銀翼の奇術師
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――― 自室(夜)
お風呂にも入り、あとはベッドに入って眠るだけの所まで済ませた時……少し前に蘭から誘われた演劇について思い出し、せっかくなら調べてから眠ろうと思い、ベッドから椅子に進行方向を変え、腰を下ろして今度観に行く演劇〝ジョゼフィーヌ〟についてPCで調べていた。
貴『ジョゼフィーヌって誰のことかな?何だか高貴そうな名前ね……』
――― 運命の〜ルーレット回して〜♪
横に置いていた携帯からお気に入りの着メロが流れる。かかってきた人物は、画面を見なくとも流れた音楽で直ぐに誰か分かった。
貴『もしもし、快斗?』
快『よう憐』
貴『こんな夜遅い時間にどうしたの?』
部屋の壁にかけられた時計を見上げた。短い針はちょうど10の位置にあった。
快『ちょっとオメーに聞きたいことがあってな』
快斗は一度口を閉じ、間を空けてから再度話し始める。
快『前に話題に出していたお前のクラスメイト〝工藤新一〟のことについて詳しく聞きたくてよぉ……』
貴『工藤くんについて??』
初めて工藤くんの話題を快斗達の前で話した時、青子や玲於は反応を示していたけど、快斗は深く考え込んでいる様子だった覚えがある。
貴『そういえばあの時の快斗、何か考え込んでるみたいで、私の話もあまり聞いてるような感じじゃなかったもんね。だけど気になって、私に電話してきたのね……』
快『あのなぁ……俺はお前の話を聞いてなかった訳じゃねーぞ!……ただ聞き覚えがあって、思い出そうとしてたんだよ!』
電話越しに彼の声を聞いているから、顔が見えている訳じゃないけど、私の機嫌を取ろうと必死なのは伝わってきた。
貴『はいはい……それで何か思い出せたの?』
私は笑って快斗に尋ねた。これでアイツに伝わればいいな……機嫌損ねてないよってね。
快『それが全く思い出せねーんだよな〜……だから工藤新一について、憐が知っていることを色々と教えてくれよ』
貴『いいよ!えっとね〜……』
うちのクラスの有名人、高校生探偵工藤新一くんについて、私の知る範囲での様々な彼に纏わる話を、快斗に聞かせてあげた―――
快斗side
次の仕事の為、変装予定の名探偵……工藤新一について、情報を集めるべく、まずは身近な存在である憐に話を聞こうと電話した。クラスメイトで、名探偵の彼女とも仲が良い憐なら、何かしら情報を持っているはず……変装の参考にする為に、あれこれ聞き出そうと思ったのだが……
貴『工藤くんはね〜シャーロック・ホームズの大ファンなの!ホームズに憧れてて、いつか平成のシャーロック・ホームズになるんだって言ってたんだよ…!そう話すだけあって頭も凄く良いしね〜。難事件を解いて新聞にも載ったことがあるんだよ!凄いよね〜』
快『あぁ、そうだな……』イラッ
自分から彼女に頼んだはずなんだけどな……
貴『頭だけじゃなく、運動も出来るんだよ。以前はサッカー部に所属してて、その実力は折り紙付き!プロのサッカー選手みたいに上手いんだよ!インターハイも優勝狙えたんじゃないかな……本人は、ホームズが運動神経良かったから、自分も運動神経つけるために始めたって言ってて、今は満足したから辞めちゃったんだって』
快『……へ、へぇー……』イライラッ
憐が名探偵の話をする度に、眉間に皺が出来ていく。電話でのやり取りの為、彼女に見られる心配もない……表情を取り繕う必要がないから、声だけ自然に聞いている感じを出していれば何も問題はない。
だから今、俺の顔が苦虫を噛み潰したような表情だとしても憐にバレる心配はないのだ。
それにしても憐のヤツ……
(どんだけ話すんだよ!そりゃあ情報が多いに越したことねーけど、こんなにあるとはな……)
