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気を失っている憐を抱えて、校門に着くと、同じく青子を抱き上げている玲於の姿があった。
玲「快くん!お疲れ様。」
快「玲於もな。」
玲「姉さんも青ちゃんも無事だね……良かった。姉さんを助けてくれてありがとう、快くん。」
快「どうってことねーよ!オメーもよくやったな。」
玲「うん……ありがとう。」
二人で無事を祝していると、青子の目が開かれて意識を取り戻していた。
青「ふへ……玲於?!」
玲「青ちゃん!目が覚めた?」
青子は玲於に抱き上げられている自分の状況に驚いているようだった。玲於は、青子を下ろして怪盗キッドの部分を伏せて、大まかに説明した。説明を聞いた青子はおばけの正体が麻生だと分かると、尚驚いていたが、無事解決したのだと知ると安堵していた。
青「憐も無事だったし、おばけの正体も分かって良かった〜!玲於が助けてくれたんだよね。ありがとう!」
玲「……僕はただ倒れている青ちゃんを見つけただけで、特別なことは何もしてないよ。」
青「ううん、ちゃんと大声あげたら来てくれたってことでしょう?……本当にありがとう、玲於!」
玲「……うん、どういたしまして!僕は青ちゃんの為なら、どこにだって駆けつけるから。」
青「も、もう〜!!何言ってるのよ〜!!」
青(どうしよう……快斗の事が好きだったのに……今は玲於のことが……。)
青子も玲於も良い雰囲気だ……玲於があまりにも自信無さそうに言うものなら、俺からも青子に説明しようと考えていたが、青子はちゃんと分かっていた。良かったな、玲於。俺は盛り上がっている玲於と青子の後ろを、程よく距離を空けながら歩いている。
快(さーて、こっちの眠り姫はいつになったら起きるのかね〜……おっ。)
快「やっと気がついたか。」
貴「うぅ……っ快斗……?」
今まで気絶していた憐も目が覚めたようだ。起きたばかりで頭が働いてないのか、自分の状況がイマイチ飲み込めていない。
貴「……なんで、快斗の顔がアップで見えるんだろう。」
快「そりゃあ気絶したオメーを俺が抱えてるからな〜。」
貴「そっか…………っ!?下りる!!下りるから!」
快「おわぁっ!暴れんなって!!危ねーだろうが!」
自分の置かれてる状況を処理出来た憐は、真っ赤な顔をしながら、手足をバタバタさせて暴れ出した。危機感を感じた俺は、憐を即座に下ろす。大事にはならなかったが、マジで落としたらどうすんだよ。憐を下ろした後、俺は文句を言いつつも、青子に話したように今回の騒動の真相を憐に話した。地面に足をつけた憐は、時には顔を顰めながら話を聞いていた。しかし、話終わった後あることを口にした。
貴「ねぇ……私を助けてくれたのって誰か知ってる?」
快「……どういう意味だ?」
いつもの攻撃的な言葉が飛んでくると身構えて、少し不満気な態度で憐に質問の意図を聞いたが、憐は悩ましい表情を浮かべながら理由を話した。
貴「快斗はさ、泣いてる麻生先生と倒れてる私を見つけて、ここまで運んでくれてた訳よね?だからそれ以前のことは分からないんでしょ?」
快「あぁ……。(ほんとは知ってるけどな。)」
貴「私、快斗が見つけてくれる前のこと、少しだけ分かることがあるの。」
快「……?」
嫌な予感ほどよくはたらくもの……これ以上憐から話を聞くのは不味いと俺は思った。
貴「多分快斗が来る前に、その麻生先生が私を抱えていた時があって、その時に少しだけ意識が戻ったの。麻生先生は、誰かから声をかけられて私を下ろしていた。その時私は目を開けられなかったけど、耳で聞いてた。声をかけた人物と麻生先生は、多分争ってたみたいなんだけど、その人の声が快斗そっくりだった……。」
快「!?」
貴「それに麻生先生は、相手の人を怪盗キッドって言ってた。だから気になって、目をうっすら開けてみたの。麻生先生の背中でよく見えなかったけど、そこには白いマントに、白いシルクハットを被った人がいた。」
快(意識があったのか……?!)
