オリジナル・原作沿い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
幼馴染達に黙って決めた私の通う高校……帝丹高校。これ以上仲の良い青子と快斗の姿を見るのが辛くて、途中で進路変更、江古田高校から帝丹高校へと進路希望を変えた。幼馴染だからいつも一緒にいる訳じゃない、そしてこれからもずっと一緒に居られるなんて保証は無い。3人とはこれから別の時間を過ごすことになるけど、きっと大丈夫……。
貴「だって私にはこれがあるから……。」
手首に巻かれた赤色のミサンガが風で靡いている。校門の傍に咲いている桜の花を見上ながら、今日から通う帝丹高校へと足を踏み入れるのだった。
今朝の話に遡る。本日晴れて高校生となった私達はいつものように4人揃って新しい学び舎である高校に、登校しようとしていた。快斗、青子、玲於は江古田に……そして私は帝丹に。途中の道で3人とは別の方向に指を指し、「それじゃ、私こっちの高校だから。じゃあね」と言い、特に何か特別なことをせず、手を振りながら別れようとした瞬間、青子にガシッと腕を掴まれた。何も聞いていない青子は驚きながらワーワー騒いでいたけど、帝丹高校に通うことにしたことを告げたら、目を釣りあげて「どういうことか説明して!」と怒られた。
まぁ青子には、教えずに進路希望を変更してるのだから怒られるかなとは予想してた。玲於は何も言わずただ見てるだけ……家族だし、バレてるかなとは思ったので、そこまで驚いてはいない。問題なのは快斗の方だ。
眉を潜めて、不機嫌そうな顔をしている。
快斗にも伝えてなかったけど、アイツは普段から私のことをからかってくるし、青子とは一緒なんだから私の高校が違うくらいなんてことないだろうと考えていたけど、不機嫌そうな顔をしながら「別にお前の通う所なんだから、変えることに関しちゃ悪いとかねぇけど一言くらいあったっていいだろ。」って文句を言われた。
何でそんなこと快斗に言われなきゃって思ったけど、確かに今まで仲良くしていた友達が、大事なことを自分に隠して変えてたら良い気はしないなと感じた。だから私は二人に素直に謝ったのだ。
貴「……ごめん。悩んだけど、やっぱりこっちの方がいいかなって。3人は決まってたから私のせいで気が散って受験に集中出来ないのも申し訳ないと思って……でも、高校が違うだけでそれ以外は変わらない……学校終わったらまた会えるじゃん。」
この言い分に青子と快斗はなんとも言えない顔をしてたけど、二人揃ってため息をついて、私にデコピン制裁することで許してくれた……額がヒリヒリする。
青「じゃあね、憐。帰ったら色々聞かせてよ〜!」
玲「それじゃあね、姉さん。頑張ってね。」
青子と玲於は笑って手を振ってくれる。二人の見送りも見れた……あとは……────────────。
二人の後ろにいるもう一人の幼馴染の顔を見る。機嫌は直ったようだ。私の元に近づいてきて、目の前で止まった。
快「……。」
ジッと見つめてきたと思ったら、いきなり手を差し出してきた。
貴「……?」
私は快斗の意図が分かってないけど、あまりにも真っ直ぐな瞳で見つめて手を差し出す快斗の真剣な姿に、思わず自分の手を差し出す。その対応に快斗はフッと笑って、さりげなく私の手首に触れたものの、数秒で手を離す。するとそこには、赤色のミサンガ括りつけてあった。
貴「快斗、これ……。」
相変わらず手際が良いことで……目の前で起きたマジックなのに全然見えなかった。
快「やるよ。別に大した意味はねぇけど、そうだな……何かあった時はこれを見て思い出せよ。オメーはひとりじゃない……玲於や青子、そして……俺がいるってことをな。」
────ドキッ
(何が大した意味はない……よ。でもそっか……青子が好きな癖に、やっぱりなんだかんだ優しいんだよね。喧嘩ばかりだけど、気にかけてくれる所とか……、マジックを見せてくれたりとか……このミサンガもきっと……。)
貴「っ……。」
勝手に離れたけど、不安で堪らない私に、勇気づける為にくれたもの───────────。
