オリジナル・原作沿い
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快斗side
快「うへ〜〜夜の学校ってきもちわりーな!」
青「そ、そうね……💧」
完全に日が沈み、暗い夜道を歩いて俺達の通う高校、江古田高校に辿り着く。青子が率先して学校の窓から順々に入り込み、俺、青子、憐、玲於の順番で廊下を歩いていた。俺と青子は、夜の学校の不気味さに感想をこぼす。
貴「……。」
玲「皆、あまり大きな声出さない方がいいよ。万が一誰かに聞かれでもしたら……」
……何も話さない憐と、声を出す俺達に注意を促す玲於。憐の様子に、声をかけようと振り返ろうとした瞬間……。
?「コラぁ〜〜〜〜〜〜!!」
快/青/玲「「「っ!……。」」」
貴「っ!?!?!?」
突如聞こえた大声に驚いた俺達は、後ろを振り返る。その際に、俺より後ろにいた憐だけは誰よりも驚いていて、即座に前に駆け出し俺の背中へと回り込んだ。……心做しか怯えているように見えた。
快「……。」
俺が横目で憐の姿を確認していると、青子が男の名を叫んだ。
青「麻生先生!?」
麻生……どこか聞いたことのある名前だと思ったら、そういえば今日青子が、授業中に話してくれていた先生だった。先月この高校にやってきた生物を担当している先生で、スポーツマンで頭も優秀、おまけにハンサムで江古田の女の子に人気があるやつと言われていた男。その話を聞いた時、俺は気に食わねぇヤロウだと思った記憶がある。でも何故やつがここにいるのか……。
麻「こんな時間に学校をうろつくとは、あまり感心できんな。」
青「ちょ、ちょっと忘れ物しちゃって……💧」
青子が麻生に注意されるも、何とか誤魔化してやり過ごそうとする。
(てめぇこそ何やってんだよ……。)
俺が不審な目を向けていると、やつはここにいる理由を話した。
「ハハハ、実は先生も忘れ物なんだ……💧」
(ほんとかよこの教師……。)
青「きゃは!先生って意外とドッジー♡」
麻「みんなにはナイショだぞ!」
自分のことは棚に上げて何を言ってるんだコイツ……。そしてふと隣の玲於を見る。先程から微動だにせず立っている玲於が気になって見てしまったが、俺よりも玲於の方がイラついていた。
玲「……。」
珍しく無表情で麻生を見ていた。視線が冷たい……誰に対しても分け隔てなく優しい玲於にしては珍しい。でも、それもそうかと納得する。青子 が他の男に対して満更でもない態度をしているから、いくら気の良い玲於もイラつくのだろう。
麻「それから君、随分びっくりさせてしまったね……すまない。そこまで驚かすつもりはなかったんだ……。」
そして麻生は、俺よりも後ろの方に目を向けて謝っていた。……その位置的に当てはまるのは憐しかいない。
貴「っ!……い、いえ!こちらこそ部外者なのにすみません。」
声をかけられると思っていなかったのか、憐は俺の背中から体を横にずらし、腕を離して謝った。
麻「見たところ、うちの生徒ではないようだが……素直に謝罪出来る君は素晴らしいよ。」
貴「あ、ありがとうございます……!」
憐の素直な物言いに気を良くしたのか、憐の頭を撫でながら話す麻生。そして褒められて気持ちが楽になったのか、素直に撫でられている憐……。
(あのヤロウ……気安く触ってんじゃねぇーよ。……憐も、何簡単に触れさせてんだよ。)
快「ケッ!」
