探偵たちの鎮魂歌
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青い空、太陽の陽射しが容赦なく照りつける今日……私達は今流行りのテーマパーク、何とミラクルランドにやってきています!
貴「やっと着いたー!!潮の匂いが気持ち良い……うわぁ〜おっきなホテル〜……あっ!あの海に出てるジェットコースターが噂のスーパースネイクかな?すっごく楽しみ〜っ!」
目の前にはこのミラクルランドに隣接する大きなお城……通称レッド・キャッスルと呼ばれるホテルがある。そしてそのホテルの先にミラクルランドの入口があるのだ。
ホテルも気になるけど、早くミラクルランドに行きたい!都民の私達に馴染みのあるテーマパークと言ったらトロピカルランドだけど、ミラクルランドはトロピカルランドとどう違うのか気になる!以前青子と玲於のデート場所が、ここミラクルランドだったらしい。帰ってきた青子に感想を聞いてみたら、瞳をキラキラさせて「すっごく楽しかった!」って言ってたから、私もいつか行きたいなって思ってた。でもそれが今日叶ったの……
貴「いつか行けたらなって思ってたから、本当に嬉しい!……ありがとう快斗!」
快「っ……へへ!大したことねぇよ!」
快斗のおかげでね!
***
快『なぁ、憐……どっちが良い?』
貴『握りこぶしが二つ……ってことは片方が当たりで片方がハズレってことでしょ?当たりは何?もしかしてお菓子??』
快『さぁな〜……それは開けてみてのお楽しみだ!ってことでお前ならどっちを選ぶ……?』
なんて事ない普通のお遊び。小さい頃からよく快斗とやっていた手遊びだ。両方の手を握りこぶしにして差し出し、どっちに当たりが入っているか私に当てさせていた。あんまり勝率は良くないけど、アイツは優しいから大抵当たりをくれる……そして大体はそれはお菓子だ。……意外にもそれは高校生になっても続いている。
貴(……こういう所が昔のまま変わらないって言われるのよね。でも仕方ないじゃん……だって楽しいんだもん)
よく快斗に「オメーはガキの頃と変わらねぇな」って言われるけど、私にまだその手遊びをやってくる快斗だってお互い様だと思うけどな……と思いつつも、やっぱり楽しいからついやっちゃうのよね。
貴『うーん……悩むけど、今の私は何となくこっちの方にお菓子がある気がするのよね……っということで右手!』
彼の顔を伺うと、相変わらず勝気な笑みを浮かべているだけ。さすが盗一さんの息子なだけある。何考えてるのか、全然分からない……。
貴『……もしかして違うの?なら左……?』
快『はははっ!やっぱりお前は悩むよな〜やり甲斐があるぜ!』
貴『あのねぇ……!だって分かんないだもん!しょうがないじゃない!ねぇ、早く教えてよ〜どっちが当たりなの?』
私が悩んでる様子を見て、今度は可笑しそうに、声を上げて笑う快斗。もうー!早く教えてよね!そう急かすと、彼は「しょうがねぇな〜……よく見てろよ!ほいっ!」と右手を開いた。
彼の右手の中から、白く細長い封筒が出てきた。
貴『?何これ……??』
快『開けてみろよ!』
快斗から渡された封筒をよく観察する。正直お菓子だと思ってたから、全く予想が出来ていない。封筒ということは誰かからの手紙?そう予想し、中身を確認すると、私の目に飛び込んできたのは派手派手しい2枚の紙のチケットだった……内容を見て、勢い良く顔を上げる。
貴『こ、これ……もしかして、ミラクルランドのチケットなの……??』
震える声で快斗に問いかける。私の様子を見て、イタズラが成功したように更に笑みを深くする快斗。……快斗の笑みを見て、これは本物のチケットだと確信する。
快『まぁ面倒な依頼付きだが、そんなもんこの俺にかかればちょちょいのちょいで終わる!……だから行こうぜ……お前が行きたがってたミラクルランドに……!』
……勿論、密かに行きたいと願っていたミラクルランドに行くことが出来るだけでじゅうぶん嬉しい。だけど何より私が嬉しいと思ったのは……
────── 快斗が私の事を気にかけてくれたこと、彼と一緒にミラクルランドに行けること……
────── それがとても嬉しかった……!
貴『っ……うんっ!行きたい!ありがとう!快斗っ……!』
***
そういう経緯があって、今に至る。私がとてもはしゃいでしまうのもしょうがないと思うんだよね。
それにこのミラクルランドの売りはなんと言っても、ジェットコースター!まるで大きな蛇のような見た目をしていることから付けられた名前が〝スーパースネイク〟!このジェットコースターは速さ、高さ、そして長さが絶妙に良い!レールをずっと見てみると、パークの外へ続いて海の上を通っている。パークに収まらないジェットコースターって、凄くワクワクするよね!
快「……分かったからあまりはしゃぎすぎるなよ!オメーは調子に乗るとすぐバテっからな……」
貴「そんな事ないもん!大丈夫だよ!そこはほら、今迄の経験を活かして、体力配分頑張るからさ!ちゃんと最後まで保たせるからね……だって最後まで快斗と楽しみたいからっ!」
快斗からのお小言も気にしない……まぁそう言われても仕方の無い部分もある。小さい頃から私は、楽しいことがあれば青子と同じようにはしゃぎまくるけど、青子程体力もなくすぐバテてしまうことが多々あった。それを知っているから快斗は注意を促すけれど、あの頃の私とは違う……今は高校生になったんだし、体力配分もちゃんとできるから!
貴(それに……二人っきりなんだから……相変わらずアイツの好きな人は分からないけれど……せっかく誘ってくれたんだから、少しぐらい楽しんだって良いよね……?)
