オリジナル・原作沿い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
他人に自分の弱い部分を見せるのは、勇気がいることだ。だけど、快斗に話した後は以前よりも晴れやかな気持ちになっている。自分で自分の首を絞めていただけ。よくよく考えてみると、ここまで泣くほどのことではなかったなと今になって後悔する。いくら快斗が良いって言ったからって、雰囲気、場所的にここで大泣きするのは違う気がする……と思って手で顔を隠したまま上げられないままでいた。
快「もう大丈夫か?」
貴「うん………………。」
快「おいおい、いい加減顔上げろよ……お前そこそこ顔がいいんだから、隠してちゃ勿体ないぜ。」
貴「無理!!無理無理……ってそこそこって何よっ!!本当に失礼!!」
快「おっ!引っかかった〜!」
貴「げっ!?……。」
失礼な言葉の数々に、言い返そうと思って顔をあげたのが駄目だった……まんまと快斗の策にハマってしまった。見ないで欲しかった。だって快斗が言った"そこそこ”の顔は、今は酷い有様だろうから。視線と視線が合わさる。馬鹿にしたように笑ってると思いきや、案外そうでも無かった。そんな時はケケッて笑ってるけど、今回は口元が少しだけ上がっているだけ。そして何となくだけどこちらを見る眼差し優しい……ような気がする。
快「そろそろアイツら呼ぶか。」
貴「……そうね。それでさっさと解決して帰るよ。」
快「へいへい。」
快斗は携帯で青子達に電話をかけ、戻ってきてもらうよう話す。暫くすると青子と玲於が姿を現した。
快「じゃっ、俺達は探してくるからよ。憐と青子は待ってろよ。」
貴「はいはい……早く戻ってきてよね。」
青「うん。玲於も気をつけてね。」
玲「了解。」
快斗と玲於は近くの窓を軽々飛び越えて、廊下を歩いていった。二人がいなくなると、青子が目を輝かせて何か聞きたそうにしていた。
青「それで……憐と快斗は何話してたの?」
貴「別に大したことじゃないよ。」
青「大したことないって言う割に、憐の目も顔も赤いよ。まさか、快斗に泣かされた?!」
青子が心配して私の両肩を掴んで揺らしてくる。
貴「……見間違いだよ。別に泣いてないし……ただちょっと疲れてるだけ。珍しく私を素直に励ましてくれただけだから……。」
青「……それならいいけど。」
私の回答を聞いてもお気に召さない為か、じーっと見つめてくる青子だが、すぐに諦めてそれ以上追求してこなかった。暫く二人で手持ち無沙汰で話していると、扉についている小さな窓から人影が見える。
青「か、快斗…?」
貴「意外と早いね?」
扉が音を立てて開かれる。予想していなかった展開が訪れた。扉から現れたのは涎を口から垂らしているゾンビのような男だった。よく見るとしわくちゃな手には、包丁を持っている。
青「きゃあああ!!」
貴「包丁?!青子!逃げるよっ!」
震える足に鞭打って、青子の前に立ち持っていたモップでゾンビ男の頭を殴打した。そしてゾンビ男が怯んでいる隙に、急いで青子の手を引いてその場から逃げた。
青「追っかけて来てるぅ〜……。」
貴「後ろ振り返らないで!ひたすら足を動かすの!」
思いっきり頭を叩いたのに、追っかけてくるなんて本当に人間じゃないのかも……。青子が後ろを振り返りながら、走っているが私は見る余裕なんてなかった。一度チラッと振り返るも、怖い形相で追っかけてくるゾンビ男に、ヒヤッとして尚更走るスピードをあげる。
(ここで追いつかれるのは不味い……そうだ!)
貴「しつこい!」
ブンッ!
私は、手に持っていたモップをゾンビ男に投げる。投げたモップは真正面からゾンビ男に当たった。しかし、大してダメージを受けているように見えない。
青「全然効いてないよぉ〜!」
貴「もう!なんでまだ追っかけてくるの〜!」
決死の攻撃がビクともしなかった。それでもゾンビ男は懲りずに追ってくる為、私達は泣きそうになりながらも足を止めずに走り続ける。
(助けて……快斗っ!!)
青「憐!!」
貴「っ!?」
心の中で泣き言を言っていると、青子から呼ばれて横を見る。アイコンタクトで青子は伝えてきた。
(トイレか……袋小路になっちゃうけど、しかたない。)
私と青子は近くにあったトイレに入り、個室に身を潜めた。正直トイレに入ってしまったら、逃げ道は入口でもある扉だけ。一度入ったら最後、抜け出せるかどうか分からない。でも、ここで振り切って逃げるのは私達の体力的に難しい。
バタンッ!
(やっぱり入ってきたっ……!)
そして閉まっている個室の扉をガチャガチャ音を立てながら開けようとしてくる。
青(快斗!玲於!早く…早く来て!!)