憐は俺に構わず、名探偵の話を次々にあげていく。留まることを知らないのか、今度は名探偵の苦手なことまで話し始める。……名探偵が実は音痴だとか、……こんな情報まで使うか?俺は憐に尋ねたことを後悔し始めた。
心中穏やかでは無い、イライラして仕方がない……醜い感情に嫌気がさす。自分から聞いた癖にと思われるかもしれないが、こればっかりは、個人の理由だからだな。
(……好きな奴の口から、自分以外の異性の話なんか、誰が好き好んで聞くかっての……)
仕事の為だと自分に言い聞かせてはいるが、嫌なものは嫌なのだ。やはりそこは俺も人間。どうしても我慢できないこともある。
(中学までは目の届く範囲にいたから心配なかったけど、今は学校が離れて一緒にいる時間が減ったからな……コイツ押しに弱いから、変な奴に言い寄られてねーだろうな……)
付き合ってはいない、ただ幼馴染の関係だが他ならぬ彼女だから……何気ない交友関係でさえ、それが異性ならば気になってしまうのだ。持っているトランプを意味もなく触って、気分をまぎらわす。目の前に憐がいなくて良かったぜ……こんなに不機嫌な自分を彼女に見せなくて済んだのだから
貴『…………なんかいつもと違う気がする。快斗、どうしたの?』
しまった……なるべく自分の感情を出さずに話していたつもりだが、憐に違和感を持たれてしまっている……何とか切り替えなければ。
快『……お前の気の所為だろ。それより他にはねーのか?』
これ以上悟られないよう、態度を変えて、この件に触れられないように自然と流す。そのおかげか彼女からこれ以上の追求はなかった。
貴『まぁ快斗がそう言うならいいけど……うーん、とりあえずこんなものかな。一通り話したけど何か思い出せた?』
そういえば、そんな設定だったな。本当は思い出すことなんかひとつもない……なんせ、〝黒羽快斗〟の姿で奴の前に立ったことは無いからだ。俺が一方的に名探偵を知っているだけで、向こうは俺のことを知らない。今回のは情報を集める為の口実に過ぎない。そして比較的十分な量を憐から聞くことが出来たので、奴の話題はもう良いだろう……俺にも我慢の限界というものがある。
快『駄目だ、何も思い出せねー……俺の思い違いかもな。とりあえず色々教えてくれてありがとうな、憐』
貴『別にいいわよこのくらい!それよりさ、私いっぱい教えてあげたんだから、快斗に聞きたいことがあるの!』
快『……何だ?』
貴『汐留ビュータワーに新しい劇場が出来たんだけど……』
……あー、嫌な予感がする。俺は現実から目を逸らしたくて机に顔を伏せた。
貴『私友達に誘われて、今度演劇を見に行くことになったんだけど、どんな劇なのか全く知らなくて……〝ジョゼフィーヌ〟っていう演劇!』
ほらな……やっぱりそうだと思った。
貴『ジョゼフィーヌって誰のことか、快斗は知ってる?』
快『知ってるぜ。〝ジョゼフィーヌ〟ってのは、フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトの最初の王妃、ジョゼフィーヌ・ド・ポアルネの事だ。最終的にナポレオンとは別れちまうが、傷心していた心を癒す為、自身が愛した薔薇で最高峰の庭園を作り出した女性だ』
携帯を持っていない片方の手を回せば、持っていたトランプのカードは鮮やかな赤い薔薇に変わる。この薔薇だけじゃなく、様々な色の薔薇が生まれたのもジョゼフィーヌが人工交配を行ったおかげだ。
貴『凄いっ!快斗がいれば本やインターネットは要らないね……!高貴な人の名前そうだな〜とは思っていたけど、まさかナポレオンの奥様だったなんて……』
快『おい憐……お前俺のこと便利な辞書かなんかと思ってねーよな……』
貴『や、やだな〜そんな訳ないじゃない!気の所為よ気の所為……あはははは……』
(思ってんじゃねーか……)