二人のやり取りに、無性に腹が立ってくる。思わず悪態つきそうになるくらいだ。
玲「快くん……物凄く気持ち分かるけど、今は抑えてね。」
快「……俺は別にいつも通りだぜ。」
玲「嘘ばっかり……先生が姉さんに優しくしてるのもムカついているし、姉さんがそれに満更でもない反応してるから、イラついてるんでしょ?その気持ち本当に良く分かる。僕だってあんな嬉しそうな青ちゃんの姿を見るのは嫌だけど、今は駄目だよ。本当に嫌だけど、先生には僕らを見逃してもらわないとね。」
快「……そうだな。」
物凄く癪だが、玲於の言うことは正しい。俺達が自由に動く為には、コイツの存在は邪魔でしかないからな。
青「憐照れてる〜。」
貴「ちょっ!?青子、変なこと言わないでよ!普通だよ。」
青「え〜?そうかな〜?そんなこと言ったって青子の目は誤魔化せないよ〜?」
貴「!!……もう早く行くよ!忘れ物取りに来たんでしょ。」
青「分かってるよ〜……じゃあね〜先生!」
その言葉に玲於と憐は麻生に頭を下げて、青子は手を振っていた。
麻「すぐ帰れよ───!!」
青「は〜〜い♡」
麻生は俺達を一瞥した後、片手をあげて廊下の奥へと消えていった。
青「憐〜先生がいれば安心だね♡」
貴「まぁ、そうね……。」
憐と青子は安心しきった態度を見せる。
快「ケッ!」
玲「……。」
逆に俺と玲於の機嫌は急降下。その態度を察した青子が、小憎たらしい笑みを浮かべながら、俺と玲於をからかい始めた。
青「あっれ〜〜?玲於と快斗、もしかしてやいてんのかなぁ?」
玲「あっ……青ちゃんの後ろに……。」
青「嫌ぁ〜〜!!何よ〜!?」
玲「……赤い火のようなものが見えた気がしたけど、気の所為だったみたい。」
青「っ!!……玲於!びっくりさせないでよ〜!!」
玲「ごめんね青ちゃん。でも、ここでモタモタしてたら今みたいな見間違えをしてしまうかもしれないから、早く行こう。」
青「そんなの嫌〜!!」
先を歩いた玲於を追って青子も歩き出す。俺と憐も、二人に遅れないよう、その後に続いて歩き出した。
────────────────────────
快「そーいやよー、他の奴にも聞いたんだけどよ〜おばけを見たやつ、どうやら恵子だけじゃねーらしいぜ……。」
貴「えっ……。」
快「この一ヶ月の間に11人はいるぜ……それも全て遅くまで学校にいたやつばかり……。」
(やっぱりついてくるんじゃなかった……。)
先を歩く青子達を目に入れながら、快斗と横並びで歩いていく。その時に快斗が話してくれた内容を聞いて、私の顔色が真っ青になる。そして安易に青子の頼み事を引き受けるのではなかったと後悔した。
貴「ねぇ、快斗……。」
快「どうした?」
貴「私達……無事に帰れるよね?」
この不安な気持ちをどうにかしたくて、つい快斗に聞いてしまった。
(快斗に言ってないけど……私、ほんとは……)
心の中で自身の弱音を吐く……快斗達がいるから今まで何とか来れたけれど、そろそろ手の震えを隠すことが難しくなりそうだ。
快「大丈夫だぜ、憐。そのうち……」
『かぁ〜えぇ〜れぇ〜』『かぁ〜えぇ〜れぇ〜』
快斗が全て答える前に、突然聞こえた謎の声。
玲「これは……。」
青「きゃあぁ〜!!」
それは玲於と青子も聞こえたようで、玲於の肩を持ちながら悲鳴をあげる青子と周りを見回していた玲於。
貴「っ!!一体何なのよもう〜……。」
快(スピーカー……放送室か!?)
