世紀末の魔術師【完】
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私はこの後東京に戻ったらどうするか決めかねていた。……本来であれば、そのまま戻るつもりだったんだけど、昨夜エッグを盗み出したキッドが、何者かに拳銃で撃たれたらしいとの情報を、小五郎さんが鈴木さんから聞いているところに出くわした。
思わず唇を噛み締める……漆黒の星の時もそうだった。彼は人を惑わし鮮やかな手口で、人の物を盗み出す……と思ったら、持ち主に返すという不思議な怪盗だけど、殺されていい人間では無い……。その場から動けずにいると、コナン君に話があると言われ、別室へ。
ここは毛利一家に寛いでもらう為に、宛てがわれた部屋だった。その部屋の窓のふちには、怪我をしている鳩が毛布の上に、大人しく座っていた。コナン君から、キッドが撃たれた後、近くに鳩が倒れていたことを教えて貰った。怪我をしているなら、手当してあげたいけど、私じゃ手際悪いし、上手く包帯巻けないんだよね。
コ「大丈夫、憐ねーちゃん。」
貴「何でそんなこと聞くの……?」
私は鳩の頭を撫でながら、コナン君に疑問を投げる。コナン君に心配されるような顔をしているのだろうか。
コ「だって、憐ねーちゃん……凄く悲しそうだよ。」
貴「そっか……そんなつもりじゃなかったんだけどね。」
コナン君は頭のキレる変わった男の子。幼いながらに、鋭い着眼点を持ち、違和感にすぐ気づけるタイプ。だから私が幾ら隠そうとしたってこの子には分かってしまうのか。
コ「ねぇ、一つ聞いていい?」
貴「うん、いいよ。」
コ「憐ねーちゃんは、キッドが誰か知ってるの?」
貴「……知らないよ?」
コ「なら、何でそんなに悲しそうなの?憐ねーちゃんとは関係ない人なら、そこまで悲しそうな表情することないよね?」
貴「…………。」
〝それ〟はきっと最初からあったのだ。見えないように無意識に蓋をしていたのかもしれない。でも少しずつ……少しずつ……蓋は開いていた。奇術愛好家殺人事件の時に、初めてはっきりと彼を見た時……少し頭によぎってしまったのだ。マジック大好きな幼馴染の快斗に……似ていると思ってしまったのだ。声は元々似ていると思ったけど、姿も背丈も雰囲気も……よく見えなかったけど、少し見えた顔も……似ていたのだ、快斗に……。
目を逸らして、考えないようにしていた。だって認めてしまったら……彼は、犯罪者ってことになる。快斗は、青子にも玲於にも私にも嘘をついていたことになる。
コ「心当たりがあるんじゃない?」
貴「それは…………」
コナン君に今の自分の気持ちを伝えてしまえば、少しモヤモヤが晴れるだろうか。
貴「うーん、いないよ。」
コ「っ!……キッドは、憐ねーちゃんを2回も守っていたんだ!ただの知り合いでそんなことするはずはない!!きっと憐ねーちゃんと親しい人の誰かなんだよ!」
気迫が伝わる……コナン君はキッドと何回か対面している。その彼が言うのだから、私と仲がいい人の中にいる確率が高いのだろう。
貴「そんなこと言われても、心当たりがないんだよね〜……。」
コ「そんなはずは……!」
貴「それにそこまで言うならコナン君には、何かそう思う証拠があるの?」
コ「それは…………」
コナン君は言いたいけど、言えない……そんな表情で俯いていた。
貴「心当たりは無いけど……私、あの人に何度か助けて貰ってるの。特に何かした訳でもないのにね……。」
でも、そんな証拠は何処にもないし、彼は変装の達人だと言うくらいだから、もしかしたらあの姿も変装かもしれないしね。例えキッドが快斗だろうが、快斗じゃなかったとしても、何度も助けてくれたのは事実だから……今はっきりと分かっていることを信じるだけ。
