世紀末の魔術師【完】
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〜予告状〜
黄昏の獅子から暁の乙女へ
秒針のない時計が12番目の文字を刻む時
光る天の楼閣から
メモリーズ・エッグをいただきに参上する
世紀末の魔術師 怪盗キッド ♡
青「新幹線のチケット持った?忘れ物ない?」
玲「財布は絶対忘れないでね。最悪財布さえあれば何とかなるから。」
快「携帯も忘れんじゃねーぞ。」
これから東京を出て、園子の待つ大阪に行くというのに……
貴「もう〜!大丈夫だって言ってんでしょ?!アンタらは何?!私の親なの?!」
ご飯を食べに来ていた青子、快斗、そして私の双子の弟である玲於が、私の大阪行の出発を見送りに玄関先まで着いてきてくれている。有難いとは思うけど、お小言が多くない??もしかして手のかかる子どもだって思われてる?
青「何言ってるのよ〜青子は憐の幼馴染で親友じゃない〜!」
玲「僕は血の繋がった家族でーす!」
快「お前どっか出かける度に、忘れたー!!とかやってっからな……こうでも言わねーと、またやらかすだろ……。」
青「そうよそうよ!」
玲「うんうん……。」
貴「ぐぬぬ……。」
毎度このパターン、何も言い返せない……快斗の言う通り、私は忘れ物を頻繁にする。それも旅行に行く時だけ!……そんな癖を分かっている快斗筆頭に玲於や青子は、私を心配してくれているのだ。
貴「大丈夫よ!……昨日ちゃんと確認したから!」
玲「時間が無い〜!とか言って、慌てて用意してたけどね。」
貴「余計なこと言わない!!」
やっぱり聞こえてたんだ。隣の部屋だしね……防音の部屋が欲しいな。
青「あー!!憐時間大丈夫??もうすぐお友達との待ち合わせ時間でしょ?」
貴「あー……うん、もう行くね!」
腕時計を確認しているともう出ないと間に合わない時間まで迫っていた。私は用意していたブーツを履いて立ち上がる。手にはちょっと小さめのカバンを持って。
貴「それじゃあ……行ってきます!」
扉に手をかけながら青子達の方へ振り返る。
青「行ってらっしゃいー!楽しんできてね!……あっ!あと大阪のお土産よろしく〜!」
玲「行ってらっしゃい……気をつけてね。」
ちゃっかりお土産を頼む青子と、そんな青子の隣でニコニコしながら手を振る玲於。
そして、もう一人の幼馴染に自然と視線を向ける
快「ほら、行くぞ。」
快斗に腕を引かれ、家から外に出た……。
えっと…………うん?!
貴「ちょ、ちょっと快斗〜!?」
そのまま快斗に腕を引っ張られながら、今回大阪に一緒に向かう蘭達との待ち合わせの駅の方向に歩いている私。……なんで??
快「なんだよ。さっさと歩かねーと、ほんとに遅れちまうぞ。」
貴「なんだよじゃなくて!なんで快斗まで来るの?」
快「それは…………憐が待ち合わせの場所に無事に着くか分からないから、送り届けてくれって玲於に頼まれたんだよ。」
貴「そんなこと頼まれたの?全く玲於ったら……流石に駅までは分かるわよ。」
確かに小さい頃は方向音痴で迷子になったこともあるが、今は何度か訪れていた場所ならさすがに行けるよ。玲於はまだ私が迷って目的地までたどり着かないと思ってるんだ。
貴「行ったことない場所ならともかく、今回の待ち合わせ場所は、よく使っている駅だし……迷うことなく行けるから、大丈夫よ。玲於にもよく言っとくから……ごめんね、快斗!帰って貰って良いから……」
私のことで付き合わされている快斗に悪いと思って、快斗に引かれていた腕を離して貰うよう目で合図する。自分一人で行けることを彼に伝えたつもりだった。快斗も玲於の頼み事ならと引き受けたんだろうし……。
すると快斗は、先に歩いていた足を止めて、頭を掻きむしりながら必死な表情で訴える。
快「あー、玲於には連絡しなくていい!」
彼は腕を離さずに振り返った。
貴「なんでよ?心配しないで、玲於には快斗からじゃなくて私からだってこと、しっかり伝えておくから。」
快「そうじゃねーよ!……なんでオメーはそう鈍いんだよ。」
貴「鈍くない!もう〜さっきから何が言いたいのよ!男ならはっきりと言いなさい……!」
はっきりしない快斗の態度にイラついた私は、引かれていた腕を逆に引っ張り、彼の真意を聞く。それでも快斗の手は私の腕を離さなかった。私の態度に、覚悟を決めた顔つきの快斗が、私の目をまっすぐ見ていた。
快「駅に着くまで道中一人だろ。いくら通い慣れてる道だからって、お前が迷わない保証はねーし、それに……変な奴から、声掛けられるかもしれねーだろ。」
彼の顔はほんのり赤みがさしていた……まっすぐ見つめていたと思ったら気恥しいのか、少し視線を逸らす快斗。思ってもいない理由に、私まで頬が熱くなる。
貴「まさか……し、心配してくれるの……?」
鼓動が胸を打つ……だってそんな言い方されたら……期待しちゃうよ……。
快「っ!……あ、当たり前だろ!
