探偵たちの鎮魂歌
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
高「お待たせしました……」
暫くミラクルランドの景色を楽しんだ後、再度椅子に座る。すると丁度座ったタイミングで高田さんが配膳ワゴンを押して、戻ってきた。その銀色の配膳ワゴンには、小さな何かが置かれている。
高「これを渡す為に、お嬢さんにも来ていただいたんですよ……」
そう言って高田さんは、私達の前にひとつずつその物を置いた。
貴「これは何ですか?」
私が手に取って尋ねると、高田さんから驚きの言葉が出てくる。
高「それはミラクルランドのフリーパスIDです」
貴「えっ?フリーパス?!」
高「黒羽くん……でしたね。白馬くんの代理で仕事をしている間、お嬢さんにはミラクルランドでたっぷり楽しんでもらおうと思いまして……」
貴「ありがとうございますっ!凄いね快斗!」
私は高田さんの回答に嬉しくなって、IDを持ちながら快斗に呼びかけると、彼は「……そうだな」と間を開けて笑った。彼が奥底で考えていることなど知らずに、私はニコニコとご機嫌だった。
でも一人で行ってもテーマパークってそんなに楽しくないんだよ。やっぱり快斗がいないと……だから私は依頼を引き受けた快斗のお手伝いをするつもりだった。一人より二人……頭の良い快斗には及ばないけど、力になりたい気持ちは大きかった。
貴「あの!私も彼と一緒に依頼を解決するお手伝いをしたいです!ミラクルランドは彼と一緒に依頼を解決した後で楽しみますね」
高「いえ、お嬢さんには是非このミラクルランドを先に堪能して頂きたいので……」
高田さんからまさかの一言……でも私だけミラクルランドで遊ぶなんて忍びないし、何よりどうしても気になって純粋に楽しめない気がする。
快「そうだぞ憐。俺はお前に手伝って欲しくて誘った訳じゃねぇ……。こんなもん、俺一人で十分だっての!」
貴「……でも、もし詰まった時に、一人よりも二人いた方が良くない?」
快「要らねぇよ!良いからお前は先にミラクルランドに行ってこいよ!それで俺が戻ってきたら、オススメのアトラクションとか教えてくれよな」
結局高田さんの言葉と、快斗の力強い言葉で私だけ先にミラクルランドに行くことに……どうしたって彼を置いて自分だけ先に楽しむ事に罪悪感を感じざるを得ないが、なるべくその気持ちが軽くなるように、快斗が快く私をミラクルランドに送り出そうとしている。
……何でこんなに私が行くのを渋ってるのか分かってない。でもこのまま続けても快斗は折れないだろうから仕方なく私が折れた。
高田さんに言われるままに、腕にフリーパスのIDを付ける。快斗も依頼が終わった後にミラクルランドに行く予定だった為、私と同様IDを腕に付けた。
高「このIDは今日一日、ミラクルランドの閉園時間の夜10時まで有効です。食事、飲み物も全て無料なので思う存分お楽しみください」
自分の腕に付けたIDをまじまじと見る。改めて思うが、フリーパスだなんて太っ腹だよね。この依頼の報酬がこのフリーパスなら分からないでもないけど、そうなると先に私だけ行くの、やっぱり良くないんじゃ……
快「……ほーら、早く行った行った!お前がいると集中出来ねぇよ」
快斗が手で追い払うような仕草をする……一瞬、彼の態度にムッとしたけど、多分これは私がミラクルランドに行きやすいようにするための配慮。
貴「……分かったよ。そこまで言うなら先に行くね。でも悩んだり、助けて欲しかったら迷わず電話しなさいよ。私がすぐ助けてあげるから!」
お互い天邪鬼な部分があるから、素直に言えない事が多い。今のだって、ほんとうはもっと素直に言えたらと思うけど、最近はこういうやり取りだって私にとっては楽しい時間で……大切なんだと気づいた。
快「……へいへいー」
貴「もう!!……私は〝快斗と一緒に〟ミラクルランドに来たのよ!楽しむことだって〝一緒〟じゃなきゃ嫌なんだからね!」
快「!!」
気怠げに返事をした彼の表情をやっと崩せた気がする。
貴「……快斗が来るのをずっと待ってるから!スーパースネーク、一緒に乗ろうねっ……!」
微笑んで告げる憐。彼女が何故協力を申し出たのか、やっと理解できた快斗は、笑みを浮かべて得意気に答える。
快「……分かってるよ。約束だ!超スリリングなスーパースネーク、一緒に乗るぞ!」
