戦慄の楽譜
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あれから私と快斗は目的地に辿り着く迄の間、談笑しながら移動していた。何度か彼に、今日の目的地は何処なのか、何をするのか聞いたけど、やっぱりはぐらかされて終わる。でも少し違ったのは、最後に放った言葉……
快「お前は今日最高の時間を過ごし、感動のあまり歓喜の涙を流す……そして俺に感謝するだろうな……」
自信満々に告げる彼を見て、更に期待値が上がったのは必然だろう。私が感動して泣く程のもの……一体快斗は何を考えているのか。私は「それならすっごく期待しちゃうからね」と素直に彼に告げた。
あれから一時間程経ち、ある建物の前へと辿り着く。
快「着いたぜ」
貴「ここは……?」
快「西多摩市の音楽の森、堂本ホールだ」
貴「音楽の森、堂本ホールって……じゃあまさか今日の目的って……」
快「この堂本ホールで開かれるコンサートを観賞する事だ」
そう言って快斗は私に詳しい説明をしてくれた。このホールは、つい最近爆破された建物の代わりに建設されたもの。元は有名なピアニストして名を馳せていたが突如オルガニストに転向した堂本一輝さんのホールらしい。そのホールがこの西多摩市音楽の森にあるこの堂本ホールなのだという。
(堂本ホールって言えば確か……)
───────── 回想
快斗から誘われた次の日
園『体調不良でリハーサルは行けなかったけど、本番なら行けるでしょ?来週の火曜日に堂本ホールのこけら落としのコンサートがあんのよ!蘭も行くし、憐も行きましょうよ!』
貴『……ごめんね。その日、別の人と約束があるから参加が難しいかな』
園『え〜〜?!この日も駄目なの?!……しょうがないわね〜。じゃあその約束してる人と何すんのよ……?』
貴『そ、それは……分からないの……』
園『えっ?分からないってどういう事よ?』
貴『私も上手く説明出来ないんだけど、兎に角この日は難しいの……ごめんね、園子』
────────────────────────
あの夜にかかってきた園子からの電話。来週の火曜日にこけら落としのコンサートに行こうというもの。事前にリハーサルは行けると話していたけど体調不良で行けず、本番ならと再度誘ってくれたのだが本番の日も快斗との予定があり、断ることとなった。しかし、この時も快斗からどんな用事なのか教えて貰えず、私自身分からなかったのだ。説明したくても出来る状態ではなく、だから園子にそのまま伝えた訳だが、納得していない様子だった。
結局あの子達の歌唱指導の時に文句を言われたわけだけど……でもまさか快斗の誘いが、園子も誘ってくれていたこの堂本ホールで行われるコンサートだったなんて……偶然って凄い。
貴「まさかこの堂本ホールのコンサートだったなんてね……」
快「なんだ、知ってたのか」
貴「……そうね。快斗に誘われた次の日くらいだったかな。友達からこのコンサートに行かないかって誘われてたの」
快「?!……その友達って……」
貴「よく一緒にいるクラスメイトの子だよ。その子の親が建設会社もやってて、その口利きでリハーサルと本公演を誘われてたんだけどリハーサルの日は、私が風邪拗らせてて行けなかったし、本番の日は先に快斗に誘われてたから断ったんだよね。でもまさか友達と快斗が同じコンサートに誘ってくれてたなんて……偶然って凄いよね」
快「そ、そうだなっ……(確かここを建てた建設会社って鈴木建設だったよな……)」
快斗は憐を誘った友達が誰なのかすぐに理解し、苦笑した。憐の友達で、自分の口利きで一般人をゲネプロ見学させる事が出来る程の人物、そしてこの堂本ホールの建設に関わっていたのは鈴木建設という名前の建設会社……これらに当てはまるのは1人しかいない。
快(あのお嬢様に先越されてたら危なかったな……)
日本が誇る有名な鈴木財閥のご令嬢、鈴木園子から誘われていた憐。その誘いの前に自分から誘っていた事、目的が不明瞭のままでも誘いにのってくれたこと……快斗は隣で笑っている彼女に感謝した。
貴「それにしても、快斗もこのコンサートに関心があったなんてね」
快「まぁな〜……俺だってそれなりに芸術や音楽は嗜んでんだよ」
貴「……なるほどね。確か前の……
彼女の疑問に、彼は優しい眼差しで綻びながら答えた。
快「────── 教えなくともお前ならきっと分かると思うぜ。俺が何故憐をこのコンサートに誘ったのか、その訳がな……」
そう言って快斗は堂本ホールを静かに見上げた。
────────────────────────
ザワ……ザワ……
