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怪盗キッドは予告状の時間通りに現れた……自身の声色を何人もの警察の声色に変えて、警察を1箇所に集め、閃光弾を放ちその姿を忽然と消してしまった。
キ「よぉ、ボウズ…知ってるか?怪盗は鮮やかに獲物を盗み出す創造的な芸術家だが……探偵はその跡を見て難癖つけるただの批評家に過ぎねーんだぜ?」
探偵である俺に、癪に障る言葉を残して……──
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4月19日
横浜港から出港する Q・セリザベス号船上にて
本物の漆黒の星を 頂きに参上する
怪盗キッド
───…4月19日
横浜港 Q・セリザベス号
Q・セリザベス号では、友人である鈴木園子の家の鈴木財閥が、60周年を迎えるということでお祝いのパーティーを開催することになったらしく、そのパーティーに参加しないかと園子から誘われた私は、蘭と蘭のお父さんである小五郎さんと、そしていつの間にか居候として、毛利家の一員となっていた江戸川コナンくんと一緒にお祝いの席に参加していた。
私は、園子のお父さんである鈴木さんの挨拶を聞きながらも視線は斜め前にいるコナンくんの方へと向けていた。
蘭「どうしたの憐?コナンくんの方ずっと見てるけど……」
貴「!!」
鈴木さんには、申し訳ないなと思いつつもコナンくんの方を見ていたらとうとう蘭に指摘されてしまった。すると前方を見ていたコナンくんは、私の方を振り返り不思議そうな顔をしていた。
貴「ごめんごめん、何でもないの!コナンくんもジロジロ見ちゃってごめんね…!」
コ「??」
本当に申し訳なかったけど、私はどうしてもコナンくんが気になって仕方なかったのだ。
(コナンくん……小さい頃の快斗にそっくり……。)
なんせ江戸川コナンくんの顔が、小さい頃の快斗にそっくりなのだ。快斗に弟がいたらこんな感じなんだろうなと思うくらいには、似ていて違和感が全くないのだ。
蘭から紹介された時は我が目を疑った。小さい頃の快斗がいるー!!って心の中で全力で驚いたものだ。まぁ、結局驚きすぎて邂逅当初
「えっ?!?!」
と口に出してしまった訳だけど……。蘭から江戸川コナンくんは、あの工藤くんの親戚だと話を聞いて、尚更驚いて納得した。
(快斗とそっくりな工藤くんの親戚なら、まぁ不思議では無いのかな。)
蘭もコナンくんを見て、工藤くんの小さい頃にそっくりで驚いたというのだから面白い。訳あって今は毛利家に居候している江戸川コナンくん。小学一年生なのに、凄く頭が良いらしく、小五郎さんの後にくっついて事件解決のお手伝いをしているらしい。
(小学一年生の子供が、殺人現場ウロウロするのはどうかと思うけど、最近の子供ってもしかしてみんなそうなの……?)
コナンくんについて考えを巡らせているうちに、鈴木家の人達から招待客達にある物が配られた。それはなんと
朋「さぁ皆さん、それをお胸にお着けください!そしてキッドに見せつけてやるのです!!盗れるものなら盗ってみなさいとね!!」
園子のお母さんがとんでもないことを言い出した。
蘭「やるじゃない園子のお母さん!」
貴「……園子のお母さん、肝が据わってるね。」
蘭は感心していたけど、私はその大胆な作戦に驚くばかりだった。しかし、隣にいた園子がキョロキョロと辺りを見回していたので、気になって訳を訊ねてみた。
貴「園子?」
園「見当たらないのよ、姉貴の姿が……。」
貴「えっ??お姉さん居ないの??」
園「まさかまだ家に……。」
そう言ってお姉さんに電話をかける園子。その話を一緒に聞いていると、驚くべきことが分かった。
園「え?そこにパパがいるの?」
じゃあさっき、皆の前でパーティー開催の挨拶していた園子のお父さんは一体何だったの?
