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【予告状】
月が満ちる土曜の夜 零時の鐘と共に
貴方の懐より 天高き時計を 頂きに参上する
怪盗キッド
時刻は23時20分、もうすぐ日付が変わる時間帯。真夜中にも関わらず、時計台の周りは多くの警察官と人々で賑わっていた。どちらもお目当ては、今夜時計台を盗むと予告を出した怪盗キッド。警察は中森警部を筆頭に、大量に配置された警官とヘリコプターによってネズミ一匹も見逃さぬような厳戒態勢である。
キッド!!キッド!!キッド!!
沢山いるのは警官だけでは無い。怪盗キッドのファンや、彼への興味や好奇心で来た者など様々な理由で集まった大衆が、彼の登場を今か今かとまっていた。その中でも一人だけ大きな声で、キッドを否定するものがいた。
青「キッド来るなー!お父さんガンバレー!」
恵「ちょっと青子!あんただけよ!そんなこと言ってるの……。」
青「だって〜〜〜〜〜……。」
大切な思い出が詰まった時計台の様子を見に、青子と恵子は訪れていた。青子だけは、唯一怪盗キッドの所業に猛反発していた。持参したスケッチブックに、黒マーカーででかでかと【キッド反対!!】と掲げて反対の声をあげていた。
青「それより恵子……玲於と快斗見なかった?」
恵「ううん、全然……。それに快斗くんも玲於くんも今夜はマジックショー観るって言ってたわよ……。」
青「そう……。」
青(やっぱ青子だけか……あんな昔の事覚えてるの……。)
青子は恵子の言葉に、心の中で諦めたように笑った。あの出来事を覚えているのは自分だけなのだと悟った。
青(憐も覚えてないの……?)
青子は恵子と合流する前に会った憐の様子を思い出す。
貴『怪盗キッドが……あの時計を……?』
青『そうなの!この町の大切な時計を、今夜盗むって言うのよ!青子許せないの……だから、青子は時計台に行く!憐も一緒に行かない?』
貴『………………ごめん、青子。悪いけど、私はいいや……。』
青『……そっか。じゃあ青子行ってくるね。』
貴『…………うん、気をつけてね。』
時計台のある広場に一緒に行こうと誘ったが、憐には断られてしまった為、恵子と一緒にやってきた青子。しかし、青子はあの時の憐の様子に疑問を抱いた。今になって思い返してみると、彼女の様子が普段と違ったと気がつく。
青(……もしかして本当は、憐も覚えてるの……?)
青子が学校から帰った後、先に帰ってきた憐に怪盗キッドの予告状について詳細を話した。それまで普通に聞いてくれた憐が、予告状の話をした後から様子が変わった。心ここにあらずといった感じで返事も少し時間がかかったように見えた。その様子を思い返した青子は、もしかして憐も自分と同じでショックを受けていたのではないかと推測する。
青(青子と玲於が初めて出会った時に、憐は快斗と出会ってたんだもんね……あの時計台で。きっと、憐もあの時の思い出を大切にしてるはず……だって青子がそうなんだもん。)
玲於と青子が初めて出会い、互いの話をしていた時、快斗と憐も実は同じ時計台の近くにいて、知り合ったというのだから驚きである。その後玲於と憐が合流し、その際に青子と快斗も顔合わせとなり、その出来事が、4人が仲良くなったきっかけである。
青子が古い記憶を思い返している頃、快斗は警官の一人になりすまし、四方八方に駆けずり回っていた。いつもなら、ロンドン帰りの高校生探偵〝白馬探〟が自分の仕事を邪魔してくるのだが、やり残した事件を解決するやらなんやらで、ロンドンに帰っているおかげで、手こずることも無く今の所順調に計画は進んでいた。
快「ケケケッ!楽勝じゃねーか!やっぱ白馬の野郎がいねーとスムーズすぎて、張り合いがねーなァ……。」
他の警官に変装し嘘の情報を教えた後、自分はさり気なくターゲットの場所に近づく。キッドの常套手段である。自身のシルクハットとマントを持って、時計台の最上階へと駆けて行った。最上階に着いた後、先にいた警官に本人確認される。その事を予測して、予め暗記しておいた警官の情報を答える。
「あ、そうだ!念の為に免許証番号を言ってみろ!」
快「あ、はいはい……第628605524810号であります!!」
「え?」
快「は?」
快斗達のやり取りを見ていた警官達がざわつき始める。
「か、か……怪盗キッドだ!捕まえろォ〜〜〜!!!」
快「!!(マ、マジかよ!?)」
また快斗が警官に変装して走り回っている頃、玲於は、青子と同じく時計台の広場におり、一般の人に紛れて黒のフードをかぶり顔を隠しながら、ひとり快斗の仕事を見守っていた。
玲(警察官の数、その配置、動き、共に事前に得た情報通りだな……っ?!ヘリコプターの数が一台多い?!何かヤバい気がする。早く快くんに教えなくちゃ!)