コンサートの開演時間が迫る頃、蘭達はバルコニー席に座りその時を待っていた。
園「やっぱり来なかったね新一くん……」
蘭「うん。それよりコナンくんどうしちゃったんだろう……もう始まるのに……」
バルコニー席は全部で10席あり、それぞれ蘭、園子、小五郎、阿笠博士、哀、歩美、光彦、元太、現在所在地が分からないコナン含め9席が埋められていた。本来この最後の1席は神崎憐用に用意していた。少年探偵団達を誘う前に園子は誘っていたが、彼女に断られてしまった為それならと子ども達を呼ぶことにした。同時進行で工藤新一を誘うように蘭に伝え、蘭も新一を誘っていたが結局彼が来ることはなかった。
彼が来なかったよりも、今現時点で行方が分からないコナンの心配をしていた。
光「本当にどこ行っちゃったんでしょうコナンくん……」
歩「うん……でもコナンくんなら大丈夫だよ!歩美、信じてるもん!!」
歩美と光彦も心配そうな表情を見せるが、歩美はすぐに笑顔で断言する。例えそばにいなくとも、自分のヒーローは絶対に大丈夫だと……コナンに対する信頼度が高いからこそ少女は笑顔で断言したのだ。歩美の様子を見て光彦も「そうですね!コナンくんが僕達を信頼してくれたように……僕達も……」と次第に笑顔を取り戻す。
歩(大丈夫……コナンくんならきっと……)
歩「あっ!……」
光「歩美ちゃん?どうかしましたか?」
声を上げた歩美に光彦が問いかける。すると歩美は席を立ち上がって身を乗り出すように前に出た。
蘭「歩美ちゃん!危ないから椅子に座ろう?」
園「そうよ!このままだと落ちて怪我するから離れなよ!」
下に落ちないよう手摺はあるものの、このままだと危険だと注意をする蘭と園子。しかし、そんな注意も歩美には届いておらず熱心に階下を見つめていた。そしてぽつりと呟いた……。
歩「……もしかして憐お姉さん?」
歩美の一言に蘭達は驚きの声をあげる。
蘭「えっ?憐……?憐がここに来てるの?」
園「どういう事?!憐来てるの?!」
光「歩美ちゃん、本当ですか?!」
歩「……うん。ほら、あれ……」
少女が指を指した方向に蘭達も目を向ける。そこには長い髪を緩く巻き、シックなワンピースながらも人目を惹く女性が歩いていた。その女性は前にいた男性の後に続き、中央部分にある座席に腰掛け、隣の男性と弾んだ様子で話していた。確かにあの女性は憐なのだと蘭達も確信した。
光「ほんとだ!憐お姉さんです!しかも隣に居る男の人……この前憐お姉さんと一緒にいた人ですよね?!」
蘭/園「「えっ?!?!」」
光彦の言葉に再度2人は目を見張って確認する。自分達の位置と彼らの位置は離れている為、鮮明に見えているわけではないが、彼女の前を歩き座席まで先導していた男性、今は憐の隣に腰掛けて楽しそうに話している。その容姿を見て2人は驚いた……自分達のよく知る名探偵に容姿が瓜二つなのだ。
────── 以前にも見かけた憐の幼馴染の男の子……憐の好きな人……
園「憐来てたのね……そっか!私が誘う前に憐は幼馴染くんに誘われてたから断ったのね!でもなら何で教えてくれなかったのよ〜。私達がここに来てるって知ってたはずなのに〜……」
蘭「でも園子……憐から自分でも分からないけどこの日は難しいって言われて断られたんじゃなかった?」
園「……そうね。そういえばそんなこと言ってたわ!」
蘭「……もしかしたら憐は、この日に何処か行こうと詳細を知らされずに誘われてたんじゃない?……」
園「えぇっ?!」
驚きを隠せない園子の隣で蘭はそっと頷いて微笑んだ。
蘭「多分ね……もしかしたら今日初めて分かったんじゃないかな?憐から話聞いてると悪戯好きでよく人を驚かせてるって言うし……事情を知らさないで憐を誘ったのよ。そして憐は誘った相手が自分の好きな人だったから、誘いにのったんだよきっと……だから園子に事情を聞かれても説明できなかったのよ。だって知らされてないんだから……」
蘭の説明を聞いてようやく理解を示した園子。彼女は事情はともかく誘われた時、誘った相手によって行くかどうかを決めている事が分かった。
園「なるほどね〜……あの子、この前の飛行船に誘った時も半ば強制的だったのに、二つ返事でOKしたのよね……なーんだ、私達の事も大好きなんじゃない〜!」
蘭「ふふふっ!……それに恥ずかしがり屋の憐は照れ臭くて言えなかったんだと思うよ……」
2人が驚いているのを他所に歩美と光彦は再度座席に腰掛けて憐達について話し合っていた。
光「あのお兄さん、前に憐お姉さんとトロピカルランドにいた人ですよね?」
