銀翼の奇術師
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
舞台開演時間が迫っていた為、私達は用意されていた席に座る。工藤くんだけはキッドを捕まえる為、立って観劇するようだった。
(それにしても今日キッドは来るのかな?……今回ばかりはやめておいた方がいいと思うけどな。だって今日は、いつもと違ってあの工藤くんがいるんだし……)
この舞台を楽しみにしていたのに、突然告げられたキッドのことで、頭はあの白い怪盗の事でいっぱいだった。
キッドを全面的に支持している訳ではない……でも無関心でいられるほど、非情でもない。キッドとは、幾度か話す機会もあった、助けられたこともあった。だから彼には捕まって欲しくないな……と個人的な想いがあった。
そんな複雑な思いを抱えていると、開演のブザーが鳴った。いよいよ舞台〝ジョゼフィーヌ〟が始まったのだ。舞台上には豪華な城内のセットと優美な音楽が流れ、観客を楽しませようと己の役を全うし、見事な演技を見せるプロの役者さん達がいた。それらは上手く調和し、人々の目にはさながら中世ヨーロッパの世界が写っていただろう。
舞台に集中していると、園子が私と蘭に小声で突っついてきた。
園「…ん?ねぇ蘭、憐……あの教皇の隣の人おじ様じゃない?」
蘭「!!!」
貴「ほんとだ……あっ、小五郎さんの隣にいる人……銀三さんだ……」
非現実的な空間に見知った人物が見えた。貴族の衣装を身にまとった小五郎さんと銀三さんの姿だ。2人が悪い訳ではないのだけど、一気に現実に戻された気がした。その後、無事舞台は最後まで行われた。
パチパチパチパチ……
客席からは惜しみない拍手がおくられる。私達もこの素晴らしい舞台を見せてくれた役者さん達を賞賛するよう精一杯拍手をおくった。舞台が何事もなく終えられて良かったと安心した反面、最後まで姿を見せなかった怪盗の行方を案じる。蘭の隣にいたコナンくんと立見で観劇していた工藤くんがいつの間にかいなくなっていたので、もしかしたらもう既に乗り込んでいて、2人に追いかけられてるのかもしれない。
(もし来てるなら捕まらないようにね、キッド……)
密かに心の中で白き怪盗の無事を祈りながら、他の観客の人達と同じく、拍手を送るのだった。
─────────────────────
舞台の中盤、物語も後半に差しかかろうとした所で工藤新一 が動きを見せる。コナンに合図を送り、わざと気づかせた新一 は、近くの扉から出ていく。それをすかさず追いかけるコナン。自分の前の席に座っていた哀に、後のことを託して……
そして冒頭の場面に遡る。コナンは走っていた……屋上にあるヘリポート目指して、鉄骨階段を駆け上がっていく。ここで逃したら、ヤツはきっと空の彼方へと消え失せてしまう。
走って辿り着いた屋上には、背中を向けた警官が1人立っている。至って普通の制服を着た警官、しかしコナンは鋭い視線を外さず、その男に強い口調で呼びかける。
コ「…もうゲームは終わりにしようぜ、コソ泥さん」
少年の問いかけに、警官は柔和な笑みを浮かべていた。
「ふん…そうだな。君とかくれんぼするには日が暮れ過ぎたよ…………探偵くん」
警官の声色は突然年若い青年の声へと変わり、また彼の格好も青い制服からシルクハットと白いスーツに身にまとった怪盗へと変化する。
数多の人間に変装をしていたキッドは今、怪盗の姿でコナンと相対する。
コ「軽口を叩けんのも今の内だ。そろそろケリをつけようじゃないか……」
コナンはキック力増強シューズの側面部分を指でなぞり、脚力を上昇させる。
キ「あぁ……恋人が夕飯作って待ってるからな…」
そう言って、キッドは強かな笑みと共にシルクハットを下げて顔を隠す。次の瞬間、コナンは耳を疑った。
〝コナンくーん!夕飯出来たよー!!〟
コ「蘭!?」
突如聞こえた蘭の声に動揺し、思わずキッドから視線を外し後ろを振り返る。しかし、背後には蘭どころか人の姿は見えない……。
コ「!?」
再度怪盗に目を向ける。そこには驚くべき光景があった。
蘭 〝早く来ないと食べちゃうよー!!〟
己の声のみで、他人の声、毛利蘭の声を完璧に真似をした怪盗が、己に向かってトランプ銃を向けていたのだ。
コ(クソ…!そういやコイツは俺と違って、自分の声帯で他人の声を完璧に模写する奴だったな……)
パンッ!
ドカッ!
