探偵たちの鎮魂歌
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────── 医務室
蘭「!?……目暮警部!?」
熱中症で倒れた哀ちゃんを皆で看病していると、外からスーツを着た人達が見えた。その人達の中に目暮警部が見えた蘭は警部に挨拶してくることを告げる。
和「あたしも!平次がよう世話になってるし!!」
哀「……」
貴「行ってらっしゃい!私はこの子達見てるから待ってるね」
蘭だけでなく和葉ちゃんも服部くんがお世話になってるから挨拶してくるらしい。私もした方が良いかもしれないけれど、子ども達を見る人も必要だから残ることにした。
皆良い子達だから、手がかからずに済む……
元「じゃあ、俺ちょっとスーパースネークに乗ってくるから!!」
哀「!?」
元「後はよろしくな!!」
貴「えっ!?元太くん!?」
光彦くんが抗議の声をあげるが、元太くんはお構い無しに部屋から出て行った……。
哀「ちょっと待て!!」
「ダメよ、まだ起きちゃ!!」
哀「彼を止めて!!お願い!!」
歩「う、うん」
光「分かりました!!」
貴「ちょっと!!みんな!!」
止める間もなく、光彦くんや歩美ちゃんまで部屋から出ていってしまった……。
貴「ど、どうしよう!?元太くんを追いかけなきゃいけないけど、哀ちゃん一人にしておけないし……」
哀「私は大丈夫だから、彼等を追いかけて!!」
決めきれずあたふたしている私に、哀ちゃんが力強い言葉で元太くん達を追いかけるよう促す。
貴「……うん!分かった!哀ちゃんはここに居てね。すぐ戻ってくるから!少しの間、この子をお願いします!」
私は哀ちゃんの言葉を受けて、出ていってしまった元太くん達を追いかけた。私がいなくとも、お医者さんがいるし、もう少しできっと蘭と和葉ちゃんも戻ってくる……とにかく今はあの子達を止めないと!
***
蘭「ふ、二人きりでミラクルランドに……ですか?」
和「キッショ〜〜……あれっ、蘭ちゃん……」
蘭と和葉は外にいた目暮を呼び止めた。目暮は白鳥と一緒におり、訳を聞くと休暇で来たのだとか……
いかせん成人済男性二人が、休暇に遊園地に遊びに行くのはどうなのか……正直な感想を述べた和葉は横目で、子ども達が外へと走っていく様子を見つける。
蘭「あの子達……」
蘭は和葉の言葉で、同じく走っていく子ども達の様子を見た。何故外にいるのだろう……確か、憐が面倒を見ているはず……
貴「ちょっと待ってみんなーーー!!」
後から必死な表情で憐が追いかけている。その様子を蘭達だけでなく、神妙な表情で見つめる目暮と白鳥。そしてその視線は彼女達の腕についてるID部分へと移る。
白「警部……」
目「……」
目暮達はこれより前に、毛利小五郎からあるメモを託されている。
小〝蘭や子ども達がミラクルランドで人質に……外へ出ると爆発するIDが手首に……極秘に蘭達の保護をよろしく……〟
あのメモには蘭と子ども達と書かれていたが、察するに蘭達だけでなく大阪の和葉も……そして子ども達を追いかけていた憐にも同じようなIDが付いていたことから、彼女達も人質になっている可能性が高い。
態と警察を煽り離れていった小五郎……その実は依頼人に警察を頼ると人質の命はないのだと脅されていたが、目暮達にはそこまでの詳細は分かっていない……。
ただ、今回は極秘に彼女達を守って欲しいとメモを託された……。口頭で言えず態と悪態をつきながらメモを渡す辺り、何か警察に言えない事情くらい分かっている。民間人を守るのが警察の仕事だが、それを依頼したのはかつて目暮の下で働いていた元警察官の毛利小五郎……彼の大切な者は何がなんでも死守せばなるまい。……目暮は静かに己の心にそう刻み込んでいた。
元「え〜〜〜っ!?マジかよぉ!?」
【スーパースネークは機会の点検中につきまして、運転を中止しています。真にご迷惑をおかけしますことをお詫び申し上げます】
元太が立てられていた看板を見て残念がる。
光「抜け駆けしようとしたバチですね!」