不気味な声に更に不安な気持ちが増して、思わずそばに居た快斗の腕を思いっきり掴んでしまったけど、快斗は気にしてなさそうだったから良かった。
玲「放送室に行こう!」
快「クソぉ〜!」
と思ったら、玲於と快斗が階段を走って上がり始めた。
青「待ってよ〜、先生に知らせた方が!」
青子が止めるもお構い無しの二人。登ろうとするも快斗が足を滑らせ階段から落ちていく。
玲「快くん!?……大丈夫?」
快「あぁ……!」
青「何よー、ドッジね〜♡そんなに急ぐからよ!」
快「あんだと〜〜!!」
青子の馬鹿にするような笑いに、反論する快斗。しかし、その時の快斗の様子をを見て私は失神しそうになる。
貴「快斗!!血が……!!」
額を中心に顔全体に大量の血を流す快斗の姿を見た青子は先程よりも大きい悲鳴をあげた。
────────────────────────
快「誰かが俺たちを脅かしているんだ!!ただのイタズラかそれとも……」
学校のトイレの洗面台で、血を落とした快斗が自分達を脅かしているものがいると言い切った。結論から言うと、快斗の顔を覆っていた血は、快斗のものではなかった。快斗が足を滑らせた階段をよく見てみると、上の段から大量の血液が流れ出ていた。
(とにかく快斗の血液じゃなくて、本当に良かった……。)
青「快斗、玲於……少し、外に出てて。」
安心したのもつかの間、青子が少し頬を赤らめながら男性陣に出て欲しいと頼む。
快「あんだー、置いてっちまうぞー!」
快斗のデリカシーのない声が響く。本当に快斗って……ため息が出そうになるくらい鈍い男だ。
玲「!!……分かったよ青ちゃん!僕らは速やかに出ていくね!!」
貴「私も出ていくよ……安心して、何かあったら駆けつけられるよう入口にいるから。」
快「何だよお前らも……痛ってぇ!!!」
唯一分かってない快斗の頭を叩き、強制的に黙らせた私。痛みを悶えている快斗を引きずって玲於と私は、トイレから出ていった。
快「───ったく、女ってやつはよー!!」
貴「デリカシーの欠片もないわね……最低。」
快「あんだよ!お前な……何も叩くことねぇだろうが!」
貴「快斗が馬鹿なこと言うからでしょ?!生理現象だから仕方ないし、青子は女の子なのよ?!仮にもアンタら異性の前で言うことがどれだけ勇気がいると思ってんのよ!!」
本当に有り得ない……何で分からないのよバ快斗。
玲「これは姉さんに同意かな。快くんはもう少し、女の子の気持ちを察せられるといいね。」
快「なっ!?……。」
玲於にまで言われると思っていなかったのか、焦った顔をする快斗。その様子を見て更に肩を落とす。
(少なくとも好きな人には優しくしなさいよね……その点、玲於は分かっているから1歩リードね。)
勝手に優劣をつけてみたり……私は青子ではないけど、女の子同士、嬉しいこと、嫌なことはそれなりに分かっているつもりだ。ましてや小さい頃からずっと一緒にいた幼馴染で親友の好みなんて、分かるもの。青子に限らず、昔からずっと一緒にいた快斗、そして双子の姉弟でもある玲於……ずっと一緒に居たから分かるのだ……誰が誰を好きかなんて。
そう考えていると何やら快斗と玲於の間で話が進んでいたらしく、快斗がお化けの正体を探る為にこの場を離れるなんて言い出した。
貴「えっ?!ちょっと!青子はどうするのよ!?一人置いていける訳ないじゃない!」
私は何とか抗議するも先程の叩きが効いているのか、全く耳を貸さない快斗。そして玲於までもこの場を離れて快斗に着いて行くと言い出した。……玲於まで、何で……?!
