世紀末の魔術師【完】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
歩「わぁっ!!鳥がいっぱい!!」
光「あれ?変ですね…大きい鳥だけ頭が2つありますよ!」
歩美ちゃんと光彦くんの言う通り、壁一面には鳥が沢山掘られていた。そして真ん中にある大きな鳥にだけ頭が2つあり、その頭の上には立派な王冠があった。
コ「太陽、光、もしかしたら…白鳥さん!あの双頭の鷲の王冠に、ライトの光を細くして当ててみて!」
白「あ、あぁ…。」
コナンくんの言う通りに、懐中電灯の光を細くして双頭の鷲の王冠に当てる白鳥さん。
すると王冠が一際光だし、ゴゴゴと音をたて始めた。
白「この王冠には光度計が組み込まれているって訳か……。」
王冠に光度計が組み込まれており、特定の波長の光を当てると仕掛けが作動する仕組みのようだ。コナンくんが立っている地面が下に降りていく。そこには更に奥へと進める扉が見つかったのだ。
元「スッゲー!!」
白「な、何て仕掛けだ…。」
私達は喜市さんの仕掛けたからくりに感心していた。
──────────────────────
更に下へと歩みを進める。先を進むと、大きな空間にたどり着く。天井はが高く丸みを帯びている。歩美ちゃんが言うように卵の中にいるみたいそして奥には大きな箱が置いてあった。
白「棺のようですね……」
貴「!!」
棺!?なんで棺が夏美さん家のお城の中に……それに棺ってことは、中にご遺体があるってことだよね……分かってはいるけど、怖いものは怖い。棺より少し離れて立つようにした。
小「造りは西洋風だが、桐で作られている。それにしてもでっかい錠だな……。」
コ「あっ!!夏美さんのあの鍵!!」
香「えっ?……そっか!!」
夏美さんは、持っていた大きな古い鍵の存在を思い出し棺の錠に鍵をさす。するとその鍵はピッタリはいり、錠が開いた。
香「この鍵だったのね……」
小「開けても宜しいでしょうか?」
香「は、はい……。」
小五郎さんが夏美さんの許可を取って棺の蓋を開ける。あまり棺の方に目を向けられないけど、結構重たいようだ。
小「遺骨が一体……それにエッグだ!エッグを抱くように眠っている!夏美さん、この遺骨は曾お祖父さんの……?」
香「いえ、多分曾祖母のものだと思います。横須賀に曾祖父の墓だけあって、ずっと不思議に思っていたんです…。」
棺の中に遺骨とエッグがある……しかも夏美さんの曾祖母さんの遺骨なら、怖がっている場合ではない。背けていた目を棺の方に向ける。
貴「曾お祖母さんだって夏美さんの家族なのに……喜市さんのお墓に一緒に入れてあげられなかったのかな。」
生まれた国は違うけど、そんな二人が出会って恋をして、家族になったのだから……。もし、この遺骨が曾お祖母さんならずっと一人でこのお城の中にいたのかと思うと……
(それって凄く寂しいじゃない……。)
白「今の時代ほど人種に寛容ではなかった時代だったのかもしれませんね。でも、貴女のその優しさは素晴らしいものですから、大切にしてくださいね。」
貴「……ありがとうございます。」
私を優しいと伝えてくれる白鳥さんの優しさが嬉しかった。
香「憐ちゃん、曾祖母のことを気にかけてくれてありがとう。曾祖母はロシア人だった為に先祖代々の墓に葬れなかったのかもしれません。」
夏美さんも私に感謝を伝えてくれた。その気持ちが尚更嬉しかった。
セ「夏美さん、こんな時にとは思いますが…エッグを見せていただけないでしょうか?」
香「はい、どうぞ……」
遺骨が持っていたエッグを、セルゲイさんがくまなく調べ始める。しかし、このエッグの中身は空っぽだった。
小「そんなバカな!?」
浦「どういうことかしら?」
疑問符が飛び交う中、歩美ちゃんがとびきり元気な声で言い放つ。
歩「それ、マトリョーシカなの?」
浦「えっ?!マトリョーシカ?!」
小「何だそのマト…リョーシカ…って?」
浦「人形の中に小さな人形が次々と入っているロシアの民芸品です。」
セ「確かにそうなのかも知れません…見てください!中の溝は、入れたエッグを動かないように固定する為のものみたいです。」
小「クソッ!あのエッグがありゃ確かめられるんだが!」
小五郎さんが悔しそうに両手で拳を作る。確かにあのエッグさえあれば確かめられるのに……。
白「エッグならありますよ……。」
「「「「!?」」」」
白「こんなこともあろうかと、鈴木会長から借りて来たんです…」
白鳥さんが予め鈴木さんにエッグを借りてきてもらっていた。これなら確かめられる!でも、鈴木さんが良く預けてくれたな〜……
小「お前……黙って借りてきたんじゃねぇだろうな……?」
白「や、やだなぁ…そんなはずないじゃありませんか…!」
(ほんとかなぁ……?)
