銀翼の奇術師
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コ「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
コナンは走っていた……屋上にあるヘリポート目指して、鉄骨階段を駆け上がっていく。ここで逃したら、ヤツはきっと空の彼方へと消え失せてしまう。
走って辿り着いた屋上には、背中を向けた警官が1人立っている。至って普通の制服を着た警官、しかしコナンは鋭い視線を外さず、その男に強い口調で呼びかける。
コ「…もうゲームは終わりにしようぜ、コソ泥さん」
少年の問いかけに、警官は柔和な笑みを浮かべていた。
「ふん…そうだな。君とかくれんぼするには日が暮れ過ぎたよ…………探偵くん」
警官の声色は突然年若い青年の声へと変わり、また彼の格好も青い制服からシルクハットと白いスーツに身にまとった怪盗へと変化する。
────── 今宵も彼らの対決は、人知れず行われようとしていた……。
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青「それでね、誰も答えられなかった問題を快斗がスパッと答えたから、クラス中大盛り上がりだったのよ〜!」
平日の夜、学校から帰宅した私は、先に帰ってきた青子、快斗、玲於も交えて夕食をとっていた。その時青子が今日あった出来事として、先生が意地悪で出した難しい問題を快斗がサラッと解いてみせたことを話してくれた。
玲「さすが快くんだよね」
青「快斗〝頭〟は良いもんね〜」
快「へへっ!まぁ俺にかかればどうってことないぜ……ってか青子、お前どういう意味だよそれ!」
青「やーね!そのままの意味に決まってるじゃない」
このままだと二人の痴話喧嘩が始まりそうな雰囲気に。慌てた玲於が二人の仲を諌めつつ、私にも話題を振ってきた。
玲「二人とも落ち着いて!……そういえば姉さんのクラスには居ないの?快くんみたいな天才は……」
貴「天才?そうね……工藤くんかな」
玲「工藤くん?」
玲於は勿論、喧嘩が始まりそうな青子も快斗も私の方に顔を向けた。
青「憐から他の男子の名前が出るなんてね〜!で誰なの?その工藤って人は?」
快「……」
青子は興味津々のように明るく聞いてくる。反対に思案顔をして黙りこくる快斗。正反対な反応だ。……そういえば彼の話をしたことが無かったことに気づく。だから私は彼らに、我が帝丹高校の天才について語ってあげようと思ったのだ。
貴「工藤新一くんって言って、色んな難事件を解いているとても頭の良い高校生探偵が、同じクラスにいたのよね」
青「へぇ〜そうなんだ〜……その人かっこいい?」
貴「……か、かっこいいんじゃない?勉強だけじゃなくて、サッカーも出来て運動神経も良いからね……」
玲「なんでそんな言いづらそうなの?」
歯切れよく答えられなかったせいで、玲於に突っ込まれる。それも仕方の無いこと……だってそうさせる理由は、彼のある部分について、隣の幼馴染をよく思い出してしまうからだ。
思わず快斗に視線を送ってしまう。考え込んで前を見つめているから、私とは視線が合わなかったのが救いだ。
青「?……快斗がどうかしたの?」
貴「な、何でもない!!と、とにかく工藤くんがうちのクラスの天才くんかな」
青「へぇ〜……憐はその人のことどう思ってるの?」
貴「私?!……そうね、同じミステリー小説が好きな友達だし、何よりその工藤くんを健気に待ってる友達がいるの。早く帰ってきてその子を安心させてあげて欲しいなって思ってるよ」
青「その人今学校に居ないの?」
貴「そうなの……!何でも次から次へと事件が舞い込んできて家にも帰ってないらしいんだよね。」
青「そうなんだ〜……早く帰ってくるといいね」
一通り工藤くんについて話し終えた為、止めていた箸を動かす。その後はまた別の話題に移った為、このことが掘り返されることはなかった……。
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快斗side
夕食後、俺達は次の仕事の為黒羽家に戻り、作戦を立てていた。
玲「よし、快くん。次の仕事の狙いは?」
快「〝運命の宝石〟……〝スターサファイア〟だ」
人気女優、牧樹里が所有する宝石……スターサファイア。今回の俺の仕事はこのスターサファイアを盗み出すこと。しかし、そのスターサファイアは、牧樹里が出演する舞台〝ジョセフィーヌ〟に
使用するらしく、あの女優が肌身離さずつけている宝石。彼女に近づく為には、まずその舞台を怪しまれず観劇することが必要になる。
玲「それって君が言っていた、舞台〝ジョセフィーヌ〟に出演する牧樹里さんっていう女優さんが持っていて、舞台でも身につけてるんでしょ?どうやって入り込むわけ?」
玲於の疑問に、俺は自信満々に答える。
快「それは勿論変装するんだよ……あの〝工藤新一〟にな!」
〝工藤新一〟……どこかで聞き覚えがあるかと思えば、俺はその名を前に憐の口から聞いている。
貴『……それもそうね。キッドが快斗なわけないよね。……マジックが得意なことや快斗と声が似てることとか類似点が少しあるけど、そんなこと言ったら、快斗にそっくりな工藤くんの存在もあるし……うん、やっぱり怪盗キッドは快斗じゃないもんね!』
*ゴースト・ゲーム 終章 参照