貴「……ありがとう、快斗!私、頑張るから……だから快斗も……頑張ってね。」
自分なりに精一杯はにかんだ笑みを彼に見せる。それを見て彼は満足そうに笑った。新生活、彼らが傍に居ないのは初めてだから勿論不安でいっぱいだ。だけど私が自ら選択した道なのだから、エールを貰ったのだから、こっちの高校でも頑張ろうと心に決めて3人と別れた。
────────────────────────
学校の中に入り、掲示板で自分のクラスを確認し、その教室へと向かう。今の私はひとり……青子も玲於も快斗もいないのだから当たり前だ。既に廊下には、新入生同士仲良くなりだしてグループがつくられている。
(頑張るとは言ったものの、どうしよう……。)
早速高い壁が立ちはだかる……コミュケーション能力が高い青子や快斗、玲於ならなんてことないと思うけど、比較的内気な私にとっては友達ひとり作るのさえ難しい。
どうしようか悩んでいると、ふと聞き慣れた声が耳に入ってくる──────。
?「ちょっと新一!今日は入学式なんだからもう少しシャキッとしなさいよ!」
新「ふわぁあ〜……ったくうるせぇ〜な蘭。仕方ねぇだろ〜?キリのいい所まで読もうと思ったら、気づいたら朝だったんだからよォ……。」
蘭「もう〜〜!何で入学式の日まで徹夜で小説読んでんのよ!!ほら!私達のクラスまであともう少しだから、さっさと歩きなさい!」
快斗によく似た声の持ち主を知りたくて、聞こえてきた会話の方に顔ごと向ける。その時私は目を見開いて思わず声を出してしまったのだ。
貴「快斗!なんでアンタがここに……?」
そう、さっき別れたはずの幼馴染が、帝丹高校の制服である青いブレザーを着て女の子と話していたのだ。
(なんで……?どうして……?)
自分の手首にある赤いミサンガを、チラリと見ながら動揺していると私の声に気づいた女の子が不思議そうな顔をして、声をかけてきた。
蘭「新一がどうかしたの?」
貴「えっ?」
蘭「だって貴方今、新一を見ながら叫んでたよね?」
貴「そ、それはっ!……。」
(快斗にそっくりだけど、よく見たら少し違う……この人は快斗じゃない、別人じゃん!あまりにも似てたから、心の中だけに留めておけばいいものを、私ったらびっくりしすぎて声に出しちゃってた!?……ど、どうしよう……。)
というかこの女の子も、よく見たら──────。
(青子に似てる……。)
新「ったく、こっちが聞いてんだからいい加減に答えてくれよ。アンタ、俺に何か用でもあるのか?」
貴「っ!……。」
女の子の問に私が答えず黙っているからか、今度は男の子の方が痺れを切らし、強い口調のまま問いかける。聞こえてきたのは眠そうな声だったのに、今では声も視線も鋭いものに変わっている。
貴「あ、あの……えっと……。」
早く答えなきゃ……幼馴染に似ていたから驚いて声を出してしまったのは事実。彼らからしてみれば見知らぬ女に叫ばれて、理由を聞いても答えてくれないなんて、薄気味悪いだけ。気分のいいものでは無い。でも私からしたら、いまだに信じられない。こんなことってあるのだろうか……。
(顔も見た目も声まで快斗にそっくりな人に睨まれるなんて……最悪だ。)
自分の大切な人に瓜二つな存在が、目の前にいて、しかも敵意むき出しにされているのだから、心中穏やかでは無い。せっかく頑張ろうと意気込んでいたのに、新生活早々挫けそうだ。テンパリ具合が遂に頂点に達したのか、目の前の視界が潤んできた。
蘭「新一!女の子を睨みつけちゃ駄目でしょ?!ごめんなさい!私達、貴方の声に驚いただけで怒りたいわけじゃなかったの……。」
そんな男の子の態度に今度は女の子が怒ってくれた。そして「本当にごめんなさい。」と私に謝ってくれた。
貴「そ、そんな!貴方達は悪くないよ!私の方こそ、いきなり叫んでしまってごめんなさい……。」
女の子は何も悪くないのに、謝らせてしまったことに罪悪感が出る。私の謝罪を聞いた女の子は、良かったと呟き、姿勢を正してこう言った。
蘭「涙が収まって良かった……。見たところ同じ1年生だよね?まずは自己紹介から……私の名前は、毛利蘭。そして、私の隣にいる男の子の名前は工藤新一。貴方の名前は?」
