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青「お待たせ───♡ってあれ?快斗と玲於は?」
貴「……知らない。」
青「何で憐は怒ってるの?快斗と玲於が何かしたの?」
貴「別に怒ってないし!……あの二人は当てにならないから私達だけで行くよ。」
青「ちょっと待ってよ〜!憐ってば!」
快斗と玲於が先に行ってしまった後、私は一人青子がトイレから出てくるのを待っていた。暫くして青子が中から出てくるも、私しかいない状況に首を傾げた。そして二人の居場所を聞いてきたけど、私は先程の快斗の態度にイラついて素っ気ない態度で青子に当たってしまった。それを不審に思った青子に腕を掴まれる。
青「とにかく落ち着こう?一旦深呼吸してみて〜。」
貴「青子!さっきも言ったけど、私別に怒ってる訳じゃ……」
青「でも機嫌良くないでしょ?そんな時は深呼吸して、イライラ気分を無くそう!ほら、やってみて〜?」
貴「……わかったよ。」
青子に怒っている訳じゃないのだけど、でも確かに今の私はイライラしている。こんな態度で青子に接するのもおかしな話だ。青子の言ってくれたように、一度落ち着いて深呼吸をしてみた。
―――スゥー……ハァー……。
青「落ち着いた?」
貴「うん。ごめんね、青子。」
深呼吸したらだいぶイライラしていた気持ちが収まった。青子への態度も良くなかったと反省して謝ると、気にしないでと笑っていた。
青「それより二人は何処に行ったの?」
貴「多分調べに行ったんだと思う。」
青「え〜っ?!青子達置いていかなくてもいいじゃん!!」
(玲於の言い分を信じるなら、私達の為ってことになるけど……。)
青子が置いていかれたことにプンスカ怒っている。まぁ私もおおよそ同じ気持ちだけど、彼らの言い分を信じるなら……まぁしょうがないのかな。
貴「とにかく行こうか。ここで突っ立てても仕方ないしね。」
青「そうね〜青子、憐がいるなら大丈夫そう!」
貴「アハハ……私もだよ。」
青子の晴れやかな笑みに汗が垂れる。何かあった時、私一人で青子を守れる自信はないから、早く快斗達と合流したい。
暫くして私と青子は暗い廊下を、ゆっくり歩いていく。快斗と玲於を探しながら辺りを見回しているけど、影も形も見当たらない。こんな調子で二人と合流出来るのかな。
すると突き当たりの暗い空間に、二つの光が見える。青子が近づいて見ようとするも、それはいきなり私達の方へ飛びかかってきた。
青「きゃあぁああ!!」
貴「っ!!嫌ぁあああ!!」
ニャ〜〜〜ッ
驚いて二人で悲鳴をあげたが、目の前に出てきた物体をよく見ると、長毛の猫だった。
貴「はっ!……猫だったのね。」
青「脅かさないでよ〜。」
貴「よく見ると、可愛いよこの猫ちゃん!おいで、おいで〜。」
猫みたいな可愛い生き物なら大丈夫……むしろすぐ構いに行く。私は、警戒させないようしゃがんで、猫に手招きした。青子も後ろで見守っている。
その時月明かりに照らされて、猫の全貌が見えた。
長毛の猫ではあったけど、如何せん顔が物凄く怖い。暗くて不気味な状況も相まって、私と青子の表情は一気に変わる。
貴「きゃっ…!?」青「きゃあっ……!?」
二人揃って大声で叫びそうになるも後ろから伸びてきた手に口を塞がれ、その声は萎んでいく。その手に引かれるがまま、体ごと振り返ると……──────
快「し〜〜〜〜〜〜っ!!」
(快斗…!?)