快「だったらお前が残ってたらいいだろー?そしたら青子だって一人じゃねぇんだし……。」
貴「でも……!」
快「なんだよ憐……お前まさか怖いのかぁ?」
貴「っ!!……もう、いい!快斗も玲於も知らないっ!!好きにしたらいいじゃない!!」
私は二人に背を向けた……引くに引けない所まで来てしまった。不安しかないが、ここまで言われて引き下がれる訳ない。
玲「待ってよ姉さん!快くんはただ、これ以上姉さんと青ちゃんを怖い目に合わせない為に…」
快「玲於!!……行こうぜ。」
玲於が全てを言う前に、快斗が私とは反対方向に向かって歩き出す。その時の快斗が名残惜しそうに振り返るも、前を向き直して真剣な表情で歩き出していたことも、玲於が何か言いたげな顔をしながらも、結局快斗に従って着いて行ったことも、この時の私は知る由もなかった。
快「うへ〜〜夜の学校ってきもちわりーな!」
青「そ、そうね……💧」
完全に日が沈み、暗い夜道を歩いて俺達の通う高校、江古田高校に辿り着く。青子が率先して学校の窓から順々に入り込み、俺、青子、憐、玲於の順番で廊下を歩いていた。俺と青子は、夜の学校の不気味さに感想をこぼす。
貴「……。」
玲「皆、あまり大きな声出さない方がいいよ。万が一誰かに聞かれでもしたら……」
……何も話さない憐と、声を出す俺達に注意を促す玲於。憐の様子に、声をかけようと振り返ろうとした瞬間……。
?「コラぁ〜〜〜〜〜〜!!」
快/青/玲「「「っ!……。」」」
貴「っ!?!?!?」
突如聞こえた大声に驚いた俺達は、後ろを振り返る。その際に、俺より後ろにいた憐だけは誰よりも驚いていて、即座に前に駆け出し俺の背中へと回り込んだ。……心做しか怯えているように見えた。
快「……。」
俺が横目で憐の姿を確認していると、青子が男の名を叫んだ。
青「麻生先生!?」
麻生……どこか聞いたことのある名前だと思ったら、そういえば今日青子が、授業中に話してくれていた先生だった。先月この高校にやってきた生物を担当している先生で、スポーツマンで頭も優秀、おまけにハンサムで江古田の女の子に人気があるやつと言われていた男。その話を聞いた時、俺は気に食わねぇヤロウだと思った記憶がある。でも何故やつがここにいるのか……。
麻「こんな時間に学校をうろつくとは、あまり感心できんな。」
青「ちょ、ちょっと忘れ物しちゃって……💧」
青子が麻生に注意されるも、何とか誤魔化してやり過ごそうとする。
(てめぇこそ何やってんだよ……。)
俺が不審な目を向けていると、やつはここにいる理由を話した。
「ハハハ、実は先生も忘れ物なんだ……💧」
(ほんとかよこの教師……。)
青「きゃは!先生って意外とドッジー♡」
麻「みんなにはナイショだぞ!」
自分のことは棚に上げて何を言ってるんだコイツ……。そしてふと隣の玲於を見る。先程から微動だにせず立っている玲於が気になって見てしまったが、俺よりも玲於の方がイラついていた。
玲「……。」
珍しく無表情で麻生を見ていた。視線が冷たい……誰に対しても分け隔てなく優しい玲於にしては珍しい。でも、それもそうかと納得する。
麻「それから君、随分びっくりさせてしまったね……すまない。そこまで驚かすつもりはなかったんだ……。」
そして麻生は、俺よりも後ろの方に目を向けて謝っていた。……その位置的に当てはまるのは憐しかいない。
貴「っ!……い、いえ!こちらこそ部外者なのにすみません。」
声をかけられると思っていなかったのか、憐は俺の背中から体を横にずらし、腕を離して謝った。
麻「見たところ、うちの生徒ではないようだが……素直に謝罪出来る君は素晴らしいよ。」
貴「あ、ありがとうございます……!」