白鳥さんの態度にじゃっかんの不安を抱いているとセルゲイさんが「早速試してみましょう!」と言い、エッグの中にもうひとつのエッグを入れてみた。するとエッグはピッタリハマったのだ。
セ「つまり喜市さんは2個のエッグを別々に作ったんじゃなく…2個で1個のエッグを作ったんですね。」
それもじゅうぶんすごい事なんだろうけど、なんか腑に落ちない。
(〝世紀末の魔術師〟と呼ばれた夏美さんの曾お祖父さんなら、それこそこのエッグ達を使ったからくりの仕掛けを作ってそうなのにな〜……)
それはコナンくんも同じようなことを思ったみたいで、他の仕掛けがあるんじゃないかと周辺を探し始めた。そして何かを見つけたように、血相変えてセルゲイさんに声をかける。
コ「セルゲイさん!そのエッグ貸して!」
小「またコイツは!……」
白「まぁ、待ってください毛利さん!何か手伝うことは?」
コ「ライトの用意を!」
コナンくんの指示をもとに着々と何かの準備が行われていく。私達含めコナンくん以外は、何が何やらさっぱりだ。でもあの子のアイデアは、どこからそんなこと思いつくのだろうってことが多いが上手くいったケースが多い。それならばあの子に全てを任せてみるのも悪くない。
コ「ライトの光を暗くして台の中に!!」
白「分かった!」
コ「セルゲイさん、青蘭さん!ロウソクの火を消して!」
小「一体何をやろうってんだ?」
コ「まぁ見てて……」
セルゲイさん、浦思さんがロウソクの火を消すと、部屋の中の灯りが消え辺りは真っ暗になる。しかし、そのおかげで懐中電灯の光に照らされたエッグがより神秘的なものへと皆の目に映し出される。
蘭「エッグの中が透けてきた…。」
貴「エッグの中の皇帝一家が見える…。」
セ「ネジも巻かないのに皇帝一家の人形がせり上がっている!」
白「エッグの内部に光度計が仕組まれているんですよ…。」
エッグの中の光度計が、懐中電灯の光に反応して、からくりが動き出す。エッグ内部にあった黄金の皇帝一家の人形が、ネジも巻かないのに勝手にせり上がってきたのだ。そして、下からの光が側面にあるガラスに反射し、真ん中にある皇帝の手元にある本に集結する。集結した光は真上にあるエッグ上部のガラスから放出し、私達がいる部屋の空間上部に映し出される。
小「な、何だぁ…?!」
セ「こ、これは…!!」
歩/光/元/「「「うわぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」」」
貴「!!」
―――― この光景を、私はきっと忘れない…。
360度円を描くように、写真が映し出される。
セ「ニコライ皇帝一家の写真です! 」
セルゲイさん曰くどの写真も、ニコライ皇帝一家が写った写真らしい。この仕掛けを見て、私達はエッグの名前の本当の意味に気づく。
小「そうか!エッグの中の人形が見ていたのはただの本じゃなく……」
蘭「アルバム……。」
貴「だから〝メモリーズ・エッグ〟だったのね……。」
何故51個目のエッグがメモリーズ・エッグと呼ばれていたのか、本当の意味がこのからくりに隠されていたなんて……。
セ「もし皇帝一家が殺されずに、このエッグを手にしていたら…これほど素晴らしいプレゼントはなかったでしょう…。」
セルゲイさんの言う通り、本当に素晴らしいプレゼントだ。
小「まさに世紀末の魔術師だったんですな…貴方の曾お祖父さんは……」
香「それを聞いて曾祖父も喜んでいる事と思います。」
あの世で喜市さんも、子孫である夏美さんにこのからくりを見せられたことを喜んでいるだろう。
コ「ねぇ夏美さん…あの写真、夏美さんの曾お祖父さんじゃない?」
香「えっ?」
コナンくんの言葉に耳を傾ける。
コ「あの2人で椅子に腰掛けて撮っている写真…」
香「ほんとだわ!!」
コナンくんの指が指し示した写真は、歳若く落ち着いた男女2人が長椅子に腰掛けて座っている写真だ。男性は、この城を案内された時に執事室の写真でも見た喜市さんだと分かる。そうなると、その隣に写っているのが恐らく……
香「じゃ、一緒に写っているのは曾祖母ね!」
貴「あの人が夏美さんの曾お祖母さん……」
香「あれが曾お祖母様……やっとお顔が見られた……。」
喜市さんの写真のみ残されていて、ずっと会えなかった曾お祖母さんが、長い時を経て、喜市さんのからくりによって、子孫である夏美さんと出会えた奇跡……この光景に立ち会えている私達は、とても恵まれているのだろう。部外者の私ですら、この奇跡に感動して涙がこぼれ落ちそうになる。
貴「良かったですね夏美さん……!曾お祖母さんと会えて……」
香「えぇ!本当に良かった……」
この写真を見られて一番嬉しいのは夏美さんだろうな。
貴「やっぱり家族ですね…」
香「えっ?」
貴「だって夏美さんの曾お祖母さん、お顔が夏美さんとよく似てますね……」
そう夏美さんに伝えると、夏美さんはもう一度喜市さんと曾お祖母さんの写真を見つめる。
香「……ありがとう、憐ちゃん!貴女から見ても、私と曾祖母が似ていることがわかって嬉しいわ。それに私は瞳の色だけじゃなく、容貌も曾祖母から受け継いでいたのね……。」
曾お祖母さんに似ているお顔で、夏美さんは嬉しそうに笑ってくれた。
無理を言って同行させてもらったけど、勇気をだして来てよかった……。でなければ、私はこの素晴らしい出来事を知らずにいただろうから。
私の目的は達成された……それでも心に少し影が残る。この素晴らしい光景を見ていた時でも、頭の片隅に白い怪盗のことがチラついていたからだ。白い怪盗はいまだ存在を見せずに、生死不明のまま事が運んでいた。