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悪いことは続くもので、浜野さんが遺体で見つかったり、田中さんがボーガンで狙われたりと散々なことが起きるオフ会になってしまった。いまだ姿の見えない犯人にボーガンで狙われる恐怖、苛立ちといった負の感情が募る。そんな危ない状況のさなかに、コナンくんが行方不明となってしまう……と思ったら、すぐ見付り、その後走り回ってついには雪のふり積もった外へ飛び出した。蘭が叱ってもどこ吹く風のように大人しくしないコナンくんに、蘭の苦労をいたわった。
こんな状況なのに……人が死んでいる状況で元気に動き回れるコナンくんや、取り乱すもすぐに持ち直している蘭や園子、他の人達の精神力の強さに少し気後れする。
(……さっきまで明るく話していた浜野さんが殺された。しかもこの中の誰かによって……。)
人の命を奪える人間があのメンバー内にいる……。そう考えると、気が休まらない。
ミステリー小説の中でもよく人は亡くなるけど、あれはあくまでフィクションだから今までなんとも思わなかった。むしろ話を盛り上げるひとつの要素に過ぎないと指して問題にしていなかったけど、実際自分が似たような場面に遭遇すると、何も出来ないし、怖くて堪らない……。人の死に触れるのが怖いと感じるタイプだったのかと、自分の新たな一面を知れた。……だから今も、この状況に当事者でも無い私が一番ショックを受けている自信がある。
蘭も園子も最初は驚いていたけど、今はもう冷静にこの状況を乗り切ろうとしている。あのコナンくんですら、犯人を探して頑張っている……なのに、私は……
園「しっかりしなさい、憐。」
貴「!!」
自分の思考に陥ってると、木を背もたれにして倒れ込んだ園子に声をかけられる。
園「さぁ、私の後ろにあるボーガンを手に取りなさい!」
園子が……眠っている??眠っているのに……私に指示を出している。どういう状況か分からず、思わず蘭の方を見るが、蘭もよく様子が分かってないようだ。私達の戸惑いを他所に園子は、強い口調で私にボーガンを持つよう指示を出すので、言われた通りボーガンを持つ。
(私にボーガンを持たせて何をさせたいの?それに……いつもの園子と雰囲気が違う。本当に園子が話してるの?)
園「それを持って三階中央の浜野さんの部屋に…。」
貴「…何で……?」
今此処で聞かなければ、後では聞けない気がして訳を尋ねる。すると園子は得意気な声色で答えた。
園「私と憐で再現するのよ…今夜この裏庭で、犯人が演じた血塗られた
どうやら園子には、この事件の謎が解けたみたいだ……───────────────
園子の指示通り、浜野さんが泊まっていた三階中央の部屋に赴く。部屋の中に、紙が置いてあり、今から再現するトリックの方法が書かれていた。紙を読みこみ、トリックの方法を理解する。ある程度理解し、準備を終えた私は、浜野さんの部屋のベランダに出て、園子に指示を仰いだ。
貴「園子ー!紙に書いてある通り矢をセットしたけど、どこを狙って打てばいいか分からないよ?」
コ「この木の根元だよ憐ねえちゃん!」
園子からの回答ではなく、何故かコナンくんから答えが返ってきた。何故?と思うと同時に少し危機感を持つ。
貴「ちょ、ちょっと待って!その木の根元って隣の木には、園子が眠ってるじゃない?!もし、園子に当たったりでもしたら……」
コ「大丈夫!失敗したってやり直せばいいんだから!ヒモが絡まない様にちゃんと撃ってねー!」
だから何でさっきからコナンくんが、答えているのだろう??しかも何を根拠に大丈夫!って言ってるの。失敗の仕方によっては、人に当たってしまうかもしれないのに……。
蘭「大丈夫よ憐ー!園子は私が動かしておくから!」