歩「さ、医務室に戻ろう!」
光彦と歩美が帰りを促す中、彼等の真上に影がかかる。その影に気づき、3人が振り向くと息を切らした憐が、目つきを鋭くさせて立っている。
歩「あっ!……」
光「憐さん……?」
元「うわぁっ!!憐ね、姉ちゃん……!?」
貴「元太くん……」
第一声がいつも聞く声より数段低い……3人は憐の様子を見て、これから出る言葉を悟った……
貴「駄目でしょ!いきなり飛び出したら!!」
案の定、怒っていた憐は腰に手を当てて元太を叱りつけた。
元「ご、ごめんなさい!!でも俺……どうしてもスーパースネークに乗りたかったんだよ〜……」
瞳を潤ませて、素直に謝罪の言葉を口にする元太を見て、憐はしゃがみこみ彼の目線と合わせて、穏やかに話し始めた。
貴「……うん。それは分かってるよ。スーパースネークはこのミラクルランドの中でも人気なアトラクションだし、蘭からも私達と合流する前に、良い子に並んでたって聞いてたから……でもさ!だからって急に飛び出しては駄目でしょう?もし元太くんとはぐれて、元太くんの身に何かあっても傍にいなかったら直ぐに助けられないんだよ?」
元「……は、はい……」
貴「……それに元太くんは一人で来ている訳じゃないでしょう?小五郎さんに連れてきてもらって、皆で遊びに来てるんでしょ?ならまずは、大人の人に相談すること!そして皆で来てるなら、皆で行動出来るようにすること!……少年探偵団で、幾つもの事件を解いてきた元太くんならできるよね??」
元「っ……あぁ!出来るぞ!」
貴「それならOK!……偉い偉い!」
素直に反省する元太を見て、憐は優しく笑い、元太の頭を撫でた。
彼等の様子を遠目で見ていた蘭と和葉は安心したように笑う。歩美と光彦もようやく笑みを見せた。
しかし、そんな和やかな雰囲気を壊すかのように甲高い悲鳴が上がる。
「ドロボー!!」
「「「「!?」」」」
バシャッ
元太達の近くを通った大柄な男。帽子を深く被り、サングラスを掛け、手には似合わないピンクのカバン。走り抜けていく男の足元には元太が持っていたコーラが飛び散っている。
歩「ドロボーだよ!!」
貴「歩美ちゃん!!」
歩美の傍まで駆け寄る憐。そこへ蘭と和葉も心配して憐達の近くまで走ってくる。
蘭「歩美ちゃん!憐!」
目「蘭くん!」
彼女達が走っていく様子を頭を抱えて見ている人物がいるとも知らずに……
***
────── 横浜海洋大学 食堂
コ「で、〝伊東末彦〟ってどんな人?」
結局コナン達は白馬が提案した食堂で食事を取ることになった。平次と白馬はカレーを頼み、コナンはドリンクだけで済ます。その際にコナンが白馬に得た情報を聞き出そうとした。
白「伊東は今年の4月4日、馬車道で起きた現金輸送車襲撃事件の犯人として指名手配されているようだよ」
コ「なるほど……だから部室から写真を外されたんだ……」
白「興味深いのはそれだけじゃない……彼は大学を卒業後、投資顧問会社を経営していたんだが、その会社ファーイーストオフィスでも殺人事件が起きてるんだ……」
コ「何っ!?」
白「どうだい?興味深いだろう?」
平「よっしゃ!さっそく行ってみようやないか!そのファーイーストオフィスって会社にな!」
白馬が口角を上げた。その間食べていたカレーを平らげた平次が次に赴く場所をファーイースト会社へと決める。……今度こそ事件を解決する手がかりがあると信じて……
***
────── ファーイースト会社オフィス
オフィスの入口へと向かうと張り紙が。
【関係者以外無断立入りを禁ずる】
普通、こういった張り紙が貼られている場合、関係者以外が立ち入ることはない……しかし、ここに居るのは3人の〝探偵達〟
コ「禁じられると……」
平「入ってみたなるんが……」
白「探偵の性……」
隠されたものがあるならば、暴いてみたくなるのが探偵というもの……それは探偵と正反対に位置する怪盗とて同じ事。
……真実の追求、知的好奇心には勝てないのだ。
彼等はクスリと笑いながら、立ち入りを禁じられたビルの中へと足を踏み入れる。
