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太陽が沈み物静かな夜の時間に、けたたましいサイレンが鳴り、夜空に轟音をたてるヘリコプターが飛び交う中、高所から地上を見下ろすもの達がいた。
快「闇夜に鉄のカラスが二羽…その奥にもう三羽…おっとっと───装甲車まで用意してやがる……。
さーすが警視庁♥ 気合い入ってんじゃねーか!」
寺「お止め下さい、快斗ぼっちゃま…。今回のヤマ…何か嫌な胸騒ぎがします……。以前のような窮地に追い込まれ、ぼっちゃまの身にもしものことがあれば、この寺井、先代のキッドである盗一様の霊前に、なんとお詫びすればよいやら……。」
今夜の仕事の為、双眼鏡を使い警察の動きを探る二代目怪盗キッドこと黒羽快斗は、厳重な警備体制に心踊っていた。しかし、付き人でもある寺井は、嫌な胸騒ぎを覚え、快斗に今夜の盗みを止めてはどうかと提案した。
快「───ったくでけぇヤマの前には、いつもこれだ……勘弁してくれよ。」
寺井の提言を受け、快斗は顔を顰めた。心配性の寺井は、仕事の難易度が高いと決まって止めるよう提言をしてくるのだが、それに呆れつつも自分のことを思っての言葉の為無下にもできずにいた。
玲「今回のお仕事もなかなか大きなものだからね。寺井さんが心配するのも無理ないよ。」
同じく寺井と一緒に後方で快斗を見守っていた玲於は、寺井に加勢する形で会話に入ってきた。
快「玲於までジイちゃんの味方かよ。」
玲「まぁね、心配もするよ。僕だってそうなんだから……君の幼馴染であり相棒なのに、君の囮になったり、警官を相手にするくらいしか出来ないのがもどかしいけどね。」
快「んなこたねーよ。お前のおかげで俺の仕事もスムーズにやれてんだ……何よりお前の運動神経の良さを俺は買ってんだぜ。」
玲「そう言って貰えると助かる。」
玲於と快斗は軽口を叩き合いながら隣に並んで座り、互いに真下にある地上を見下ろしながら、話していた。
快「……今夜の俺は、アンタが付き人を務めた奇術師・黒羽盗一でも、高校二年生の快斗ぼっちゃまでもない!!
今世間を騒がせている……キザな悪党だよ……。」
白のシルクハットから、スルスル白い布を取り出したかと思いきや、あっという間に黒羽快斗の姿から怪盗キッドの姿に変わる。その早着替えにいつも玲於は、見事なものだと感嘆していた。
この話は、数多くの物を盗み出した怪盗キッドが、自らと大切な者との思い出を守ったお話である。
────────────────────────
玲於side
快(ちょろい……ちょろすぎる。こりゃー次の仕事も小指の先で、ちょちょいのちょいだぜ!!)
(……これ絶対調子に乗ってるな。)
朝のホームルーム後、授業前の少しの自由時間に僕らは各々教室にいた。僕は姉さんから借りたミステリーものの本を読んでいた。前の席の快くんはというと、今朝買った新聞紙を広げ、嬉しそうに記事の内容を読んでいた。記事の内容は、今話題の怪盗キッドが大きく一面を飾ったもの。お調子者の快くんは、自身のもうひとつの姿、怪盗キッドを褒め讃える記事を見て喜んでいた。
快「お?キッドに魅了された女性ファン急増中…(たまんねーなこりゃ♡)」
(喜ぶのはいいけど、そんなあからさまに喜んでたら絶対……あっ。)
僕の予感は的中する。快くんの持っていた新聞がビリビリッと音を立てて、真っ二つに裂かれた。
快「え?」
青「なーにが女性ファン急増中よ……あーんな泥棒、青子ん中じゃね───!最低男街道だんトツ独走まっしぐらよ───!!」
新聞を割いた人物、それは僕らの幼馴染の青ちゃんだった。彼女は、あの夜怪盗キッドに助けられたことを知らない為、今でも印象は最低最悪怪盗になっている。それにお父さんの銀三さんが、長年追い続けている怪盗だ。銀三さんが手に焼いている怪盗、お父さん大好きな青ちゃんからしたら、好ましく思えないのは仕方ないことだと思う。
快「まーそう怒るなよ!いくらあの泥棒に、オメーの親父のあのヘボ警部が、毎回毎回やられてるっていったってしゃーねーだろ。なんたって奴は……」
