銀翼の奇術師
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屋上に繋がる天望フロアまで移動した私達。そのフロアは、観光客の人達で賑わっており、目の前には大きなガラスが張られ、そこから見える景色はきっと素晴らしいものだろう。少年探偵団達が喜んで大きな窓ガラスに近寄る。その後をゆっくり歩きながら移動する高校生組。コナンくんだけは工藤くんの後をぴったりくっついている。
久しぶりに会えた親戚のお兄ちゃん……って感じじゃなさそうなんだよね……雰囲気的に。目の敵のような顔でコナンくんは、工藤くんを見ている気がする。……コナンくんはキッドだと思っているんだろうな。コナンくん以外は突然現れた工藤くんに対して歓迎ムードで迎えている。でも私は少し違った。コナンくんに怖い顔だと指摘された時は凄く焦ってしまったが、それもそうだろうな。あの時の私は歓迎と言うより、戸惑い、苛立ち、自己嫌悪感と負の感情が募っていたから。
(快斗っ?!……じゃない!!工藤くん!!……久々に見たせいで、初めて会った時のように間違えてしまった……!でも何で今、私は……彼を快斗だと……)
そんなつもりではなかったのだけど、彼を見た時にほんの一瞬……
だからこの違和感は、間違いなのだと……久々に工藤くんの姿を見たからだと自分に言い聞かせていても、そう簡単には思えなくて……気持ちの切り替えって難しいな。何より彼らを間違えるなんて、2人に失礼だ。
(……馬鹿だな私。自分の好きな人ぐらい間違えないでよ。)
蘭「…………」
園「ねぇ!!私と憐がコナンくん引き受けるから、2人でどっか行ってきなよ!!いいわよね憐?」
貴「!!……う、うん!久々に会えたんでしょ?色々と話したいことあるだろうし、工藤くんと話してきたら?」
誤魔化せたかな?急に園子から名前を呼ばれたからびっくりしちゃった。園子の話に便乗して、蘭に工藤くんと2人で話すよう説得する。
せっかく会えたんだから2人でゆっくりしてきて欲しい。
蘭「いいわよ……」
貴「どうして?せっかく会えたのに……」
蘭「何か感じが違うんだよね……」
園「……えっ?」
貴「!!」
工藤くんと仲が良く、小さい頃からずっと見てきた蘭が、彼に対して違和感を持っていた。その言葉に目を見開く。
蘭「だっていつもはあんな事言わないもの……」
園「あんな事って?」
蘭「…………」
貴「いつもの工藤くんと何が違うの……?」
彼女の顔は林檎のように赤く染まっていて、口に出す事を躊躇っていたが、やがてポツリと話し始める。
蘭「キュ…キュート……とか……?」
貴「…………なるほどね」
蘭「ちょっと!頑張って答えたのに!」
想定した答えよりも可愛い回答に思わず頬が緩む。その私の態度に、蘭が先程とは別の意味で顔が赤くなって怒った。
園「…少しは素直になったって事よ!アンタも素直になんな?好きなら好きって言えば言いじゃない!!」
蘭「ば、馬鹿ね!!そんなんじゃないって言ってるでしょ!?」
蘭と園子のじゃれ合いを見ていたら、何だか気が抜けて、さっきまでの自分が馬鹿らしく感じた。
(……工藤くんに、いつもと違う違和感を蘭も持っていた。だけど、蘭は彼を疑っていない。なら私も信じるべきだよね。
あの工藤くんは……ううん、快斗でもなければキッドでもない。私の違和感は正しかったけど、内容は違った。反省するべきだけど、これ以上落ち込む必要はないよね。)
貴「……ふふっ」
蘭「何で憐が笑ってるのよ!」
園「言っとくけど、素直にならなきゃなんないのは憐……アンタだって変わらないんだからね!」
貴「別に!落ち込みすぎるのも良くないって思っただけ!」
蘭「落ち込んでたの?」
貴「うん!……でも、もういいの!解決したから…!」
2人の視線は分かりやすく、疑問が浮かんでいるようだったが、私は気にせず外の景色を見る為、窓ガラスに歩み寄った。
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高所からの眺めを存分に楽しんでいると、憐の隣にある人物が歩み寄ってくる。その相手は、ガラスに反射していた為、身構えることなく声をかけた。
貴「久しぶりね、工藤くん」
新「よう、神崎……元気だったか?」
貴「元気だよ、このとおりね…?」
彼らの視線は交わらない……互いに眼下にある建物を見ながら会話は続く。
貴「あのね……私、工藤くんに対して怒ってるんだからね」
新「何でだよ……俺、お前に怒られるようなことしたか……?」
頭をかきながら身に覚えがないようふるまう新一に、憐はジト目でガラス越しに新一を見つめた。
貴「事件を解決するのも大切だけど、もう少し学業を大切にした方がいいと思うよ」
新「そうは言ってもな〜俺には次から次へと事件が降ってくるから仕方ねーだろ……」