蘭「コ、コナンくん!」
するとコナンくんは、その場から走って何処かへ行ってしまった。そして暫く経ってもコナンくんが帰ってくる気配がない為
蘭「私、コナンくん探してくる!」
貴「あっ、ちょっと蘭!」
コナンくんの後を追いかけて、蘭までも何処かに行ってしまった。しかし、その後コナンくんのみ、帰ってきて怪盗キッドがこの船にもう乗り込んでいることを教えてくれた。
(キッド……。)
結局直接顔を見れたことは一度もない。けど、何かと関わる機会が多いこの怪盗に、いまだ私は複雑な感情を抱いていた。犯罪者なのに、捕まって欲しくない……そんなことを思っていた。
コ「それより蘭ねーちゃん、どこ行ったの?」
そういえばコナンくんを探しに行ったまま、結構経つのに蘭の姿はなかった。
小「あぁ…蘭ならお前がなかなか戻って来ねーから探しに行ったぞ。もしかしたら、怪盗1412号に捕まってるかもしれねーって……」
中「1412号じゃない…奴の名前は怪盗キッドだ!!ややこしいから、間違えんでください!!」
蘭のお父さんの発言を遮ってまで訂正していたのは、青子のお父さんである銀三さんだった。
中「おぉ〜〜憐ちゃんじゃないか!こんな所で会うなんてなぁ……!」
貴「お疲れ様です、銀三さん!いつもは家で会いますもんね〜。」
銀三さんは私を見るなり、怒っていた顔を崩し豪快な笑みと共に声を掛けてくれた。
中「これが仕事中じゃなきゃ、もっと話したいんだがあいにく今日は奴が来る日なんだ……。すまないね、ゆっくり話せなくて……。」
貴「全然大丈夫ですよ!お仕事頑張ってくださいね。」
中「ありがとう……ワシはこれから仕事に戻るが、憐ちゃんはゆっくりパーティーを楽しみなさい。あとこれからも青子のこと、よろしく頼むよ。」
貴「はい…!」
そう言って大勢の警官を連れて、会場を後にしていた。
園「憐、あの人と知り合いなの?やけに親しげに話してたみたいだけど……。」
私達の様子を見て、疑問に思った園子が尋ねてきた。私の家は父は単身赴任なこともあって、あまり帰ってこない。だから身近な父親と言えば快斗のお父さんである盗一さんか、青子のお父さんである銀三さんが思い浮かぶ。だから、盗一さんや銀三さんはもう一人の父親みたいな存在なのだ。
貴「そうね、よく知ってるよ。小さい頃から可愛がってくれてたし、幼馴染のお父さんだから……。」
仕事に熱心で、夜遅くに帰ってくることも多い銀三さんだけど、一人娘である青子を可愛がっており青子もそんな銀三さんが大好きなのだ。私も玲於もその姿をよく見かけている。小さい頃は羨ましいなと思ったこともあったけど、今は微笑ましい光景だとよく二人で話すものだ。
園「へー……怖いおじ様かと思ったけど、優しい所もあるのね。」
貴「良いお父さんだよ、銀三さんは……。」
小「……にしても蘭の奴、遅ーなー……。」
小五郎さんがボソッとつぶやく。ほんとだ、何処まで行っちゃってるんだろうな。
園「きっと何処かで迷ってるんですよ……蘭って方向音痴だから……。」
(蘭もなんだ……私は携帯のマップのおかげで迷うことは少なくなってきたけど。)
すると私達の背後から言われていた本人が、文句を言いながら現れた。
蘭「どーせ、方向音痴ですよ!」
園「あ、蘭…。」
貴「遅かったね。部屋の外の様子はどうだったの?」
蘭「廊下は刑事さん達でごった返してたわよ。」
蘭の話を聞いていると、警視庁の茶木さんという方がマイクを使い、会場全体に注意喚起を行っていた。内容は、怪盗キッドのことについて。どうやら彼はもうこのパーティーに侵入しているらしい。彼は変装の達人で、変装する人の顔や声を完全に模写出来てしまうとのこと。