蘭が眠っている園子を抱き上げて、後方の木の根元に座らせていた。
(泣き言なんて言ってられない。ここまで来たなら腹を括れ憐……大丈夫、絶対他の人には当てない……。)
貴「……じゃあ、撃つよ!皆さんどいてください!」
私の呼びかけに、外の人達は慌てて離れる。
貴「……よし。行くよっ……。」
震える手を抑えて、狙いを定めて撃とうとした瞬間……
土「待った!」
土井塔さんから肩に手を置かれて、ストップをかけられる。
土「僕が代わりに撃ってあげるよ!こーいうの得意だから……。」
コ(あいつ?!いつの間に……。)
貴「土井塔さん?!でも、良いんですか……?」
土「いいのいいの〜ほら貸して?」
貴「は、はい……ありがとうございます。」
せっかく覚悟を決めたけど、得意な人がいるならと素直に変わる。こう言ってはなんだけど、土井塔さんが申し出てくれた時は正直ホッとした。
土「どういたしまして。いいかい?園子探偵?」
園「え、えぇ…。」
土「そんじゃーお言葉に甘えて……。」
軽い言葉と共に放たれたボーガンの矢は、一直線に目的の木へと刺さる。自ら交代を申し出た土井塔さんの腕前は本物だった。園子から出された指示を次々と迅速にこなしていく土井塔さん。
最初園子から話を聞いた時は、申し訳ないけど胡散臭い人物だと想像していたけど、実際会って話をしてみたら、気さくな態度ながらも、いざという時は冷静な判断で、場を仕切り皆の混乱を収めていた。園子が自分のせいで浜野さんが亡くなったと自分を責めていた時も、すぐに否定して励ましてくれたり、今もボーガンを撃つ役目を変わってくれた所とか、とても優しい人なんだと分かった。
(……良い人だよね。)
園子は、自分の理想と違ったからショック受けてたみたいだけど、私は全然アリだと密かに思っていた。
いよいよこの悲惨な
園「犯人の田中貴久恵さん?」
「「「「!?!?」」」」
貴「田中さんが……!?そんな……。」
本当にこのメンバー内に殺人を犯した人が居たなんて……分かっていたことだけど、やっぱりショックだった。
土「憐ちゃん、君に大事な話がある。ここじゃなんだから、隣の部屋に来てくれないかな?」
しかし、最後まで園子の推理を聞こうとするも隣にいた土井塔さんに、隣の部屋に来るように言われたので、不思議に思いながらも隣の部屋に向かった。
土「ごめんね、わざわざ部屋を変えてもらって……。」
貴「大丈夫です!……でも、なんですか?大事な話って……?」
大事な話があるから、隣の部屋に来てと言われ、使われていない空き部屋へ。後から部屋に入ってきた土井塔さんに尋ねる。
土「まぁ、大事な話ってのは口実なんだけどさ……。今日は色んなことが起きたから精神的にも疲れただろう?後は僕に任せて、君には休んで欲しいんだ……。」
土井塔さんは扉を閉めた後、部屋にあるバルコニー方面まで移動しながら口に出す。真剣な顔付きで土井塔さんが話し始めた内容は、私に休んで欲しいというものだった。
貴「どういう意味ですか??確かに元気とは言い難いですけど……でも、私は真実を知りたい。どうして田中さんが浜野さんを殺してしまったのか……訳を知りたいんです。それに、疲労だって私だけじゃなくて皆さん同じようにあると思います。」
何故今このタイミングでそんなことを言うのか私には理解できなかった。疲労だなんて私だけじゃなくて、土井塔さん含めて皆あるはずだと思う。それに何故田中さんが浜野さんを殺してしまったのか……訳を聞きたい。私だけ休むなんて納得がいかない……いくら土井塔さんの頼みでもそれは出来なかった。
貴「私だけ休むなんてこと出来ません!せっかく気を遣って下さったのにすみません……お気持ちだけ頂いておきますね。ありがとうございました!