貴「……多分その人が怪盗キッドなんだと思う。青子から聞いたんだけど、怪盗キッドって宝石ばかりを狙う泥棒なんだよね?なのに、何で宝石も置いてない江古田高校にいたんだろう……しかも、見知らぬ私を助けてくれた。」
快「……っ!」
(ヤベェ……憐が疑い始めている。妙に鋭いんだよなコイツ……。)
貴「……色々と聞いていた話と異なるから無性に気になるの。ねぇ、何で怪盗キッドはここに居たんだと思う?何で知り合いでもない私を助けてくれたんだと思う?」
怒涛の質問に俺は慎重に答える。下手に変なこと言って怪しまれても困るからな。
快「さぁな……。ただ怪盗キッドがいた理由は分からねぇけど、キッドがお前を助けた理由なら分かるぜ。」
貴「??」
快「キッドはな……宝石は盗むけど、人に危害をくわえたり、見捨てたりしないんだよ。人助けに理屈なんて考えていない……そういう怪盗なんだ。オメーを助けた理由も、きっと理屈じゃなかったんだろうさ。」
憐には、俺が怪盗キッドの心情を想像しながら話しているように見えただろう。……と言っても怪盗キッドの正体は俺なのだから、本当の事情は異なる。人助けに理屈なんて関係ないのだが、今回は、憐を一刻も早く助けたいという俺の私情が強い。しかし、そんなことを話そうもんなら自分が怪盗キッドだと自らバラしているようなもの……余計なことを語る必要は無い。月が輝く夜空を見上げながら、俺はしみじみと憐に伝えた。
貴「……そう……なのかな。……ていうか自分が怪盗キッドみたいに語るじゃない。まさか、アンタがそのキッドなんじゃないでしょうね〜……?」
……今の話を聞いてなんで俺を疑うような発言が出てくるんだよ!!
快「なわけねーだろ!!俺は怪盗キッドのファンだからな〜……お前よりかは詳しいだけだよ。」
心の中で焦りを見せつつも、俺は得意のポーカーフェイスで憐の疑いをかわす。頼む、あまり疑問を持たないでくれ……。
貴「……それもそうね。キッドが快斗なわけないよね。……マジックが得意なことや快斗と声が似てることとか類似点が少しあるけど、そんなこと言ったら、快斗にそっくりな工藤くんの存在もあるし……うん、やっぱり怪盗キッドは快斗じゃないもんね!」
快「……おう!(工藤……?)」
バレると不味いから、俺と怪盗キッドの存在を別の存在だと考えてくれるのは有難いのだが、少しモヤモヤするのは気の所為じゃないはず……工藤って誰だよ。
貴「キッド、私を助けてくれたんだもんね。もし今度会えたら、お礼言わなくちゃね。」
快「お前変なところで律儀だよな……。」
貴「何よ〜助けられたらお礼を言う……当たり前のことでしょ!……最初に青子から教えて貰った時は悪い泥棒なんだと思ってたけど、今は優しい泥棒さんなんだなって思えたよ。……こんなこと言ったら青子に怒られそうだけど、そんなに悪い人じゃないのね。……少し見直したよ。」
快「へ〜……。」
素直に怪盗キッドを褒めるような言葉に、思わず喜びが顔に出そうになるが、堪えて普通に保つ……。なんせ怪盗キッドは俺自身なのだから、俺への賞賛ってことになる……しかも普段は素直に褒めてくれない好きなやつからの賞賛は、何よりも嬉しいものだ。満更でもない顔で同意していると、憐は一度こちらを訝しげに見ながらも、すぐにその表情を辞めて穏やかな表情になった。
貴「私は怪盗キッドのことを褒めたのに、何で快斗が嬉しそうなのよ……まぁ、いっか。
ねぇ、快斗……。」
快「なんだよ、憐?」
憐の言葉を待っていると、横並びに歩いていた憐は、突如俺より一歩先を歩いて俺の真正面に立った。憐の先には、少し離れて歩いている玲於と青子の姿がある。
