世紀末の魔術師【完】
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コナンside
コ「そうだろう?青蘭さん……いや、スコーピオン!」
浦「ふっ…よく分かったねぇぼうや。」
真っ赤な炎が燃え上がり、部屋中が炎に包まれている。そんな危険な状況で、俺は蝶ネクタイ型変声機を使い、様々な人物の声色に変えて青蘭さん、基スコーピオンを追い詰めていく。スコーピオンに殺された寒川さん、乾さんの声で語りかければ、彼女は動揺して何発か銃を撃つだろう。その予想は当たり、彼女は1発だけだが、弾を消費してくれた。真意を彼女に悟らせないよう、堂々と自分の推理を話す。
コ「あんたがおっちゃんを狙ったのは、ラスプーチンの悪口を言ったからだ。そして蘭までの命も狙った!更に3発も撃てば流石に他の人間でもあんたが銃を撃っていることは分かる。そんなリスクを犯してまで、神崎を狙ったのは彼女がおっちゃん以上にラスプーチンを悪く言ったからだ。」
おっちゃんと蘭だけでは飽き足らず、神崎までもを狙ったのは、おっちゃん以上に悪く言ったから。
貴『あとラスプーチンって色んな女性と遊んでいた好色家だったらしいから、私はあまり好きじゃないんだよね……。』
コ「神崎は、ラスプーチンを女性遊びが激しい好色家だと言っていたが、ラスプーチンが好色家であるという逸話は、ニコライ大公や政敵による創作であると言われている。デマである可能性が高く、ラスプーチンにとっては不名誉な肩書きを持ち出してきたから、神崎も狙ったんだろう?」
スコーピオンは、嘲笑しながら答える。
浦「馬鹿な子だよ。私がスコーピオンだとも知らずに、よりにも寄って間違った不名誉な呼称を私の目の前で言ったんだからね……。」
後から振り返ってみると、おっちゃんや蘭をスコーピオンが狙った時、アイツは少し離れた所にいながらもはっきりと見ていたのだ。少なからずショックだったのだろう……まさか青蘭さんが、銃を取り出して二人を撃つだなんて考えてもいなかっただろうからな。
青蘭さんを神崎は少なからず、信用していた。その人物が突然の犯行に出たのだから、咄嗟に動けなかったんだ。
コ「例えそうだとしても、だからっておっちゃん達の命を奪っていい理由にはならねぇよ…!」
先祖の悪評を言われたからといって殺していい理由にはならない。俺は全力でスコーピオンを否定した。
浦「おしゃべりはそのくらいにしな!!可哀想だけど、アンタには死んでもらうよ!!」
スコーピオンは、手に持っていた銃を構える。彼女の持つ銃はワルサーPPK/S。マガジンに込められる弾の数は8発。
乾さんに1発、おっちゃんと蘭と神崎に1発ずつ、そして今ここで4発撃ったから、もう弾は残ってないはず。
浦「ふっ…いい事教えてあげる!予め銃に弾を装填した状態で、8発入りのマガジンをセットすると9発になるのよ!
つまり、この銃には弾がもう1発残っているって事!!」
……思った通りだったな。
コ「じゃあ、撃てよ…」
浦「!?」
コ「本当に弾が残ってんのならな……」
腕利きのスナイパーならマガジンよりも多く弾丸を仕込んでいると考えていたが、スコーピオンも例外ではなかった。だからこそ最後の1発を使わせる……態と撃たせるよう彼女を煽る。
そうすればきっと……
浦「バカな坊や…」
―――ガゥン…!
―――ビシッ!
スコーピオンは、キッドに撃った時と同じように右目を狙って撃ってくる!
浦「ど、どうして…!?」
スコーピオンは、俺の右目を目掛けて撃ったのに、倒れていない俺を見て、激しく動揺していた。しかし、すぐ持ち直して俺を撃とうとする。
――― ビシッ!