凄い特技持ってるのね。快斗もファンだって言うぐらいなんだから、凄い人なのね。怪盗じゃなきゃもっと万人から愛されそうな人なのに勿体ないな〜。
茶木さんは、怪盗キッド対策としてそばに居る人とペアを組んで合言葉を作った方がいいとのこと。蘭はコナンくんと組んでるので、私は園子と二人で決める。
貴「何にする?」
園「そうね〜……そうだ!私が蘭って言うから……」
貴「……っ!私は工藤くんって言うね。」
園「さっすが憐!よく分かってるじゃない〜!」
だって蘭と言えば工藤くんだし、工藤くんと言えば蘭だからとしか言いようがない。それくらいあの二人は互いを想いあっている。
(まるで、快斗と青子みたいにね……。)
高校からして知らない私でも見ていれば分かるぐらいだからね。感傷もそこそこに合言葉を決めたあと、突如会場全体の明かりが消える。消えたと思ったら天井に怪盗キッドの姿があった。そして怪盗キッドの手の中にはもう
園「マ、ママ……。」
自分の母親の行動が信じられない園子は、呆気に取られていた。招待客の人たちも皆現状を把握出来ているものがいなかった。胸を拳銃で撃たれたキッドは、口と胸から赤い液体を吹き出し、天井から机の上に倒れた。
貴「……キッドっ……いやっ……」
無惨なキッドの姿を見て、私は戸惑いを隠せなかった。いくら宝石を盗んだからって、殺すなんて……戸惑いと共に胸の内にのぼってくるのは、深い悲しみと絶望感。目の前で殺人が行われたこともそうだが、殺された人物が個人的に知っている人物だったから尚更ショックだった。
まだ私……貴方にお礼を言えてないのに……なんで……どうして……。
貴「いっ……いやぁああああああ!!」
涙を流し、崩れるように座り込み大きな悲鳴をあげる。自分でも分からないけど、キッドに対してここまで取り乱すなんて思わなかった。だけど、この時の私は現実を受け止めきれなかったのだ。
蘭「憐っ!」
貴「ら、蘭っ……」
蘭「大丈夫よ……大丈夫だから。」
私の尋常ではない取り乱し方を見て、すぐさま駆け寄ってきてくれた蘭。彼女は私を安心させる為に、手を握ってくれた。
(っ!……この手凄く安心する。蘭の手に触れたことは何度かあるけれど、こんなに穏やかな気持ちになれたの初めて……。)
園「憐、大丈夫?!いくら何でもやりすぎよママ!」
中「大丈夫か憐ちゃん!……あ、あんたなんて事を!?」
蘭だけじゃなく園子や銀三さんまで駆け寄ってくれて心配させてしまった。しかし、撃った本人は悪びれもなく笑っているだけ。
朋「心配無用ですわ、警部さん。だって彼はまだ……生きてますもの。」
中「えっ?」
貴「……えっ?」
園子のお母さんが説明するなり、撃たれたキッドはなんてことないように上体を起こし、起き上がった。
朋「そう……彼はこの余興の為に、私が雇った天才
園子のお母さんが紹介した男の人は、シルクハットを取って頭を下げた。
パチパチパチパチ
招待客の人達が、拍手をする中状況に追いついてず、涙も止まるほど固まってしまう私。それを見兼ねた真田さんが謝ってくれたのだ。
真「ごめんよ……まさか泣く人が居るとは思わなかったから……」
貴「い、いえ!こちらこそ、悲鳴をあげちゃってすみません……。」
……一応謝罪はしたけど、園子のお母さんもこの人も全く……悪趣味な余興なんて考えるものね。
蘭「……憐、もう大丈夫そうだね。」
貴「ありがとう、蘭!本当に助かったよ…!」
蘭「ううん、憐が元気になってくれて良かった!」
蘭の対応に頭が上がらない。蘭がすぐ駆け寄ってくれなかったら私は今頃もっと取り乱していたにちがいない。
(蘭の手を握った時、安心ともに何故か心が満たされた……この手の温もりを私はずっと前から知ってるような、求めていたような気がして……何でだろう、気の所為だよね。)
私の思いを他所に、天才