探偵たちの鎮魂歌
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私達はミラクルランドを出るべく出口へと向かっていた。園子もIDを持っていたがなくしてしまったらしく、スルリと出ることが出来た。私達は出る前に、係員の人にIDが赤く点滅していることについて聞いた。
ミラクルランドのIDで、ここで働いている係員さんなのだから原因が分かるはずと期待して聞いたが、返ってきた答えは分からないとの事。
「何かなぁ……僕も初めて見ますね」
そんなことあるのだろうか……滅多にない不具合とか……?まぁ蘭も和葉ちゃんもこのIDさえあれば、ミラクルランドのものは全てフリーパスになると説明を受けたらしく私と全く同じIDだと分かる。
(VIPだからなのかな?それより……本当にこのまま出て大丈夫なの……??どうしよう……)
葛藤していると、ミラクルランド全体にアナウンスが響き渡る。
〝米花町よりお越しの毛利蘭様、お連れの神崎憐様、遠山和葉様。いらっしゃいましたら至急医務室までお越しください〟
蘭「何だろう……」
和「子ども達に何かあったんとちゃう?」
貴「……そうだね(でも何で私まで……?)」
子ども達に何かあったら、保護者役である蘭を呼び出すのは分かるけど、今日は偶々別々でやってきた私や和葉ちゃんまで、アナウンスで呼び出す必要あるのかな……?
……ほんの少しの違和感。普段ならそこまで気にならない事が、ここまで気になっちゃうのは……やっぱり不安からくるものなのだろうか。考え込んでいると蘭達の間で医務室に行くことが決まったらしい。
子ども達に何かあったのか心配だから戻るのは賛成。私も呼び出されてるから尚更行かなきゃね……園子には悪いけど。
蘭「ごめん、園子……一人で行ってくれる?」
園「良いって!子ども達が心配だから、行ってあげな……」
貴「ありがとう園子……もし子ども達に何ともなかったら、付き合うからね!」
園「っ……ありがとう憐。ほらほら早く行ってやんな!」
蘭、和葉ちゃん、私は園子と別れ、元来た道を戻り医務室へと向かった。ミラクルランドの外へ出たのはIDを持っていなかった園子のみだけであった。
***
────── 医務室
蘭「どうしたの?」
「園内で倒れたんです。軽い熱中症だと思いますよ……」
蘭「そうですか……」
医務室に行くと、ベッドには哀ちゃんが横になっていてその傍には歩美ちゃん、光彦くん、元太くんが立っていた。どうやら哀ちゃんが熱中症で倒れたらしい。熱い日差しが照りつける中、軽い熱中症なのは幸いだった。
貴「哀ちゃん大丈夫……?ごめんね、気づいてあげられなくて……」
私は哀ちゃんが横になっているベッドの傍まで行った。子ども達だけで頼れる大人もいなくて、自分が倒れてしまったら心細いだろう……哀ちゃんは他の子達と比べ、凄く大人っぽい子だけど、それでも子どもには変わらない……罪悪感が芽生えそうになった時、哀ちゃんは静かに首を横に振って呟く。
哀「私の方こそ、ごめんなさい……」
貴「哀ちゃんは悪くないよ!謝らないで……でもそんなに重い症状じゃないみたいだし良かった!」
小さい子に気を遣わせちゃ駄目だよね。安心して欲しくて、私は哀ちゃんに微笑んで見せた。
蘭「そうよ、哀ちゃん。心配しないで!……でも、どうして和葉ちゃんを呼んだの?憐もだけど、今日は一緒に来てないのに……」
和「あたし、この子と話すん初めてや……」
貴「そうなんだ……?」
哀「……そ、それは……」
そうなると益々謎だ……哀ちゃんが、話した事も無い和葉ちゃんまで呼び出した理由って……?