貴「……それって、大切な人悲しませてまでしなければならない事なの?」
新「…………」
軽口が止まった……彼はなんて返そうか悩んでいる。しかし、新一の返答を聞かずに、続けて憐が口を開く。
貴「いくら工藤くんがホームズのような優秀な探偵だとしても、高校生なんだからさ……あんまり危ない事件に首突っ込まないでね?蘭は勿論園子や私、クラスメイトの皆だって貴方が学校に来るのを待ってるんだから。
……蘭は何も言わないけど、本当はずっと寂しそうにしてるんだよ?」
新一は思わず、隣の憐の姿を見る。彼女は彼の視線を受けながら、背を向けたまま歩き始める。
貴「私ね……蘭と工藤くんが一緒にいる姿が大好き!2人とも幸せそうで、見ているこっちも嬉しいんだよね。それに、2人は私の大好きな人達に似てるから……」
新「俺達に、似てるって……」
彼女の背中を見つめながら、回答を待つ……彼にはその答えが、分かるような気がしていた。
貴「お互いの容姿も、お互いに相手のことが好きな癖に、素直になれなくて喧嘩している所も、本当に似てるんだよね」
振り向きざまの彼女の顔は、何だか寂しげな表情に見えて、彼は困惑した。幸せだと話していたのに何故そんな顔をするのか。今の表情もまた真実なのだと考える。そうだとしたら、工藤新一と毛利蘭に似ている2人とは、恐らく……
真実を伝えたくとも、今の己の姿ではそれは叶わない。彼がモヤモヤとした思いを抱えていることなど露知らず、憐は今度こそ屈託のない笑みを浮かべた。
貴「ほらほら〜!またいつ帰ってくるかも分からない工藤くんには、私じゃなくて愛しい彼女の方がいいんじゃない?」
新「はっ?…おい憐…」
貴「そこで待っててね!今蘭を呼んでくるから。蘭〜〜!!工藤くんが呼んでるよ〜!」
先程の雰囲気とは打って変わって明るい表情の憐が、戸惑う新一を置いて蘭達を呼びに行ってしまった。
新「はぁ〜……(元気付けてやろうと思ったのにとんだ爆弾を落とされちまったな。今は無理だけど、この仕事が終わったら、絶対憐の勘違いを訂正させる……)」
一人残された工藤新一のため息は、離れた所で監視していた少年のみが知ることになる。しかし、彼がため息以上のことを考えていたことなど、少年は知る由もなかった。
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阿「しかし、大胆じゃのォ……よりによって新一に化けるとは」
コ「あぁ……大方、俺に化けてりゃ仕事がやりやすいって所だろ」
哀「でも探す手間が省けたんじゃない?」
コ「あぁ……」
阿笠、哀、コナンは少し離れた場所で
コ(どんな内容を話していたのか知らねーが、やっぱり神崎には絡むのか。しかし、奴の様子を見るに、神崎とは上手くいってないようだな。……あの野郎、俺の姿で何言ったんだ)
己の姿で何をしでかすか分からない。そういった意味でも見張っておかなければならない要注意人物だった。
現に今も、外の景色を眺めていた子ども達を集めて、クイズを出題しようとしていた。
新「俺のは歴史に基づいた、為になるクイズだ!坊主も考えろよ!!」
コ「うっせぇよ…」
軽薄な態度に苛立ちが募ったコナンは苦虫を噛み潰したような顔をする。そんなコナンを置いて、クイズは子ども達だけでなく蘭達も巻き込まれて行われた。聞いてみれば子ども騙しのようなクイズ。今回の〝ジョゼフィーヌ〟の演劇に関連するクイズだ。ジョゼフィーヌの夫であったフランスの有名な皇帝ナポレオン、そのナポレオンの有名な名言から考えればどうって事ないクイズ。
蘭や憐は手こずることなく答えが分かった様子だったが、園子や歩美達にはまだ難しかったようで、知恵を絞りながら必死になって考えていた。コナンは園子の頓珍漢な理由に呆れながら解説をする。
コ「……お前ら、ナポレオンの〝我が辞書に不可能の文字はない〟って言葉知らねーか?」
歩「あっ!聞いた事ある!」
コ「このクイズはその言葉にひっかけてあるんだ。土地は
哀「ちなみにナポレオンが言ったのは〝不可能という文字は、愚か者の辞書にのみ存在する〟だったみたいだけどね…」
コナンの解説に哀が豆知識を挟む。憐は感心したように「へ〜コナンくんだけじゃなくて、哀ちゃんも物知りなんだね。凄いな…!」と2人を褒めていた。
光「さすが灰原さん…!」
元「でもやっぱりダジャレじゃんか……」
光「それにあんまり為になったと思えませんねぇ……」
新「そ、そうか?ははは……」
コ「ははは……(くだらないダジャレクイズのせいで、コイツらの俺への印象が悪くなっちまったじゃねーか。キッドの奴……)」
為になるナポレオンクイズ……蓋を開けてみればダジャレクイズだったのだから、元太と光彦は文句を零した。この時のコナンは、己の印象を悪くした
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