憐の素直な物言いに気を良くしたのか、憐の頭を撫でながら話す麻生。そして褒められて気持ちが楽になったのか、素直に撫でられている憐……。
(あのヤロウ……気安く触ってんじゃねぇーよ。……憐も、何簡単に触れさせてんだよ。)
快「ケッ!」
二人のやり取りに、無性に腹が立ってくる。思わず悪態つきそうになるくらいだ。
玲「快くん……物凄く気持ち分かるけど、今は抑えてね。」
快「……俺は別にいつも通りだぜ。」
玲「嘘ばっかり……先生が姉さんに優しくしてるのもムカついているし、姉さんがそれに満更でもない反応してるから、イラついてるんでしょ?その気持ち本当に良く分かる。僕だってあんな嬉しそうな青ちゃんの姿を見るのは嫌だけど、今は駄目だよ。本当に嫌だけど、先生には僕らを見逃してもらわないとね。」
快「……そうだな。」
物凄く癪だが、玲於の言うことは正しい。俺達が自由に動く為には、コイツの存在は邪魔でしかないからな。
青「憐照れてる〜。」
貴「ちょっ!?青子、変なこと言わないでよ!普通だよ。」
青「え〜?そうかな〜?そんなこと言ったって青子の目は誤魔化せないよ〜?」
貴「!!……もう早く行くよ!忘れ物取りに来たんでしょ。」
青「分かってるよ〜……じゃあね〜先生!」
その言葉に玲於と憐は麻生に頭を下げて、青子は手を振っていた。
麻「すぐ帰れよ───!!」
青「は〜〜い♡」
麻生は俺達を一瞥した後、片手をあげて廊下の奥へと消えていった。
青「憐〜先生がいれば安心だね♡」
貴「まぁ、そうね……。」
憐と青子は安心しきった態度を見せる。
快「ケッ!」
玲「……。」
逆に俺と玲於の機嫌は急降下。その態度を察した青子が、小憎たらしい笑みを浮かべながら、俺と玲於をからかい始めた。
青「あっれ〜〜?玲於と快斗、もしかしてやいてんのかなぁ?」
玲「あっ……青ちゃんの後ろに……。」
青「嫌ぁ〜〜!!何よ〜!?」
玲「……赤い火のようなものが見えた気がしたけど、気の所為だったみたい。」
青「っ!!……玲於!びっくりさせないでよ〜!!」
玲「ごめんね青ちゃん。でも、ここでモタモタしてたら今みたいな見間違えをしてしまうかもしれないから、早く行こう。」
青「そんなの嫌〜!!」
先を歩いた玲於を追って青子も歩き出す。俺と憐も、二人に遅れないよう、その後に続いて歩き出した。
────────────────────────
快「そーいやよー、他の奴にも聞いたんだけどよ〜おばけを見たやつ、どうやら恵子だけじゃねーらしいぜ……。」
貴「えっ……。」
快「この一ヶ月の間に11人はいるぜ……それも全て遅くまで学校にいたやつばかり……。」
(やっぱりついてくるんじゃなかった……。)
先を歩く青子達を目に入れながら、快斗と横並びで歩いていく。その時に快斗が話してくれた内容を聞いて、私の顔色が真っ青になる。そして安易に青子の頼み事を引き受けるのではなかったと後悔した。
貴「ねぇ、快斗……。」
快「どうした?」
貴「私達……無事に帰れるよね?」
この不安な気持ちをどうにかしたくて、つい快斗に聞いてしまった。
(快斗に言ってないけど……私、ほんとは……)
心の中で自身の弱音を吐く……快斗達がいるから今まで何とか来れたけれど、そろそろ手の震えを隠すことが難しくなりそうだ。
快「大丈夫だぜ、憐。そのうち……」
『かぁ〜えぇ〜れぇ〜』『かぁ〜えぇ〜れぇ〜』
快斗が全て答える前に、突然聞こえた謎の声。
玲「これは……。」
青「きゃあぁ〜!!」
それは玲於と青子も聞こえたようで、玲於の肩を持ちながら悲鳴をあげる青子と周りを見回していた玲於。
貴「っ!!一体何なのよもう〜……。」
快(スピーカー……放送室か!?)