他に用件が無ければ私は園子の所に戻りますね……。」
後方にあった扉の方へ移動するため、土井塔さんに背中を向ける。扉の取っ手部分を触った時違和感に気づく。
ガチャッ……
貴「え!?なんで……扉が開かないの?!?!」
この扉から私達は中に入ったのに、外に出る為にもこの扉を通らなければ出られないのに、扉はガチャガチャ音を立てるだけで、全く動かず……何がどうなってるの?!
私が扉の取っ手を引いたり押したり、試していると後ろから伸びてきた手が扉を押さえつける。土井塔さんが押さえつけているのだろうか……いつの間に白い手袋なんかつけたのだろうか?
「やれやれ……やはり貴方は一筋縄ではいかないようですね……。」
テノールが薄暗い部屋に響く。その声……土井塔さんじゃない。まさか……まさか……!?
扉を押さえつける白い腕……その正体を確認する為振り向いた。そこに居たのは土井塔克樹さんではなく神出鬼没の大泥棒、怪盗キッドだった。
貴「キッド!?」
(初めて本当の姿を見た……)
この部屋を照らしているのは、月明かりのみ。全体的に薄暗い部屋の中で、私は今キッドと扉に挟まれている。以前と比べ至近距離に顔の位置がある。
(暗くてよく見えないけど、本当に男の人だったんだ……。)
蘭に変装していた時は本当に驚いたのだけど、この人が女性に変装してたの?性別も違う全くの別人に変装していたなんて、信じられない……。それに今回は、性別こそ同じ男性だけど比較的体格のある男性に変装していたってことになる。元が細身の男性だったなんて気づかなかった。土井塔さんがキッドだったなんて……。
キ「こんばんは、お嬢さん……。」
貴「どうして貴方がここに……?」
キ「ここにやって来たのは、ある人物の正体を確かめる為……ですが、まさか殺人が起きるとは……。」
微かに見える彼の瞳は、哀愁を帯びていた。起きてしまった現状を悲しんでいるように見えたのだ。
キ「貴方こそ、何故この会に……?ご友人の為ですか?」
憂いの瞳から探るような目付きに変わる。変化の早さにみじろぐが、今日素直に感じたことを伝える。
貴「それはまぁ……最初は友人が素性を知らない人達に会いにいくというので、心配だったんです……。
だけど、今日皆さんとお会いして、お話した時に分かったんです。皆さん優しくて、良い人達だって……。本当に楽しかった……なのに、あんなことが起きてしまって……。」
楽しい会になるはずだったのに……まさか、殺人が起こるとは思わなかった。それはキッドも同じだろう……それは彼の物悲しい瞳をみれば何となくわかる。
キ「憐嬢……。」
貴「あっそうだ……今のうちに言っとかなきゃね。」
もうこんな機会は二度と訪れないかもしれないのだから、言える時に言っておかなければね。
貴「貴方は覚えてないかもしれないけれど……江古田高校で化け物に変装していた先生から助けてくれたり、漆黒の星のパーティーの時も傍に来て私を守ってくれた……。貴方の思いはどうあれ、私は本当に助かったのでお礼を言いたかったの……ありがとう、キッド!」
私の自己満足だから、例え彼が覚えてなくても良い。ただ、お礼を言いたかったのだ……優しくて紳士な白い怪盗に……。僅かな月明かりだけでは、彼の表情をはっきりとは分からなかった。でも……
キ「……私のような者にわざわざ感謝を告げるとは、変わったお嬢さんですね。しかし、そのお言葉有難く頂戴致します。貴方からの感謝は、どんなお宝よりも価値がある……。」
白いシルクハットを被った彼は、頭を恭しくて下げてキザなセリフを口にする。大袈裟だな〜と思うけど、女性ファンも増えていると、園子から聞いてるし、これが彼の戦法なのかもしれない。
キ「もちろん、ちゃんと覚えていますよ……安心してください、私が貴方を忘れるなんてことは、万に一つも有り得ないですから……。」
よくもまぁ次から次へと、キザな言葉が出てくるもだ。
貴「……もうわかったから、それ以上言わないでよね。」
キ「おや、信じていただけないのですか……?」
貴「当たり前でしょ……知ってた?泥棒は嘘つきの始まりなのよ。」
キ「……失礼、私はコソコソ隠れて盗むような泥棒ではなく、華麗な手口でお宝を盗み出す怪盗ですよ。」
貴「よく見えないけど、今貴方がドヤ顔で言ってることは分かったわ。泥棒も怪盗もやってる事は一緒じゃない。」
怪盗と泥棒の違いをわざわざ訂正してくるキッドは、怪盗というものに並々ならぬ思いを抱えているのだろう。……ってキッドと話している場合ではなかった!
