世紀末の魔術師【完】
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私、蘭、園子、香坂さん、そして浦思さんを呼んで女性ばかりの女子会みたいなものを船室で開いた。……まぁ、コナンくんもいるけど、子どもだしノーカウント。
園子と香坂さんが、私と蘭の部屋に訪ねてきて合流、その後浦思さんの部屋に向かった。浦思さんの部屋は私達の部屋と基本構造は変わらないけど、棚の上には写真立てが飾られていた。しかし、伏せられてしまって誰かは分からなかったけど、園子が浦思さんに「彼の写真?」聞くと、はっきりしない態度ではあったが肯定されたからきっとそうなんだろう。
香坂さんも浦思さんも同性から見ても美しくて、大人の女性だから憧れてしまう。そんな二人の事を知りたくて、私達は二人に色々聞いていた。
蘭「じゃ、夏美さんは
香「そうなの…だから、時々変な日本語使っちゃって……」
貴「変な日本語……?」
バイリンガルやマルチリンガルの人って、その国の言葉に合わせて使い分けてるだけでもう凄いから、香坂さんの言う変な日本語ってなんだろう?
香「あっ!変な日本語って言えば、子どもの時から妙に耳に残って離れない言葉があるのよね…。」
園「へー…何ですか?」
香「〝バルシェ ニクカッタベカ〟」
蘭/園/貴「「「えっ?」」」
なんなの、その日本語……ていうか本当に日本語なの?なんか別の国の言語に聞こえるんだけど。
香「〝バルシェは肉を買ったかしら〟って意味だと思うんだけど、そんな人の名前に心当たりないのよね。」
(確かに……なんか耳に残るな。バルシェ ニクカッタベカ……。)
そんなことを考えていると、コナンくんが香坂さんの顔を見つめてあることに気づく。
コ「あれ?夏美さんの瞳って…」
香「そう、灰色なのよ。母も祖母も同じ色で、多分曾祖母の色を受け継いたんだと思う…。」
貴「素敵な色ですね……。」
確かに香坂さんの瞳の色は、仄かな温かさを感じる灰色だ……ロシアの血も入ってるからか、日本人離れしているような雰囲気があるんだよね。
蘭「そういえば、青蘭さんの瞳も灰色じゃない?」
蘭の発言で、視線は一斉に浦思さんに向けられる。園子の言う通り、中国の方も灰色なんだ……。
こうして楽しい談笑も後半へ……浦思さんの中国語の読み方を教えて貰ったり、蘭と園子の中国語での読み方を教えて貰ったりと浦思さんのこともだいぶ深堀される中で、香坂さんが突然言い出した。
香「あの…青蘭さんって私と同い年くらいだと思うんですけど…」
浦「はい、27です。」
(え?……全然見えない……。)
実年齢よりも若く見える。
香「やっぱり!何月うまれ?」
浦「5月です…5月5日。」
香「私、5月3日!2日違いね!」
歳だけじゃなく、生まれた日まで近いなんて……普段は全く異なる場所に二人とも生きていたけど、もしお互い近くに住んでいたら、私と青子や蘭と園子みたいに仲のいい幼馴染になってたかもね。
二人の間に親近感が芽生えたんじゃないのかな。微笑ましく見守っていると、コナンくんが笑顔で会話に入る。
コ「じゃあ2人とも僕とは1日違いだ!!」
蘭「!?!?」
貴「??」
コナンくんの発した内容に、蘭が大袈裟にコナンくんの方を振り返った。思わず蘭の方をじっと見つめる。
(コナンくんの発言によれば、5月4日が誕生日って事になるけど……それが気になるのかな。)
後で今の態度について、蘭に聞いてみようかな。
蘭「……。」
(……蘭?)
コナンくんと香坂さんは、お互いの誕生日が近い偶然に驚いて和気あいあいと話している中、段々下を俯いて元気が無くなる蘭。そんな蘭を見て心配になった私は、一人になったタイミングを見計らって、蘭に落ち込んでいた理由を聞こうと思った。
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先程の女性ばかりの会は一旦お開きとなった。続々と部屋を出ていく中、私は蘭に声をかけ1人残ってもらうことにした。香坂さんと浦思さんとコナンくんの誕生日の話から急に元気が無くなった蘭。訳も気になるが、天真爛漫な彼女が落ち込んでいるのを見ると悲しくなる。
私は友達だし、困っているのなら力になりたいのだ。……いつも仲良くしてくれる彼女のために。
貴「蘭、大丈夫?」
蘭「……えっ?どうしたの憐?」
笑ってるけど、やっぱりいつもの彼女らしくない。無理やり笑ってるみたいだ。
貴「それはこっちのセリフ。ねぇ、蘭……辛いなら辛いって言っていいの。」
蘭「!?」
貴「理由は分からないけど、今蘭が苦しんでいることは分かる。……多分工藤くんの事じゃないの?」
蘭「……なんで、憐は……」
貴「だって私達……友達でしょ?友達が辛そうにしていると、私だって悲しくなるよ。……それに蘭にそんな顔させるなんて、工藤くんぐらいしかいないだろうから。」
蘭「……っ!」
私も無理して強がってたら、快斗にはバレていた。ちゃんと分かるのだ……。
貴「今、工藤くんは蘭のそばにいない。だからね、私でよければ力になるよ。」
彼女の隣に座って、顔を伺う。蘭は俯いた顔をあげ、恐る恐る胸の内を話してくれた。
蘭「今迄も何度か考えたことがあった……でも、その度にそんな訳ないって自分に言い聞かせてたの……。」
貴「……。」
彼女は手を胸の真ん中に持っていく、まるで何か大きな秘密を抱えているかのように……。
蘭「私……コナンくんが、本当は新一なんじゃないかって思うの。」
貴「!?」
コナンくんが、工藤くん……??