何か言いたげな哀ちゃんを遮って元太くんが大きな声をあげる。
元「そんなの決まってんだろ!」
光「一人より二人の方が安心だからですよ!」
元太くんに続いて光彦くんの言葉に、妙に納得した。
貴「確かにそうだね……体調悪い時っていつもより、なんか寂しく思っちゃうよね……!」
私が同調するように答えると、歩美ちゃん達も嬉しそうに頷いた。
「暫く休んでいましょう。着いていて貰えますか?」
蘭「勿論です!」
私達は、哀ちゃんの体調が良くなるまで、医務室に残ることにした。
哀「……ずっと傍にいてね……」
貴「……うん!大丈夫だよ……ずっと傍にいるからね……」
哀ちゃんから小さく漏れ出た可愛らしいお願いに、私は笑顔で頷く。普段は静かで滅多に甘えない哀ちゃんからのお願いに、何だか嬉しくなった私はずっとニコニコしていた。
和「生意気な子やと思てたけど、可愛いとこあるやないの!」
貴「哀ちゃんはね、大人っぽい子だけど、偶に歳相応な部分もあって、とっても可愛い女の子なんだよ〜!」
和「そうみたいやね!」
和葉ちゃんは子ども達とあまり関わりがある訳じゃなかった。その中でも哀ちゃんとは初めて話すくらいだから、まだみんなの事をよく知らないだろう……それならば、この子達の良さを教えてあげたいと考えていた。
哀含めて少年探偵団達の事を楽しげな様子で和葉に教える憐の姿を見て、密かに哀は息を吐いた。
哀(……疲れるわ……この演技……)
***
────── 横浜海洋大学
突然、軽快な音が近くで聞こえた。その音の正体は自分の携帯だった。ポケットの中に入っていた携帯が、音を鳴らし小さく振動した。彼はその携帯を取り出し、画面に視線を移す。携帯の音と振動は、新たなメッセージが届いたことを示していた。
【ねぇ大丈夫?何も連絡が来ないから心配するじゃん!依頼は順調?もし困ってるなら素直に言いなさいよ……?電話でもメッセージでも良いから、連絡してよね……快斗】
憐からの連絡に、心が舞い上がり笑みを零す快斗だったが、その表情はすぐに翳りが差した。不要な心配をかけまいと、いつも通り振舞っていても気づかれてしまう。何かしら感じ取っている彼女の鋭さにはある意味感服に値する。
快斗は即座にメッセージを返した後、前方で大学の掲示板を見ながらブツブツ呟いている二人組に近づいた。
平「CRY、CRY……授業の名前か省略か……」
コ「部活は?」
平「そやな……」
自分の期待通り、名探偵は謎をときこの場所へとやってきた。今のところ自分の予定通りに事が運んでいる。唯一予想外とするならば、もう一人の探偵の存在だろう……東の工藤新一と並ぶ西の高校生探偵、服部平次。
快(まさか西の名探偵も一緒にいるとはな……これが〝仕事〟だったらマジ勘弁なんだが、今回は寧ろありがたいくらいだ)
アイツを救い、怪盗の仕事もこなす為には名探偵達の力が必要不可欠。かと言って彼等に任せっきりも出来ない。彼等がどこまで情報を持っているのか、知っておくことによって、こっちも次の計画が練りやすい。
そんな事を考えながら、真剣に考えている彼等の背後から近寄る。
コ「他に考えられるのは……」
快「横浜犯罪研究会……」
コ「!?」
平「あん!?」
快「クライム・リサーチ・オブ・ヨコハマ……僕はこのクラブが、限りなく正解に近いと思いますけど……」
〝僕〟……等と普段使わない一人称と、敬語を使い探偵達の背後から声をかける。……怪訝な顔で快斗の方を見たコナン達。誰がどう見ても歓迎されていないのは明白だ。
平「何や自分……」
快斗はキッドの時に平次と会ってはいる……だが、彼の反応はまるで初めて出会った反応……
初対面のような反応になってしまうのも無理はない……
────── 何故なら二人に声をかけてきた人物は……
本来この依頼を受けるはずだった〝白馬探〟に変装した快斗だった。
***
平「同じ立場やと……?」
コ「警視総監の息子で、高校生探偵やってるんだよね?」
白「あぁ、小学生探偵の君には負けるけどね」
突如現れた白馬の言葉を訝しげに繰り返す平次に対して、コナンは簡単に説明する。その簡単な説明だけで、彼はどういう意味なのか分かったようだ。
平「なるほど……親父が大阪府警本部長の俺と同じってわけか……」
白「それだけじゃないさ……」
コ/平「「!!!」」
彼等の共通点は他にもあった。白馬は自身の左手を前に掲げた。彼の左腕にはコナン達と同じIDが付けられている。
白「〝僕の大切な人〟もミラクルランドにいてね……」
……その言葉とは裏腹に不敵な笑みを浮かべている白馬に違和感を持つ者が一人……
コ「白馬の兄ちゃんの大切な人も……人質に……?」
焦りを滲ませた少年の問いかけに、彼は敢えて、声のトーンを落として答える。