浦「あっ!!」
その時、どこからかトランプが飛んできて、スコーピオンが持つ銃の手に当たる。そのせいでスコーピオンは銃を落としてしまった。その隙を見逃さなかった俺は、キック力増強シューズで目の前にあった西洋の鎧の兜を蹴りあげる。
浦「うっ!!」
蹴り上げた兜は、スコーピオンの腹部に命中する。兜が当たったスコーピオンは、そのまま地面に倒れた。
コ「あいにくだったな、スコーピオン…この眼鏡は博士に頼んで…特別製の硬質ガラスに変えてあったんだ。」
スコーピオンなら右目を狙って撃ってくると考え、博士に頼んで特別製の眼鏡に持ってくるよう伝えていたが、思惑通りことが運んだ。
予想外のことと言えば……
白「コナンくん!大丈夫かい!?」
コ「う、うん…!」
白鳥刑事が駆けつけて俺の安否を問う。俺は何も問題ないことを伝える。
コ「………………。」
スコーピオンと問答の最中に、どこからか飛んできたトランプのカード。そのカードは役目を終えたかのように、床に刺さっていたが周りの熱気で、一瞬で燃え上がった。
白「さぁ、ここから脱出するんだ!」
気絶したスコーピオンを抱えあげた白鳥刑事が、切羽詰まったように声を張り上げる。
しかし、俺は今までの出来事、密かに抱いていた違和感を振り返りながら考えをめぐらしていた。……ようやく全てが繋がる。俺は静かに笑みを浮かべた。
(そういうことか……。お前の予想は当たってたぜ、神崎。奴はちゃんと生きてたよ。)
白「コナンくん!!」
俺は白鳥刑事から声をかけられるまで、自分の思考に耽っていた。
──────────────────────
コナン、白鳥を除いた小五郎達は、城から脱出し、火に包まれた城を呆然と見上げていた。
歩「コナンくん……」
哀「バカ…」
蘭(新一……)
貴(大丈夫……、あの人と一緒ならコナンくんも無事……、大丈夫だから……)
皆が思うことはここにいないもの達の安否。
歩/光「「コナンくーん!!」」
元「コナンーーー!!」
耐えきれなかった子ども達が、燃え上がる城に向かってコナンの名前を呼び上げる。
コ「あんだよ、うるせーな!!」
「「「「「!?」」」」」
すると背後から満更でもない声が返ってくる。皆で振り返ると、コナンがエッグを持ったまま、車に背を預けて立っていた。
歩「コナンくん!!」
コ「このエッグ、白鳥刑事がスコーピオンから取り返してくれたよ…」
貴「!!」
小「白鳥が?!で、スコーピオンはどうした?」
コ「逮捕して、車で連行していったよ…スコーピオンの青蘭さんを…」
小「何ーっ?!」
セ「青蘭さんがスコーピオン!?」
憐以外は、スコーピオンの正体が浦思青蘭だったことに驚いていた。
コ「はい、これ夏美さんに渡してくれって……」
香「ありがとう…」
コナンは持っていたエッグを、夏美に手渡した。
小「夏美さん、申し訳ありません…こんなことになってしまって…」
香「いえ、お城は燃えてしまいましたけど…私には曾祖父が作った大事なエッグが残ってます…それに、地下室は無事だと思いますし…」
沢「はい、落ち着きましたら曾祖母様のご遺骨を…喜市様と一緒のお墓に埋葬致しましょう。」
確かに曾祖父が建てた城は燃えてしまったが、曾祖父が残してくれたエッグと、ひとつも写真が残されていなかった曾祖母の遺骨と顔が見られたのだ。そして、長年離れ離れになっていた曾祖父と曾祖母を、やっと同じ墓に埋葬出来る。それだけでじゅうぶんなのだと彼女は笑っていた。
小「それにしても、とうとう現れなかったか……キッドの奴。」
歩「やっぱ死んじゃったのかなぁ……」
スコーピオンと同じく、メモリーズ・エッグを狙っていたキッド。あの白い怪盗はついに姿を見せずに終わったと思っていた小五郎達だったが、コナンが静かに否定する。
コ「いや…奴は生きていたよ…憐ねーちゃんが言ってた通りにね。」
今にも泣きそうな憐に振り返りながら、言葉を紡ぐ。城から脱出する時も、脱出した後も、考えていたのはコナンの安否と怪盗の安否……。
スコーピオンから身を呈して庇われた時、彼の正体にやっと気づいた憐。その時にはもう、キッドはコナンを追って離れてしまっていたから、ろくにお礼を伝えられないまま、別れてしまったのだ。ずっと信じていた彼の生存を……しかし、他の誰かからの確証を得られるまで、安心はできなかった。でもこれでやっと……安心出来るかもしれない。
貴「ねぇ、コナンくん……白鳥刑事は怪我してなかった??」
コ「……してないよ、無傷だった……キッドはちゃんと生きてたよ……。」
貴「そう、やっぱり生きてたんだね……、怪我もないんだね……、良かった……キッドっ……。」
溜めていた涙をようやく流した憐。コナンだけは憐を見て、密かに安堵していた。この中で彼女だけが、あの怪盗の身を心配していたのだから。
泣いている憐を横から支え、コナンを後ろから盗み見ていた蘭。
―――こうして、スコーピオンの事件、インペリアル・イースター・エッグの謎は解決されたが、彼らの問題はまだ残っていた……。