ワン、ツー……
快「確保不能の大怪盗なんだからよ!」
青ちゃんがビリビリに破いた新聞紙の欠片を集め、マジックで元に戻してしまう快くん。いつもながら鮮やかなマジックで見入ってしまう。姉さんもここにいれば、大好きな快くんのマジックが見られるのに残念だね。僕は、今頃帝丹高校にいる意地っ張りな姉を思い浮かべてため息をついた。
青「なにさ!キッドと同じでちょっと手品ができるからって、いつもキッドの肩持っちゃって……あんなの盗んだ物を捨てたり、後でこっそり返したりしてる、ただの善人ぶった愉快犯じゃない!」
青ちゃんは怪盗キッドの肩を持つ快くんにイライラしているようだ。
紅「あら……私は彼のそーいうトコ好きよ……。イタズラ好きの少年みたいで、カワイイじゃない♡」
青「あ、紅子ちゃん……。」
二人の会話に唐突に入ってきた女の子、その子の名前は小泉紅子さん。この江古田高校に少し前に転校してきた女の子。高飛車な態度で女王様気質だが、美人でクラスの男の子達からも人気が高い。ひょんなことで僕と快くんは目を付けられていたが、何だかんだ良好な関係をきずけている友達である。
青「騙されちゃダメ!あいつはどーころんでも犯罪者!悪者なんだから!」
小泉さんの言い分に反対する青ちゃん。
青「っ!そうだ!玲於なら分かってくれるよね?玲於だってあんな泥棒、大嫌いでしょ?」
玲「っ!……ま、まぁ、あんまり好きじゃないかな……。」
そして急に向きを変えたと思ったら僕の席に手をついて、僕に同意を求めてきた。びっくりした……いきなりは心臓に悪いよ。青ちゃんから問いかけられた内容だがはっきりいって悩んでしまう。だって怪盗キッドは快くんだって僕は知っているから、怪盗キッドのファンだと公言してもいいくらいだが、そうすると絶対青ちゃんを悲しませてしまう。だから間を取った言い方をしたけど、快くんからジト目で見られてるあたり、もう少し快くん寄りに話せばよかったかな?申し訳なさから本から視線を上げられずにいた。
青「良かった!玲於もそう思うよね〜!あとは、憐もここにいてくれたら、青子の気持ち絶対分かってくれるのに〜……。」
そう言って青ちゃんは、物憂げに窓の外を見ながら呟く。
紅「そういえば貴方達の話題からよく名前があげられる憐って誰のことかしら?」
小泉さんが姉さんの名前に反応して誰のことを指しているのか聞いていた。
青「憐はね〜青子達の小さい頃からの友達なの!玲於の双子のお姉さんで、意地っ張りな性格でよく快斗と喧嘩してたりするんだけど、青子には優しくて大好きな友達なんだ。」
紅「そう……、神崎くんにはお姉さんがいたのね。」
玲「そうだよ。と言っても双子だから同い年だけどね。」
青「あんまり玲於とは似てないけどね。歌が上手くて動物が大好きで、とっても良い子だから紅子ちゃんもきっと仲良くなれるよ!機会あれば紅子ちゃんにも紹介してあげるよ〜!憐も友達増えて嬉しいだろうし!」
青ちゃんは嬉しそうに微笑む。姉さんも青ちゃんのこと大好きだけど、青ちゃんも姉さんのことが大好きなのだ。他人に紹介したくなるらしい……でも、同じようで異なる想いを秘めている僕の親友は、青ちゃんと正反対の反応を示す。
快「どうだかな〜……アイツ内気なタイプだから、紅子と合わねぇかもな。」
今まで黙っていた快くんが突然に会話に入った様子を見て小泉さんが、妖艶な笑みを浮かべた。
紅「……黒羽くんがそんな反応するなんて意外ね。てっきり貴方の方が勧めてくるのかと思っていたのに……。」
快「……なんでだよ!俺だって、ガキの頃からいつも一緒にいたから分かるんだよ。内気で人見知りなアイツは仲良くなるのに時間かかるんだ。それに学校も違うし、紅子が会うこともねーだろうからな。(俺だってそれなりにかかったからな……。)」
そっぽを向きながら新聞を読んでいるように装ってるけど、密かに見える耳はほんのり赤い。姉さんと快くんの関係性は僕から見たら分かりやすいくらいなのに、当の本人達が気づいていないから面白く見える。