彼の返答を背に、憐は嬉しそうに応接間の扉から出て行った……─────────
───────────────────────
快斗side
馬鹿だな俺……
貴「もう!!……私は〝快斗と一緒に〟ミラクルランドに来たのよ!楽しむことだって〝一緒〟じゃなきゃ嫌なんだからね!」
誰よりも心優しいコイツが、事情を知ってて一人で行こうとする筈がない……。彼女の性格上、ずっと俺を気にして満足に楽しめないかもしれないが、それでも俺はコイツの楽しんでいる姿を見たかったから……
貴「……快斗が来るのをずっと待ってるから!スーパースネーク、一緒に乗ろうねっ……!」
……ある意味自分の為なのだから、出来れば思う存分楽しんできて欲しい。でも一番は、自分の傍にいて無邪気に笑う憐を見たい……憐と一緒に楽しみたい……たとえ全く同じ思いでなくとも、憐は似たような思いを抱えていた。
内心嬉しくて仕方がなかった。だけど俺は、一流の
快「……分かってるよ。約束だ!超スリリングなスーパースネーク、一緒に乗るぞ!」
今回の俺は〝怪盗キッド〟ではなく〝黒羽快斗〟として、純粋に憐と今日を楽しみたいと思っている……アイツが笑えるなら、どんな事でも乗り越えてみせる。
憐が応接間の扉から出ていく。嬉しそうなアイツの背中を見送った後、突如部屋の中の雰囲気が一気に変わる。
────── ガラガラ
秘書の高田が、手に持っていたリモコンのような物のスイッチを入れた瞬間、景色を楽しんでいた窓に着いているカーテンが自動で閉まっていく。
快「……(何だ?)」
閉まることにより、陽の光は遮られ部屋も自然と暗くなる。辺りが真っ暗になった時、真正面にあった大きなモニターに不可解な人物が映る。
「君が白馬探偵の代わりに、代理で来てくれた黒羽くんだね。まずは来てくれた事に感謝を……ありがとう。私が依頼者です。事情があって顔を公に出来ない無礼をお許しください……」
自分が白馬に依頼をした物だと画面の中の人物が語る。彼の語る通り、姿は出ているものの、部屋の中が暗く顔の詳細が分からないようになっていた。
快「礼には及ばないぜ。こっちもアンタのお陰で、良い思いさせて貰ってるからな」
幼馴染の彼女の不意打ちの言葉で、表情を崩した快斗だが、今回の事態には余裕そうな態度で迎える。だが、徐々にその強気も崩れていく事になる。
依「……今日君達を呼んだのは、ある事件を解決して欲しいからだ」
そう言って彼は流暢に説明を始めた。真剣な顔付きで聞いている中、切り替わりある映像が映し出される。
快「誰だ……??」
映像の中には、顎髭を生やした男性が無機質なコンクリートの部屋の中で座っていた。見知らぬ男が映し出され、密かに動揺する快斗。しかし、そんな疑問も予想していたかのように、依頼人と呼ばれる男は説明を始めた。
依「もしかしたら白馬探偵なら知っていたかもしれないな。……その反応を見るに君は探偵では無いのだろう?今君の前に映っているのは、竜探偵という男だ」
快(また探偵かよ……)
快斗は探偵と聞いて顔を顰めた。ミステリー好きで、ホームズなど探偵好きな憐ならともかく、仕事上散々邪魔をされてきた存在と同業者ならば、苦い顔をしてしまうのも無理はない。
しかし、そんな表情ができたのもつかの間……どうやらこの竜探偵は依頼人に頼まれて、事件に関する調査報告書を提出したのにも関わらず、あんな部屋に閉じ込められているらしい。
依「竜探偵……貴方は事件を解決できなかった」
竜「何だと?」
依「無能な探偵は生きている資格がない……」
そう言って依頼人は自身の手元にあるパソコンのEnterキーを押した。
────── カチッ……ピッ
すると、竜の腕に着いていたIDの時計が、カウントダウンを始めた。
快(あれは……俺達が貰ったIDと同じ物か?!)
思わず自分の腕に付いているIDに視線を向けた快斗。段々と表情が険しくなっていく。そんな彼の葛藤を置いて、話は先へと進んでいく。
竜「クソッ!どうなってんだこりゃ!!」
依「大丈夫。痛くありません……一瞬で楽になる……」
竜「ま、まさか茂木や槍田が姿を消したのも……」
依「さようなら……竜探偵……」
竜の付けたIDのカウントダウンは0を示し、白い閃光と彼の悲鳴と爆音が響き渡る。やがて映像は砂嵐となり、何も映し出さなくなった。
快(おいおい!もしかしてこのIDに仕込まれてるのって……!?)