あからさまな態度に突っ込まざるを得なかった。流石に俺だって全てを知っている訳じゃない。予告状を送り出すのに、少し調べた程度だ。
貴『でもジョゼフィーヌさんってさ、快斗の話によればとても薔薇が好きなんだよね。私も薔薇が1番好きな花だから、なんか嬉しいな……』
快『っ……』
憐の表情が見れないのは残念だが、きっと笑っている。電話越しでも彼女の表情が伝わってくる。
俺が憐に関して自信を持って言えることの一つ……それは彼女の1番好きなマジックは、彼女と出会った時に初めて見せた単純な薔薇のマジックだということだ。本人の口からは聞いていないが、見せた時の反応を見れば一目瞭然だ。……あの日の出来事を大切に覚えていた憐なら、どんなマジックよりもこのマジックを見せた時が1番嬉しそうだからだ。
マジシャンにとってこれほど嬉しいことも無いだろう……それに俺もこの単純だけどシンプルな薔薇のマジックがお気に入りだ……。
(それにしてもコイツの言葉で機嫌が直っちまう俺も……我ながら単純だよな)
頼りにされている事実や彼女の思いが伝わり、先程の機嫌の悪さはすっかり無くなっていた。
そこからまた他愛のない話で盛り上がり、キリのいい所でお開きとなった。一時聞くことを後悔したこともあったがあらかた情報は集まった。これで当日問題なく工藤新一に変装して潜り込める。
また最後まで憐は怪盗キッドの名前を出さ
なかった。どうやら今回憐は、名探偵達からキッドが絡んでくることについて聞かされていないようだ。……それは好都合。憐が絡まない方が俺も仕事に集中出来るから出来ればずっとそうして欲しいが、キッドが来るということはそれを捕まえるもの、中森警部も当然ながらやってくる。そこでキッドも関わってくることを知るかもしれないが、まぁ大して支障も出ないだろう。
快『今度こそ、大人しくしていてくれよ……憐』
俺はこれからの仕事に備え、残りの作業を終わらせにかかった……─────────
お風呂にも入り、あとはベッドに入って眠るだけの所まで済ませた時……少し前に蘭から誘われた演劇について思い出し、せっかくなら調べてから眠ろうと思い、ベッドから椅子に進行方向を変え、腰を下ろして今度観に行く演劇〝ジョゼフィーヌ〟についてPCで調べていた。
貴『ジョゼフィーヌって誰のことかな?何だか高貴そうな名前ね……』
――― 運命の〜ルーレット回して〜♪
横に置いていた携帯からお気に入りの着メロが流れる。かかってきた人物は、画面を見なくとも流れた音楽で直ぐに誰か分かった。
貴『もしもし、快斗?』
快『よう憐』
貴『こんな夜遅い時間にどうしたの?』
部屋の壁にかけられた時計を見上げた。短い針はちょうど10の位置にあった。
快『ちょっとオメーに聞きたいことがあってな』
快斗は一度口を閉じ、間を空けてから再度話し始める。
快『前に話題に出していたお前のクラスメイト〝工藤新一〟のことについて詳しく聞きたくてよぉ……』
貴『工藤くんについて??』
初めて工藤くんの話題を快斗達の前で話した時、青子や玲於は反応を示していたけど、快斗は深く考え込んでいる様子だった覚えがある。
貴『そういえばあの時の快斗、何か考え込んでるみたいで、私の話もあまり聞いてるような感じじゃなかったもんね。だけど気になって、私に電話してきたのね……』
快『あのなぁ……俺はお前の話を聞いてなかった訳じゃねーぞ!……ただ聞き覚えがあって、思い出そうとしてたんだよ!』
電話越しに彼の声を聞いているから、顔が見えている訳じゃないけど、私の機嫌を取ろうと必死なのは伝わってきた。
貴『はいはい……それで何か思い出せたの?』
私は笑って快斗に尋ねた。これでアイツに伝わればいいな……機嫌損ねてないよってね。