紅「なるほどね、これでわかったわ。黒羽くんがよく話していた【アイツ】ってその子のことだったのね。黒羽くんが話してくれていた特徴と、中森さんがあげていた特徴が一致してるわ。」
紅「貴方が大切にしている女の子……益々気になるわね。」
快「はぁ?!……ち、ちげーよ!!俺は別にそんなんじゃ……」
玲「……💧」
(小泉さんでも分かるのに、なんで姉さんは勘違いしているのか。)
一応否定してるみたいだけど、図星なので強気に否定は出来ていない。自分でも分が悪いと感じた快くんが、再び怪盗キッドの話題に戻す。
快「それより!次の怪盗キッドの獲物だけどな……」
紅「あぁ……駅前の古い時計台だったかしら。」
青「そうよ!あれはこの町の皆の物なのよ!なのにその時計を盗むなんて、酷いと思わない?」
紅「え、えぇ……そうね……。」
青「それにあそこは……あの時計台は……。」
快/玲「「…………。」」
青ちゃんは、物悲しそうに俯き言葉を濁していた。何故言い淀んでいたのかは予想がつく。青ちゃんも僕も快くんも……そして姉さんにとっても、あの場所は特別な場所。
──── あの時計台は、僕らが初めて出会った思い出の場所だから。
恵「でもあの時計台、もうすぐ移築されちゃうって聞いたよ?どこかのテーマパークのシンボルにするって…。」
青「恵子…。」
恵「どーせ無くなっちゃうなら、キッドに盗られた方がいいって皆言ってたし♡」
青「ダメなものはダメなの!」
桃井さんの意見を聞いても青ちゃんは納得出来ず、怪盗キッド反対声明を一人出していた。
玲「青ちゃん、きっと大丈夫だよ。」
青「玲於までそんなこと……。」
玲「何言ってんだと思うかもしれないけど、きっと大丈夫だよ……。信じられないなら僕を信じて欲しい。」
青「……うん。ありがとう、玲於。」
元々嫌いな相手を、根拠もなく信じろというのが難しい話だ。分かってる……でも、これ以上彼女には伝えられない。何があっても、青ちゃんは勿論、姉さんも絶対にあの二人だけは巻き込まないのだと、快くんと約束したから。
(ごめん……でも、本当に大丈夫だから。)
気休め程度にしかならないと分かっていても、あのままの青ちゃんを放っておくのは嫌だった。快くんは小泉さんと何か話しているみたいだけど、僕はしばらくの間読んでいた本を忘れ、青ちゃんを元気づけるよう会話を続けたのだった。
快「闇夜に鉄のカラスが二羽…その奥にもう三羽…おっとっと───装甲車まで用意してやがる……。
さーすが警視庁♥ 気合い入ってんじゃねーか!」
寺「お止め下さい、快斗ぼっちゃま…。今回のヤマ…何か嫌な胸騒ぎがします……。以前のような窮地に追い込まれ、ぼっちゃまの身にもしものことがあれば、この寺井、先代のキッドである盗一様の霊前に、なんとお詫びすればよいやら……。」
今夜の仕事の為、双眼鏡を使い警察の動きを探る二代目怪盗キッドこと黒羽快斗は、厳重な警備体制に心踊っていた。しかし、付き人でもある寺井は、嫌な胸騒ぎを覚え、快斗に今夜の盗みを止めてはどうかと提案した。
快「───ったくでけぇヤマの前には、いつもこれだ……勘弁してくれよ。」
寺井の提言を受け、快斗は顔を顰めた。心配性の寺井は、仕事の難易度が高いと決まって止めるよう提言をしてくるのだが、それに呆れつつも自分のことを思っての言葉の為無下にもできずにいた。
玲「今回のお仕事もなかなか大きなものだからね。寺井さんが心配するのも無理ないよ。」
同じく寺井と一緒に後方で快斗を見守っていた玲於は、寺井に加勢する形で会話に入ってきた。
快「玲於までジイちゃんの味方かよ。」
玲「まぁね、心配もするよ。僕だってそうなんだから……君の幼馴染であり相棒なのに、君の囮になったり、警官を相手にするくらいしか出来ないのがもどかしいけどね。」
快「んなこたねーよ。お前のおかげで俺の仕事もスムーズにやれてんだ……何よりお前の運動神経の良さを俺は買ってんだぜ。」
玲「そう言って貰えると助かる。」
玲於と快斗は軽口を叩き合いながら隣に並んで座り、互いに真下にある地上を見下ろしながら、話していた。
快「……今夜の俺は、アンタが付き人を務めた奇術師・黒羽盗一でも、高校二年生の快斗ぼっちゃまでもない!!