貴「貴方への用は済んだ訳だし……私は園子の所に戻るから。じゃあね、キザな白い怪盗さん。」
よくよく見たら、内側に鍵を回す部分があったわね。焦ってドアノブを動かしてしまっていたけど……その事を思い出し、鍵のツマミ部分を回そうとすると、背後からキッドに抱き締められた。
貴「何を……!?」
キ「言ったはずです……私は貴方には休んでもらいたいのだと。これ以上この事件に関わるべきじゃない……。」
貴「何故、そんなことを貴方に言われなきゃいけないの……私は大丈夫だから!」
いくらなんでも、キッドにそこまで心配される覚えは無い。でも、なぜだか声色が本当に心配しているような優しい声だった……快斗に似た声で、そんなこと言わないで欲しいのに……。
キ「浜野氏の遺体が発見されてから、貴方は悲しみに満ちている……私は貴方に無理をして欲しくない。」
快『……俺は無理してるお前を見るのは嫌なんだよ。』
(……快斗!!)
貴「……なんで?!キッドには関係ないのに……なんでそんなことを……。」
キ「……貴方が次に目覚めた時は、全て終わっています。それまで暫しの休息を……。」
私の質問に答えずに、彼は以前の時のように私を眠らせるかもしれない。
貴「嫌だよ!やめてキッド……。」
前の時は唐突だった為、そのまま眠らされてしまったけど、今回はしっかりと自分の意思を伝え、抵抗したが、憐の抵抗虚しくも、キッドは憐のハンカチを口に押し当てた。憐の意識は遠のく。眠りに落ち、倒れる身体を優しく抱きとめたキッドはその部屋にあったベッドの上に憐を横たわらせた。
貴『……でも、昔からとても優しくて……困ってたら助けてくれたり、落ち込んでたらマジックで笑わせてくれたりと良い所も沢山あるんです。
それに……彼のお父さんがとても素敵なマジシャンで、そのお父さんを凄く尊敬していて、小さい頃からお父さんを超えようと必死に努力して、マジックを習得していたんです。凄く努力家なのに、その努力をひけらかさず、様々なマジックを見せてくれました……。』
貴『色々言いましたけど……私にとって彼は……私の人生においてなくてはならない人……ですかね。』
キ「俺にとっても、お前はなくてはならない存在なんだよ…憐……お前がこれ以上傷つく必要なんてねーんだ。次にお前が目覚める頃には全て終わってるから……、だから、それまでここで眠っていてくれ……。
さて……もうそろそろ俺の正体に気づいたあの名探偵がここに来るはず。出迎える準備が必要だな。」
キッドは、眠った憐の顔を一瞥し、微笑みを浮かべた。一瞬怪盗キッドから黒羽快斗の顔へと戻る……しかし、マントを翻した後怪盗の顔へと正す。この調子ではいずれくる、幼い名探偵にボロを出しかねない……既に自分と憐の関係が他の者と違うことに、気づかれている節がある。
〝いつ何時たりとも、ポーカーフェイスを忘れるな〟
偉大な父の残した言葉を思い出し、白い怪盗は憐の眠る部屋を後にする。