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――― キーンコーン…カンコーン…
快(怪盗キッド、今夜も予告状!狙うはインド最大のサファイアか……寝不足の中森警部、目を真っ赤にはらして勝利宣言か…ケケケっ!こりゃ今夜の仕事も楽勝だぜ♡)
授業終わりを告げるチャイムを聞きながら、手に持った新聞を開く。己の所業に対し、世間の人々はどう反応を示すのか。気になりつつも、今日も今日とて学業と怪盗業を器用にこなす快斗は、今夜の仕事についても余裕な態度で構えていた。そして、その様子が顔にもくっきり出ていた。
快「へっ?」
調子の良い笑みを浮かべていると、快斗の背後から腕が伸びて読んでいた新聞を取り上げる。新聞を取り上げた人物は、くしゃくしゃにして丸めると、そのまま快斗の顔目掛けて放り投げる。
青「何がキッドよ!何が怪盗よ!頭にくるわ───!!」
快「あ、青子……?」
怪盗キッドを良く思ってない青子は、キッドに対する快斗の反応を見て、怒髪天をついた形相で快斗にくってかかる。彼女がこんなにも怒りの表情を表すのは理由がある。
青「これで今月はもう6件目よ!うちのお父さん、この一週間ろくに寝てないんだから!!」
快「じゃー、諦めて帰りゃーいいのに、あのヘボ警部…」
バキッ!!
父親に対する失礼な言葉にイラついた青子は、箒で彼の頭を叩いた。
青「全く…今日は青子の誕生日だっていうのに、お父さん今日もキッドにかかりきりなのよ!」
快「た、誕生日……??まさか、オメー17歳になるんじゃねーだろーな?」
青「何よー高二だから当たり前でしょ?」
快「それにしては胸も腰もお尻も……青子オメーまさか……男じゃねーか…」
ドカッ
青「し、失礼ねー!!」
体の至る所に不躾に触れられ、挙句の果てに男だと言われた青子は、容赦なく快斗をボコボコにしていた。そんな様子をクラスメイト達は遠巻きに見ていた。ふとその中の誰かが気づく。
黒羽快斗と中森青子の痴話喧嘩には、ある程度進めばこれ以上拗れないように、仲裁役が入り事態を沈静化させるのが通常である。しかし、その仲裁役が一向に二人の間に入らない。その仲裁役である神崎玲於は、手を組み考え込んだ様子で、自分の席に座っていた。
「玲於くんいいの?早く止めないと、青子も快斗くんも収集がつかなくなるわよ」
玲「……えっ??何??」
「ほれ……お前が止めないから黒羽と中森の夫婦喧嘩が終わらねぇぞ」
騒ぎ立てるクラスメイト達の反応にようやく意識を向ける玲於。
玲「青ちゃんストップ!!それ以上やったら快くんも再起不能になっちゃうよ!快くんも!!女の子の体を無闇に触れたら駄目だって言ってるだろ?」
先程のことを言い争っている青子と快斗を見て、喧嘩の原因が分かった玲於は座ったまま、声だけ張り上げて止める。いがみ合う青子と快斗だが、止める幼馴染の声に、互いに顔を逸らして言い合いを止める。クラスメイト達はやっと収まったと安心し、各々のやりたいことをやりはじめる。
青「快斗のせいで玲於に怒られちゃったじゃない!もういいわよ、快斗なんか誕生パーティーに呼んであげないんだから!」
快「へ〜〜っパーティーやるのか!しゃーねーな!今夜は仕事……いや、用事があるから遅れるかもしんねーけど、行ってやっか」
青「別にいいわよ……今回は憐が来てくれるから!」
