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貴「……。」
快「……。」
お母さんが作ってくれた朝食を二人静に黙々と食べている。玲於と青子は先に食べ終わったのか、コーヒーを飲みながらこちらを見ていた。しかし、青子がお互い一言も喋らずご飯を食べている私達を見て、不思議そうな顔をして話し始めた。
青「どうしたの、二人とも?そんなにムスッとした顔しちゃって。」
……あまり触れてほしくないのだけど、確かに何時もだったら、なんだかんだ賑やかに食べているもんね。やっぱり青子も何かを感じ取ったのかな。
玲「……大方、快くんが姉さんをマジックで起こして姉さんが怒って……とかそんな所でしょ?」
流石玲於……合っている。双子だし快斗とも仲良いしで、私達への解像度が高い。
快「俺は悪くねーぞ……今日を日曜日だと勘違いして、寝こけてた誰かさんを起こしてやったんだからな。」
それに対し快斗が、顔を逸らしながら文句を言う。……あくまで自分は悪くないっていうスタンスを取るのね。青子がいるから快斗に文句を言うのはやめておこうかと思って黙っていた私が馬鹿だった。
貴「普通に起こしてくれればいいのに、なんでマジックで起こすの?!私鳩は大好きだけど、いくらなんでも寝起きに大量の鳩を見たら困るの!心臓止まるかと思った……。」
快「バーロ……普通に起こすだけじゃ、オメーはすぐ起きねぇじゃねえか。」
快斗は気に入らないのかすぐに反撃してくる。
玲「まぁそれは一理あるね。」
青「憐朝弱いもんね……。」
貴「うっ……。」
快斗の発言に続いて、青子と玲於は私の事を憐れみの目で見てくる……。比較的まともな2人迄に肯定されると何も言えなくなる。
母「そうよ憐!貴女は目覚めが悪いんだから、いつもしっかりと起こしてくれる快斗くんに感謝するべきよ。」
貴「お母さんまで酷い!」
お母さんまで快斗に味方して……一気に心が折れました。
快「ほらな〜!やっぱり憐は俺に感謝するべきだぜ。」
みんなから認められて、快斗が調子に乗って感謝するべきだとか言ってたけど。
貴「大体私、快斗に起こしてくれなんて頼んでないのよ!!」
シーン…………。
私が快斗に冷たく言い放ったせいで、場が静まった。
(またやっちゃった。……快斗は悪くないのに。
どうして私は、素直になれないのよ……。)
快斗相手になると素直になれなくて、ムキになって言い返して、結局快斗と喧嘩になる……私の悪い癖。ずっと……小さい頃から好きな人なのにね。しかも今回、快斗は悪くない……私が自分で起きればいいだけの話なのだ。……まぁ、出来ないからこんな事になってるんだけど。
こうやってなんだかんだ、快斗は私を気にかけてくれるから、好きな気持ちを諦めきれないんだよね。……理由は青子の為だと思うけど。快斗は、青子に良いところを見せたいのか、世話を焼いてくれるから。
私の中には、自分から離れたくせに話しかけてくれる彼に関わりたいという思いと
諦めきれないから、もう優しくしないで欲しいという思いが常日頃存在する。
正直とても辛いから、何度捨てようかと思ったか……でも捨てられない。こんなに好きになった人は初めてだから……。見る度に……話す度に……どんどん想いは増していく。
(例え、快斗が青子の事を好きだとしても……私の事をただの幼馴染としか思っていなくても……それでもいい。幼馴染として快斗の傍に居られるのなら……なんて。馬鹿だな……なんの為に、違う学校に通う事を選んだのか……私ってほんとに馬鹿。)
矛盾した自分の気持ちに苦しむが、そんなことも言ってられない。早く出ないと遅刻してしまう。
固まっている青子達を横目で一瞥した後、家を出る支度をするべく洗面所の方に向かっていった。
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快斗side
