探偵たちの鎮魂歌
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一方その頃、江戸川コナンは訳あって毛利小五郎と一緒にミラクルランドを出て、横浜市内を走り回っていた。理由はミラクルランドで黒羽快斗が受けた依頼と同じもの。ミラクルランドに招待された毛利小五郎は、依頼人から子ども達を連れてくるよう言われ、蘭、コナンだけでなく歩美、光彦、元太、哀と少年探偵団を引き連れてこのミラクルランドにやってきた。そこで子ども達にミラクルランドのフリーパスだと言ってIDを付けさせ、先にミラクルランドに入場させた。憐の時と全く同じ手口で、彼等を人質にとり、毛利小五郎に事件を解決するよう脅しをかけた。
コナンは不自然に思う部分があった。なぜならこの依頼、毛利小五郎だけではなく小学生の江戸川コナンまで残らせて事件の依頼をした。それがずっと気にかかりつつも、事件解決の為の暗号を貰ったコナン達はその暗号を解き、その場所へと赴いていた。
そこは古びた建物だった。そこに住んでいるホームレスの男性に聞くと、2年前に潰れたホテルだと言う。そこでコナン達はホームレスの男性から妙な話を聞く。
「そういや真っ白なデッケー鳥が飛んで来たことがあったっけ……」
小「デッケー鳥?」
コ「………」
小五郎は思い当たるものがなく、訝しげに答えるがコナンには心当たりのある存在が思い浮かび、神妙な顔で黙ってしまう。
***
その後、コナン達はホテル内を捜索する。2年前に潰れたこのホテルは、お世辞にも綺麗とは言い難く、建物全体が埃だらけで人は寄り付かない。
───だからこそ、隠したい物があればうってつけの場所なのだ……
小「目出し帽に手袋!?ガバメントまでありやがる!?」
何か使われた形跡のある物品、4月4日の領収書、変わった車、同日に現れた大きな鳥……一つ一つの情報が蘭達を救う為の道標となる。
4月4日にどのような事件が起きたのか……それを探るべくホテルを後にする二人。するとホテルの周りに、複数の男達がいた。拳銃を所持しており、明らかに一般人ではないことが分かった。彼等を油断させる為に、小五郎はコナン一人でまずは姿を見せるようけしかける。しかし、結局コナン達は結構その男達に身柄を拘束される。
「逮捕する!!」
この一言で、彼等の職種が警察だと分かり動揺するコナン達。と同時に頭上に影がかかる……
「あの時とおんなじデッケー鳥だ……」
その言葉に、この場にいるコナン達は空を見上げた。上から照りつける太陽を一部隠し、飛んでいる黒い物体。否逆光により黒く見えているだけで、実際の色は異なる……白いハンググライダーが彼等の頭上を通過した。
コ「白い翼で闇の世界を舞う……怪盗キッドだよ!!」
「「キッド!?」」
遍く大空を、優雅に飛び回る……狙った獲物は逃がさない。神出鬼没で大胆不敵な月下の奇術師……怪盗キッド。キッドは彼等の頭上をお得意のハンググライダーで飛んで行き、深山ビル屋上の悪魔の像の上に降り立った……。
***
快斗side
……運命の悪戯か。何たる偶然、何たる僥倖……!まさかこんな所で会えるとは……否!容易く予測できたことだろう……自分はどこかでこれを期待していた……!
