オリジナル・原作沿い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
快斗side
貴「ふ〜ん、なるほどね。つまり青子はこう言いたいわけね?友達の恵子ちゃんが、夜の図書室で勉強していたら、怖いおばけを見てしまい、そのショックで学校を欠席した。その恵子ちゃんの敵をとる為、夜の学校に行くから私にも同行してほしい……と……。」
青「そう!玲於がついてきてくれるって言ってたけど、こういうのは人数は多い方が良いと思うの!だから、ね?良いでしょ憐!」
貴「……青子の馬鹿ーー!!!」
青「なんでよーー!!」
(……だろうな。)
学業を終え、一度自宅に寄って荷物を置き、夕食を食べに神崎家へと入る。俺と青子にとっては勝手知ったる家我が家のように居心地の良い神崎家。家の中に入ると、既におばさんが俺達の分まで夕食を振舞ってくれたので有難く頂いた。その後少し時間も空いたので、俺と玲於は玲於の部屋で床に座ってテレビゲームをしていた。俺達の後ろでは、憐と青子が、玲於のベッドに腰掛けながら世間話をしている。初めは互いにゲームに白熱していたので、アイツらがどんな話をしているのか気にならなかったが、徐々に聞いたことのある話題となっていき、気づけば俺達の手は自然に止まって、その会話を聞いていた。
貴「……百歩譲って友達の為に真相を知りたいって言う気持ちは分かるよ??でもさ、青子がわざわざしなくてもいいじゃない。まずは先生に相談して深夜の見回り増やしてもらったり、調べてもらったりしてからで良くない?なんで青子がやるのよ!何かあったらどうするの?危ないじゃない!」
青「もう〜憐のわからず屋!分かるなら一緒に着いてきてよ〜。だって、恵子は何も悪いことしてないんだよ?……ただ夜遅くまで勉強してただけなのに……それなのに、あんな怖い目にあって……恵子の為にも引く訳にはいかないの!それに青子だけじゃなくて、玲於も快斗も来てくれるんだから大丈夫!」
貴「玲於と快斗が居ても危ないのよ!大人がいた方がいいって〜……そうだ、銀三さんは?!青子のお父さんにお願いしようよ!忙しい銀三さんには悪いけど娘のためならきっと来てくれるから。」
青「お父さんは怪盗キッドで、忙しいんだから駄目だよ!」
憐も青子も引かないから、暫く話し合いは平行線のままだろうな。こうなった原因の話をすると、ある時青子の友人である恵子という女子生徒がいた。この日彼女は、夜遅くまで学校の図書室で勉強をしていた。勉強に夢中になっていた恵子は、日が落ちて外が暗くなっていることに気づく。帰る準備をしていると上の階からガタッ!と音がした。上の階には、もう誰もいないはずなのに、音がしたので不審に思っていると、肩を叩かれ振り返ってみたらお化け(仮)がいた。そのお化け(仮)に驚かされたショックで、欠席した恵子の為に、夜の学校に忍び込む算段を企てた青子。しかし、さすがの青子も一人で忍び込むにはと思い、憐を誘うも物の見事に断られていた。
実はこの話を俺と玲於は、先に学校で聞いている。その時の俺は、呆れて疑いの目を青子に向けた。だってそうだろう……?この世におばけなんてものは存在しない……なのに青子は、恵子の話を信じ、挙句の果てには恵子の敵をとるため夜の学校に忍び込むというのだ。もちろん俺は行く気なんて無かったのだが、アイツは違った。
快「いくら青子に甘い憐でも、すぐにオーケー出さなかったのによぉ……お前は秒だったな。」
玲「そんなことはないと思うけどな……まぁでも僕と姉さんは双子だけど、結構違うからね〜。それに青ちゃんは止めても納得しないだろうし、それだったら青ちゃんが納得するまで、付き合えばいいかなって思ってね。」
快「それはお優しいことで……。」
玲於は、なんてことないように言ってのける。更には 「夜の学校に女の子一人なんて、危ないしね。」と取ってつけたように言う……いや、本当に思っていることを口に出しているんだろうが、別の思惑が潜んでいることが分かりやすい。
(青子のことになると、許容範囲が輪をかけて広くなるのは変わらねぇな。)
昔から人当たりが良い神崎玲於という男は、基本頼み事を断らない主義の人間である。しかし、限度というものは存在する。玲於は自分が引き受けることによって、誰かが傷ついたり、涙を流す人がいると分かれば、即座に断る。そんな奴だから、玲於を慕う人間は多い。男にも女にもモテる……だけど、青子にだけはいっとう優しい。青子の為には努力を惜しまない、大抵の無茶振り行動に答えられてしまう。それだけ玲於にとって中森青子という人間は特別なのだろう。