快「何?!……アイツ来るのか?!」
快斗は倒れていた身を飛び起こして、青子に詰め寄る。
以前の青子の誕生日の日も、友人達を招いて誕生日会を行ったが、憐は参加しなかった。高校で新しく友達になった子達が、青子の誕生日を祝ってくれるのだから、そんな友人達を大事にして欲しいのだと敢えて参加を断っていた。結局その時は憐の気持ちを尊重した青子。憐が参加しない事実に悲しんだものの、後日憐から押し花のプレゼントを貰い、その悲しみも無くなった。
しかし、どうしても憐に参加して欲しい青子は今年こそはと憐に頼み込んだ。悩む素振りを見せていた憐も、自分の友人達に紹介したい、一緒に楽しんで貰いたいと必死に頼む青子の姿に、心動かされ、今回は承諾の返事をした。
青「だから別に快斗なんか来なくてもいいよーっだ!!」
快「なっ!……分かった!俺が悪かった、この通りだ!だから機嫌直せって〜……」
今年の誕生日会には、親友が参加してくれるとあって、調子を取り戻した青子。優位にたっていた幼馴染相手にあっかんべーと行儀の悪い態度で、逆に己の立ち位置を優位にさせた。反対に調子の良かった態度を一変して、しおらしい態度で青子にせがむ快斗。彼は必死だった……周りの目を気にせず青子に縋りついた。
(……青子の機嫌が悪かったら、憐がキレる。青子から訳を聞き出して、その原因が俺だと知ったら、絶対俺に怒ってくる。それは回避しないとな……)
それに、俺はアイツを怒らせたい訳じゃない……喜ばせたいのだ……!青子が無邪気に喜んでいるように、前回遠慮していたアイツが参加するなら、俺だって嬉しい。これでアイツが企画する盛大なショーに役者は揃った……益々気合いが入るぜ…!
縋りながらも勝気に笑っている快斗の姿に、不気味に思いつつも仕方なく機嫌を戻す青子。
快「今夜は俺と玲於のマジックショーで、パーッと盛り上げてやっからよ!」
青子の機嫌が戻ったことをいいことに、更に笑みを深くした快斗は、自身のポケットの中にある白いハンカチを取り出す。その時彼の制服の中から飛び出してきたのは、白い鳩と沢山の紙吹雪とトランプ。その行いから、全身全力で祝おうという気持ちが伝わってきた青子は目を輝かせる。
快「期待してていいぜ……な、玲於?」
快斗の勝気な瞳が玲於を貫く。話をふっかけられた玲於は、彼が自分に視線を送った本当の意味を察して、背筋を伸ばし緊張した様子で答える。
玲「きっと青ちゃんにとって忘れられない夜になるはずだよ!……だから、青ちゃん……絶対行くから待っていて欲しい……」
彼の眼差しは、いつもの柔らかい感じではなく、誠実に真っ直ぐに彼女を見つめていた。その様子に青子も、いつになく真剣な表情で答える。
青「(玲於……)うん、約束よ……絶対、絶対に来てね!」
彼女の朗な笑みに玲於は、息を飲んだ。そして再度心に刻む……今夜己の成すべきことを。
玲(今夜僕は人生最大の大勝負に出る。勝率なんて低いだろう……結局青ちゃんは昔も今も、快くんを好きなまま変わらないから……だけど、それでも良い……、このままじゃ何も変わらない……意識して貰えなきゃ、勝負の土台にすら立たせて貰えない。
このまま終わるのは嫌だから……僕だって君のそばにいる……僕は誰よりも君のことを好きな自信がある……だから、いい加減……僕を意識して欲しい……その綺麗な瞳に僕を写して欲しい……!)