不気味な声に更に不安な気持ちが増して、思わずそばに居た快斗の腕を思いっきり掴んでしまったけど、快斗は気にしてなさそうだったから良かった。
玲「放送室に行こう!」
快「クソぉ〜!」
と思ったら、玲於と快斗が階段を走って上がり始めた。
青「待ってよ〜、先生に知らせた方が!」
青子が止めるもお構い無しの二人。登ろうとするも快斗が足を滑らせ階段から落ちていく。
玲「快くん!?……大丈夫?」
快「あぁ……!」
青「何よー、ドッジね〜♡そんなに急ぐからよ!」
快「あんだと〜〜!!」
青子の馬鹿にするような笑いに、反論する快斗。しかし、その時の快斗の様子をを見て私は失神しそうになる。
貴「快斗!!血が……!!」
額を中心に顔全体に大量の血を流す快斗の姿を見た青子は先程よりも大きい悲鳴をあげた。
────────────────────────
快「誰かが俺たちを脅かしているんだ!!ただのイタズラかそれとも……」
学校のトイレの洗面台で、血を落とした快斗が自分達を脅かしているものがいると言い切った。結論から言うと、快斗の顔を覆っていた血は、快斗のものではなかった。快斗が足を滑らせた階段をよく見てみると、上の段から大量の血液が流れ出ていた。
(とにかく快斗の血液じゃなくて、本当に良かった……。)
青「快斗、玲於……少し、外に出てて。」
安心したのもつかの間、青子が少し頬を赤らめながら男性陣に出て欲しいと頼む。
快「あんだー、置いてっちまうぞー!」
快斗のデリカシーのない声が響く。本当に快斗って……ため息が出そうになるくらい鈍い男だ。
玲「!!……分かったよ青ちゃん!僕らは速やかに出ていくね!!」
貴「私も出ていくよ……安心して、何かあったら駆けつけられるよう入口にいるから。」
快「何だよお前らも……痛ってぇ!!!」
唯一分かってない快斗の頭を叩き、強制的に黙らせた私。痛みを悶えている快斗を引きずって玲於と私は、トイレから出ていった。
快「───ったく、女ってやつはよー!!」
貴「デリカシーの欠片もないわね……最低。」
快「あんだよ!お前な……何も叩くことねぇだろうが!」
貴「快斗が馬鹿なこと言うからでしょ?!生理現象だから仕方ないし、青子は女の子なのよ?!仮にもアンタら異性の前で言うことがどれだけ勇気がいると思ってんのよ!!」
本当に有り得ない……何で分からないのよバ快斗。
玲「これは姉さんに同意かな。快くんはもう少し、女の子の気持ちを察せられるといいね。」
快「なっ!?……。」
玲於にまで言われると思っていなかったのか、焦った顔をする快斗。その様子を見て更に肩を落とす。
(少なくとも好きな人には優しくしなさいよね……その点、玲於は分かっているから1歩リードね。)
勝手に優劣をつけてみたり……私は青子ではないけど、女の子同士、嬉しいこと、嫌なことはそれなりに分かっているつもりだ。ましてや小さい頃からずっと一緒にいた幼馴染で親友の好みなんて、分かるもの。青子に限らず、昔からずっと一緒にいた快斗、そして双子の姉弟でもある玲於……ずっと一緒に居たから分かるのだ……誰が誰を好きかなんて。
そう考えていると何やら快斗と玲於の間で話が進んでいたらしく、快斗がお化けの正体を探る為にこの場を離れるなんて言い出した。
貴「えっ?!ちょっと!青子はどうするのよ!?一人置いていける訳ないじゃない!」
私は何とか抗議するも先程の叩きが効いているのか、全く耳を貸さない快斗。そして玲於までもこの場を離れて快斗に着いて行くと言い出した。……玲於まで、何で……?!
快「だったらお前が残ってたらいいだろー?そしたら青子だって一人じゃねぇんだし……。」
貴「でも……!」
快「なんだよ憐……お前まさか怖いのかぁ?」
貴「っ!!……もう、いい!快斗も玲於も知らないっ!!好きにしたらいいじゃない!!」
私は二人に背を向けた……引くに引けない所まで来てしまった。不安しかないが、ここまで言われて引き下がれる訳ない。
玲「待ってよ姉さん!快くんはただ、これ以上姉さんと青ちゃんを怖い目に合わせない為に…」
快「玲於!!……行こうぜ。」
玲於が全てを言う前に、快斗が私とは反対方向に向かって歩き出す。その時の快斗が名残惜しそうに振り返るも、前を向き直して真剣な表情で歩き出していたことも、玲於が何か言いたげな顔をしながらも、結局快斗に従って着いて行ったことも、この時の私は知る由もなかった。