(まただ……なんでお前は、時たま辛そうな顔をするんだよ。)
憐の言う通り、これは俺が勝手にやっていること。だからアイツは文句を言う資格がある。俺は言われても仕方の無いことをしている……だけど……───。
(隠しちゃいるが、表情と言葉が一致していない……。俺には分かるんだぜ、憐。……オメーが何かに苦しんでいることはな。)
世界に認められた天才マジシャン、実の父親である黒羽盗一のようなマジシャンを目指す俺には、人の表情、仕草から相手の思考を読み取る事が人より長けている部分がある。そんな技が身についたのも、亡くなった親父の教えのおかげだ。そんな親父からよく言われていた言葉がある。
〝いつ何時たりともポーカーフェイスを忘れるな〟
マジシャンにとって、自分の表情もマジックショーの一部である。ショーを見に来た客に自身のマジックの仕掛けを暴かれてはいけない……自分の表情から相手に思惑を悟らせない為に、ポーカーフェイスを常に心がけなければいけないのだ。
だからこそ他人の思考はある程度予想が出来る……ましてや長年一緒にいる幼馴染……特に自分の好きなやつのことは、気にしてなくても気がついたら目で追っている。アイツが何かに苦しんでいることは分かる……だけど、その内容迄は分からない。
(こんな時、親父ならきっと……──────。)
自分で解き明かし、憐の力になっているだろう……。それなのに俺は……──────。
自分の不甲斐なさに腹が立つ。
そんな俺の事は露知らず、一足先に食事を終えた憐は、洗面所の方へ行く。俺はその背中をただ見つめることしか出来なかった。
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玲於side
母「快斗くん、ごめんなさいね。憐の態度が悪くて……。」
玲「僕からもごめん……、いつも姉さんには言い聞かせてるんだけど……。」
いくらなんでもあの態度はないよ、姉さん。快くんに起こしてもらわなきゃ、いつも遅刻してるのに。姉さんが色々考えて、素直になれないのは分かるけど、流石にどうかと思う。
母さんも悪いと思ったのか、快くんに謝罪をし、僕も双子の弟として申し訳ないと思い、謝った。
快「別にいいぜ、いつもの事だしな。」
そう言って残りのご飯をパクパク食べる快くん。
快「ご馳走様です。おばさん、今日のご飯も美味しかったです!」
ご飯を食べ終わった快くんは、母さんにお礼を言った後、鞄を持って玄関の方を見て、僕達に声を掛けてきた。
快「わりぃーな、待たせちまって……。」
青「快斗は行けそうだね……後は憐よね。青子、憐の様子見てくるから、二人は先に玄関に行ってて!」
青ちゃんは洗面所の方へ駆けて行った。その為、僕と快くん二人で、玄関の方へ行く……鞄も忘れずに持って。
玲「……快くん、姉さんの事だけど……」
僕は姉さんと青ちゃんが来るまでの間、姉さんの事についてフォローを入れようと声をかけたが、快くんは遮って僕の肩を叩いて笑ってこう言った。
快「大丈夫だ、玲於。憐の事はぜってぇ俺自身で何とかする。今はまだ手探り状態だが、いつか必ず……憐の憂いをはらって笑顔にさせてみせる。」
玲「快くん……。」
快「俺は、あの世界的に有名で天才マジシャンである黒羽盗一の息子、黒羽快斗だぜ?不可能を覆し、奇跡を起こすのが一流のマジシャンだ。」
快くんは自信満々に僕に宣言した。彼はお父さんの影響でポーカーフェイスが上手い……快くんの真意について、はっきりと分からないけど……。
玲「……うん。頑張ってね」
快くん自身が、姉さんの答えに辿り着き、この拗れた関係が変わることを願っているよ。誰もがみんなハッピーエンドになれたらいいね……。
この後準備を終えた姉さんと青ちゃんが戻ってきたので、4人で玄関の扉を開ける。姉さんだけは違う高校なので、途中で別れることになるが、その別れ道までは、4人で他愛のない話をしながらそれぞれの高校に向かうのだった。