キッド疑惑を晴らす為に、思惑があって誘ったトロピカルランドデートとは訳が違う……
快斗の友達の探偵くんの依頼付きではあるが、これはまさに……
貴(純粋にデートよね……ふふっ!嬉しいな)
憐が密かに喜んでいると、彼女の様子を見て頬を緩ませる少年が一人……
快(ったく……憐の奴、ちゃんと分かってんのかよ……。まぁ、いいか……はしゃぐ気持ちも分からんでもないし、コイツのこういう姿が見られるなら、頑張った甲斐があったってもんだ)
口では小言ばかりになってしまうけど、それもひとえに彼女の為。なんてったってここは初めて訪れたミラクルランド。自分がしっかりしていないと、彼女は絶対迷子になる。
快「見上げてないで、さっさと行くぞ〜。白馬宛の依頼もちゃっちゃっとこなさなきゃいけねぇからな」
そう予感出来てしまう程、付き合いが長く危機感が働いた快斗は、はぐれないように彼女に注意を促し、先にホテルの中へと入っていく……足下に落ちていた紙吹雪を横目に見ながら……。
貴「ちょ、ちょっと待ってよ!」
快斗に置いていかれないように、小走りで後を追う憐だった……。
────────────────────────
高「白馬探偵の代理の方ですか?」
ホテルの中へ入ると、ロビーに立っていた男性が声をかけてきた。
高「私依頼人の秘書をしております、高田と申します。お待ちしておりました。早速ですが、こちらへどうぞ……」
秘書の高田さんに連れられて、私達は応接間へと案内される。その内装は豪華で、真ん中には長いテーブルと椅子がそれぞれ置いてある。奥には大きな窓が並んでいた。
高田さんから椅子に座って待つように言われて、私達は今横に並んで椅子に座って、依頼人を待っている。
貴「そういえばさ、私達がこのミラクルランドに来れた理由って、その白馬くんっていう高校生探偵くんの依頼のお陰なんだよね」
快「まぁな……白馬宛に事件を解決して欲しいって依頼が届いたんだよ。なのに白馬の野郎……ロンドンに戻るせいで自分が受けられないからって、勝手に俺を代理にしてやがったんだよ」
貴「そ、そうなんだ……」
腕を組んで嫌そうに顔を顰めた。今の言い方と表情を察するに快斗と噂の探偵くんは仲が良くないらしい。
私達がこのミラクルランドに来た理由は、快斗のクラスメイトの探偵くんにあった。工藤くんや服部くんの他に、高校生探偵がいるらしい……名前は白馬探くん。彼は途中で快斗達のいる江古田高校に転校してきた高校生。普段イギリス留学しているらしく海外をメインに依頼を受けているらしい。偶に日本に返ってきて、学業に励みながら依頼もこなしているという。
それに彼の留学先、イギリスと言えばあのシャーロック・ホームズやポワロと言った数々の有名な探偵達が生まれた聖地。探偵好きなら一度は訪れてみたい場所だ。
貴「でもいいな……イギリスに留学してるなんてて……。あのホームズやポワロの生まれた国よ!羨ましい……」
快「そういや憐はホームズ好きだったな。……まぁ、あのヘボ探偵も、シャーロキアンだけど……」
貴「そうなんだっ〜!あと他に青子から聞いてるのは、顔がかっこよくて、紳士で頭も良いから女の子達に大人気だって言ってたね」
快「ケッ!なーにが女子に大人気だよ!わざわざ事件現場にホームズの格好でやってきては、毎度毎度俺……じゃなかった。キッドの仕事を邪魔する、気障ったらしくていけ好かねー奴だぞ!俺は大嫌いだねあんな奴!」
貴「言いたい放題ね💧」
あまりにも酷い言い草に、白馬くんと快斗の仲を心配してしまった。そんなに嫌いだなんて、余程相性が悪いのか、それとも快斗にとって許せない事でもあったのかな?……快斗がキッドファンだから、キッドを追いかける白馬くんは苦手とか?
貴(でも珍しいな。ムードメーカーな快斗がここまで嫌うだなんて……)
私の幼馴染は、話も上手く手品も天才的に上手いから、仲良くない人なんていなかった。少なくとも私の知る中学までは……。でも流石の快斗でも馬が合わない人いるんだなって密かに思った。
貴「話聞いてる分には私、その人と仲良くなれそうな気がする……同じシャーロキアンなら話も合うだろうし、会ってみたいな……白馬くんに……」
何となくそう思っただけ……。共通の好きな物、趣味があると人は親近感を覚え、距離が縮まりやすい。この前読んだ心理学の本にそんな事書いてあったようなと軽い気持ちで呟いたら、快斗が不機嫌そうに答えた。
快「はぁ〜っ?!マジかよ!?趣味悪ぃ〜」
貴「ちょっと!自分が気にくわないからってそんな言い方……」
快「言っとくが、俺はアイツを紹介なんてしねぇからな!兎に角!あんなヘボ探偵の事は忘れて……」
貴「忘れてって……アンタね……」
忘れられる訳ないでしょ。元はと言えば白馬くん宛に来た依頼なのに。私の呆れた視線も気にせず、快斗は立ち上がり大きな窓へと近づく。
快「ほら見てみろよ!ここからミラクルランドが一望出来るぜ!」
笑顔で窓の外を指さす彼を見て、自然と笑みが零れた。秘書の高田さんには座って待っているよう言われたから、本当は大人しく座っていた方が良いんだろうけど、子どものように無邪気に笑っている快斗を見たら、体は無意識に彼の方へ動く。
貴「本当だぁ……良い眺めだね」
彼の隣に並んだ私は笑顔でそう答えた。暫く私達は秘書の高田さんが来るまで、ミラクルランドの景色を楽しんでいた。