今回、アイツが行きたがっていたレジャーパークのチケットをひょんなことからゲット出来た幸運な俺……しかし、まさかそのチケットが〝曰く付き〟のチケットだったなんて誰が予想出来ただろうか。
今度こそ正真正銘〝デート〟だったからこそ、たまには仕事を休んで息抜きしようと思っていたのに、気づいたら事件に巻き込まれている……思わず肩を落としてしまった。ただでさえ〝怪盗キッド〟の方でも命を狙われているのに、〝黒羽快斗〟の方でも命の危機があるなんてごめんだ……。
ミラクルランドを出て、早速暗号を解いた場所へと向かう。廃墟と化したホテルの中で目出し帽と手袋、ガバメントといった拳銃まで置いてあったのを見つける。……こんな明らさまに残されていると、あの日の事を思い出す。
────── 〝怪盗キッド〟として命を狙われ出した4月4日の出来事を……
次の場所へ向かう前に、少しだけ休んでいた仕事再開した。狙われ出したあの日、お宝を盗み出したが、自分の求めてたパンドラでは無いため、元の持ち主へと返した。しかし、その日を境に何故か執拗に命を狙われていたのだ。
鬱陶しいことこの上ない為、早く解決しなければいけない案件でもあった。何度か侵入し、準備は整っている為、今夜決行するべきか……悩みながら、自分を見張っている警察を遠くから見ていると、その警察の中に見つけた……
普段だったら絶対会いたくない人物……何度も仕事の邪魔をしてくる切れ者の探偵。
ここに居る理由を考えるならば、違う事件の捜査でもしているのか、それとも名探偵達も自分と同じ依頼を受けたか……あの〝白馬探〟が呼ばれているぐらいだ。今の時代、知らないものはいないのではないかというくらい知名度が高い探偵……通称〝眠りの小五郎〟も呼ばれても不思議では無い。
そして〝眠りの小五郎〟がいるならば、そこには絶対……眼鏡をかけた〝小さな名探偵〟がやってくるはず……
────── 己が認めた好敵手に出会えることを密かに望んでいた……
キ「……俺の運もそう悪くはなさそうだな。会いたかったぜ……名探偵……」
俺は警察と揉み合っている名探偵達の頭上を飛び、深山ビルの屋上へと降り立った。態と自分の印象を残すように……
本業とは程遠い探偵業など、素人の真似事であり自分には向いていないことが分かる。憐を助ける為には、やはり優秀な名探偵の力を借りたいところ。
それに名探偵も同じ依頼を受けているなら、名探偵に任せておけば、事件は解決したも同然……俺も安心して仕事に集中出来る。良いタイミングで名探偵と合流出来るように、俺は深山ビルの屋上から再度飛び立ち、ランドマークの方へと飛行を再開した。
***
コナンside
依頼人から提示された暗号を解き、あるホテルに向かった俺達を待ち受けていたのは、警察だった。警察が張り込んでいたのは、突如現れた月下の奇術師、怪盗キッドを捕まえるためだったらしい。だが、奴が現れたのは太陽が頂点で輝く昼間。月の輝く夜こそが奴の本領発揮出来る時間帯にも関わらず、何故そんな昼間に現れたのかは不明だが、そのせいでおっちゃんはキッドの共犯者と誤解され、今に至る。
警察にキッドの共犯者としておっちゃんが誤認逮捕され、神奈川県警察本部へと連行された。神奈川県警の横溝警部達や、怪盗キッド確保に執念を燃やす、捜査二課中森警部、そして遅れてやってきた捜査一課の目暮警部と錚々たる顔ぶれが集まっていた。
横溝警部達がおっちゃんに何故あの場所にいたのか訳を聞き出そうとする。しかし、おっちゃんは頑なに答えない……そのせいもあって余計キッドの共犯者として疑われている。
しかし、こちらも答えるわけにはいかない。例のIDであの依頼人に監視されているからだ。
(正直この状態もかなり不味い……警察に協力を要請していると見なされたら蘭達の命が……)
身動きが取れない俺の元に電話の着信音が響く。
コ「電話かかって来ちゃった!ちょっとゴメンね!!」
警察官達の間をすり抜けて、俺はおっちゃんを残しその場を後にした。
***
依『毛利探偵……いや、工藤くんかな?』
コ『!?』
依『やはり君か……高校生探偵、工藤新一くん……毛利探偵と一緒に君が来ていたんで、ビックリしたよ……』
かかってきた電話は例の依頼人だった。彼は驚きの名前を口にした。
(何故俺の名前を……!?)