貴「世間的に見れば、彼は犯罪者。盗みを働く最低な怪盗かもしれないけど、でも彼は、何度も私を助けてくれた。だから私、彼のこと嫌いじゃないの……私がキッドを気にかける理由はそれかな。」
鳩が気持ち良さそうに喉を鳴らしている。毛並みも艶やかで、太りすぎず痩せすぎず、この子が如何に大切にされているか分かるんだよね。動物を大切に出来る人が、そんなに悪い人だとは思えない。
コ「……分かったよ!それじゃあ、何か分かれば教えてね!」
コナン君は、ニッコリ笑ってこれ以上何も追求してこなかった。
蘭「あっ!コナン君と憐ここに居たんだね。」
丁度話が一区切りついた段階で、部屋の扉が開けられる。開けた人物は、蘭。どうやら私とコナン君を探していたらしい。
貴「ごめん、何にも言わず離れちゃって……あっそうだ!この子の怪我の手当してくれるかな?蘭は包帯巻くの上手いから……。」
蘭「新一がよく怪我してたからそれを手当してたら自然と上手くなったんだよ。じゃあ、ちょっと大人しくしててね。」
蘭はそう言って、鳩を優しい手つきで触り出し包帯を巻き始めた。
─────────────────────
コナンside
二人が鳩を気にかけている間、俺は少し離れて座り考え込んでいた。考えていた内容は勿論キッドと神崎の関係。
キッドが神崎を気にするように、神崎もまたキッドを気にしている素振りがあった。その事も踏まえ、キッドの正体について確信を迫る問いかけを神崎にしてみたが、神崎は心当たりは無いとはっきり言っていた。
自分が気にかける理由は、キッドに何度も助けて貰ったからだと。
(〝私を何度も助けてくれた〟……か。俺が記憶してる限り、キッドが神崎を助けた出来事と言えば、漆黒の星と奇術愛好家殺人事件……。確かに奴は、神崎を助けたかもしれない……でも、〝何度も〟と言うほどなのか?)
大体2回ほどの事を〝何度も〟と言うのだろうか。……もしかして、俺達とキッドが出会うよりも先に、神崎個人が、キッドに助けられた経験があるのかもしれない。何にせよ、神崎はキッドに恩義を感じている。なら、心当たりの人物がいたとしとも、なかなか話してくれないだろうな。
神崎が言っていた、俺がキッドの正体が、神崎と交流のある人物だと思う〝証拠〟はある……。それは奴が言っていた言葉……
キ『あと一つ……言わせてもらうとすれば、俺を誘き出すために、わざわざ彼女を利用するのはやめろ……アイツは関係ないからな。
次、憐を巻き込むようなら、俺は容赦しないぜ……いくら名探偵相手でもな。』
(キッドは神崎を名前で呼んだ……あの1回きりだったが、あの言い方は交流の深い人物が発する言い方だ。
それに、弱っていた神崎を巻き込んだ俺への忠告……。言動がキザだが、柔和な態度の怪盗があの時は、目を鋭く光らせ俺にわざわざ釘を刺してきたのだ。知り合いもしくは友達同士で、ここまでするのか?……。)
結局二人の関係について考えが纏まらないままでいると、蘭が包帯を巻き終えたところだった。
貴「この子、また飛べるようになるかな……?」
蘭「うん!出血は止まったし、傷口さえ塞がればまた飛べるようになるわ!」
貴「本当っ…?良かった〜……。」
蘭から手渡された鳩を、大切に抱き上げる神崎。その様子を微笑ましく蘭は見守りながらも、あることを口に出す。
蘭「服部君も軽い捻挫で済んだけど…キッドは死んじゃったのかなぁ…。」
何者かに撃たれたキッドは、海に落ちた後結局見つかっていない。生死不明の状態だ。
貴「……っ。」
鳩を撫でる手が一瞬止まる。笑っていた神崎は少し悲しげに鳩を撫でていた。キッドの生死に関して、俺は強く考えていることがある。
