世紀末の魔術師【完】
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西「寒川さんが部屋で死んでます!!」
東京に帰る途中の豪華客船で事件は起きた。一緒に乗船していたフリーの映像作家、寒川さんが右目を撃たれて亡くなっていた。状況から見て、殺人事件であると小五郎さんは言っていた。すぐに警察が呼ばれ、少し経つとヘリコプターから目暮警部率いる警視庁の人達がぞろぞろやってきていた。
寒川さんの態度は目に余るものだったけど、それでも殺されるのはなんだかな……。ままならない気持ちで、小五郎さん達のやり取りを見ていると、急に警察の人と目が合った……すぐに逸らされたけど。
時間にしては、ほんの一瞬だったけどなんだろ……なんか気になるな、あのモジャモジャ頭の警察さん。高木刑事が名前を口に出していた。
確か、白鳥警部補だったっけ……
目暮警部と白鳥警部補は、高木刑事や他の警察の人を連れて、ゾロゾロと寒川さんの遺体がある部屋へと向かった。
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警察の捜査の結果、現場となった寒川さんの部屋から西野さんのボールペンが見つかった。これにより、寒川さんを殺害した犯人は西野さんだと容疑がかけられる。
小「入ってない貴方のボールペンが、何故部屋の中に落ちてたんだ!!」
西「分かりません……」
目「では7時半頃、何をしていました?」
西「えーと……7時10分頃、部屋でシャワーを浴びて、その後ひと休みをしていました。」
園「パパ!まさか、西野さん……」
鈴「いや、そんなハズはないと思うが……」
西野さんの疑いが益々強くなる。
コ(もし、西野さんが寒川さんを殺害した犯人なら……キッドを撃った犯人も西野さんの可能性が高くなる!)
蘭「………………」
いつもだったら、心配しながら見守っている蘭も、工藤くん疑惑があるコナンくんに対して厳しめの表情でずっと観察していた。本当にコナンくんが、工藤くんかどうか見極める為に今回は口出しせず見守ることに決めたらしい。
小「コラ、ボウズ!勝手に動くんじゃ……」
蘭「あっ、いいの!私が……」
じっと待てるタイプでは無いコナンくんは、早速事件の手がかりを探す為、部屋を駆け抜けて行った。小五郎さんが怒鳴った後、代わりに蘭がコナンくんを追いかけて出ていった。
貴「毛利さん、すみません……私もちょっと行ってきます!」
小「憐くんまで……ったく……。」
コナンくんと蘭の行動が気になって、私も後を追いかけた。
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(どこ行ったんだろう……蘭とコナンくん。)
蘭の後を追いかけて、部屋を抜け出したものの気づけば蘭もコナンくんもいなくなっていた。
貴「あのふたり足速いな〜……どこ行ったの。」
キョロキョロ見回していると、急に私の肩に誰かの手が置かれた。
貴「誰?!……」
驚いて振り返るとそこには
貴「貴方は……白鳥さん。」
何故か無性に気になった白鳥さんが立っていた。
白「すみません……しかし、女性ひとりで出歩かれるのは危険です。銃を持った犯人がうろついているかもしれませんので。」
貴「で、でも蘭とコナンくんがまだ……」
白「その2人なら、先程皆さんの所へ戻るよう伝えましたので大丈夫ですよ。多分今頃着いているでしょう……さぁ貴方も、私と一緒に皆さんの所へ戻りましょう。」
そう言って白鳥さんに言われ、一緒に戻ることになった。
貴「………。」
白「………。」
移動する間、暫く私達の間に会話はなかった。しかし、居心地はというと……そこまで悪くは無い。ほぼ初対面の……しかも大人の男の人といるのは、私にしてはハードルが高いのだが、それでもやはり……特に嫌な感じはしない。
(何でこんなにも気持ちが落ち着くのかな。)
前を歩く白鳥さんの背中を見上げる。とても屈強な体格の持ち主という訳でもないし、私が無条件に安心する要素なんてどこにもない……。
(不思議な人だな……。)
白「ほら、着きましたよ。」
白鳥さんが振り向き、道を開ける。白鳥さんについて考え事をしていた私は、遅れて顔を上げた。
白鳥さんの目線の向こうには、広間に集まっている蘭達の姿があった。
貴「ありがとうございます、白鳥さん。蘭とコナンくんを連れ戻して下さって……。」
白「いえいえ、コナンくん達もそうですが……貴女が無事で、本当に良かった……。」
……今日初めて会ったのに、そんなこと言ってくれるなんて優しい人だな。
白「それでは、私は目暮警部と一緒に引き続き事件の捜査に戻りますね。」
貴「はい!頑張ってくださいね。」
白「……えぇ。ではまた、今度会えたらゆっくり話しましょう……憐さん。」