貴「私は神崎憐……。」
先程よりも優しい声色で問いかけてきた女の子。敵意がないのが伝わったから、私もちゃんと彼女の目を見て自分の名を告げた。
────────────────────────
キーンコーンカーンコーン……
授業の終わりを告げる鐘がなる。退屈すぎていつの間にか寝てしまっていた。……何だか懐かしい夢だったな。
園「ちょっと憐、アンタいつまで寝てんのよ!ホームルームの時間は終わったわよ!」
寝起きで頭がぼーっとしていたのに、聞こえてきた甲高い声に意識がより鮮明になった。
蘭「園子の言う通りだよ憐、早く起きて……。今日は私も園子も部活がないから、一緒に帰ろう?」
貴「園子、蘭……ありがとう、起こしてくれて。」
私の机を取り囲む二人の女の子。左には呆れたような顔をして起こしてくれた短いボブヘアーで、黄色カチューシャを付けた女の子、右には、笑いながら起きることを促す黒髪ロングで角のような形の髪型をしている女の子。高校に入ってから出来た私の大切な友達……彼女達の名は、鈴木園子と毛利蘭だ。本当はもう一人、幼馴染によく似たミステリー好きの男の子がいたのだが、ある日を境に学校に来なくなってしまったので、実質3人で学校の時間を過ごしている。
貴「凄く懐かしい夢を見たの。」
園「へぇ〜懐かしい夢か〜……それってどんな夢なの?」
帰宅する準備をしながら再度話し始めると、同じく文房具や教科書を鞄に詰めていた園子が興味深そうに聞いてきた。
貴「蘭と工藤くんに初めて会った時のことだよ。」
蘭「懐かしいね。確か入学式の日だったよね。憐、新一と誰かを間違えて叫んでたよね?私も新一も、全然知らない子から叫ばれたから、何事かと思ってびっくりしたよ〜。」
私の説明に蘭が補足の説明を入れてくれた。あの時は本当に申し訳なかったなと2年生になった今でも思う。
園「へぇ〜?新一くんと誰かを間違えたんだ〜……アンタ誰と間違えたのよ??まさか……好きな男の子とか?!?!」
園子が目を輝かせて身を乗り出す。
貴「ち、違うから……!好きな男の子とかじゃなくて……。」
蘭「確か、知り合いの男の子と間違えたって言ってたよね?」
貴「まぁ、そうだけど……。」
確かそんな風に言ったんだっけ?まぁ、間違っては無いからいいよね。
園「な〜んだ、知り合いの男の子か〜。」
蘭「でも仲良い男の子なんでしょ?呼び捨てで、男の子の名前呼んでたし、その男の子の名前自体は覚えてないけど、慣れ親しんだように呼んでたから……。」
貴「えっ!!?」
何でそんな事が分かるの?!私の焦ったような態度を見て、退屈そうな反応をしていた園子がニヤニヤしながら見ていた。
園「慣れ親しんだようにってことは……よく呼んでるってことよね?よく名前を呼ぶような男の子って……まさか蘭にとっての新一くんみたいな旦那兼幼馴染が憐にもいるってこと?!」
蘭「ちょっと園子!幼馴染は合ってるけど、旦那って何よ〜!別に新一と私はそんな関係じゃないって言ってるじゃない……。でもそうね……あの呼び方はそんな感じだったな……。」
貴「ちょ、ちょっと二人とも!突然何を言い出すの!!」
蘭はしっかりと否定する所は否定しつつも、確信したように答えた。二人の言い分を聞いて更に焦る私を見て、園子だけじゃなく蘭まで生暖かい目で見てくる……誰か助けて。
園「ほぉ〜〜……その反応、さては当たりね。いいからとっとと白状しなさいよ〜!」
ほれほれ〜と言わんばかりに手をクネクネさせながら追い詰める園子。……もう隠しきれない。素直に認めることにした。
貴「た、確かに幼馴染の男の子はいるし、そいつと工藤くんがそっくりだったから、驚いて叫んじゃったのは合ってるけど……でも、別に快斗は旦那じゃないしましてや好きじゃないから!ただの幼馴染ってだけよ!そうそう……。」
二人の顔がまともに見れない……何でそんなに察しがいいんだろう。合ってる所は合ってるから余計に見られない。
チラッと二人の姿を確認すると、更に目を輝かせた園子と蘭の姿が……えっなんで??
