探偵たちの鎮魂歌
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────── 江古田高校
キーンコーンカーンコーン
「やっと授業終わったね〜もうお腹ペコペコだよ」
「なら早く買いに行こうよ!早くしないと売り切れちゃうから」
「うん行こ行こ!」
午前最後の授業の終わりを知らせるチャイムが校内全体に響き渡る。一時的に学業から解放された生徒達は、お昼時の為それぞれ食事の準備をし始めていた。
そんな生徒達が賑わう中、青子と恵子はそれぞれ持参してきた弁当を広げ、楽しそうな声をあげる。話の内容は若者に人気な恋愛話について。とりわけ仲の良い友人の恋愛話は、話の中心になりやすい。
恵「そういえば青子、前に玲於くんとデートに行くって言ってたじゃない?どうだったの〜?」
青「すっごく楽しかったよー!」
弁当箱を開けて、パクパク食べながら答える青子とその器用さに笑いが零れる恵子。
恵「へぇ〜良かったわね!確かテーマパークに行ったのよね?トロピカルランド?」
青「違うよ〜トロピカルランドじゃなくて……あれ?名前なんだったっけ?」
恵「何で忘れてんのよ💧」
デートが楽しかった事も、どんな所に行って何をしたのかも覚えているのに、肝心のデート場所の名前をど忘れした青子は腕を組んで必死に思い出そうとする。しかし、全然これといって全く思い出せないので、近くで食べていた玲於達に話しかけた。
青「ねぇ玲於〜!この前二人で行ったテーマパークの名前って何だったっけ?横浜にあって、凄く大きなジェットコースターがあったところなんだけど……」
玲「この前行ったテーマパーク?横浜にあって、ジェットコースターが大きな所って言ったら……ミラクルランドだね」
青「あっ……そう!ミラクルランドだったね。ありがとう玲於!」
玲「どういたしまして」
青「恵子、ミラクルランドだよ!」
恵「はいはい、聞こえてたわよ」
玲於のお陰で答えが分かった青子は恵子にそう告げる。そして詳しく青子が恵子に説明している頃、クスッと微笑んだ玲於は自分も昼食を再開する。その様子をジーッと見ていた人間が一人……
玲「(そんなに見られると食べづらいんだけどな……)で、どうかした?快くん」
玲於の様子をジト目で見ていたのは、同じく玲於と一緒に弁当を食していた快斗。彼は玲於が青子と話している内容について、ボーッと聞いていたのだ。特に深い意味はなく、ただ単純に……想い人とデートと称してレジャーパークに行ける親友が羨ましいだなんて微塵も思っていない……。
快「別に……ミラクルランドっつったら、今流行りのレジャーパークだよな〜……最近青子との仲も順調で、調子良いよな〜玲於くんは!……」
これっぽっちも気にしてはいないと思いつつも、羨む気持ちがダダ漏れな快斗。恨めしさも込めて、揶揄い始める快斗に対して、玲於は苦笑いを零す。自分達もお互いの気持ちが分かるまで、それなりに年月がかかったが、彼等はそれ以上だ。でも僕からも言わせて欲しい……
玲「君がもう少し素直になれば、姉さんなんてイチコロなのにな〜」
快「!?……アイツは関係ねぇよ!!」
姉さんとの関係をつつくといつもこれだ。頬を染めて、プイッと顔を逸らす快くんに僕はニヤニヤしながら言い放つ。
玲「だって顔に書いてあるよ?……僕と青ちゃんの関係性が羨ましいって……。ポーカーフェイスが上手い快くんでも姉さんの事となるとムキになったり、目元が緩んだり、結構分かるからね……」
快「あのなぁ!……」
玲「僕はね、君と姉さんの幸せを心から願ってる……」
快「!!」
玲「僕だけじゃない。青ちゃんだってそうだよ。僕達は誰よりも近くで、君達を見てきてるんだから……」
穏やかな顔で彼はそう告げた。誰よりも近くで二人を見守っているからこそ、幸せになって欲しいと願う気持ちは人一倍強い。それが分かってしまったから、快斗はこれ以上何も言えず「ったく……」と後頭部をガシガシ搔いた。
玲「姉さんが一番信頼しているのは君だ……。弟の僕から見ても分かる……君だけは特別なんだよ快くん……」
身内から太鼓判押されるって結構自信になると思う……親友の背中を押せたと思った。
快「……分かってるよ。アイツの中で俺が他の誰とも違う位置にいるってことも……それがただの幼馴染の位置だってことも……。でも、俺はまだアイツには伝えられない……少なくとも親父の事を解決する迄は……」
玲「!!……快くん」
……君の背中を押せたと思ったのに。そんな苦しい顔をさせるつもりなんてなかった……。後悔が募る……
玲(はぁ……姉さんも快くんも見事にすれ違ってる。それに盗一さんの事……パンドラを壊す迄は……少なくともそれまでは姉さんには想いを告げないつもりなの?姉さんの事を想っての判断だと思うけど……)」
────── 快くん……君は本当にそれで良いの……?
玲於の心配そうな視線に気づき、敢えて顔を逸らす快斗。明るげな雰囲気は無くなり、暫く静寂が場を支配する……青子達の楽しげな声を背景に、どう切り出そうか玲於が悩んでいた時だった。玲於が座っている席の近くに新たに椅子が置かれた。
?「おやおや……どうしました?普段の君達なら、もっと楽しげなランチタイムを過ごしているでしょう。今日はとても静かですね」
その人物はそう言って、優雅に椅子に座り、足を組んで声をかけてきた。