貴「助けてくれたのは怪盗キッドかもしれないけど、その後結局キッドは私と先生を放ってどっか行っちゃった訳じゃない?……その後、快斗が見つけてくれなかったら……、麻生先生から離してくれなかったから……、きっとまた私、怖い思いをしていたと思う……。」
快「あぁ……?」
貴「でもね、快斗が連れ出してくれたからこれ以上怖い思いをせずに済んだと思うの……。
だからね!……ちゃんと私を助けてくれてありがとうっ!快斗!」
憐は、夜風に長い髪を靡かせて、満月をバックに気恥しそうにしながらも笑みを浮かべて俺に感謝の言葉を告げた。幻想的ながらも何処か柔らかな雰囲気を持つ憐の姿に目を見開き、動かしていた足を止めてしまうほどの衝撃がはしった。
そんな憐に俺は……少しの間見惚れてしまっていた。反応の無い俺を見て心配した憐から再び声をかけられるまで、俺は指先ひとつ動かせずにいた。
〝黒羽快斗〟は〝怪盗キッド〟では無いことを先程説明した……。〝黒羽快斗〟の少しの功績もそれとなく伝えただけ……。憐を助けたのは〝怪盗キッド〟なのだと理解したはずだ……。それでも俺にも当たり前のように感謝する憐を見て、常に心がけているポーカーフェイスが崩れそうになる。
(本当に律儀だな……お前は。)
快「……あぁっ!」
憐は真実を知らない……当たり前だ。これは俺の問題、俺が勝手に始めたことなのだから……知らなくて当然だ、分からなくて当然なのだ……だけど、知らなくても、分かっていなくても……それでもこんな俺を、いつでも笑顔で迎えてくれるお前のおかげで、どんなに辛いことや苦しいことがあっても、決して諦めずに信念を持ってやれるのだ。そんな憐の存在に、俺がどれだけ救われているのか……憐自身1mmも理解していない。
その後帰宅するまで、会話はあまり無かったものの何故だか居心地が良いと思えた憐と快斗。先を歩いていた青子と玲於も同じことを思っていた。4人は今日の出来事をしっかり心の中に刻みつけて、それぞれの思いを胸に今日という日を終えたのだった。
幼い頃から育まれた思いは、平行線だったものの時を経て交差するようになる。それぞれの思いを、真に全て理解しているのは、夜空に浮かぶ月の存在のみ……。
玲「快くん!お疲れ様。」
快「玲於もな。」
玲「姉さんも青ちゃんも無事だね……良かった。姉さんを助けてくれてありがとう、快くん。」
快「どうってことねーよ!オメーもよくやったな。」
玲「うん……ありがとう。」
二人で無事を祝していると、青子の目が開かれて意識を取り戻していた。
青「ふへ……玲於?!」
玲「青ちゃん!目が覚めた?」
青子は玲於に抱き上げられている自分の状況に驚いているようだった。玲於は、青子を下ろして怪盗キッドの部分を伏せて、大まかに説明した。説明を聞いた青子はおばけの正体が麻生だと分かると、尚驚いていたが、無事解決したのだと知ると安堵していた。
青「憐も無事だったし、おばけの正体も分かって良かった〜!玲於が助けてくれたんだよね。ありがとう!」
玲「……僕はただ倒れている青ちゃんを見つけただけで、特別なことは何もしてないよ。」
青「ううん、ちゃんと大声あげたら来てくれたってことでしょう?……本当にありがとう、玲於!」
玲「……うん、どういたしまして!僕は青ちゃんの為なら、どこにだって駆けつけるから。」
青「も、もう〜!!何言ってるのよ〜!!」
青(どうしよう……快斗の事が好きだったのに……今は玲於のことが……。)
青子も玲於も良い雰囲気だ……玲於があまりにも自信無さそうに言うものなら、俺からも青子に説明しようと考えていたが、青子はちゃんと分かっていた。良かったな、玲於。俺は盛り上がっている玲於と青子の後ろを、程よく距離を空けながら歩いている。
快(さーて、こっちの眠り姫はいつになったら起きるのかね〜……おっ。)
快「やっと気がついたか。」
貴「うぅ……っ快斗……?」