園「蘭、聞こえたわね?」
蘭「勿論よ園子!」
二人は顔を見合わせたと思ったら、更に身を乗り出して距離を詰めてきた。
園「やっぱりアンタいるんじゃな〜い!旦那兼幼馴染の男の子が!しかも新一くんにそっくりと来た……やつの性格はさておき顔はいいものね、新一くんは……。そんな彼に似てる憐の幼馴染の男の子……これは全部話してもらわなきゃ帰さないわよ!」
蘭「へぇ〜、【カイト】くんって言うんだ。しかも憐の反応を見るに、大好きなんだね……そのカイトくんが。私も会ってみたいな……そのカイトくんに。」
つい名前を出してしまった……学習しなさいよ私。
……何だか凄く面倒なことになってしまった。これは訂正するのに骨が折れそう。
貴「だからぁ〜〜……二人とも違うってば〜〜!!アイツとはそんなんじゃないの〜!それにアイツには好きな子がいるんだから!……快斗は、私以外のもう一人の幼馴染の女の子が好きなんだから……。」
分かっていたことだけど、やっぱり改めて言うとグサッと胸にくるな。
園「そう〜?ていうかもう一人いるわけ?幼馴染が?!アンタどんだけいるのよ……。」
蘭「そうなんだ……でも私は、憐のことを応援してるからね!ほら、帰ろう?」
諦めたように笑う私を見て、園子も蘭も、気を遣って私の手を引いて教室から出て行く。
こんな日常が、今の私の日常。平和で変わり映えない日常だけど二人のお陰で楽しい学校生活になっている。そして、この二人のお陰で私は、新たに人の縁を結んでいくことになっていく。
貴「だって私にはこれがあるから……。」
手首に巻かれた赤色のミサンガが風で靡いている。校門の傍に咲いている桜の花を見上ながら、今日から通う帝丹高校へと足を踏み入れるのだった。
今朝の話に遡る。本日晴れて高校生となった私達はいつものように4人揃って新しい学び舎である高校に、登校しようとしていた。快斗、青子、玲於は江古田に……そして私は帝丹に。途中の道で3人とは別の方向に指を指し、「それじゃ、私こっちの高校だから。じゃあね」と言い、特に何か特別なことをせず、手を振りながら別れようとした瞬間、青子にガシッと腕を掴まれた。何も聞いていない青子は驚きながらワーワー騒いでいたけど、帝丹高校に通うことにしたことを告げたら、目を釣りあげて「どういうことか説明して!」と怒られた。
まぁ青子には、教えずに進路希望を変更してるのだから怒られるかなとは予想してた。玲於は何も言わずただ見てるだけ……家族だし、バレてるかなとは思ったので、そこまで驚いてはいない。問題なのは快斗の方だ。
眉を潜めて、不機嫌そうな顔をしている。
快斗にも伝えてなかったけど、アイツは普段から私のことをからかってくるし、青子とは一緒なんだから私の高校が違うくらいなんてことないだろうと考えていたけど、不機嫌そうな顔をしながら「別にお前の通う所なんだから、変えることに関しちゃ悪いとかねぇけど一言くらいあったっていいだろ。」って文句を言われた。
何でそんなこと快斗に言われなきゃって思ったけど、確かに今まで仲良くしていた友達が、大事なことを自分に隠して変えてたら良い気はしないなと感じた。だから私は二人に素直に謝ったのだ。
貴「……ごめん。悩んだけど、やっぱりこっちの方がいいかなって。3人は決まってたから私のせいで気が散って受験に集中出来ないのも申し訳ないと思って……でも、高校が違うだけでそれ以外は変わらない……学校終わったらまた会えるじゃん。」