依「このIDにはプラスチック爆弾が組み込まれている。竜探偵が付けていたミラクルランドIDと同様にね……」
快「(マジかよ……!?)あの竜って探偵が呟いた茂木や槍田って、もしかして……」
依「えぇ……世間では名探偵と持て囃された人達だね。彼らも私の貴重な時間を無駄にした愚か者だった……」
快「くっ……(やっぱりあの時、洋館に集められた探偵達の内の二人か!)」
何処かで聞き覚えがあると思えば、前に自分の名を騙って集められた探偵達の事件があった。その時に集められた探偵達の内の二人が茂木と槍田だった。探偵達の巣窟という自ら危険地帯に飛び込むなど自殺行為に等しい……しかし、それでも彼は行かなければならなかった。自分の名を勝手に使われているとならば、理由を確かめる他ない。だから眠りの毛利小五郎に変装し、本物と入れ替わって赴いたら一人の探偵が殺害されるアクシデントに見舞われた。あの時自分は、小さな名探偵にヘリコプターで追い詰められて絶体絶命状態だったが、この事件の犯人、安楽椅子探偵と呼ばれる老女の千間によって、何とか逃げられた苦々しい思いをした事件である。
あの時は本物の白馬も居たが、まさかその時の優秀な探偵二人が消息を絶っていたとは……
依「君に与えられた時間は今夜10時まで……それまでにある事件の真相を掴んで欲しい……もし時間までに解決出来なければ、君のIDも爆発して、竜探偵と同じ運命になる……」
快「何っ!?」
咄嗟に自分のIDに触った快斗に対して、穏やかに行動を止める依頼人と名乗る謎の男。彼が言うには、そのIDはちょっとやそっとの事で外せるIDではない上に、依頼人の男が解除しないうちにベルトを切ったり、外してしまえば、すぐさま爆発してしまう設計だった。
快「そんな卑怯な手を使わなくとも、名探偵と呼ばれる探偵達なら事件を解決したはずだ」
卑劣なやり方に怒りを覚える快斗だが、依頼人の男は意味深な笑いをこぼすだけ。
依「いいや……現に竜探偵が口にしていた茂木探偵も槍田探偵も、そして竜探偵自身もそれなりの探偵達にも関わらず、彼らは皆消息をたっている……その意味が君には分かるんじゃないのか?」
快「……チッ」
先程映像で見せられた衝撃的な光景を思い出し、口を噤む。ふとある存在が、彼の頭の中を過ぎった。
快「!!……憐!!……憐のIDは?!」
依「彼女の付けたIDも、君のものとほぼ同じものだよ」
快「……〝ほぼ〟って何だよ」
微妙に異なる表現の言葉にも、欠かさず気づく快斗の頭の良さに、依頼人の男も舌を巻いた。
依「良い点に気がついたね。彼女のIDは君のとは違って1つ機能が追加されていてね……」
画面にミラクルランドの見取り図を出して、丁寧に機能の違いを説明する。このミラクルランドには、縁を縁取るようにいくつかのセンサーが設置されている。憐のIDがミラクルランドに入ると、センサーが感知してIDの起爆装置がONになり、ミラクルランドを出ようと、再びセンサーの間を通ると同時に爆発すると依頼人の男は語った。
依「彼女の分までいちいち追跡するのは面倒なんでね……こうさせて貰ったよ」
快「クソッ!……」
冷静にならなければいけない状況なのは分かっている……だが、いても立ってもいられず彼女の安否確認の為、携帯を握りしめ窓の方へと走り出した。
窓は開いており、バルコニー出た快斗は、溢れる人混みの中を細かく探していく。相手を呼び出す音だけが流れる中、暫くしてその音が止んだ。
貴「もしもし〜!どうしたの快斗?もしかして、早速詰まった?」
快「憐!!今お前、何処にいる?!」
貴「えっ?!どうしたのよ、そんな大声出して……」
快「良いから!何処にいんだよ!!」
貴「えぇっ?!何処って……」
耳に聞こえてきた第一声が、焦ったような声だった為驚いた憐。彼女は携帯を握りしめ、背後を振り返り恐る恐る答えた。
貴「ミラクルランドの中だけど……」
彼女が見上げた方角は、ミラクルランドのゲートを超えた先のレッド・キャッスルだ。彼女は入場と同時に携帯が鳴った事に気がついていた。だが、後ろが詰まると困らせてしまうことを見越して入場後に、携帯を手に取り、今に至る……。