────── 極わずかの人間しか知らない俺の本当の名前を……
────── この人は知っているのか……
依『本当は君にも捜査を依頼したかったんだがね……しかし、どうやって連絡をつければいいか分からなかったものでね……』
依『フッ……解決出来なくて、警察に駆け込んだか……』
工藤新一とバレている以上、それに対応するしかなく……俺はトイレに駆け込み、蝶ネクタイ型変声機で自分の声で応答した。
工『いや……駆け込んだ訳じゃない。廃墟になったホテルで毛利探偵が張り込み中の刑事に誤認逮捕……』
依『フッ……正直だな君は……』
工『!?』
(コイツ……知ってたのか、あそこに刑事がいることを……)
こっちの行動は相手に筒抜け……しかも、向かわせた場所に警察がいることも承知の上だった。ますますこの依頼人の素性が気になる所だが、依頼人から求められている答えを提示する。
依『フフ……いいぞ、工藤くん。では第2のヒントだ』
〝夜のカフェテラスへ行ってくれ……〟
依『それがどこだか分かるだろう?君ならね……』
どうやら俺は依頼人の希望する答えを導き出せたらしい。新たなヒントを提示されるが、それよりも最優先に交渉すべきことがある。
工『事件は必ず俺が解決する!!だから、蘭達のIDを外してくれ!!』
こんな脅しをしなくとも解決してほしいなら、普通に依頼をすれば良いはずなのに、何故この依頼人は人質を取ってまでやるのか……
工『おい!聞いているのか……!?』
──────その答えの片鱗が現れる
依『愛する人を……』
工『!?』
依『愛する人を亡くすことがどんなに辛いか……そうならないよう頑張ってくれ……工藤くん……』
────── ガチャッ
コ「……」
最後の意味深な言葉を最後に通話は終了した。
(……何故だ。何故アイツは俺の正体を知っている……?アイツは……アイツは何者なんだ……)
思考を止めないまま、俺は第2のヒントの場所へと向かった。
***
コナンは阿笠を呼び、自分のIDを外せないか調べるよう頼んだ。しかし阿笠の回答は、どうにも出来ないとのこと。分解してみれば何か分かるかもしれないが、万が一それで爆発する可能性もある以上迂闊に手が出せないといったようだった。
また阿笠からパワーアップしてもらったターボエンジン付きスケートボードに乗り、第2のヒント、〝夜のカフェテラス〟の場所はと向かった。夜のカフェテラスといえば、画家の中でも一躍有名なフィンセント・ファン・ゴッホが1888年に描いた、淡いガス灯に照らされたカフェテラスの奥から、馬車が向かって来ている風景画を指している。
そのことから、コナンは推理して日本で最初にガス灯が付けられた馬車道へと向かったのだった。
コ(ここに一体……何があるんだ?)
ヒントで指し示された場所に到着したコナンは辺りを見回す。物陰に隠れて様子を伺っていた時、コナンの肩を急に掴むものがいた。
コ「服部!?」
そこには陽気に笑っている服部平次の姿があった。
平「どや、ちびったか?」
コ「うるせぇ……」
思わぬ場所で出会った友の存在に少し肩の荷がおりるコナン。平次の揶揄うような物言いに素直になれず顔を顰める。平次はコナンの腕に付けられたIDを見て、驚いたように声をあげる。
平「何や工藤、お前もかい……」
コ「……え?」
平次の言葉に同じく驚いて顔を上げたコナン。平次の腕には自分の腕に付けられている物と同じIDが巻かれていた。
コ「じゃあお前も……」
平「あぁ、和葉を人質に取られてしもた。まぁ、本人は何も知らんと呑気にあの遊園地で遊んでるやろけどな……」
蘭達だけでなく、和葉まで人質として捕らえられている状況に、彼等はすぐさま手を組んで行動を共にするようになった。
***
園「……ん?どうしたの?」
蘭「さっきから何か点滅し始めたのよ、このID」
和「あたしのも……」
貴「私もだ……赤く点滅してる?」
憐、蘭、和葉、園子はケーキバイキングの為、ミラクルランドの外へ出ようとしていた。しかし、出口に近づくにつれて、憐、蘭、和葉のIDが何故か赤く点滅し始めた。
蘭「園子、何か知ってる?」
園「私もこんなの初めて見た。出口の係員に聞けば分かるんじゃない?」
蘭達が前を歩く中、一人神妙な顔をして後方を歩いている憐。
貴(何なのこの鳥肌……なんでか分からないけど、凄く怖い。このミラクルランドから出てはいけない気がする。何でこんなに不安なの……?)