キッドは動揺しているコナンに構わず、トランプ銃でトランプを放つ。負けじとコナンも自身のどこでもボール射出ベルトを使い、サッカーボールをキッドへと蹴り飛ばす。
互いに己の武器を使用し、相手の攻撃を避けながらトランプとボールの応酬は続いていく。キッドがトランプ銃でコナンをヘリポートの柵に追いやっていく。柵の下に落ちれば、普通の人間なら助からないほどの高さだ。
ついにその柵まで追い詰められてしまったコナン。キッドは変わらず不敵な笑みを浮かべ、トランプ銃をコナンに向ける。
キ「どうやらケリがつきそうだなぁ……探偵君」
コ「あぁ、そうだな……」
互いの視線が交わるのもつかの間、キッドはコナンの頭上目掛けてトランプを放つ。
コ「うわぁっ!!」
難なく避けたコナンだったが、体勢を崩し柵の向こう側へと落ちていく。
キ「はっ!(ヤベェッ!名探偵を助けねぇと……!)」
落下していったコナンを追いかけて、自分もすかさず飛び降りるキッド。素早くハンググライダーを開き、先に落下したコナンに追いつこうとする。しかし、落下した少年は驚くべき行動をとる。
プシュッ
為す術なく落ちていったコナンは、キッドが近づいてきた瞬間、体勢を正しキッドに狙いを定めて腕時計型麻酔銃を撃ってきたのだ。
キ「!?」
放たれた針を紙一重で躱したキッド、その後の少年の行動を見て感心する。
キ「なるほど……ハンググライダーにはパラグライダーってわけね」
コナンは麻酔銃の針を躱されても、驚くことも無く冷静にパラグライダーを開いて、ハンググライダーで飛んでいるキッドの後を着いていった。
キ「さすがだな……さっきのパラグライダー、あれも阿笠博士の発明品かい?」
コ「もう逃げられないぜ!!空を飛べなくなったら怪盗キッドもただのコソ泥だ…」
ビルの合間を器用に塗って飛んでいた彼らは、走っていた電車の上に飛び乗る。お互いに翼を手放した……ハンググライダーもパラグライダーも無い。怪盗はもう逃げられない……。
ゴトンゴトン……
コナンは勝利を確信していた……もうコイツには飛び立つ為の翼はない。なら捕まるのも時間の問題だと……。
カリカリカリカリカリ……
だが、そんな少年の希望を打ち砕くように異音が耳に届く。
コ(……なんだ!?この音……)
キ「んじゃそろそろ……元の怪盗に戻らせて貰おうかな…」
キッドの言葉を受けて察したコナンは上空を見上げる。
コ「しまった!!」
キ「じゃあな……」
気づいて走り出した時にはもう、頭上のハンググライダーに乗って優雅に飛び去ってしまった。
コ「クソッ!!」
後少しの所で逃がしてしまった。悔しそうに拳を着く少年の姿があった。
(それにしても今日キッドは来るのかな?……今回ばかりはやめておいた方がいいと思うけどな。だって今日は、いつもと違ってあの工藤くんがいるんだし……)
この舞台を楽しみにしていたのに、突然告げられたキッドのことで、頭はあの白い怪盗の事でいっぱいだった。
キッドを全面的に支持している訳ではない……でも無関心でいられるほど、非情でもない。キッドとは、幾度か話す機会もあった、助けられたこともあった。だから彼には捕まって欲しくないな……と個人的な想いがあった。
そんな複雑な思いを抱えていると、開演のブザーが鳴った。いよいよ舞台〝ジョゼフィーヌ〟が始まったのだ。舞台上には豪華な城内のセットと優美な音楽が流れ、観客を楽しませようと己の役を全うし、見事な演技を見せるプロの役者さん達がいた。それらは上手く調和し、人々の目にはさながら中世ヨーロッパの世界が写っていただろう。
舞台に集中していると、園子が私と蘭に小声で突っついてきた。
園「…ん?ねぇ蘭、憐……あの教皇の隣の人おじ様じゃない?」
蘭「!!!」
貴「ほんとだ……あっ、小五郎さんの隣にいる人……銀三さんだ……」
非現実的な空間に見知った人物が見えた。貴族の衣装を身にまとった小五郎さんと銀三さんの姿だ。2人が悪い訳ではないのだけど、一気に現実に戻された気がした。その後、無事舞台は最後まで行われた。
パチパチパチパチ……
客席からは惜しみない拍手がおくられる。私達もこの素晴らしい舞台を見せてくれた役者さん達を賞賛するよう精一杯拍手をおくった。舞台が何事もなく終えられて良かったと安心した反面、最後まで姿を見せなかった怪盗の行方を案じる。蘭の隣にいたコナンくんと立見で観劇していた工藤くんがいつの間にかいなくなっていたので、もしかしたらもう既に乗り込んでいて、2人に追いかけられてるのかもしれない。
(もし来てるなら捕まらないようにね、キッド……)