快『それが全く思い出せねーんだよな〜……だから工藤新一について、憐が知っていることを色々と教えてくれよ』
貴『いいよ!えっとね〜……』
うちのクラスの有名人、高校生探偵工藤新一くんについて、私の知る範囲での様々な彼に纏わる話を、快斗に聞かせてあげた―――
快斗side
次の仕事の為、変装予定の名探偵……工藤新一について、情報を集めるべく、まずは身近な存在である憐に話を聞こうと電話した。クラスメイトで、名探偵の彼女とも仲が良い憐なら、何かしら情報を持っているはず……変装の参考にする為に、あれこれ聞き出そうと思ったのだが……
貴『工藤くんはね〜シャーロック・ホームズの大ファンなの!ホームズに憧れてて、いつか平成のシャーロック・ホームズになるんだって言ってたんだよ…!そう話すだけあって頭も凄く良いしね〜。難事件を解いて新聞にも載ったことがあるんだよ!凄いよね〜』
快『あぁ、そうだな……』イラッ
自分から彼女に頼んだはずなんだけどな……
貴『頭だけじゃなく、運動も出来るんだよ。以前はサッカー部に所属してて、その実力は折り紙付き!プロのサッカー選手みたいに上手いんだよ!インターハイも優勝狙えたんじゃないかな……本人は、ホームズが運動神経良かったから、自分も運動神経つけるために始めたって言ってて、今は満足したから辞めちゃったんだって』
快『……へ、へぇー……』イライラッ
憐が名探偵の話をする度に、眉間に皺が出来ていく。電話でのやり取りの為、彼女に見られる心配もない……表情を取り繕う必要がないから、声だけ自然に聞いている感じを出していれば何も問題はない。
だから今、俺の顔が苦虫を噛み潰したような表情だとしても憐にバレる心配はないのだ。
それにしても憐のヤツ……
(どんだけ話すんだよ!そりゃあ情報が多いに越したことねーけど、こんなにあるとはな……)
憐は俺に構わず、名探偵の話を次々にあげていく。留まることを知らないのか、今度は名探偵の苦手なことまで話し始める。……名探偵が実は音痴だとか、……こんな情報まで使うか?俺は憐に尋ねたことを後悔し始めた。
心中穏やかでは無い、イライラして仕方がない……醜い感情に嫌気がさす。自分から聞いた癖にと思われるかもしれないが、こればっかりは、個人の理由だからだな。
(……好きな奴の口から、自分以外の異性の話なんか、誰が好き好んで聞くかっての……)
仕事の為だと自分に言い聞かせてはいるが、嫌なものは嫌なのだ。やはりそこは俺も人間。どうしても我慢できないこともある。
(中学までは目の届く範囲にいたから心配なかったけど、今は学校が離れて一緒にいる時間が減ったからな……コイツ押しに弱いから、変な奴に言い寄られてねーだろうな……)
付き合ってはいない、ただ幼馴染の関係だが他ならぬ彼女だから……何気ない交友関係でさえ、それが異性ならば気になってしまうのだ。持っているトランプを意味もなく触って、気分をまぎらわす。目の前に憐がいなくて良かったぜ……こんなに不機嫌な自分を彼女に見せなくて済んだのだから
貴『…………なんかいつもと違う気がする。快斗、どうしたの?』
しまった……なるべく自分の感情を出さずに話していたつもりだが、憐に違和感を持たれてしまっている……何とか切り替えなければ。
快『……お前の気の所為だろ。それより他にはねーのか?』
これ以上悟られないよう、態度を変えて、この件に触れられないように自然と流す。そのおかげか彼女からこれ以上の追求はなかった。
貴『まぁ快斗がそう言うならいいけど……うーん、とりあえずこんなものかな。一通り話したけど何か思い出せた?』
そういえば、そんな設定だったな。本当は思い出すことなんかひとつもない……なんせ、〝黒羽快斗〟の姿で奴の前に立ったことは無いからだ。俺が一方的に名探偵を知っているだけで、向こうは俺のことを知らない。今回のは情報を集める為の口実に過ぎない。そして比較的十分な量を憐から聞くことが出来たので、奴の話題はもう良いだろう……俺にも我慢の限界というものがある。