今まで気絶していた憐も目が覚めたようだ。起きたばかりで頭が働いてないのか、自分の状況がイマイチ飲み込めていない。
貴「……なんで、快斗の顔がアップで見えるんだろう。」
快「そりゃあ気絶したオメーを俺が抱えてるからな〜。」
貴「そっか…………っ!?下りる!!下りるから!」
快「おわぁっ!暴れんなって!!危ねーだろうが!」
自分の置かれてる状況を処理出来た憐は、真っ赤な顔をしながら、手足をバタバタさせて暴れ出した。危機感を感じた俺は、憐を即座に下ろす。大事にはならなかったが、マジで落としたらどうすんだよ。憐を下ろした後、俺は文句を言いつつも、青子に話したように今回の騒動の真相を憐に話した。地面に足をつけた憐は、時には顔を顰めながら話を聞いていた。しかし、話終わった後あることを口にした。
貴「ねぇ……私を助けてくれたのって誰か知ってる?」
快「……どういう意味だ?」
いつもの攻撃的な言葉が飛んでくると身構えて、少し不満気な態度で憐に質問の意図を聞いたが、憐は悩ましい表情を浮かべながら理由を話した。
貴「快斗はさ、泣いてる麻生先生と倒れてる私を見つけて、ここまで運んでくれてた訳よね?だからそれ以前のことは分からないんでしょ?」
快「あぁ……。(ほんとは知ってるけどな。)」
貴「私、快斗が見つけてくれる前のこと、少しだけ分かることがあるの。」
快「……?」
嫌な予感ほどよくはたらくもの……これ以上憐から話を聞くのは不味いと俺は思った。
貴「多分快斗が来る前に、その麻生先生が私を抱えていた時があって、その時に少しだけ意識が戻ったの。麻生先生は、誰かから声をかけられて私を下ろしていた。その時私は目を開けられなかったけど、耳で聞いてた。声をかけた人物と麻生先生は、多分争ってたみたいなんだけど、その人の声が快斗そっくりだった……。」
快「!?」
貴「それに麻生先生は、相手の人を怪盗キッドって言ってた。だから気になって、目をうっすら開けてみたの。麻生先生の背中でよく見えなかったけど、そこには白いマントに、白いシルクハットを被った人がいた。」
快(意識があったのか……?!)
貴「……多分その人が怪盗キッドなんだと思う。青子から聞いたんだけど、怪盗キッドって宝石ばかりを狙う泥棒なんだよね?なのに、何で宝石も置いてない江古田高校にいたんだろう……しかも、見知らぬ私を助けてくれた。」
快「……っ!」
(ヤベェ……憐が疑い始めている。妙に鋭いんだよなコイツ……。)
貴「……色々と聞いていた話と異なるから無性に気になるの。ねぇ、何で怪盗キッドはここに居たんだと思う?何で知り合いでもない私を助けてくれたんだと思う?」
怒涛の質問に俺は慎重に答える。下手に変なこと言って怪しまれても困るからな。
快「さぁな……。ただ怪盗キッドがいた理由は分からねぇけど、キッドがお前を助けた理由なら分かるぜ。」
貴「??」
快「キッドはな……宝石は盗むけど、人に危害をくわえたり、見捨てたりしないんだよ。人助けに理屈なんて考えていない……そういう怪盗なんだ。オメーを助けた理由も、きっと理屈じゃなかったんだろうさ。」
憐には、俺が怪盗キッドの心情を想像しながら話しているように見えただろう。……と言っても怪盗キッドの正体は俺なのだから、本当の事情は異なる。人助けに理屈なんて関係ないのだが、今回は、憐を一刻も早く助けたいという俺の私情が強い。しかし、そんなことを話そうもんなら自分が怪盗キッドだと自らバラしているようなもの……余計なことを語る必要は無い。月が輝く夜空を見上げながら、俺はしみじみと憐に伝えた。
貴「……そう……なのかな。……ていうか自分が怪盗キッドみたいに語るじゃない。まさか、アンタがそのキッドなんじゃないでしょうね〜……?」
……今の話を聞いてなんで俺を疑うような発言が出てくるんだよ!!
