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幼少時の記憶……
幼かった私と双子の弟は、母親に連れられてある場所にやってきていた。その場所は、大きな時計台がある広場のような所だった。好奇心旺盛だった私達は、時計台の時計を間近で見たかった為、手を繋いでいた母親の手を離し、一目散に時計台の下に行った。
この場所は人も大勢いて、小さい私達だとお互いはぐれてしまうって事も容易に想像できたはずなのにね……。この時の私は、何故近くにいたはずの弟がいつの間にか、居なくなっていたのか分からなかった。
『れおーーー!!どこ行ったの??……ママとはぐれちゃったし……。どうしよう……わたしが大きな時計を見たいって言って手を離しちゃったから……。れおともはぐれちゃった……うぅ……。』
見回しても、他人ばかり……弟の姿も母親の姿も見えない。……こうなってしまったのも自業自得である。でもこの時の私は、知らない世界にひとりぼっちになってしまったと絶望し、泣きそうになっていた。
(こんなことなら……時計を見たいって言わなきゃ良かった……。)
「なぁ、何で泣いてんだ?」
喧騒の中ふいに隣から聞こえた声……その声は明るい声色で男の子の声だった。すぐに声が聞こえた方に顔をあげる。
そこには、知らない男の子が立っていた。その子は同い年ぐらいで、青い帽子を被っていた。そして、不思議そうにこちらを見ていた。
私は見ず知らずの子に泣き顔を見られたと思い、すぐに涙を拭い、なんでもないように装った。……いくら知らない子とはいえ、泣き顔を見られるのは好きじゃない。しかも迷子で泣いていたなんて……恥ずかしくて素直に言えなかった。
『!!……別に泣いてないよ!……ていうか、あなた誰?』
泣いていたことを指摘されたけど、恥ずかしかった私は強く言い返した。また泣いていたことを誤魔化したくて、話題を変える為、その男の子に名前を尋ねた。その男の子はニッと笑って、いきなり何も持ってなかったはずの手から薔薇を出し、こう答えた。
「オレ、黒羽快斗ってんだ!よろしくな!」ポンッ
これは、私【神崎憐】と後に長い付き合いとなる幼馴染の男の子、黒羽快斗こと【快斗】と初めて出会った時の出来事である。
────── 同時刻 時計台 下
「お姉ちゃんーーー!!お姉ちゃんーーーーー!!どこ行っちゃったんだろう……全然見つからないや。」
僕は神崎玲於。先程時計台を見たいと言って離れてしまったお姉ちゃんを追っかけていたら、いつの間にかはぐれてしまい、気づいたら迷子になっていた。
どうしよう……。お母さんが言ってたんだけど、お姉ちゃんは方向音痴だから迷子になると見つけるのが大変だって言っていたから、見失わないように背中を追いかけていたのに、沢山の人が居て気付かぬうちにはぐれてしまっていた。
「お姉ちゃんが見たいって言っていた時計台の下まで来てみたけど、……お姉ちゃんいないな〜。これからどうしよう……。」
もしかしたら先に姉が来ているかもしれないと、希望をかけて時計台の下にやってきたが、結局姉は見つからなかった。
(ここから動いてもしょうがないし、お母さんに時計台に行くこと伝えてあるから、見つけて貰えるまで待ってようかな。……お姉ちゃんもそのうち来るかもしれないし。)
僕は姉を探し回るのを辞めて、母親に見つけて貰えるまで、大人しく時計台の下で待ってみることにした。その時、隣に僕と同じくらいの歳の小さな女の子が立っていることに気づいた。
(……かわいいな。)
僕はその女の子から目を離せずにいた。その子は、ピンクのワンピースに身を包み、パッチリした大きな瞳をもつ可愛いらしい女の子だった。
今になって考えてみると僕はこの時、人生で初めて一目惚れを経験した瞬間だった。知らない女の子なのに、その子から目を離すことが出来ず、じっと見つめてしまっていた。
……見つめていて気づいたことがある。
その女の子はよく見ると、浮かない顔をして一人で立っていた。……そういえば、この子のお父さんとお母さんはどこだろう?キョロキョロ辺りを見回してみたが、それらしき人物はいなかった。
……もしかして、僕やお姉ちゃんと同じ迷子なのだろうか?迷子になったらその場を動くなってよく言われるし、お父さんやお母さんが見つけてくれるのを待っているのかもしれない……。もしそうなら、この子はここでずっとひとりぼっちで、待っているのだろうか……。
(……僕も人の事言えないけど、困ってるなら助けてあげたい。……話しかけてみよう。)
「ねぇ……。君も、誰かを待っているの?」
「うん……お父さんとお出かけするの……。でもお仕事忙しくて行けないかもって、言ってたから……。」
そう言うとその子は、更に沈んだ顔をした。僕らのような迷子じゃなくて、お父さんと待ち合わせしてたんだ……。見たところまだお父さんらしき人が来てない事から、忙しくて本当に来れないと思って落ち込んでいるようだった。
「そうだったんだ……。でもさ、まだ分からないんじゃない?お父さんも君の元へ向かってる途中かもしれないよ?だからもうちょっと待ってみようよ!……僕も一緒に待ってるからさ。」
「どうしてそんな事言うの?」
「僕のお父さんもそうだから!僕のお父さんも忙しい人で、あんまり遊んで貰えたことないけど、僕やお姉ちゃんの為に、どんなに忙しくて疲れている時でも、時間を作って一緒にいてくれるんだ〜!だから君のお父さんもきっと今頃、君の元に一生懸命向かっていると思うよ!」
元気になって欲しくて、何も分からないのに期待を持たせるような言い方をしてしまった。でも、悲しい表情をいつまでもさせたくなかったから……父を待つ自分と重ねてしまい、自然と口から出ていた。
「うん、もう少し待ってみる!」
「元気が出たみたいだね、良かった〜!あっ……そうだ、僕の名前は、神崎玲於です!……君の名前は?」
お互いに自己紹介をしていなかった事に気づき、自分の名を先に名乗った。これを機にお友達になりたいと思ったからだ。
「……中森青子だよ!」
これは、僕【神崎玲於】と後に長い付き合いとなる幼馴染の女の子、中森青子こと【青ちゃん】と初めて出会った時の出来事である。