快『駄目だ、何も思い出せねー……俺の思い違いかもな。とりあえず色々教えてくれてありがとうな、憐』
貴『別にいいわよこのくらい!それよりさ、私いっぱい教えてあげたんだから、快斗に聞きたいことがあるの!』
快『……何だ?』
貴『汐留ビュータワーに新しい劇場が出来たんだけど……』
……あー、嫌な予感がする。俺は現実から目を逸らしたくて机に顔を伏せた。
貴『私友達に誘われて、今度演劇を見に行くことになったんだけど、どんな劇なのか全く知らなくて……〝ジョゼフィーヌ〟っていう演劇!』
ほらな……やっぱりそうだと思った。
貴『ジョゼフィーヌって誰のことか、快斗は知ってる?』
快『知ってるぜ。〝ジョゼフィーヌ〟ってのは、フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトの最初の王妃、ジョゼフィーヌ・ド・ポアルネの事だ。最終的にナポレオンとは別れちまうが、傷心していた心を癒す為、自身が愛した薔薇で最高峰の庭園を作り出した女性だ』
携帯を持っていない片方の手を回せば、持っていたトランプのカードは鮮やかな赤い薔薇に変わる。この薔薇だけじゃなく、様々な色の薔薇が生まれたのもジョゼフィーヌが人工交配を行ったおかげだ。
貴『凄いっ!快斗がいれば本やインターネットは要らないね……!高貴な人の名前そうだな〜とは思っていたけど、まさかナポレオンの奥様だったなんて……』
快『おい憐……お前俺のこと便利な辞書かなんかと思ってねーよな……』
貴『や、やだな〜そんな訳ないじゃない!気の所為よ気の所為……あはははは……』
(思ってんじゃねーか……)
あからさまな態度に突っ込まざるを得なかった。流石に俺だって全てを知っている訳じゃない。予告状を送り出すのに、少し調べた程度だ。
貴『でもジョゼフィーヌさんってさ、快斗の話によればとても薔薇が好きなんだよね。私も薔薇が1番好きな花だから、なんか嬉しいな……』
快『っ……』
憐の表情が見れないのは残念だが、きっと笑っている。電話越しでも彼女の表情が伝わってくる。
俺が憐に関して自信を持って言えることの一つ……それは彼女の1番好きなマジックは、彼女と出会った時に初めて見せた単純な薔薇のマジックだということだ。本人の口からは聞いていないが、見せた時の反応を見れば一目瞭然だ。……あの日の出来事を大切に覚えていた憐なら、どんなマジックよりもこのマジックを見せた時が1番嬉しそうだからだ。
マジシャンにとってこれほど嬉しいことも無いだろう……それに俺もこの単純だけどシンプルな薔薇のマジックがお気に入りだ……。
(それにしてもコイツの言葉で機嫌が直っちまう俺も……我ながら単純だよな)
頼りにされている事実や彼女の思いが伝わり、先程の機嫌の悪さはすっかり無くなっていた。
そこからまた他愛のない話で盛り上がり、キリのいい所でお開きとなった。一時聞くことを後悔したこともあったがあらかた情報は集まった。これで当日問題なく工藤新一に変装して潜り込める。
また最後まで憐は怪盗キッドの名前を出さ
なかった。どうやら今回憐は、名探偵達からキッドが絡んでくることについて聞かされていないようだ。……それは好都合。憐が絡まない方が俺も仕事に集中出来るから出来ればずっとそうして欲しいが、キッドが来るということはそれを捕まえるもの、中森警部も当然ながらやってくる。そこでキッドも関わってくることを知るかもしれないが、まぁ大して支障も出ないだろう。
快『今度こそ、大人しくしていてくれよ……憐』
俺はこれからの仕事に備え、残りの作業を終わらせにかかった……─────────