(奴があんな事で死ぬ訳がない!!……もしかしたら、既にこの船に……)
この後俺達の部屋に寒川さんが来たり、園子達が遊びに来たりと、来訪者が増えて、最初の深刻な雰囲気から賑やかな雰囲気に変わっていった。
思わず唇を噛み締める……漆黒の星の時もそうだった。彼は人を惑わし鮮やかな手口で、人の物を盗み出す……と思ったら、持ち主に返すという不思議な怪盗だけど、殺されていい人間では無い……。その場から動けずにいると、コナン君に話があると言われ、別室へ。
ここは毛利一家に寛いでもらう為に、宛てがわれた部屋だった。その部屋の窓のふちには、怪我をしている鳩が毛布の上に、大人しく座っていた。コナン君から、キッドが撃たれた後、近くに鳩が倒れていたことを教えて貰った。怪我をしているなら、手当してあげたいけど、私じゃ手際悪いし、上手く包帯巻けないんだよね。
コ「大丈夫、憐ねーちゃん。」
貴「何でそんなこと聞くの……?」
私は鳩の頭を撫でながら、コナン君に疑問を投げる。コナン君に心配されるような顔をしているのだろうか。
コ「だって、憐ねーちゃん……凄く悲しそうだよ。」
貴「そっか……そんなつもりじゃなかったんだけどね。」
コナン君は頭のキレる変わった男の子。幼いながらに、鋭い着眼点を持ち、違和感にすぐ気づけるタイプ。だから私が幾ら隠そうとしたってこの子には分かってしまうのか。
コ「ねぇ、一つ聞いていい?」
貴「うん、いいよ。」
コ「憐ねーちゃんは、キッドが誰か知ってるの?」
貴「……知らないよ?」
コ「なら、何でそんなに悲しそうなの?憐ねーちゃんとは関係ない人なら、そこまで悲しそうな表情することないよね?」
貴「…………。」
〝それ〟はきっと最初からあったのだ。見えないように無意識に蓋をしていたのかもしれない。でも少しずつ……少しずつ……蓋は開いていた。奇術愛好家殺人事件の時に、初めてはっきりと彼を見た時……少し頭によぎってしまったのだ。マジック大好きな幼馴染の快斗に……似ていると思ってしまったのだ。声は元々似ていると思ったけど、姿も背丈も雰囲気も……よく見えなかったけど、少し見えた顔も……似ていたのだ、快斗に……。
目を逸らして、考えないようにしていた。だって認めてしまったら……彼は、犯罪者ってことになる。快斗は、青子にも玲於にも私にも嘘をついていたことになる。
コ「心当たりがあるんじゃない?」
貴「それは…………」
コナン君に今の自分の気持ちを伝えてしまえば、少しモヤモヤが晴れるだろうか。
貴「うーん、いないよ。」
コ「っ!……キッドは、憐ねーちゃんを2回も守っていたんだ!ただの知り合いでそんなことするはずはない!!きっと憐ねーちゃんと親しい人の誰かなんだよ!」
気迫が伝わる……コナン君はキッドと何回か対面している。その彼が言うのだから、私と仲がいい人の中にいる確率が高いのだろう。
貴「そんなこと言われても、心当たりがないんだよね〜……。」
コ「そんなはずは……!」
貴「それにそこまで言うならコナン君には、何かそう思う証拠があるの?」
コ「それは…………」
コナン君は言いたいけど、言えない……そんな表情で俯いていた。
貴「心当たりは無いけど……私、あの人に何度か助けて貰ってるの。特に何かした訳でもないのにね……。」
でも、そんな証拠は何処にもないし、彼は変装の達人だと言うくらいだから、もしかしたらあの姿も変装かもしれないしね。例えキッドが快斗だろうが、快斗じゃなかったとしても、何度も助けてくれたのは事実だから……今はっきりと分かっていることを信じるだけ。
貴「世間的に見れば、彼は犯罪者。盗みを働く最低な怪盗かもしれないけど、でも彼は、何度も私を助けてくれた。だから私、彼のこと嫌いじゃないの……私がキッドを気にかける理由はそれかな。」