いつの間にか立ち止まっていた憐。彼女の不安はこのIDの他に理由があった。
貴(時間かかるって言ってたから難しい依頼なんだろうなって思ってたけど、それでもあれから一向に連絡が来ないのはおかしくない……?)
それは、今も依頼に真っ最中な幼馴染の事だった。ミラクルランドに入場してすぐ、依頼のために、一旦離れた幼馴染から電話がかかってきた。その時の彼が、あまりにも焦った様子で電話をしてきた事から彼女は心配になった。
しかし、彼女の心配を吹き飛ばすように、彼は笑って送り出してくれた……。
貴(……大丈夫かな、快斗。連絡だけでもしてみようかな。やっぱり心配だから……)
鞄から携帯を取り出し、快斗宛にメッセージを入力する。電話にしようかと思ったけど、もし何事もなく真剣に取り組んでいるとしたらかえって迷惑かなと思い、メッセージを送ることにした。
貴(これで良しっ……。もしこの後何も来なかったら、今度こそ電話をかける!アイツの迷惑とかカッコつけたがりのプライドとか知ったこっちゃないわ!)
憐はメッセージを入力後、思いっ切り送信ボタンを押した。ようやく抱えていたモヤモヤが少し減った気がする。後は彼の返信を待つのみ……
貴(電話でも良いし、メッセージでも良い……実は全然解けてないんだっていう泣き言でも良いし、順調ならそれはそれで良いから……とにかく何でも良いから、連絡してよ……快斗……)
雲ひとつない清々しい程の青空を見上げる。1羽の白い鳩が軽やかに飛んでいた。自分の想いも、あの鳩のように飛んで彼の元へと届いて欲しい……。
蘭「憐?どうしたの?」
和「何かあったん?」
園「何で空を見上げてんのよ?早く行くわよー!」
そんな事を思いながら、空を見上げていると、先を歩いていた蘭達が、遠くから憐に声をかけた。
貴「……ごめん、何でもない!今行くね……」
憐は何でもないように笑って、再び足を動かした。
***
憐達が再び、退場ゲートを目指していた頃、コナンと平次は、一悶着ありつつも着々と謎を解いていた。しかし、コナンは自分に提示されたヒントで解けるものは全て解けてしまった事に怪訝な表情を示す。
コ「馬車道でのヒントは恐らくこれで終わり……これだけで何を解けっていうんだ!!」
必死な叫びに、助け舟を出すように平次は答える。
平「ところがまだあるんや……解けてへん、ヒントが……」
コ「何っ!?」
平「俺が出されたヒントはこうや!〝夜のカフェテラスとユー クライ………お前は泣く〟ってな……」
コ「俺達とは違うヒントが出されてたのか」
平「そういうこっちゃ」
手詰まりかと思いきや、平次に出されていた異なるヒントを元に、ひとつずつ紐を解くように推理をしていく。
コ「ユー、クライ……アルファベットだと
平「あぁ、横浜郊外にある横浜海洋大学……ヨコハマオーシャンユニバーシティ……」
コ「残るは
平「俺もそれが分からへんのや……」
分からない謎があったとしても……
コ「……行ってみるっきゃねーな!」
その地に足を運べば、きっと分かるはず……立ち止まるよりも行動しないと時間が勿体ない。タイムリミットは刻一刻と迫っているのだから。
コナンと平次は、次の目的地、横浜海洋大学を目指して歩みを進めるのだった……。
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