今世間を騒がせている……キザな悪党だよ……。」
白のシルクハットから、スルスル白い布を取り出したかと思いきや、あっという間に黒羽快斗の姿から怪盗キッドの姿に変わる。その早着替えにいつも玲於は、見事なものだと感嘆していた。
この話は、数多くの物を盗み出した怪盗キッドが、自らと大切な者との思い出を守ったお話である。
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玲於side
快(ちょろい……ちょろすぎる。こりゃー次の仕事も小指の先で、ちょちょいのちょいだぜ!!)
(……これ絶対調子に乗ってるな。)
朝のホームルーム後、授業前の少しの自由時間に僕らは各々教室にいた。僕は姉さんから借りたミステリーものの本を読んでいた。前の席の快くんはというと、今朝買った新聞紙を広げ、嬉しそうに記事の内容を読んでいた。記事の内容は、今話題の怪盗キッドが大きく一面を飾ったもの。お調子者の快くんは、自身のもうひとつの姿、怪盗キッドを褒め讃える記事を見て喜んでいた。
快「お?キッドに魅了された女性ファン急増中…(たまんねーなこりゃ♡)」
(喜ぶのはいいけど、そんなあからさまに喜んでたら絶対……あっ。)
僕の予感は的中する。快くんの持っていた新聞がビリビリッと音を立てて、真っ二つに裂かれた。
快「え?」
青「なーにが女性ファン急増中よ……あーんな泥棒、青子ん中じゃね───!最低男街道だんトツ独走まっしぐらよ───!!」
新聞を割いた人物、それは僕らの幼馴染の青ちゃんだった。彼女は、あの夜怪盗キッドに助けられたことを知らない為、今でも印象は最低最悪怪盗になっている。それにお父さんの銀三さんが、長年追い続けている怪盗だ。銀三さんが手に焼いている怪盗、お父さん大好きな青ちゃんからしたら、好ましく思えないのは仕方ないことだと思う。
快「まーそう怒るなよ!いくらあの泥棒に、オメーの親父のあのヘボ警部が、毎回毎回やられてるっていったってしゃーねーだろ。なんたって奴は……」
ワン、ツー……
快「確保不能の大怪盗なんだからよ!」
青ちゃんがビリビリに破いた新聞紙の欠片を集め、マジックで元に戻してしまう快くん。いつもながら鮮やかなマジックで見入ってしまう。姉さんもここにいれば、大好きな快くんのマジックが見られるのに残念だね。僕は、今頃帝丹高校にいる意地っ張りな姉を思い浮かべてため息をついた。
青「なにさ!キッドと同じでちょっと手品ができるからって、いつもキッドの肩持っちゃって……あんなの盗んだ物を捨てたり、後でこっそり返したりしてる、ただの善人ぶった愉快犯じゃない!」
青ちゃんは怪盗キッドの肩を持つ快くんにイライラしているようだ。
紅「あら……私は彼のそーいうトコ好きよ……。イタズラ好きの少年みたいで、カワイイじゃない♡」
青「あ、紅子ちゃん……。」
二人の会話に唐突に入ってきた女の子、その子の名前は小泉紅子さん。この江古田高校に少し前に転校してきた女の子。高飛車な態度で女王様気質だが、美人でクラスの男の子達からも人気が高い。ひょんなことで僕と快くんは目を付けられていたが、何だかんだ良好な関係をきずけている友達である。
青「騙されちゃダメ!あいつはどーころんでも犯罪者!悪者なんだから!」
小泉さんの言い分に反対する青ちゃん。
青「っ!そうだ!玲於なら分かってくれるよね?玲於だってあんな泥棒、大嫌いでしょ?」
玲「っ!……ま、まぁ、あんまり好きじゃないかな……。」
そして急に向きを変えたと思ったら僕の席に手をついて、僕に同意を求めてきた。びっくりした……いきなりは心臓に悪いよ。青ちゃんから問いかけられた内容だがはっきりいって悩んでしまう。だって怪盗キッドは快くんだって僕は知っているから、怪盗キッドのファンだと公言してもいいくらいだが、そうすると絶対青ちゃんを悲しませてしまう。だから間を取った言い方をしたけど、快くんからジト目で見られてるあたり、もう少し快くん寄りに話せばよかったかな?申し訳なさから本から視線を上げられずにいた。
青「良かった!玲於もそう思うよね〜!あとは、憐もここにいてくれたら、青子の気持ち絶対分かってくれるのに〜……。」