携帯越しから伝わる尋常ではない気迫に、途端に不安が募る憐は小声で「大丈夫?何かあったの……?」と快斗に答えを促した。
快「……悪りい。何でもねぇ!それより依頼の件だけど、ちょっと面倒なことになってよ〜……どうも早く終わりそうにないから、ミラクルランド、ちゃんと楽しんどけよ!」
貴「え?そうなの?お昼も難しい感じ〜?」
快「無理だろうな……」
……快斗も分かってしまった。携帯越しに何かを悟って不安を募らせていることに。彼女に余計な心配をさせたくなかった快斗は、憐に真実を伝えない選択肢をとった。今の状況ははっきり言って絶望だ……。白馬の依頼を引き受けるのではなかったと軽く後悔をした。だけど、未来まででも決まった訳じゃない……まだ未来は変えられる。
……静かに胸の内で決意する。
快「正直、何時終わるか分からねぇ。でも必ずお前の元に行くから!だから……待っててくれ!」
快(例え、どんなに絶望的な状況でも、俺は決して諦めたりしねぇ……絶対憐を助けてみせる)
彼の密かな覚悟など、彼女は知る由もない……でも、ただならぬ雰囲気は感じ取った。テーマパークに行くだけなのに、大袈裟だなんて言わなかった。まるで命をかけて、その依頼に挑もうとしているように憐には聞こえた。
でも結局の所、詳細は分からない上に快斗の様子から自分に話す気もないのだろう……それを分かっていた憐は少し黙った後、穏やかに答えた。
貴「……心配しないで!だって約束したでしょ?」
快「!!」
貴「二人でスーパースネーク乗るんでしょ?ずっと待ってるから!頑張ってね……」
快「憐……あぁ!」
彼女の声は自然と己を鼓舞する力となる。憐の為にも死ぬ訳にはいかない……やる前から気が滅入っててどうする。憐の返答に強気に返事を返した快斗は、憐との通話を切った。
依頼人の元へと戻る前に、自分の表情を正す。常に平静を保ち、己の心の内を相手に悟らせるな。取り乱してバルコニーに出て行った快斗が再び広間へと戻ってきた時、依頼人は感嘆の息を漏らす。
依「ほぅ……もう少し取り乱すと思っていたが、こんなにも早く持ち直すとはな。彼女は君にとって、とても大切な人間なのだろう……?」
挑発的な言葉を意に介さず、快斗はただ冷静に「で、俺は何を解決すれば良いんだ?」と疑問を提示した。
依「今夜10時迄に事件を解決し、真犯人を捜し出してくれれば、好きなだけ報酬を差し上げよう。しかし、時間内に解決出来なければそのIDを爆発させる。君の動きは全てモニターされています。IDにGPSが組み込まれていてね。警察に駆け込んでも無駄だよ」
快「……なるほどな。もし俺が警察に駆け込みでもしたら、ドカンッ……ことか」
依「そういう事だ。さぁ、これ以上の長話は時間が無くなるだけだ。第1のヒントを、一度しか言わないからよく聞いてくれ……」
並び立てる言葉は全て意味をなさない……一見聞くとただの音にしか聞こえないもの……俗に言う暗号なのだろう。
快「何がヒントだよ!何もヒントじゃねぇし、第1解いて欲しいならもう少し簡単なヒント出せよ!」
依「タイムリミットは13時間。さぁ、謎を解決して貰おうか……私の為に……そして君の愛する人の為にね……」
快「無視かよ!……(やっぱこれ以上のヒントは無理か……)」
室内の時計が鐘を鳴らす。時刻は9時を指していた。依頼人はヒントと称して暗号文を残した後、画面が何も映し出さなくなった為、姿が見えなくなった。その後高田から依頼人とのホットラインとして、携帯を貸与される。と言っても、快斗側からかけられるものではなく、悪魔で依頼人側から連絡を取りたい時のみ使用できるというもの。
高「事件が解決できましたら、この携帯に入っている私の番号へかけた後、こちらへお戻りください。じっくり、その真相をお聞きしましょう……」
高田の言葉に対して、快斗は不敵な笑みを浮かべて強気に答えた。
快「アンタらの吠え面かく瞬間が楽しみだぜ」
受け取った携帯を片手に、応接間から出て行った。
────── これは毛利探偵一行がミラクルランドに訪れる1時間前に起こった出来事である