そう言うと白鳥さんは、また現場の部屋に続く道を歩いていった。
貴「そういえば私……、白鳥さんに名前教えたっけ??……蘭に聞いたのかな。」
白鳥さんへの謎が増えたが、他の人から聞いた可能性も考えて、特に気にせず蘭達と合流したのだった。
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憐を送った後、彼は現場ではなく船のデッキに出て、空を見上げていた。今宵の金色の月は、とても綺麗で……江古田のお化け騒動解決後
の帰り道で、幼馴染と見たあの丸い月のようだ。そんな眩い月を好ましく思いながらも、頭の中ではその幼馴染のことを考えていた。
(……ったく、今回も殺人事件に巻き込まれたのかよ。……アイツ、もしかして呪われてんじゃねーのか💧)
何故こうも自分の幼馴染は、厄介な事件に巻き込まれるのだろうか。真剣に考えてみても分からない……少なくとも1年前まではこんなことはなかった。怪盗を始めた自分ならまだしも、至って普通の幼馴染が何故と頭を巡らすも答えは思いつかない。今は変装している身……変装に使った刑事は、アイツとは初対面。迂闊に近づく訳にもいかない。分かっている、分かってはいるが……やはり心配になって要らぬお節介をやいてしまった。
以前の殺人事件の時よりは、そこまで精神的な負荷はなさそうに見える……だが、それとは別のことでも悩んでいるように見えた。
(俺が来る前に……一体何があったんだ。)
アイツの事になると、どうも思考が纏まらない……しかし、そうも言ってられないことが起きてしまったのだ。彼女のことは一旦置いておき、とにかく今までの情報を振り返ってみる。
あの日、エッグを盗み出した後、彼はハンググライダーで大阪の街を飛行し、大阪湾の近くで降下する予定だった。その後予定通り来ていた彼のお付の者と協力者である親友にエッグを渡し、闇に紛れるつもりが、飛行中に誰かに右眼を狙撃され、バランスを崩し、海の中へと落ちた。上空には警察のヘリコプターが飛んでおり、海上にはこれまた警察の船が自分を捜索していた為、決して見つかる訳にはいかず、泳いで逃げ切った。その時に携帯が水没、メールが受信できるが送信できないという奇妙な壊れ方をしてしまった。そのせいで、今朝に届いた幼馴染のメールもすぐに返信出来ず、代わりに親友の玲於に送って貰ったのだ。……あの時は焦ったぜ。
エッグを盗んだことにより命を狙われたこと、殺人事件が起きたこと、何か関連があるはず……そして、名探偵なら情報を得ているはずだと考え、名探偵を探し、後をつけていたら衝撃の事実を知る。キッドを狙撃した人物と、今回寒川を殺害した犯行の手口が全く同じだった。その共通点から、阿笠博士にそのような手口で犯行に及ぶ者がいないか、調べてもらうように頼んでいた。
(……なるほどな、俺を撃った奴と寒川って人を殺したのは、恐らく同一人物。名探偵の話によると、そいつは色んな国でロマノフ王朝の財宝を盗み、いつも相手の右目を撃ち抜くスナイパー……スコーピオンと呼ばれる人物。ここまでは玲於に調べてもらったのと同じ。)
そう……ここまでは、自分の親友に調べてもらったのと同じ内容。しかし、その先彼にとってその情報よりも有益な情報が手に入ったのだ。
それは頭の回転が早く、見た目は小学生だが、思考、言動が見た目の年齢にそぐわない妙に大人びいた少年。己が唯一認めた好敵手、探偵であるあの少年の正体。
(ただのガキじゃねーと思ってたが、まさかあの高校生探偵、工藤新一だったとはな……。どういう理由で小さくなっているのかは不明だが、あの推理力……間違いない。)
漆黒の星事件の時も、奇術愛好家殺人事件の時も、彼は見事な推理を披露してみせた。そいつの実力は目の前で確認済だった為、案外すんなり受け入れた。
(早いとこ名探偵には事件を解決してもらって、俺の仕事も早めに終わらせねーとな。)
あの少年がいるなら事件解決も時間の問題……いつものならそう思うのだが、……しかし今回の仕事は一筋縄ではいかない……そんな予感を快斗は感じ取った。
何気なく視線を下に向け、腕時計を見る。憐を送った後からそれなりに時間が経っていたことに気づく。これ以上離れていると他の人間から怪しまれてしまう。彼は情報の整理もそこそこにして、今度こそ上司の元へと向かうべく、止めていた足を動かす。
(まだまだ問題は山積みだけど、お前の顔が見れて安心したぜ、憐……。)
憐の今回の厄介事の半分は己のせいなので、巻き込んでしまった罪悪感はあるが、それでも……アイツの顔を見ると安心する。俺は、怪盗キッドの前に黒羽快斗なんだと思い出させてくれる。
────── 仕事最優先……しかし、その時いざとなれば……お前だけは絶対守り抜く。
────── それだけは……
────── 怪盗キッドでも、黒羽快斗でも変わらない……
─────── 俺の真実だ……。