密かに心の中で白き怪盗の無事を祈りながら、他の観客の人達と同じく、拍手を送るのだった。
─────────────────────
舞台の中盤、物語も後半に差しかかろうとした所で
そして冒頭の場面に遡る。コナンは走っていた……屋上にあるヘリポート目指して、鉄骨階段を駆け上がっていく。ここで逃したら、ヤツはきっと空の彼方へと消え失せてしまう。
走って辿り着いた屋上には、背中を向けた警官が1人立っている。至って普通の制服を着た警官、しかしコナンは鋭い視線を外さず、その男に強い口調で呼びかける。
コ「…もうゲームは終わりにしようぜ、コソ泥さん」
少年の問いかけに、警官は柔和な笑みを浮かべていた。
「ふん…そうだな。君とかくれんぼするには日が暮れ過ぎたよ…………探偵くん」
警官の声色は突然年若い青年の声へと変わり、また彼の格好も青い制服からシルクハットと白いスーツに身にまとった怪盗へと変化する。
数多の人間に変装をしていたキッドは今、怪盗の姿でコナンと相対する。
コ「軽口を叩けんのも今の内だ。そろそろケリをつけようじゃないか……」
コナンはキック力増強シューズの側面部分を指でなぞり、脚力を上昇させる。
キ「あぁ……恋人が夕飯作って待ってるからな…」
そう言って、キッドは強かな笑みと共にシルクハットを下げて顔を隠す。次の瞬間、コナンは耳を疑った。
〝コナンくーん!夕飯出来たよー!!〟
コ「蘭!?」
突如聞こえた蘭の声に動揺し、思わずキッドから視線を外し後ろを振り返る。しかし、背後には蘭どころか人の姿は見えない……。
コ「!?」
再度怪盗に目を向ける。そこには驚くべき光景があった。
己の声のみで、他人の声、毛利蘭の声を完璧に真似をした怪盗が、己に向かってトランプ銃を向けていたのだ。
コ(クソ…!そういやコイツは俺と違って、自分の声帯で他人の声を完璧に模写する奴だったな……)
パンッ!
ドカッ!
キッドは動揺しているコナンに構わず、トランプ銃でトランプを放つ。負けじとコナンも自身のどこでもボール射出ベルトを使い、サッカーボールをキッドへと蹴り飛ばす。
互いに己の武器を使用し、相手の攻撃を避けながらトランプとボールの応酬は続いていく。キッドがトランプ銃でコナンをヘリポートの柵に追いやっていく。柵の下に落ちれば、普通の人間なら助からないほどの高さだ。
ついにその柵まで追い詰められてしまったコナン。キッドは変わらず不敵な笑みを浮かべ、トランプ銃をコナンに向ける。
キ「どうやらケリがつきそうだなぁ……探偵君」
コ「あぁ、そうだな……」
互いの視線が交わるのもつかの間、キッドはコナンの頭上目掛けてトランプを放つ。
コ「うわぁっ!!」
難なく避けたコナンだったが、体勢を崩し柵の向こう側へと落ちていく。
キ「はっ!(ヤベェッ!名探偵を助けねぇと……!)」
落下していったコナンを追いかけて、自分もすかさず飛び降りるキッド。素早くハンググライダーを開き、先に落下したコナンに追いつこうとする。しかし、落下した少年は驚くべき行動をとる。
プシュッ
為す術なく落ちていったコナンは、キッドが近づいてきた瞬間、体勢を正しキッドに狙いを定めて腕時計型麻酔銃を撃ってきたのだ。
キ「!?」
放たれた針を紙一重で躱したキッド、その後の少年の行動を見て感心する。
キ「なるほど……ハンググライダーにはパラグライダーってわけね」
コナンは麻酔銃の針を躱されても、驚くことも無く冷静にパラグライダーを開いて、ハンググライダーで飛んでいるキッドの後を着いていった。
キ「さすがだな……さっきのパラグライダー、あれも阿笠博士の発明品かい?」
コ「もう逃げられないぜ!!空を飛べなくなったら怪盗キッドもただのコソ泥だ…」
ビルの合間を器用に塗って飛んでいた彼らは、走っていた電車の上に飛び乗る。お互いに翼を手放した……ハンググライダーもパラグライダーも無い。怪盗はもう逃げられない……。
ゴトンゴトン……
コナンは勝利を確信していた……もうコイツには飛び立つ為の翼はない。なら捕まるのも時間の問題だと……。
カリカリカリカリカリ……
だが、そんな少年の希望を打ち砕くように異音が耳に届く。
コ(……なんだ!?この音……)
キ「んじゃそろそろ……元の怪盗に戻らせて貰おうかな…」
キッドの言葉を受けて察したコナンは上空を見上げる。
コ「しまった!!」
キ「じゃあな……」
気づいて走り出した時にはもう、頭上のハンググライダーに乗って優雅に飛び去ってしまった。
コ「クソッ!!」
後少しの所で逃がしてしまった。悔しそうに拳を着く少年の姿があった。