この言い分に青子と快斗はなんとも言えない顔をしてたけど、二人揃ってため息をついて、私にデコピン制裁することで許してくれた……額がヒリヒリする。
青「じゃあね、憐。帰ったら色々聞かせてよ〜!」
玲「それじゃあね、姉さん。頑張ってね。」
青子と玲於は笑って手を振ってくれる。二人の見送りも見れた……あとは……────────────。
二人の後ろにいるもう一人の幼馴染の顔を見る。機嫌は直ったようだ。私の元に近づいてきて、目の前で止まった。
快「……。」
ジッと見つめてきたと思ったら、いきなり手を差し出してきた。
貴「……?」
私は快斗の意図が分かってないけど、あまりにも真っ直ぐな瞳で見つめて手を差し出す快斗の真剣な姿に、思わず自分の手を差し出す。その対応に快斗はフッと笑って、さりげなく私の手首に触れたものの、数秒で手を離す。するとそこには、赤色のミサンガ括りつけてあった。
貴「快斗、これ……。」
相変わらず手際が良いことで……目の前で起きたマジックなのに全然見えなかった。
快「やるよ。別に大した意味はねぇけど、そうだな……何かあった時はこれを見て思い出せよ。オメーはひとりじゃない……玲於や青子、そして……俺がいるってことをな。」
────ドキッ
(何が大した意味はない……よ。でもそっか……青子が好きな癖に、やっぱりなんだかんだ優しいんだよね。喧嘩ばかりだけど、気にかけてくれる所とか……、マジックを見せてくれたりとか……このミサンガもきっと……。)
貴「っ……。」
勝手に離れたけど、不安で堪らない私に、勇気づける為にくれたもの───────────。
貴「……ありがとう、快斗!私、頑張るから……だから快斗も……頑張ってね。」
自分なりに精一杯はにかんだ笑みを彼に見せる。それを見て彼は満足そうに笑った。新生活、彼らが傍に居ないのは初めてだから勿論不安でいっぱいだ。だけど私が自ら選択した道なのだから、エールを貰ったのだから、こっちの高校でも頑張ろうと心に決めて3人と別れた。
────────────────────────
学校の中に入り、掲示板で自分のクラスを確認し、その教室へと向かう。今の私はひとり……青子も玲於も快斗もいないのだから当たり前だ。既に廊下には、新入生同士仲良くなりだしてグループがつくられている。
(頑張るとは言ったものの、どうしよう……。)
早速高い壁が立ちはだかる……コミュケーション能力が高い青子や快斗、玲於ならなんてことないと思うけど、比較的内気な私にとっては友達ひとり作るのさえ難しい。
どうしようか悩んでいると、ふと聞き慣れた声が耳に入ってくる──────。
?「ちょっと新一!今日は入学式なんだからもう少しシャキッとしなさいよ!」
新「ふわぁあ〜……ったくうるせぇ〜な蘭。仕方ねぇだろ〜?キリのいい所まで読もうと思ったら、気づいたら朝だったんだからよォ……。」
蘭「もう〜〜!何で入学式の日まで徹夜で小説読んでんのよ!!ほら!私達のクラスまであともう少しだから、さっさと歩きなさい!」
快斗によく似た声の持ち主を知りたくて、聞こえてきた会話の方に顔ごと向ける。その時私は目を見開いて思わず声を出してしまったのだ。
貴「快斗!なんでアンタがここに……?」
そう、さっき別れたはずの幼馴染が、帝丹高校の制服である青いブレザーを着て女の子と話していたのだ。
(なんで……?どうして……?)