歩「うん!きっと憐お姉さんの彼氏さんだよね!コナンくんに似てたかっこいい人だ〜!」
寝耳に水な情報が出てきて、遂に園子が座席を立ち上がって歩美の前に回り込み、覇気迫る勢いで詰め寄った。
園「どういう事?!憐と隣に居るあの男の子……トロピカルランドに居たの?!」
園子だけでなく蘭まて席を立つ始末……突如舞い込んできた応援していた友人の恋愛ゴシップ……もうすぐコンサートが開演するというのに、2人の頭の中は憐の恋模様でいっぱいだった。
歩「うん!この前皆でトロピカルランドに行った時に、憐お姉さんとあのお兄さんがアイスクリーム食べてるのを見たんだ〜!何話してるのか聞き取れなかったけど、憐お姉さんがあんなに嬉しそうに笑ってたんだもん……歩美、あのお兄さんはきっと憐お姉さんの大切な人なんだろうなって思ったよ!」
光「それにあのお兄さんも、最初は素っ気ない態度でしたけど、憐お姉さんが嬉しそうに笑ってるのを見て、すっごく優しい顔しながら憐お姉さんを見てたので、憐お姉さんの事が大好きなんだろうなって伝わってきました!」
2人が語る友人の動向に思わず自分の事のように嬉しくなる蘭と園子。感激したように喜ぶ2人に、話をした歩美と光彦、更に話せはしないが静かに隣で頷いていた元太もお互いに見やって笑い合った。子ども達の楽しそうな様子に微笑むも今だ行方が分からない小さな名探偵に不安が消えない哀。
そんな彼らの和気藹々とした様子は突如流れたアナウンスによって終わりを告げる。
【ご来場の皆様にお知らせ致します。本日予定されておりました秋庭怜子の出演を都合により変更させて頂きます……】
園「えぇっ!?」
蘭「……」
アナウンスの内容は、コンサートでその歌声を楽しみにされていたソプラノ歌手、秋庭怜子がコンサート直前で変更されるというものだった。
【代役は堂本アカデミー9期生の千草ららが務めます。誠に勝手ながら、ご了承くださいますようお願い申し上げます……】
園「なんでぇ!?」
蘭「ゲネプロであんなに素敵に歌っていたのに……」
阿「新一くんと何かあったんじゃなかろうな……」
哀「…………」
一体何があったのか、そして今だ姿を見せないコナンの事もあり、一向は物言えぬ不安がじわじわと襲ってきたのだった。
────────────────────────
【ご来場の皆様にお知らせ致します。本日予定されておりました秋庭怜子の出演を都合により変更させて頂きます……代役は堂本アカデミー9期生の千草ららが務めます。誠に勝手ながら、ご了承くださいますようお願い申し上げます……】
貴「えっ?!秋庭さんが変更……?!」
快「……何かあったんだろうな。代役を立てなきゃいけないくらいの何かが……」
貴「……嫌な予感がする」
快「えっ……」
ホールにたどり着いた後、憐は快斗の先導のもとホールの中に入り用意された座席に座り、開演時間までの間、快斗と話しながら今か今かとその時を待っていた。しかし、突如入ったアナウンスの内容に不安そうな顔つきへと変わった。
貴「ちょっと前に、コナンくん達の歌唱指導してくれた時は元気そうだったのに……何があったんだろう。秋庭さん、大丈夫かな……」
快「……警察や救急隊員とか来てねぇから、命に関わるような事件や事故が起きた訳じゃなそうだな。そんなに心配しなくても大丈夫だって……」
貴「…………そうだよね。秋庭さんの歌が聞けないのは残念だけど、素晴らしい演奏と歌が待っているのは変わらないと思うし、とても楽しみね……!」
快「……あぁ、そうだな!」
楽しみにしていることが伝わってくる言葉も表情も純粋な彼女の気持ち。それを否定するつもりはないが、彼女の最大限の笑顔を知っている快斗からしたら違和感を覚えるものがある。僅かながら滲み出ている小さな不安……彼女の笑顔に陰りが見えるのは、きっとそのせいだ。鋭い勘がはたらく憐はこの状況は何か良くないことの前触れだと感じていた。
快(おいおい、どうすんだよ!困るぜ……あの人の歌じゃなきゃ駄目だってのに!〝思い出の歌姫〟の歌を聞かないと憐が分かるかどうか……待てよ?憐の話じゃ、ここに名探偵達も来てるって事だよな。この状況……まさか名探偵のせいじゃねぇだろうな〜……)
憐を気遣い、不安にさせぬよういつも以上に明るく笑う快斗だが、心の中ではこの状況に対しての焦り、そして憐と同じように嫌な予感がしていた……。
その嫌な予感は当たっている。コンサートの裏側では秋庭怜子を救出する為、現在行方不明となっている江戸川コナンが裏で暗躍しているのを憐と快斗は知らなかった。暫くして舞台上に代役の千草ららが立ち、演奏会の幕が上がったのだった。