快「なわけねーだろ!!俺は怪盗キッドのファンだからな〜……お前よりかは詳しいだけだよ。」
心の中で焦りを見せつつも、俺は得意のポーカーフェイスで憐の疑いをかわす。頼む、あまり疑問を持たないでくれ……。
貴「……それもそうね。キッドが快斗なわけないよね。……マジックが得意なことや快斗と声が似てることとか類似点が少しあるけど、そんなこと言ったら、快斗にそっくりな工藤くんの存在もあるし……うん、やっぱり怪盗キッドは快斗じゃないもんね!」
快「……おう!(工藤……?)」
バレると不味いから、俺と怪盗キッドの存在を別の存在だと考えてくれるのは有難いのだが、少しモヤモヤするのは気の所為じゃないはず……工藤って誰だよ。
貴「キッド、私を助けてくれたんだもんね。もし今度会えたら、お礼言わなくちゃね。」
快「お前変なところで律儀だよな……。」
貴「何よ〜助けられたらお礼を言う……当たり前のことでしょ!……最初に青子から教えて貰った時は悪い泥棒なんだと思ってたけど、今は優しい泥棒さんなんだなって思えたよ。……こんなこと言ったら青子に怒られそうだけど、そんなに悪い人じゃないのね。……少し見直したよ。」
快「へ〜……。」
素直に怪盗キッドを褒めるような言葉に、思わず喜びが顔に出そうになるが、堪えて普通に保つ……。なんせ怪盗キッドは俺自身なのだから、俺への賞賛ってことになる……しかも普段は素直に褒めてくれない好きなやつからの賞賛は、何よりも嬉しいものだ。満更でもない顔で同意していると、憐は一度こちらを訝しげに見ながらも、すぐにその表情を辞めて穏やかな表情になった。
貴「私は怪盗キッドのことを褒めたのに、何で快斗が嬉しそうなのよ……まぁ、いっか。
ねぇ、快斗……。」
快「なんだよ、憐?」
憐の言葉を待っていると、横並びに歩いていた憐は、突如俺より一歩先を歩いて俺の真正面に立った。憐の先には、少し離れて歩いている玲於と青子の姿がある。
貴「助けてくれたのは怪盗キッドかもしれないけど、その後結局キッドは私と先生を放ってどっか行っちゃった訳じゃない?……その後、快斗が見つけてくれなかったら……、麻生先生から離してくれなかったから……、きっとまた私、怖い思いをしていたと思う……。」
快「あぁ……?」
貴「でもね、快斗が連れ出してくれたからこれ以上怖い思いをせずに済んだと思うの……。
だからね!……ちゃんと私を助けてくれてありがとうっ!快斗!」
憐は、夜風に長い髪を靡かせて、満月をバックに気恥しそうにしながらも笑みを浮かべて俺に感謝の言葉を告げた。幻想的ながらも何処か柔らかな雰囲気を持つ憐の姿に目を見開き、動かしていた足を止めてしまうほどの衝撃がはしった。
そんな憐に俺は……少しの間見惚れてしまっていた。反応の無い俺を見て心配した憐から再び声をかけられるまで、俺は指先ひとつ動かせずにいた。
〝黒羽快斗〟は〝怪盗キッド〟では無いことを先程説明した……。〝黒羽快斗〟の少しの功績もそれとなく伝えただけ……。憐を助けたのは〝怪盗キッド〟なのだと理解したはずだ……。それでも俺にも当たり前のように感謝する憐を見て、常に心がけているポーカーフェイスが崩れそうになる。
(本当に律儀だな……お前は。)
快「……あぁっ!」
憐は真実を知らない……当たり前だ。これは俺の問題、俺が勝手に始めたことなのだから……知らなくて当然だ、分からなくて当然なのだ……だけど、知らなくても、分かっていなくても……それでもこんな俺を、いつでも笑顔で迎えてくれるお前のおかげで、どんなに辛いことや苦しいことがあっても、決して諦めずに信念を持ってやれるのだ。そんな憐の存在に、俺がどれだけ救われているのか……憐自身1mmも理解していない。
その後帰宅するまで、会話はあまり無かったものの何故だか居心地が良いと思えた憐と快斗。先を歩いていた青子と玲於も同じことを思っていた。4人は今日の出来事をしっかり心の中に刻みつけて、それぞれの思いを胸に今日という日を終えたのだった。
幼い頃から育まれた思いは、平行線だったものの時を経て交差するようになる。それぞれの思いを、真に全て理解しているのは、夜空に浮かぶ月の存在のみ……。