕と同じなの??」
……少し盲目的に青ちゃんのことを信じている僕でも、おいそれと彼女の想いをすぐに信用出来なかった。僕の問に、信用されていないと感じた彼女は、途端に表情が歪み、今にも涙が零れ落ちそうになっていた。
青「青子を疑うなんて酷い!……ちゃんと玲於のことを!男の子として、れ、恋愛の意味で……好きなんだってばー!!」
玲「!!」
声と息を荒らげて伝えてくれた青ちゃんに、僕はもう何も言えなかった。その代わりに僕の瞳からも涙がスっと流れ出す。……かっこ悪いな、もう……僕はっ……!
玲「ありがとう青ちゃん……肝心な時にかっこ悪い姿を見せるような僕だけど、付き合ってくれる……?」
涙を拭いて再度彼女に確認をする。自分から告白をしたのに、自信なさげな態度の僕に彼女は満面の笑みで答えた。
青「喜んでっ……!よろしくね!玲於っ!」
この日、1人の少年と少女の想いが通じ合う。2人の関係性は長い間曖昧なものだった。少年はやっと〝幼馴染〟という関係性から抜け出せたことに、少女はやっと想いが通じ合ったことに歓喜する。しかしもう夜も遅く、既に日付が変わり少女の誕生日は終わっていた為、少年はすぐに家に帰った。少女の方は、少年が帰宅した後、しばらくの間現実だと信じられず、ベッドで右へ左へゴロゴロのたうち回っていた。
しかし、自分の部屋に飾った少年から貰った花束を見て、あの夢のような出来事は現実だったのだと改めて認識する。
―――少年がプレゼントに渡した花束は、青い薔薇が3本入った小さな花束。その意味は……
―――〝愛するあなたに出逢えたことが奇跡〟
―――〝愛しています〟
神崎玲於と中森青子は結ばれ、付き合うこととなった。またこの日以降、幼馴染だった4人の関係が少しずつ変化していくことになった……。