そう言って青ちゃんは、物憂げに窓の外を見ながら呟く。
紅「そういえば貴方達の話題からよく名前があげられる憐って誰のことかしら?」
小泉さんが姉さんの名前に反応して誰のことを指しているのか聞いていた。
青「憐はね〜青子達の小さい頃からの友達なの!玲於の双子のお姉さんで、意地っ張りな性格でよく快斗と喧嘩してたりするんだけど、青子には優しくて大好きな友達なんだ。」
紅「そう……、神崎くんにはお姉さんがいたのね。」
玲「そうだよ。と言っても双子だから同い年だけどね。」
青「あんまり玲於とは似てないけどね。歌が上手くて動物が大好きで、とっても良い子だから紅子ちゃんもきっと仲良くなれるよ!機会あれば紅子ちゃんにも紹介してあげるよ〜!憐も友達増えて嬉しいだろうし!」
青ちゃんは嬉しそうに微笑む。姉さんも青ちゃんのこと大好きだけど、青ちゃんも姉さんのことが大好きなのだ。他人に紹介したくなるらしい……でも、同じようで異なる想いを秘めている僕の親友は、青ちゃんと正反対の反応を示す。
快「どうだかな〜……アイツ内気なタイプだから、紅子と合わねぇかもな。」
今まで黙っていた快くんが突然に会話に入った様子を見て小泉さんが、妖艶な笑みを浮かべた。
紅「……黒羽くんがそんな反応するなんて意外ね。てっきり貴方の方が勧めてくるのかと思っていたのに……。」
快「……なんでだよ!俺だって、ガキの頃からいつも一緒にいたから分かるんだよ。内気で人見知りなアイツは仲良くなるのに時間かかるんだ。それに学校も違うし、紅子が会うこともねーだろうからな。(俺だってそれなりにかかったからな……。)」
そっぽを向きながら新聞を読んでいるように装ってるけど、密かに見える耳はほんのり赤い。姉さんと快くんの関係性は僕から見たら分かりやすいくらいなのに、当の本人達が気づいていないから面白く見える。
紅「なるほどね、これでわかったわ。黒羽くんがよく話していた【アイツ】ってその子のことだったのね。黒羽くんが話してくれていた特徴と、中森さんがあげていた特徴が一致してるわ。」
紅「貴方が大切にしている女の子……益々気になるわね。」
快「はぁ?!……ち、ちげーよ!!俺は別にそんなんじゃ……」
玲「……💧」
(小泉さんでも分かるのに、なんで姉さんは勘違いしているのか。)
一応否定してるみたいだけど、図星なので強気に否定は出来ていない。自分でも分が悪いと感じた快くんが、再び怪盗キッドの話題に戻す。
快「それより!次の怪盗キッドの獲物だけどな……」
紅「あぁ……駅前の古い時計台だったかしら。」
青「そうよ!あれはこの町の皆の物なのよ!なのにその時計を盗むなんて、酷いと思わない?」
紅「え、えぇ……そうね……。」
青「それにあそこは……あの時計台は……。」
快/玲「「…………。」」
青ちゃんは、物悲しそうに俯き言葉を濁していた。何故言い淀んでいたのかは予想がつく。青ちゃんも僕も快くんも……そして姉さんにとっても、あの場所は特別な場所。
──── あの時計台は、僕らが初めて出会った思い出の場所だから。
恵「でもあの時計台、もうすぐ移築されちゃうって聞いたよ?どこかのテーマパークのシンボルにするって…。」
青「恵子…。」
恵「どーせ無くなっちゃうなら、キッドに盗られた方がいいって皆言ってたし♡」
青「ダメなものはダメなの!」
桃井さんの意見を聞いても青ちゃんは納得出来ず、怪盗キッド反対声明を一人出していた。
玲「青ちゃん、きっと大丈夫だよ。」
青「玲於までそんなこと……。」
玲「何言ってんだと思うかもしれないけど、きっと大丈夫だよ……。信じられないなら僕を信じて欲しい。」
青「……うん。ありがとう、玲於。」
元々嫌いな相手を、根拠もなく信じろというのが難しい話だ。分かってる……でも、これ以上彼女には伝えられない。何があっても、青ちゃんは勿論、姉さんも絶対にあの二人だけは巻き込まないのだと、快くんと約束したから。
(ごめん……でも、本当に大丈夫だから。)
気休め程度にしかならないと分かっていても、あのままの青ちゃんを放っておくのは嫌だった。快くんは小泉さんと何か話しているみたいだけど、僕はしばらくの間読んでいた本を忘れ、青ちゃんを元気づけるよう会話を続けたのだった。