長年秘めた想いを抱え、傍で見守り続けた心優しい少年は、今夜彼女に想いを伝える大勝負に出る。そんな彼の様子を見ながら、ただ1人傍で応援し続けた悪戯好きの少年は、彼らの行く末を静かに見守っていた。
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――― 数時間後、青子の家
貴「あ、青子〜……」
青「憐!情けない声出さないの!」
青子と一緒に今日のパーティーの飾り付けを終えた憐は、玄関の扉の前で来訪者が来るのを待っていた。これから来る来訪者は、青子の誕生パーティーの為に、集まってくれる青子の高校の友達。憐が所属していないコミュニティの子達なのだ。きっと良い子達なんだろう……青子がいつも高校の友達についてよく話してくれるから分かっている。だけどそれは自分が離れた後に出来た青子の友達……つまりは憐には面識がない女の子達。幾ら良い子だと聞いていても、人見知りの性格を持つ憐は、青子以外の知らない人間達とこれからパーティーを行うのだ。内気な憐の不安はなかなか無くならなかった。
パーティーの時間が迫る度に、緊張で胸の鼓動が大きく聞こえる。本当は今回も前回と同じように参加しないつもりだったのに、あまりの青子の気迫と必死さに遂に折れてしまったのだ。
貴(でもあんなに必死になって、青子に頼まれたら断れないよ……)
憐がぐるぐる考えていると、青子は首を傾げる。
青「そこまで緊張しなくてもいいのに〜……前にも話してる青子の友達だよ?」
貴「だって……今から来る子達、青子の友達だけど私は初対面なのよ?青子の友達だからいい子だと分かってるけど、緊張するし、私が居たら邪魔かもしれないし……」
いつにも増して自信の無い憐の姿に、青子は大きな声で必死に訴えた。
青「そんなこと言わないで…!幾ら憐でも、自分のことを邪魔だなんて言うと怒るよ…!」
貴「……」
青「そんな不安な顔をしないでよ。本当に大丈夫だから……!それにね皆に紹介したいんだ……青子には、こんなにも素敵な親友がいるってことをね?」
貴「青子……」
青「さぁ、胸を張って憐……!これから楽しい青子の誕生パーティーだよ?」
貴「うんっ……ありがとう、青子」
青子の心優しい言葉に、ようやく笑顔が戻った憐は、先程のウジウジした態度をやめて、自然体で来訪者達を待つのだった。
この後しばらくして、青子の家のインターホンが鳴らされる。扉を開けると、そこには青子の友達がプレゼントを持って立っていた。青子は満面の笑みで、憐は柔らかな笑みで来訪者達を迎え入れ、早速パーティーが始まった。
始まってみればどうって事ない。祝いに来てくれた友人達に、青子は早速憐を紹介した。青子の熱心な紹介に、憐は顔が熱くなるも悪い気にはならなかった。また嬉しい出来事もあった。
恵「久しぶりね、憐〜!元気だった?」
貴「元気だよ……恵子ちゃん」
恵「やだちょっと恵子ちゃんなんてやめてよ〜!私達、中学までは一緒だったでしょ?以前みたいに恵子って呼んでよ」
貴「……分かった。久しぶりね、恵子」
青子の友人達の中には、古くから知り合いである桃井恵子の姿があった。憐は青子経由で知り合い仲良くなったので、恵子の事は知っていてそれなりに仲が良かったが、高校が離れてから連絡を取ることも少なくなり、次第に疎遠になっていた。それでもお互い青子から話を聞くので、存在を忘れることはなかった。
恵「さて、青子をパーッと祝って、色々聞かせてもらうわよ〜……新しい学校での生活とか、かっこいい男の子の話とか…!」
貴「もう〜…今日は青子の誕生パーティーなんだから、私じゃないでしょ?……まぁでも、今日以外だったら話してもいいよ……かっこいい男の子の話以外ならね」
恵「それもそうね!でも嬉しい……また会ってくれるのね!」
ぎこちない雰囲気だった憐と恵子は、昔のような、和気藹々とした雰囲気に戻る。その様子を他の友人達も嬉しそうに見ていたが、この誕生パーティーの主役である中森青子が、ニコニコしながら一番嬉しそうに見ていた。こうして青子の誕生パーティーは、2人の仲が戻ったことを皮切りに盛大に始まったのだった。