白「……あぁ、そうだよ」
彼の回答に違和感を覚えたのはコナンだった。
コ(……今、僅かに雰囲気が変わった……以前会った時と比べて変化はない……なのに、今の言葉の時だけは少し……)
……何か気づいて欲しいような、必死さが伝わった気がした。
白「まぁ、無駄話は歩きながら……時間の浪費はそれこそCry……泣く羽目になる」
……くだらない事を言い放つ白馬を見て、呆れた表情に変わったコナンと平次。白馬とはほんの数回しか会ったことがないか、何故か以前の彼とは違う雰囲気をコナンは感じ取った。
***
────── 横浜犯罪研究会
服「大した資料やな……」
彼等は断りもなくズケズケと中へと入っていき、手当り次第調査を開始した。膨大な量の研究資料の中、服部はある写真に目をつける。
服「なぁ、見ろやこの写真……」
コ「研究会のメンバーのスナップらしいね……」
白「撮っといた方がいいね、この写真……」
服「そやな…………っ!?」
彼の持つ〝赤色の携帯〟から音が鳴る。手に取って出ると、コナンと白馬も聞き覚えのある声が聞こえた。
依『想像以上だよ服部くん。YOU CRYでそこまで突き止めるとは……君達には驚かされてばかりだ』
その携帯は、平次の携帯ではなくコナン達と同じく依頼人と唯一連絡の取れる〝赤色の携帯〟……と言っても、こちらから連絡を取ることは出来ず、一方的に相手側からしか連絡は取れない。
〝君達〟と表現していることから、依頼人はコナン達が協力して行動していることには気づいているようだ。
平「あんなぁ!どーでもええけど、事件解いて欲しいんやったら、ヒントぐらいもっと簡単にしてくれへんか?」
平次の言う事も最もだと
依『そう簡単に解決されたんじゃ面白くない……それに試しているのだよ。君達の探偵としての技量と、私の事件を解く資格があるのかをね……』
平「何やと!?」
悪態が止まらないが顔には出さず訝しげに聞いていた。
依『ここから先はノーヒント……期待しているよ、若き探偵諸君』
平『おいコラ!ちょー待て!!』
ガチャ
平「クソ……切りよった……」
コ「ノーヒントか……」
白「……(面倒な事になったぜ)」
今まで出されていたヒントだけを頼りに事件を解決しなければいけなくなった探偵達……しかし、更なる試練は止まらずにやってくる。
「あれ?君達!」
コ/平/白「「「!?」」」
「何か用かい??」
二人の男女が驚きながらコナン達に声をかける。この二人は横浜犯罪研究会のメンバーだった。出入り自由な大学でも、部室に見知らぬ人間がいれば誰だって不思議に思うもの。
平次が慌ててそれらしい理由を説明しようとするが、白馬が横から入りペラペラと架空の設定を話す。あまりにも自然に話す為、大学生の二人はすっかり信じきってしまう。
信用を得たコナン達は、得意の口八丁で器用に知りたい情報を得ていくのであった。
***
────── 大阪府警警察本部
大「伊東末彦!?」
「「「「?」」」」
大声をあげた大滝はすぐさま声を潜め、再度電話の主に問いかける。
大『平ちゃん、誰なんです?その〝伊東〟ちゅうのは?』
平『分からんから大滝ハンに調べてくれって頼んでるやないか……』
大学生達から聞き取りを終えた後、平次は昔馴染みの大滝警部に連絡を取り、新たに掴んだ情報〝伊東末彦〟の詳細を調べるよう依頼した。
大『……本部長はご存知で?』
平『……内緒や』
大『な、内緒って平ちゃん……』
平『ほな、連絡待ってんで!』
大『お、おい平ちゃん!?』
大滝の心配を他所に、容赦なく電話を切った平次達は次の行く先を決めかねていた。
白「どう、学食で食事でもしないかい?血糖値が下がると、どうにもなら頭の回転が……」
平「アホ、そんな暇あるかい……こっちは電話待ってんねん」
白馬の提案をこれまた容赦なくぶった斬る。本来の〝白馬探〟を知る人物が見れば、彼の言動に違和感を持つ者がいたかもしれない……例えば彼のクラスメイトである〝神崎玲於〟であれば、きっと彼を見るなり、「白馬くんは血糖値関係なく、頭の回転は早いからね……そんな事言うのは白馬くんじゃなくて、甘い物好きな快くんだよね」と笑顔で言い放つだろう。
だがしかし、ここに居るのは今日初めて出会った服部平次と、以前の事件で居合わせたコナン……彼の〝違和感〟に気付くはずもなく、そのまま会話は続いていく。
平次は警部の調査待ちだと返答するも、白馬は涼しい顔をして言葉を返す。
白「君が調べようとしていることは、もう分かりました……(さすが玲於とジイちゃんだな)」
コ「大阪府警より、横浜に近いからな……警視庁の方が……」
身も蓋もないコナンの言い草に、一行は白馬の提案通り学食に向かうのだった。