だってお前は…………
お、俺がいねーと駄目なんだから……!」
貴「………………は??」
何それ……期待した私が馬鹿だった!!
快(やっちまった!!なんで肝心な時に俺も素直に言えねーんだよ!!)
貴「はぁ……そんなことだろうと思ったわ。あのね……確かにアンタと比べたら、頭も良くないし運動もできる訳じゃないけど、アンタが居ないと駄目な訳じゃないから!これが標準なの!!結構周り見ると普通だよ私は……!」
快「ち、違ぇよ!!俺が言いたかったのは……」
貴「もうバ快斗なんか知らない……!」
快「おい、待てよ憐!!」
止めていた足を動かして、先程よりもスピードをあげて歩く私と、その後を追って何とか弁解しようとする快斗の姿があった。
─────────────────────
快斗side
結局憐の待ち合わせの場所まで、言い合いしながら歩いてきた俺達。遠くの方で名探偵一行の姿があった。
貴「……まぁ、一応ここまで送ってくれた訳だし、お礼は言っとくね……アリガトウ。」
快「カタコトじゃねーか!」
不満そうだが一応送ってもらった手前、カタコトで礼を言う憐。名探偵の彼女と合流する所まで送ろうと考えていた俺は、速度をあげて離れようとする憐の手を掴む。
バシッ
貴「何よ……。」
不満そうに振り向く憐の反応は間違っていない……。俺がもっと素直に伝えられたら、コイツの機嫌を損ねずに済んだだろうから。玲於にもよく言われた、憐には回りくどいのは通じないと……確かにそう思う。分かっている……分かっているのだ。俺だって馬鹿じゃない……ちゃんと伝えるんだ。
快「……色々言ったけどな、俺は、本当にお前が心配だったから……ここまでついてきたんだよ。」
貴「!!」
快「それに今回お前が大阪行く理由は…………」
これが普通の観光なら笑って見送れた……だが、今回はこの俺、怪盗キッドが絡んでいることだ。
俺や玲於、青子は憐から「友達に大阪にある美術館に来ない?って誘われたから行ってくるねー。」と軽い感じの話しか聞いておらず、詳細は聞いていない。しかし、十中八九鈴木財閥の蔵から発見されたロマノフ王朝の秘宝、インペリアル・イースター・エッグのことで、園子お嬢様から呼ばれているのだと分かる。中森警部もエッグの警護で大阪に行っており、眠りの小五郎と呼ばれる毛利探偵も鈴木会長に呼ばれている。ならば、娘である名探偵の彼女もそしてその名探偵も呼ばれるのは自明の理。そして、園子お嬢様なら仲の良い憐も誘うことは目に見えていた。
(園子お嬢様からの誘いで憐は大阪に行く……。俺の仕事に支障が出るかもしれないから、なるべくコイツだけは来て欲しくねーんだけど、そうもいかねーよな……。)
いつもの口八丁で、憐に大阪に行くのを辞めさせるよう説得出来たら良かったが、今回の大阪行きを楽しみにしていた様子を見ていたら、そんな気にはなれなかった。
貴「大丈夫よ!ただ芸術品を見てくるだけだって……例の怪盗さんからの予告状も出ているらしいけど、そんな何回も会える人じゃないし、悪い人じゃなかったしね……。」
(全く、人の気も知らないでよー……。)
俺の思惑など露知らず呑気なことを話す憐に、少々頭が痛くなるが、今回の仕事は危険度は高くない仕事だ。とりあえず大丈夫だろうと、自分を宥める。
貴「快斗が何を悩んでるのか分からないけど、私は大丈夫だから!……それよりお土産何がいい?ちゃんと要望に沿ってあげるから。」
夏の太陽が照りつける眩しい日差しの中、彼女は朗らかに微笑んだ。その微笑みに、余計自分の顔が熱くなりそうになるが、これは暑い夏のせいだと自分に言い聞かせる。
(……まぁ、大丈夫か。)
快「……分かったよ。俺へのお土産はそうだな……憐に任せる。俺の好み、分かってんだろ?お前が選んだもので、俺は構わないぜ。」
心配も悩みも尽きないが、俺も今まで通りキッドとしての仕事をこなすだけ。今回もまたあの名探偵がいるなら、余計気合いを入れなければいけないのだが……
貴「それ、私責任重大じゃん!もう〜……自分の欲しかったものと違ってもガッカリしないでよ?」
でもせめて今だけは……憐との時間だけは、何も気にせず、大切にしたいのだ。
快「バーロー……しねぇよ。」
貴「うん……あっもう時間だ!蘭達も……あっちにいる!それじゃあ、ここまででいいから!
ありがとう、快斗……じゃあ、行ってくるね!」
憐は小さく手を振る。
快「おう、楽しんでこいよ!」
憐の姿を目に焼き付けながら、手を振って送り出す。大仕事の前に良い物が見られた……余計気合いが入るほどに。憐が名探偵達と合流したのを確認すると、俺は踵を帰す。
今夜俺も大阪に向かう……狙うは鈴木財閥が所有するロマノフ王朝の秘宝、インペリアル・イースター・エッグ。……世紀末の魔術師と呼ばれた男が作り上げたメモリーズ・エッグ。
このエッグを相応しい所有者の元へと返す為に一役買って出るのだ。俺は、今夜の仕事の最終準備に取り掛かる為、足早に駅を後にした。