あの時憐は、俺にそっくりな存在として工藤の名前をあげていた。……あの当時は誰なのか分からなかったが、今はよく分かる。
今までの奴の情報と、憐の情報を組み合わせると、憐のクラスには、俺にそっくりな顔をした〝工藤新一〟という高校生探偵がいる。そしてその〝工藤新一〟は、現在学校にも来ておらず、自分の家にも帰っていないらしい。憐達クラスメイトには、難事件を解いており帰ってきていないということにしているらしいが、俺はその事実の真実についても知っている。それはこの前のメモリーズ・エッグの件で判明したことだ。
〝工藤新一〟は、〝江戸川コナン〟という少年に姿を変えて、生活しているからだ。
何故高校生が、小学生に姿を変えているのか……その原理はいまだによく分かっていないが、奴が懇意にしている阿笠博士という人物との電話を盗聴したことでその事実を知った。それだけでは俺も信じなかっただろう……しかし、何度も俺の思惑を読み取り、怪盗キッドの邪魔をしてきた小学生らしからぬ言動をした少年。今では世間からキッドキラーなんて呼ばれ、キッドのライバルとして持て囃されている。キッドの俺としては少し癪に障るが……
……俄には信じ難いが、あの〝江戸川コナン〟という少年は、〝工藤新一〟なのだと信じざるを得なかったのだ。
でも俺にとってはとても都合の良い人間だ。ここまで変装するのにうってつけのやつがいるなんてな……
変装するのに、まず一番にかかせないのが、変装元の人間と同時に存在しないようにすること。当たり前だが、同じ人間が二人もいれば、どちらかが変装だとすぐバレてしまう。だからこそ、変装する人物と絶対鉢合わせしないようにするのが鉄則なのだが……
玲「工藤新一って、姉さんが言ってた人だね。でもなんで工藤新一くんなの?」
快「憐の話じゃ、工藤新一はいまだに所在不明で、行方知れず……生きてはいるらしいけどな」
玲「それは分かるけど、万が一でも会う可能性はあるよね?」
玲於の顔は不服そうだ。夕食時の会話は、一緒にいたコイツも聞いているからそんなことを言うのだろう。
快「いや、その可能性は限りなく低い。安心しな、そこは信用して貰っていいぜ。あとは……アイツの顔が俺と似ている所だな」
玲「え?!そうなの?!」
快「前に憐がポロッと言っていたことがあったんだよ。俺と工藤はそっくりだってな」
玲「……そういえば、
写真だけで見た玲於、写真ではなく実際間近で見ている憐、この双子がそっくりだと言うのならばそうなのだろう。疑う余地はない。
快「出会う可能性も極めて低く、ましてや俺にそっくりな人物……ここまで変装するのに都合が良い人物なんていないだろ?それに工藤新一の姿で、中森警部に今回のキッドの事で協力したいと頼めば、同行させてくれるはずだ。これで怪しまれず舞台を観劇出来る……天が俺に味方してるようにしか思えないぜ!」
鼻高々になる俺に、玲於は「そうだね」と同意しつつも、自身の懸念点を話す。
玲「でもさ、その女優さんに予告状を出すんだよね?そしたら多分、毛利探偵事務所に相談にいくんじゃないかな?眠りの小五郎って凄く有名だし、キッドキラーの少年もそこにいるんだろうし……そう上手くいくかな……?」
最もな玲於の心配に、表情を崩す。
快「まぁ、あの名探偵には速攻でバレるだろうから、名探偵対策は必要だろうけどな」
玲於には言っていないが、あの〝江戸川コナン〟という少年が〝工藤新一〟なのだから、工藤新一の姿で行けば、まず間違いなくバレる。
快「だけどいつもの変装と違って、髪型をちょっと変えるだけでいいから、名探偵が騒いだ所で他の奴に俺の変装は見抜けない。変装に関しては問題ねーよ」
玲「そうだったね……じゃ、後は前みたいに姉さんが参加しないことを祈るぐらいかな」
快「……そうだな」
そして1番の懸念点も、前回と同じく憐も一緒にいる可能性だ。憐は名探偵の彼女と仲が良い……今回の舞台も誘われるかもしれない。
それに……顔をよく見せていないキッドと俺を似てると言った憐。そんな憐に殆ど素顔を見せるような工藤新一に変装するのは、リスクが高い。つまり……黒羽快斗を知る者なら気づく可能性が高い。
ガキの頃から一緒に居た幼馴染……憐だけにはバレる訳にはいかないのだ。
快「最近のアイツは、何かと事件に巻き込まれてる……これ以上危険な目にあわせたくない」
玲「快くん……」
あの日、慕っていた人物に殺されそうになったこと、俺達に会えなくなることを怖がり、大粒の涙を流し、俺だけに打ち明けてくれた憐
もうあんな思いをさせたくない……以前のように危ないことが起きると決まった訳では無いが、起きない保証もない。もしもの時のことを考えて、アイツには常に安全な場所にいて欲しい……〝怪盗キッド〟でもあり〝黒羽快斗〟でもある俺の心の拠り所だからだ。
静かにため息をついた。
玲「……大丈夫。誰より姉さんのことを大切に想う快くんなら、姉さんを護れる。そんな君だから僕は信頼して、姉さんを任せられるんだ。だから、例え姉さんが危ない目にあっても、君なら姉さんを助けてくれると信じてる」
玲於の言葉に、彼女に関しての不安な気持ちが薄れていく。
快「こんなの俺らしくねーよな。悪ぃ……少し神経質になってた。俺は天才奇術師怪盗キッド!
俺の辞書に不可能という文字はないんだ!」
(……俺にとって、最も大切な存在でもある憐だけは……絶対に死なせない)
俺はポケットの中にあったアメジストを、そっと手の中で握りしめた