貴「それはまた……どうしてそう思うの?」
……確かに顔はよく似ていると思うけど、身長は短期間で変えられるものじゃない。どう見てもコナンくんと工藤くんでは背丈が違う。そんなこと蘭だって分かっていると思う……なら、何故そう思ったのか、必ず理由があるはず。
蘭「新一がいなくなった日から、入れ替わるようにコナンくんはやってきた……。しぐさや行動、サッカーが得意な所、何もかも似てる……まるで小さい頃の新一に戻ったみたい。それに新一がコナンくんと一緒にいる所を見たことないし……何よりコナンくん、さっき自分の誕生日を言ってたよね?」
貴「う、うん……確か香坂さんが5月3日で、浦思さんが5月5日。コナンくんは2人の日付と1日違いって言ってたから、5月4日よね?あの時も、蘭はコナンくんの誕生日を気にしてたみたいだけど、それがどうしたの?」
蘭は、唾を飲み込んで改めて驚きの事実を口にした。
蘭「5月4日は新一の誕生日でもあるの……。」
貴「えっ…………?!」
た、誕生日まで一緒だなんて……そんな偶然あるのだろうか。
蘭「ここまで似てるのに、更に誕生日が一緒だなんて……そんな偶然あると思う??」
貴「それは……」
私も言葉が出せなくなってしまった。それぐらいの出来事なのだ。
蘭「憐はコナンくんのこと、大人びいてるって言ってたけど、私もそう思う……コナンくんが時々新一に見えるの。」
私がコナンくんに対して感じていたことは、蘭も感じていた事だった。
蘭「………ねぇ、憐だったらどうする?」
貴「……えっ??」
蘭が俯きながら、問いかける……。
蘭「……ずっと離れていると思っていた大切な人が……本当は、自分の近くに居て……それなのに、こっちには何も教えてくれず……今も隠して続けているなら……そんな時、憐ならどうする……?」
貴「…………。」
切なげな笑みを浮かべた蘭の目元には薄い膜が張っていた。
蘭「私は……信じて待ち続けていいのかなっ……?どんな気持ちで、待ってたらいいの……??アイツと……どんな風に接すればいいのか……分からないよ……。」
蘭は健気に工藤くんを待ち続けている……ちょくちょく文句は言うものの、それでもずっと工藤くんの帰りを待っていた。それが蘭の優しさでもあり、強さでもあると思っていたけど、やっぱり人間なのだから、いずれ限界はくるもの……そうだよ、蘭だって人間なのだから……平気なわけないのだと改めて気付かされた。
長年ずっとそばに居たのに……信頼されていると思っていたのに、その人は大事な事は何も教えてくれず、自分は蚊帳の外……無力感を感じているのだろう。そして本当に自分はこのまま待ち続けてもいいのか、自信を失っている。
そんな悲しそうな蘭に、私は何て言えばいいのだろうか……いや、私は彼女の力になると言ったのだから、解決は出来ないけど、気持ちに寄り添うことは出来る。
貴「もし、本当にコナンくんが工藤くんだとして……何故小さくなってるのかだとかは、私の未熟な頭では分からない……。だけど、工藤くんが蘭に何も言わないのは、やむを得ない事情があるのかもね……工藤くんの事だから、蘭に心配かけたくないんじゃないかな。」
蘭「……心配かけたくない。」
貴「工藤くんにとって安心してそばにいられるのが蘭だから……蘭だけは、巻き込みたくない……何があっても守りたいんじゃないかな。もし、私が工藤くんだったら、そう思って蘭だけには伝えられないかもしれないな〜…。
でもね私は、工藤くんじゃないから、本当の所は本人しか分からない。」
蘭「……。」
少しでも気持ちを楽に出来たらいいけど、私は工藤くんじゃないから、蘭の本当の悲しみを取り払うことは出来ない。
貴「それにもし私も同じ状況なら……相手から伝えてくれるのを待つかな。何か事情があるのかもしれないから…………でも、その人に身の危険が迫っていたり、自分がどうしても気になるなら、その人に直接聞く。だって、大事な人なら、私は助力を惜しまないよ……!」
それに、今の蘭の気持ち……少しだけど私も分かる。……ずっとそばにいた大切な人が、もしかしたら犯罪に手を染めているかもしれない。なんで怪盗を始めたの?それはいつからなの?なんで相談してくれなかったの?あんなに一緒にいたの?本当の所は分からない、今だ生死は不明……今朝の玲於のメールもこうなってくると怪しく見える。……快斗がメール出来なかった理由、携帯の調子が悪いって玲於はメールしてくれたけど……自分事海に落ちたから携帯が壊れたじゃないの……?
私は、一体どこに感情を置けばいいのだろうか……ぐちゃぐちゃに混ざったこの感情を……どう処理すればいいのだろうか……。
──── もしも、怪盗キッドの正体が ────
─────── 快斗だったら ────────
────── 私は…………… ────────
蘭「……憐、ありがとう。そうだよね……結局本人に聞かなきゃ真実は分からないよね……。
よし、私確かめてみる。そうしたらきっと……分かるよね。」
自身の手で涙を拭い、気持ちを切り替えるように前を向く蘭。……心も身体も強い女性だ。
貴「その意気だよ!でも、無理はしないでね……また何かあれば聞くから。」
蘭「ありがとう、憐!言っておくけど、憐もだからね……力になるからちゃんと言ってね。」
貴「…………うん!」
ただでさえ工藤くんの事でいっぱいな蘭に、これ以上負担をかけたくない。それに私個人の問題なのだから……大丈夫だ。大丈夫だよ、まだ私はやれる……。