(……俺も玲於みたいに優しく出来れば、
いまだ言い合いをしている幼馴染達を眺めながら、密かに考える。頭では分かっていてもどうしてもからかうような物言いになってしまうのだ。ため息をつきそうになるが、玲於が意味深な笑みを浮かべている事に気づいた。
快「なんだよ……。」
玲「僕が優しいなら快くんだってそうだろう?例え僕や姉さんが行かないって言ったとしても、君は何だかんだ青ちゃんに付き合ってくれるはずだよ。じゃなきゃ今頃快くんは、とっくに家に帰ってるはずだもんね。」
快「……どーだかな。」(……にゃろう。)
俺のポーカーフェイスも、玲於にはあまり通用しない。……最終プランもコイツにはバレている。
玲「それに快くんが予想していることが、多分もうすぐ起きるんじゃないかな?」
玲於はそう言いながら、憐と青子の方に顔を向ける。二人の言い合いは先程よりは落ち着いているようだ。
貴「……もう〜分かったわよ!一緒に行けばいいんでしょ行けば。」
青「やった〜!じゃあ早速行こう!……恵子の為にも頑張らなくちゃ!」
貴「……私高校違うのに、帝丹ならまだしもなんで江古田に忍び込まなきゃいけないのよ。」
片や打倒おばけに燃えている青子と、片や諦めて項垂れている憐……対照的な構図であり、割と頻繁に見られるケースだ。……俺が夜遅くまで、玲於の部屋に残っている理由。玲於の言った通り、もし万が一青子一人で乗り込むようなことがあってはならない為の保険もあるが、もうひとつ別の理由が存在する。
───何だかんだ青子に甘い憐なら、最終的に青子の根気強さに折れて、同行するだろうと考えていたからだ。
玲「ほらね。最終的に姉さんが根負けして青ちゃんに着いていくって分かってたから、君は〝すぐにオーケーを出さなかったのに〟なんて言ったんだよね。」
自分の意図が何もかも見透かされている。さすがは幼馴染といった所か……でも素直に認めるのも癪だから、少し反抗した。
快「……さあな。」
玲「素直じゃないなぁー。」
青「ほら早くー!玲於も快斗も行くよ!」
玲「は〜い!今行くよー……。」
一番に部屋から出た青子に、急かされた玲於はお先にと言わんばかり、青子について部屋を出ていく。俺も腰を上げて出ていこうとしたが、憐が俯いたままベッドに腰掛けていることに気づく。
貴「もうこうなった以上青子は止められないから、ついて行くしかないのよね……うん、頑張ろう。ファイトよ私。」
快「憐……あまり無理すんなよ。」
俺の弱点が魚であることを知っていたように、俺も同様コイツの弱点を知っている。
貴「っ!……なんの事?」
本人は隠しているつもりだろうが、強がって無理して笑っていることがバレバレである。
快「はぁ〜……いい加減に素直になれよな〜。……可愛くねぇやつ(小声)。」
貴「ちょっと、人の顔見てため息つかないでくれる!?それに私はちゃんと素直ですー!あと小声すぎて後半分からなかったけど、まぁいいわ……いい快斗?青子のことちゃんと守ってあげてね。」
憐は、気持ちを切り替えて真剣な表情で俺に青子のことを頼んだ。
快「別に俺はアイツの為だけに行く訳じゃ……。」
貴「私に言う前に、アンタこそもっと素直になりなさいよもう……玲於もいるから大丈夫だとは思うけど、万が一のことがあった時、ちゃんと青子は守ってあげてね。」
……何だよ、それ。何でオメーはいつも……人に頼ろうとしねぇし、その中に自分を含めないんだ。
pipipi……
俺が言い返す前に憐の携帯が鳴る。着信先は青子から。
青「二人とも何やってるの〜!もう青子と玲於は外にいるんだから、早く来てー!!」
貴「はいはい、今行くから待っててー!」
携帯を切るや否や立ち上がり、扉を開けようとする憐……ヤベェ、早く言わねーとタイミングが……。
快「おい、憐……」
貴「ほら、快斗早く行くよ!青子が待ちくたびれてる。私はもう行くから!」
そう言って俺の話を聞こうとせず、駆け出していく憐。
バタンッ!
玲於の部屋の扉をぞんざいに扱って出て行った。
快「バーロー……人の話は最後まで聞けよな。」
玲於の部屋に一人取り残された俺は、不貞腐れたように呟いた。