(ここは耐えるしかない……お願い、早く来てよっ……。)
開けられないよう、二人で個室の扉を抑えるしか無かった。しかし、暫く経つとバンバン鳴っていた音が急にピタッと止まった。
青「音が止まった。憐……あいつ居なくなったのかな?(小声)」
貴「どうかな……そうだったらいいんだけど(小声)」
青「だ、大丈夫よね……もういないよね……。」
貴「えっ?もう開けるの?!」
青子はそっーと扉を開けはじめる。私は慌てて止めるが、時既に遅し。ゾンビ男がいるのかも確認せずに開けてしまった。扉を開け切る前に、上から水が降って来て青子の顔にペちょっと当たる。
青/貴「「え?」」
その原因を探ろうと上を見上げると、こちらを恐ろしい形相で見下ろしていたゾンビ男と目が合ってしまった。
貴「いやぁああああああっ!!」
青「きゃあああああああっ!!」
大きな悲鳴をあげる私と青子。散々逃げ回った後の恐怖体験。心は既に限界を超えていた。私の視界には、倒れゆく青子が映り、そして私の視界も真っ黒になった。
────────────────────────
快斗side
玲「快くん見て!生物室の明かりがまだついてる。」
快「あの先コウまだいたのか……。」
憐と青子を教室に残し、俺と玲於は探索を進めていた。途中、玲於が生物室に指を指す。生物室と言えば、先程会った麻生という教師が思い浮かぶ。しかもまだ明かりがついているということは、まだこの場所にいる可能性が高い。
ガラッ
快「あれ〜〜いねーじゃん!」
玲「ほんとだね……あれ、タバコだ。」
快「ったくタバコぐらい消して帰れよな……」
煙が出ているタバコを灰皿に押し当てる。しかし、そのタバコが気になり訝しめに観察していると、突如大きな悲鳴が聞こえてきた。
快「この声は……憐っ!!」
玲「青ちゃんっ!!……急ごう快くん!!」
聞こえてきた悲鳴は憐と青子の声だった。
快(早く行かねぇと二人が危ない……。
待ってろよ……憐っ!)
俺達は生物室を飛び出し、声の聞こえた方向に駆け抜けていく。すると目の前に、憐だけを抱えて歩いている男の姿が見えた。
玲「姉さん?!……青ちゃんが居ないっ!!……どういうこと?!」
快「……大方憐と青子を気絶させたはいいものの、一人じゃ二人を抱えきれなかったんだろうな。だから、一人ずつ抱えて移動させている。その場所は生物室かもしくは……。」
玲「じゃあ、姉さんを抱えているあのゾンビっぽい見た目の人ってもしかして……。」
快「あぁ……お前が予想している人物で間違いないだろうぜ。」
俺は玲於に説明しながら、着ていた制服を一瞬で脱ぎ捨て、怪盗キッドの姿になった。
快「恐らく青子は無事だ。多分何処かで気絶させられてる。そして聞こえてきた悲鳴からさして遠くないこの場所にアイツがいたってことは、この近くに青子はいるはずだ。
俺は怪盗キッドになって、ヤツの手から憐を救い出す!玲於は青子を見つけてきてくれ!」
黒羽快斗の姿で行くより、怪盗キッドの姿の方が都合が良い。何処かにいる青子は玲於に任せて、俺はヤツから憐を助ける。二手に分かれての作戦だ。
玲「分かった!青ちゃんのことは僕に任せて……姉さんは頼んだよ!」
玲於は早速踵を返して周辺を探し始めた。青子の事はアイツに任せておけば大丈夫だ。俺は憐を助けることに専念する。
快「そこまでだ!!」
「!?」
快「おばけを使って人を遠ざけ、こそこそ隠れて何やってんですかねぇ……?麻生先生!!」
麻「怪盗キッド!?」
俺は憐を抱えているヤツに背後から声をかける。ヤツは俺の声に驚き背後を振り返った。
快「さーて、何やってたのか教えて貰いましょうか?」
確信を持ってヤツの名前を告げると、ヤツはゾンビ男のようなマスクを脱ぎ捨て本来の姿で対面する。麻生は、俺に正体を暴かれて躍起になっているようだ。
麻「黙れ、貴様には関係ないことだ!かかれ!」
快「ね、ねずみ?!」
麻生の号令と共に、無数の毛むくじゃらの生物が一斉に俺に飛びかかる。その正体はネズミだった。
(クソぉ…ネコといいネズミといい、どーして皆ケムクジャラなんだ!?……ケムクジャラ?!も、もしかして……!?)
高笑いしている麻生の顔面目掛け、トランプ銃をうち放つ。放たれたトランプは、麻生の頭の上をスレスレで通過した。
快「!?…………。」
そのおかげで、やつが最も隠したがっていただろう秘密を暴いた。
麻「み、見るなぁ!!!そうだよっ!!毛はえ薬を作ってたんだよ!!うっうっ……。」
頭上を通過したトランプは、麻生の髪の毛ごと飛ばした。俺の予想通り、髪の毛は地毛ではなく実はカツラだったことが判明した……やつの頭は、毛ひとつない綺麗なスキンヘッドだった。
(……何も言えねぇ。)
流石の俺でもかける言葉が見つからなかった。
だがこれで今回のおばけ騒動の全容が分かった。麻生は自身の髪の毛を生やす為に、夜な夜な生物室でネコやネズミで毛を生やす実験をしていた。しかし、夜遅くに残る生徒がいた為、この秘密を守るべくわざと恐ろしい姿の化け物に変装し、遅く残る生徒達を脅かして、早く帰らせるようにしていた。分かれば案外どうってことない事件だったな。
俺は泣きじゃくっている麻生を横目に、近くで倒れている憐を抱えあげた。……良かった、気を失ってるだけだな。
快「もう一人女子生徒がいましたよね?その子はどうした!」
麻「中森なら近くのトイレにいるよ。二人とも気絶してしまったから一人ずつ外に出そうと思ってね。」
麻生から青子の居場所を聞き出している最中に、良いタイミングで玲於からメールが届いた。
玲【青ちゃん見つかったよ!トイレの中で倒れてた。特に外傷もなく気を失ってるだけみたい。こっちは大丈夫。快くんも姉さん助けられた?良さそうなら合流しよう。】
快「(……よし。)とにかく憐は返してもらうぜ。あとこれに懲りたら、二度とこんな事件を起こさぬように……。」
麻「ふぇ〜ん!!」
しっかりと麻生に釘を刺した俺は、抱き上げた憐を連れて夜の学校を後にした。途中キッドの衣装を脱ぎ、制服姿に戻り合流場所である校門へと向かった。