鳩が気持ち良さそうに喉を鳴らしている。毛並みも艶やかで、太りすぎず痩せすぎず、この子が如何に大切にされているか分かるんだよね。動物を大切に出来る人が、そんなに悪い人だとは思えない。
コ「……分かったよ!それじゃあ、何か分かれば教えてね!」
コナン君は、ニッコリ笑ってこれ以上何も追求してこなかった。
蘭「あっ!コナン君と憐ここに居たんだね。」
丁度話が一区切りついた段階で、部屋の扉が開けられる。開けた人物は、蘭。どうやら私とコナン君を探していたらしい。
貴「ごめん、何にも言わず離れちゃって……あっそうだ!この子の怪我の手当してくれるかな?蘭は包帯巻くの上手いから……。」
蘭「新一がよく怪我してたからそれを手当してたら自然と上手くなったんだよ。じゃあ、ちょっと大人しくしててね。」
蘭はそう言って、鳩を優しい手つきで触り出し包帯を巻き始めた。
─────────────────────
コナンside
二人が鳩を気にかけている間、俺は少し離れて座り考え込んでいた。考えていた内容は勿論キッドと神崎の関係。
キッドが神崎を気にするように、神崎もまたキッドを気にしている素振りがあった。その事も踏まえ、キッドの正体について確信を迫る問いかけを神崎にしてみたが、神崎は心当たりは無いとはっきり言っていた。
自分が気にかける理由は、キッドに何度も助けて貰ったからだと。
(〝私を何度も助けてくれた〟……か。俺が記憶してる限り、キッドが神崎を助けた出来事と言えば、漆黒の星と奇術愛好家殺人事件……。確かに奴は、神崎を助けたかもしれない……でも、〝何度も〟と言うほどなのか?)
大体2回ほどの事を〝何度も〟と言うのだろうか。……もしかして、俺達とキッドが出会うよりも先に、神崎個人が、キッドに助けられた経験があるのかもしれない。何にせよ、神崎はキッドに恩義を感じている。なら、心当たりの人物がいたとしとも、なかなか話してくれないだろうな。
神崎が言っていた、俺がキッドの正体が、神崎と交流のある人物だと思う〝証拠〟はある……。それは奴が言っていた言葉……
キ『あと一つ……言わせてもらうとすれば、俺を誘き出すために、わざわざ彼女を利用するのはやめろ……アイツは関係ないからな。
次、憐を巻き込むようなら、俺は容赦しないぜ……いくら名探偵相手でもな。』
(キッドは神崎を名前で呼んだ……あの1回きりだったが、あの言い方は交流の深い人物が発する言い方だ。
それに、弱っていた神崎を巻き込んだ俺への忠告……。言動がキザだが、柔和な態度の怪盗があの時は、目を鋭く光らせ俺にわざわざ釘を刺してきたのだ。知り合いもしくは友達同士で、ここまでするのか?……。)
結局二人の関係について考えが纏まらないままでいると、蘭が包帯を巻き終えたところだった。
貴「この子、また飛べるようになるかな……?」
蘭「うん!出血は止まったし、傷口さえ塞がればまた飛べるようになるわ!」
貴「本当っ…?良かった〜……。」
蘭から手渡された鳩を、大切に抱き上げる神崎。その様子を微笑ましく蘭は見守りながらも、あることを口に出す。
蘭「服部君も軽い捻挫で済んだけど…キッドは死んじゃったのかなぁ…。」
何者かに撃たれたキッドは、海に落ちた後結局見つかっていない。生死不明の状態だ。
貴「……っ。」
鳩を撫でる手が一瞬止まる。笑っていた神崎は少し悲しげに鳩を撫でていた。キッドの生死に関して、俺は強く考えていることがある。
(奴があんな事で死ぬ訳がない!!……もしかしたら、既にこの船に……)
この後俺達の部屋に寒川さんが来たり、園子達が遊びに来たりと、来訪者が増えて、最初の深刻な雰囲気から賑やかな雰囲気に変わっていった。