自分の手首にある赤いミサンガを、チラリと見ながら動揺していると私の声に気づいた女の子が不思議そうな顔をして、声をかけてきた。
蘭「新一がどうかしたの?」
貴「えっ?」
蘭「だって貴方今、新一を見ながら叫んでたよね?」
貴「そ、それはっ!……。」
(快斗にそっくりだけど、よく見たら少し違う……この人は快斗じゃない、別人じゃん!あまりにも似てたから、心の中だけに留めておけばいいものを、私ったらびっくりしすぎて声に出しちゃってた!?……ど、どうしよう……。)
というかこの女の子も、よく見たら──────。
(青子に似てる……。)
新「ったく、こっちが聞いてんだからいい加減に答えてくれよ。アンタ、俺に何か用でもあるのか?」
貴「っ!……。」
女の子の問に私が答えず黙っているからか、今度は男の子の方が痺れを切らし、強い口調のまま問いかける。聞こえてきたのは眠そうな声だったのに、今では声も視線も鋭いものに変わっている。
貴「あ、あの……えっと……。」
早く答えなきゃ……幼馴染に似ていたから驚いて声を出してしまったのは事実。彼らからしてみれば見知らぬ女に叫ばれて、理由を聞いても答えてくれないなんて、薄気味悪いだけ。気分のいいものでは無い。でも私からしたら、いまだに信じられない。こんなことってあるのだろうか……。
(顔も見た目も声まで快斗にそっくりな人に睨まれるなんて……最悪だ。)
自分の大切な人に瓜二つな存在が、目の前にいて、しかも敵意むき出しにされているのだから、心中穏やかでは無い。せっかく頑張ろうと意気込んでいたのに、新生活早々挫けそうだ。テンパリ具合が遂に頂点に達したのか、目の前の視界が潤んできた。
蘭「新一!女の子を睨みつけちゃ駄目でしょ?!ごめんなさい!私達、貴方の声に驚いただけで怒りたいわけじゃなかったの……。」
そんな男の子の態度に今度は女の子が怒ってくれた。そして「本当にごめんなさい。」と私に謝ってくれた。
貴「そ、そんな!貴方達は悪くないよ!私の方こそ、いきなり叫んでしまってごめんなさい……。」
女の子は何も悪くないのに、謝らせてしまったことに罪悪感が出る。私の謝罪を聞いた女の子は、良かったと呟き、姿勢を正してこう言った。
蘭「涙が収まって良かった……。見たところ同じ1年生だよね?まずは自己紹介から……私の名前は、毛利蘭。そして、私の隣にいる男の子の名前は工藤新一。貴方の名前は?」
貴「私は神崎憐……。」
先程よりも優しい声色で問いかけてきた女の子。敵意がないのが伝わったから、私もちゃんと彼女の目を見て自分の名を告げた。
────────────────────────
キーンコーンカーンコーン……
授業の終わりを告げる鐘がなる。退屈すぎていつの間にか寝てしまっていた。……何だか懐かしい夢だったな。
園「ちょっと憐、アンタいつまで寝てんのよ!ホームルームの時間は終わったわよ!」
寝起きで頭がぼーっとしていたのに、聞こえてきた甲高い声に意識がより鮮明になった。
蘭「園子の言う通りだよ憐、早く起きて……。今日は私も園子も部活がないから、一緒に帰ろう?」
貴「園子、蘭……ありがとう、起こしてくれて。」
私の机を取り囲む二人の女の子。左には呆れたような顔をして起こしてくれた短いボブヘアーで、黄色カチューシャを付けた女の子、右には、笑いながら起きることを促す黒髪ロングで角のような形の髪型をしている女の子。高校に入ってから出来た私の大切な友達……彼女達の名は、鈴木園子と毛利蘭だ。本当はもう一人、幼馴染によく似たミステリー好きの男の子がいたのだが、ある日を境に学校に来なくなってしまったので、実質3人で学校の時間を過ごしている。
貴「凄く懐かしい夢を見たの。」
園「へぇ〜懐かしい夢か〜……それってどんな夢なの?」
帰宅する準備をしながら再度話し始めると、同じく文房具や教科書を鞄に詰めていた園子が興味深そうに聞いてきた。
貴「蘭と工藤くんに初めて会った時のことだよ。」