快斗が口元に指を当てて静かにするよう言った。
玲「大丈夫……僕達だよ。」
青「玲於……。」
青子の方を見てみると、私と同様玲於に口元を抑えられていた。
快「大声出すと、やつに俺達の居場所が分かっちまう!」
玲「どうも様子が変でね。さっきみたいな長毛の猫が、5、6匹いるみたいなんだ……。」
快斗と玲於は一旦私達の口を離すと冷静に今の状況を話し出す。でも私達は、それどころじゃなかった。
青「どっ……どこ行ってたのよー!怖かったんだから!!」
玲「ご、ごめんよ青ちゃん……!」
青子は涙をポロポロ流しながら二人に訴えかける。それを見た玲於は、慌てながらも所持していたハンカチで涙を拭いてあげていた。
快「仕方ねーだろ!憐も泣いてんじゃねーよ。」
貴「っ!泣いてない!!……全く肝心な時にいないんだから………………。」
玲(いっぱい泣いてる青ちゃんだけじゃなく、一瞬目元に涙を溜めていた姉さんを見逃さない快くん流石だな〜。)
極限状態が続いた中、探していた二人の姿を見て、安心してついちょっぴり涙が出そうになったけど、泣いてないから!代わりに、快斗への文句がブツブツと次から次へと発してしまう。
快「よーし、俺と玲於は様子を見てくるから憐と青子はここに残れ!!」
嘘?!青子が大泣きしてるのに……?あんなに怖がってるのに……?いや、確かに今ここで原因を探っとかないと、これから先似たような被害を受ける生徒が増えてくる。そうなっては遅いから、調べに行こうとするのは分かる。分かるけど……あんなに泣いている青子を見ると、私と二人でも凄く不安がっていたことが分かったから、快斗の選択が一概に良いと思えない。それとも玲於に残ってもらう?でも、それじゃ快斗一人になってしまうし、どうしたらいいんだろう。
青「おねがい、快斗……青子も快斗と一緒に……。」
貴「っ……。」
青子はか細い声で、快斗の服を掴んだ。青子の本音に息を飲む。
(私もあんな風に素直に言えたら……。)
青子の行動と自分の可愛げの無さに勝手に比較しては落ち込むのを何とかしたいと思っているけど、これが私の性格なんだろうな。そう簡単には直らない。
玲(青ちゃん……やっぱり君は、快くんを頼るんだね。)
玲於の悲しげな表情が目に入る……姉としては弟の恋を応援したいが、幼馴染としては親友の恋を応援したい。もうこれだけで三角関係……?でも、快斗は青子のことが好きなんだもんね……なら、三角関係じゃないか。
──────さすが姉弟、報われない所まで似てる。
私と玲於は口を挟まず見ていると、快斗はチラッと私の方を見て、青子に向き直った。
(??)
快「だめだ!!こっから先は男のエリアだ。女のお前達を危険な目に合わせる訳にはいかない!!」
快斗がきっぱりとした態度で青子のお願いを断っていた。……ていうか、お前達って……。
(……ちゃんと私の事も気にかけてくれるんだ。)
快斗の言葉に、恐怖心が薄まり少しだけ高鳴る鼓動。
青「(快斗……)ぷぷぷ、キッザー♡」
快「うっせーなー!!」
青子の言う通り、快斗の言葉とは思えないほどキザだ。
快「ホレ!やつがきたら大声出すんだぞ!!」
快斗は近くにあるロッカーから、モップを取りだして青子に渡していた。そしてもうひとつのモップを取り出して、「これは憐のぶんな。」と言って私にも手渡してきた。
快「お前らの大声が聞こえたら、俺も玲於もすっとんでくるからよー!なぁ、玲於!」
玲「っ……うん!僕も快くんも絶対助けるから!」
青「うん!」
快斗の機転のおかげで、玲於の顔に笑顔が戻った。快斗だけじゃなく、玲於まで駆けつけてくれるということで、さっきまで号泣していたのが嘘のように、青子は満面の笑みで頷く。青子が安心出来るなら良かった。その事に少し安堵していると、快斗が改めて私に向き直る。
快「青子、玲於。悪ぃけど少し場所を変えてくれ。憐に言いたいことがある。」
貴「……えっ?!」
まさかの指名されて、反応が遅れる。……待って本当にどういうこと?