快斗に連絡を取った玲於だが、少し遅かった。
玲「快くん!」
快「なんだよ!」
玲「今、下からヘリコプターの数を確認してたんだけど、聞いていた情報と違って一台多いよ!」
快「何?!なんだよそのヘリコプターは……ってか俺も今それどころじゃねーんだよ!」
玲「どういうこと?」
快「俺の変装がバレた上に、撒いてもすぐ追いついてくるんだよ!今日の警部やけに冴えてるなと思ったが、もしかしたら警部に誰かが助言してるかもしれねぇ……!」
玲「なるほど……っ!!ちょっと待って!!」
快「?!」
玲於は快斗の話を遮りある情報を聞き取るために耳を傾けた。それは、警察官にわざと取り付けた盗聴器。転倒した振りをして、袖口に忍ばせたその盗聴器から有用な情報が流れる。
玲「っ!!不味いよ快くん!!さっき言ったヘリコプターの数が一台多いのは、警視庁からの応援らしいんだけど、警部はそんなの要請してないらしいんだ。」
快「?!」
玲「しかもその応援要請受けたヘリコプターに乗ってる誰かが、皆に指示を出してるんだって。」
快「やっぱりそうか……!で、誰なんだよ……その指示を出してるやつってのは……。」
玲「それ……は……─────────。」
ブツンッ!
玲於が詳細を話そうとした瞬間、ワイヤレスイヤホンからブツンッとした音の後に、何も聞こえなくなってしまった。
快「あっ、おい!」
(……壊れたか。しょうがねぇな……今日の警部達には頭のキレるジョーカーが、味方についてるってことだな。)
快斗は早々に自分を納得させ、この事態を好転させるべく策を練りながら駆け回るのだった。
玲「……こんな時に壊れるなんてついてないな。」
自身のワイヤレスイヤホンを取る。試作品として寺井に作って貰ったイヤホン型の通信機だったが、どうやら調整が甘かったのか、肝心の部分を伝える前に壊れてしまった。
(警察の人の話によると、あのヘリコプターの中に乗っていたのは高校生の探偵……高校生探偵と言えば白馬くんだけど、白馬くんはロンドンに帰っているから違うし……それに彼なら現場に堂々と出てくる。なら誰が……?
そういえば、最近新聞で読んだあの記事……難事件を次々と解決し、今注目されている高校生探偵……まさかね。)
得た情報を元に警察に指示を出していた人物を推理するも、情報が曖昧で足りないせいか、今ひとつ真実に辿り着けていない。
玲(どっちにしても、今僕は快くんに伝える手段がない。連携が取れない中での単独行動は危険。こうなったら僕は、手助け出来ない……でも、彼なら大丈夫。……そうだよね、快くん。頼むよ……僕らの思い出の場所を守ってくれ……。)
玲於は空を見上げ、怪盗キッドの成功を祈った。