白「殺害されたのは西尾正治。ファーイーストオフィスの営業部長……ライフルで狙撃されたらしい」
オフィスの中にある階段を上りながら、白馬は二人にこのオフィスで起きた事件の詳細を説明した。
白「社長の伊東とは大学時代の同級生……」
コ「ってことは……」
平「西尾も犯罪研究会におったんとちゃうか!?」
平次の問いかけに白馬は「ご明察……」と答える。そして、コナン達に自身の持つ携帯の画面を見るように指示を出す。
白「来たまえ……」
平「それ俺の携帯やないか!?いつの間に……」
何故か自分の携帯ではなく、〝平次の携帯〟を持っていた白馬は気にせず画面を見せる。
白「見たまえ……この写真の最前列、中央にいるのが当時部長だった伊東末彦。その右隣が殺害された西尾だよ……」
平次の携帯の画面には横浜海洋大学、横浜犯罪研究会で飾ってあった写真。研究会のメンバーが、CRY第三回夏期勉強会と書かれた横断幕を持ち、笑顔で写っている。
凝視したコナンはある事を呟く。
コ「ねぇ、伊東さんの左隣の女の人は?」
白「あぁ、その女性は清水麗子。彼女もこのオフィスに務めてたらしいけど、5月15日に自殺しているよ」
白馬の回答を受け、コナンと平次に衝撃が走る。
平「自殺やて!?」
コ「!?」
白「警察から任意での事情聴取を受けてた期間にね」
平「西尾の射殺事件の事でか?」
白「かなりキツく取り調べられたらしいよ」
コ「……」
徐々に明るみになる過去に起きた凄惨な事件……実際の事件現場に足を踏み入れた事によって、更なる真実が見えてくる。
コナン達はビルの中を進み、実際の狙撃現場へと辿り着く。その場所には、今も尚過去に起きた事件をを思い起こさせるかのように、床には白いテープが貼られていたり、当時に使われていたであろう椅子が倒れたままになっている。
コナン達は淡々と調査を進める。彼等の推理によって、当時の事件現場が再現されていく。事件当時、このオフィス内で射殺された西尾。殺害に使われた凶器はチャーターアームスAR7と呼ばれる銃でスコープやサイレンサー付きだったという。犯人は装弾数である8発の弾丸を撃ち尽くし、その中の1発が西尾の後頭部に命中、即死だった。
その後西尾の机から、伊東が書いた現金輸送車襲撃の計画書が出てきた為、生き残った伊東が指名手配されたという経緯がある。
当時の事件現場の状況、そこに至るまでの経緯からコナンと平次は事件の核心へと迫りつつあった。その様子から事件解決までもうすぐだと期待して見守る
すると、またもや赤色の携帯からコール音が鳴り響く。
依『次のステップに進んだようだね……服部くん』
平『あぁ、なんとかな……』
依『解決して欲しい事件が分かったか?』
平『西尾正治氏射殺事件やろ?』
依頼人は調査の進捗の為に電話をかけてきた。彼の問いかけに平次は臆することなく答える。平次の答えを聞いて依頼人は感心したような声を漏らす。
平『おい……まさかアンタの正体……』
彼の反応を受けて平次達は依頼人の正体に辿り着きそうなその時……
────── パリーン!!
全身黒のライダースーツに身をつつみ、フルフェイスの人物達が、バイクに乗り硝子を破り侵入してきた。
平「何や!?」
白「いい展開じゃいない事だけは確かだね」
奴らの目的はコナン達の行く手を塞ぐこと。フルフェイス達は執拗にコナン達に迫ってくる。
平「何やコイツら!!」
白「ゲームを面白くするってやつなんじゃないのかな!?依頼人が言っていた……」
平「オモロすぎるで!!」
軽口を叩きながら、コナン達は足を動かし逃げ回った。相手はバイク、少しでも気を緩めたらあっという間に追いつかれてしまう。こちらは丸腰に対して、相手は銃も持っている。本来であればもう少し緊張感があるものだが、どこか余裕さを感じる平次と白馬の態度を見ているとそれが感じられない。
その後結局コナン達は二手に別れ、各々対処する事になる。その過程で、コナンは意識を失う事態となる……
────── タイムリミットまで後数時間……