蘭「懐かしいね。確か入学式の日だったよね。憐、新一と誰かを間違えて叫んでたよね?私も新一も、全然知らない子から叫ばれたから、何事かと思ってびっくりしたよ〜。」
私の説明に蘭が補足の説明を入れてくれた。あの時は本当に申し訳なかったなと2年生になった今でも思う。
園「へぇ〜?新一くんと誰かを間違えたんだ〜……アンタ誰と間違えたのよ??まさか……好きな男の子とか?!?!」
園子が目を輝かせて身を乗り出す。
貴「ち、違うから……!好きな男の子とかじゃなくて……。」
蘭「確か、知り合いの男の子と間違えたって言ってたよね?」
貴「まぁ、そうだけど……。」
確かそんな風に言ったんだっけ?まぁ、間違っては無いからいいよね。
園「な〜んだ、知り合いの男の子か〜。」
蘭「でも仲良い男の子なんでしょ?呼び捨てで、男の子の名前呼んでたし、その男の子の名前自体は覚えてないけど、慣れ親しんだように呼んでたから……。」
貴「えっ!!?」
何でそんな事が分かるの?!私の焦ったような態度を見て、退屈そうな反応をしていた園子がニヤニヤしながら見ていた。
園「慣れ親しんだようにってことは……よく呼んでるってことよね?よく名前を呼ぶような男の子って……まさか蘭にとっての新一くんみたいな旦那兼幼馴染が憐にもいるってこと?!」
蘭「ちょっと園子!幼馴染は合ってるけど、旦那って何よ〜!別に新一と私はそんな関係じゃないって言ってるじゃない……。でもそうね……あの呼び方はそんな感じだったな……。」
貴「ちょ、ちょっと二人とも!突然何を言い出すの!!」
蘭はしっかりと否定する所は否定しつつも、確信したように答えた。二人の言い分を聞いて更に焦る私を見て、園子だけじゃなく蘭まで生暖かい目で見てくる……誰か助けて。
園「ほぉ〜〜……その反応、さては当たりね。いいからとっとと白状しなさいよ〜!」
ほれほれ〜と言わんばかりに手をクネクネさせながら追い詰める園子。……もう隠しきれない。素直に認めることにした。
貴「た、確かに幼馴染の男の子はいるし、そいつと工藤くんがそっくりだったから、驚いて叫んじゃったのは合ってるけど……でも、別に快斗は旦那じゃないしましてや好きじゃないから!ただの幼馴染ってだけよ!そうそう……。」
二人の顔がまともに見れない……何でそんなに察しがいいんだろう。合ってる所は合ってるから余計に見られない。
チラッと二人の姿を確認すると、更に目を輝かせた園子と蘭の姿が……えっなんで??
園「蘭、聞こえたわね?」
蘭「勿論よ園子!」
二人は顔を見合わせたと思ったら、更に身を乗り出して距離を詰めてきた。
園「やっぱりアンタいるんじゃな〜い!旦那兼幼馴染の男の子が!しかも新一くんにそっくりと来た……やつの性格はさておき顔はいいものね、新一くんは……。そんな彼に似てる憐の幼馴染の男の子……これは全部話してもらわなきゃ帰さないわよ!」
蘭「へぇ〜、【カイト】くんって言うんだ。しかも憐の反応を見るに、大好きなんだね……そのカイトくんが。私も会ってみたいな……そのカイトくんに。」
つい名前を出してしまった……学習しなさいよ私。
……何だか凄く面倒なことになってしまった。これは訂正するのに骨が折れそう。
貴「だからぁ〜〜……二人とも違うってば〜〜!!アイツとはそんなんじゃないの〜!それにアイツには好きな子がいるんだから!……快斗は、私以外のもう一人の幼馴染の女の子が好きなんだから……。」
分かっていたことだけど、やっぱり改めて言うとグサッと胸にくるな。
園「そう〜?ていうかもう一人いるわけ?幼馴染が?!アンタどんだけいるのよ……。」
蘭「そうなんだ……でも私は、憐のことを応援してるからね!ほら、帰ろう?」
諦めたように笑う私を見て、園子も蘭も、気を遣って私の手を引いて教室から出て行く。
こんな日常が、今の私の日常。平和で変わり映えない日常だけど二人のお陰で楽しい学校生活になっている。そして、この二人のお陰で私は、新たに人の縁を結んでいくことになっていく。