世紀末の魔術師【完】
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美術館の中へと入り、その中でも会長室と呼ばれる部屋に私達は向かった。この場所には、園子の父親である鈴木さんが私達を出迎えてくれた。
鈴木さんは、途中から合流した服部君と和葉ちゃんについて園子に尋ねていたけど、園子が関西で活躍している探偵だと説明すると、喜んで彼らのことも迎え入れた。そして先に来ていた4人の男女について紹介してくれた。
ロシア大使館の一等書記官
セルゲイ・オフチンニコフさん
美術商
乾 将一さん
ロマノフ王朝研究家
浦思青蘭さん
フリーの映像作家
寒川 竜さん
この4人のお目当てもエッグらしい。商談では8億の値がついているというインペリアル・イースター・エッグ。見なくても、値段を聞くだけでそのエッグがとても高価な物なんだと改めて認識する。私のような一般家庭の庶民ではとても手が届きそうにない。
乾さんとセルゲイさんは、エッグの所有について言い争いを始め、寒川さんも浦思さんを煽るような物言いをするしで、嫌な雰囲気だ。結局この4人は鈴木さんの一声で帰って行った。
その後鈴木さんの指示で、鈴木さんの秘書である西野さんが、実物のエッグを持ってきてくれた。どうやら鈴木さんのご好意でエッグを私達に見せてくれるようだった。
小「へぇー、これがインペリアル・イースター・エッグ!」
平「なぁーんか、思ってたよりパッとせーへんな…。」
和「ダチョウの卵みたいやね…。」
失礼な服部君の発言は置いといて…
貴「綺麗……」
エッグの造形、そのエッグを彩る装飾の数々がとても華やかで、これが昔の人の手で作られたことを考えると、感嘆せずにはいられなかった。幼い頃に気づかずオモチャにしていた園子はともかくとして、今の私にはこのエッグが、とても魅力的に見える。
コ「これ、開くんでしょ?」
鈴「そーなんだよ、よく分かったね?中はニコライ皇帝一家の模型でね…全部金で出来ているんだ…。」
鈴木さんが開けてくれたエッグの中身には、金で出来た模型があった。話によると中の模型はロシアのニコライ皇帝一家の模型で、ニコライ皇帝が、奥さんや沢山の子ども達に本の中身を見せているような形をしていたのだ。
平「こりゃナカナカのモンやな!」
鈴「このエッグには面白い仕掛けがあってね…。」
そう言って鈴木さんは、小ぶりの鍵を取り出すと、エッグの小さな穴に差し込んで回し始めた。すると、中の金の像がキリキリと音を立ててせり出してきた。そして、まるで生きているかのように、像のニコライ皇帝が本を捲り出した。
平「へ〜、オモロいやんこれ!」
先程失礼な発言をした服部君が、嘘のようにエッグを褒めている。本当に凄い仕掛けのエッグだな。
鈴「ファベルジュの古い資料に、このエッグの中身のデザイン画が残っていてね…これによって本物のエッグと認められたんだよ!」
蘭「メモリーズ・エッグって言うのは、ロシア語を英語にした題名なんですか?」
鈴「あぁ、そうだよ……ロシア語ではボスポミナーニェ。日本語に訳すと〝思い出〟だそうだ……。」
貴「ボスポミナーニェ……意味は思い出。
(だからキッドは、予告状にメモリーズ・エッグなんて書いたんだ……。)」
キッドの頭の良さに感心していると、コナン君があることを疑問にあげる。
コ「ねぇ、何で本を捲ってるのが思い出なの?」
小「バーカ!皇帝が子供達を集めて、本を読んで聞かせるのが、彼等の思い出なんだよ!」
コナン君の疑問って大抵、後から重要な事だと分かることが多いから、子供だからって侮れないんだよね。小五郎さんは、子どもの言う事だから馬鹿にしてるけど、私はコナン君のその疑問に心の中で同調した。
(確かに……何で本を捲ることが思い出なんだろう?それに、皇帝が捲っている本の中身って一体何なの……?)
コナン君の疑問をきっかけに浮かび上がる新たな疑問。しかし、ただの女子高校生の私が、そんな疑問を提示しても恐らくまともに取り合ってくれないだろうからな〜……後から何か詳細が分かることを期待するしかないかな。
蘭「エッグのフタの裏で光っているのは宝石ですか?」
鈴「いや、それはただのガラスなんだ…。」
貴「こんなに綺麗なのにガラスなんですか?!」
鈴「そうなんだよ。」
コ「皇帝から皇后への贈り物なのに!?何か引っかからない?」
鈴「うーん、ただ51個目を作る頃はロシアも財政難に陥っていたようだがね……。」
平「引っかかる言うたら、キッドの予告状〝光る天の楼閣〟……何で大阪城が光るんや?」
和「アホ!大阪城建てた太閤さんは、大阪の礎を築いて発展させはった……大阪の光みたいなモンやん!」
茶「その通り!」
男性の野太い声が響く。声のした方に目を向けると、漆黒の星騒動の時に見かけた警察の人と、銀三さんが、大股で歩いてきた。
茶「だが、〝秒針のない時計が12番目の文字を刻む時〟……この意味がどうしても分からんのだ!!」
和「それって〝あいうえお〟の12番目の文字とちゃうん?」
鈴/小/茶/中「「「「!?」」」」
園「〝あいうえお〟の12番目って……」
蘭「〝し〟?」
園「じゃあ4時ってこと?」
貴「うーん……でもそんな単純な暗号にするのかな。キッドの予告状って複雑な暗号文が多いのに……。」
中「憐ちゃんの言う通り、キッドの暗号にしては単純すぎる……。」
自分の感じた違和感を話してどうなるかと思ったけど、キッドのエキスパートである銀三さんも同意してくれたから、安堵する。
小「ふ…分かりましたよ警視!〝あいうえお〟ではなく〝アルファベット〟で数えるんです!!」
中「アルファベット!?」
小「アルファベットの12番目は〝L〟……つまり……」
中「3時か!!」
鈴「さすが名探偵!お見事ですなぁ!!」
鈴木さんが褒めると、大声で笑い出す小五郎さん。……もう少し普通にしてくれたら尊敬出来るのにな……っと友人の父親でもあるのに失礼なことを考えている私。
とにかく銀三さん達は、午前3時に大阪城にキッドが来ると考えた。
中「待ってろよ怪盗キッド!今度こそお縄にしてやるぞ!!」
一同がその考えで纏まりつつある時、二人の少年のみが違和感を抱えていた。