青「……分かったわよ。でも青子が居ないからって憐を虐めちゃ駄目だからね!」
快「虐めねぇよ!!失礼なやつだな。……ちょっと憐に言いたいことがあるだけだよ。」
玲「了解。準備出来たら声掛けてね。僕と青ちゃんは下の階で待ってるから。」
快「おう!」
そう言って青子と玲於は、私が声をかける暇もなく傍から離れて行った。
(……快斗が今、何を考えているのか分からない。)
快斗と二人残された状況……場所が場所なだけに全く嬉しくない。
快「さてと……なぁ、憐。俺が何でお前だけを残したか分かるか?」
貴「分からないよ。」
快「憐が俺の嫌いな物を知ってるように、俺も憐の苦手な物を知ってる。」
貴「!!」
思いがけない言葉に、表情が固まる。
快「怖いものが苦手な癖に青子を守ろうと盾になったり、今だって泣いてたこと隠そうとしてるけどな……バレバレなんだよ。」
貴「なっ!何言って……!」
快「ったく、今更なんだよ。なのにお前ときたら見栄張って言わねーからな。……大方玲於にも言ってないだろ。」
何でよ……何で言ってないのに、快斗には何もかもバレてるのよ。青子にも言ってないし、玲於には克服したって言ってるのに……。
貴「うっ……そんなことないから!……別におばけなんて怖く……ない……。」
快「まだ言うかコラ。」
貴「だって……ここで認めちゃったら……私……。」
青子には安心してもらいたくて、玲於には、双子とはいえ私が姉なのだから、弱いところは見せられないと虚勢をはってきた。そのちっぽけなプライドだけでやってきたのだ……今ここで認めてしまったら、私はきっと使い物にならなくなる。
快「バーロー……無理して強がらなくていい……、玲於にも青子にも言えなくてもいい……。だけどな、俺には言えよ!怖いなら怖いって。
……俺は無理してるお前を見るのは嫌なんだよ。」
貴「!!」
快「お前のどんな所も、俺は受け止められる。だから安心して頼ってこいよ。」
馬鹿だな私……全部バレてるじゃん。無理して強がってたこと。快斗には隠せないな。隠しても見抜いてくる観察力と洞察力の高さ……まるで盗一さんみたい。快斗のマジックを見てると盗一さんのマジックを思い出すから、本当に彼は父親に日に日に似てきている。
(以前に貴方が仰っていたこと。本当ですね……盗一さん。)
──────
盗『これから先、憐くんは様々な事に悩み、傷つき、数多くの困難にぶつかりながら生きていくだろう。だが、心配する必要も、落ち込む必要も全く無い。その時力になってくれる人が必ずいる筈だ……少なくともうちの快斗は、絶対君を放っておかないぞ。今はまだ分からなくとも、いつかきっと分かる。その時が来たら、素直に甘えてみるといい。』
─────────
それが今この時……天邪鬼な私が素直になる為の第一歩。快斗が手を伸ばしてくれている。なら、私からもしっかり伸ばそう。
貴「こんな不気味な場所も、よく分からないお化けのことも、凄く怖いよ。行きたくなんてなかったよ……でも、もし私の知らない間に、快斗達が大変な目に合ったらと思うと、そっちの方がもっと怖いの。」
快「あぁ……。」
貴「本当はずっと怖かったっ……!怖かったよぉ〜〜っ……。」
一度壊れたものは、修復するのに時間がかかるように、一度大量に流れた涙を、直ぐに止めることなんて出来ない。年甲斐もなく大泣きして、目元を擦りながらワンワン泣く姿は、我ながら子どもみたいだった。
快斗はずっと私の傍にいてくれた。特に何かをする訳でもなく、何も言わずそばにいてくれた。それがとても安心できたのだ。