戦慄の楽譜
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元太くんを病院に連れていき、お医者さんの診察を受けたら喉に炎症はあるけど4、5日あれば治ると言われ、ひとまず治る事に安心した私達は子ども達を家まで送ることにした。既にその時にはすっかり日は暮れていて、夕陽に照らされた住宅街の道を並んで帰っていった。
その途中、突然大きなトラックが一方通行の道を逆走し、こちらに突進する勢いでスピード上げて走ってきたけど、コナンくんの機転で何とか皆無事だった。秋庭さんは足に怪我をおってしまった事もあり、私達にうんざりして一人でタクシーで帰っていった。
私達といるとロクな目に合わないって言ってたけど、あれは多分……あの人なりの分かりづらい優しさなのだろう。私は少しずつだけど、秋庭さんの事が分かってきたような気がした。勝手な行動をした元太くんを咎めて、親に文句を言うと言ってついてきていたけど、もう帰る予定だったのにわざわざ元太の病院に付き合ってくれたって事は、心配してくれていたのではないだろうか?
それに一緒に帰ると言っていたのに、トラックに轢かれそうになった出来事の後、急にやっぱり一人で帰ると言い、タクシーを使っていたけど、コナンくんの話では、私達とは別の道に入ってトラックを避けた秋庭さん。トラックは秋庭さんの方の道に入っていった。偶然かもしれないけれど、もしかしたらあのトラックは秋庭さんを狙った犯行だったかもしれない。……もし秋庭さんがそう考えたなら、これ以上自分と一緒にいては危険な目に合ってしまうと考えて、巻き込みたくなくて一人で帰ることを選択したのかもしれない。
(……言葉や態度は冷たかったけど、行動に優しさが滲み出ている。あの人も分かりづらいけど、きっと根は良い人で優しい人なんだろうね)
私の想像かもしれないけれど、もしそうだったら良いなと思いながら、子ども達をそれぞれ送り届けた後帰路に着いた。
とりあえず子ども達の事は蘭と園子に任せて良さそうだった。園子から聞いたが、何でも今度の火曜日のコンサートに子ども達と阿笠博士も誘ったらしい。今日の昼間に園子に小突かれたけど、この日のコンサート、実は私も園子に誘われていた。しかし、この日はもう既に先に予定が入っていた……その理由を伝えても良かった……。以前の私だったら恥ずかしくて友人に言えなかったけど、今なら相談くらいしても良かっただろうかと考えが浮かぶ。今更すぎてどうしようもない気がする。
────── そんな感じでいつものように日常を過ごしていき、遂に約束の日が来た。
────────────────────────
────── コンサート当日
青「憐可愛い〜〜!!やっぱり似合ってるね!!」
貴「ありがとう!青子のセレクトが良かったおかげだよ」
青子の目の前には白と黒のマーメイドワンピースを身につけた憐が顔を赤くしながら立っていた。満更でもなさそうな表情に殊更に嬉しそうに笑う青子。時刻は午後のティータイムを楽しめる時間。青子は憐の部屋に来て、憐の服をコーディネートをしていた。そもそもこの服装も普段着の物ではなく、生地の良い値段がはったあまり彼女が購入しない物だった。彼女は全体的に白を基調としており、その上は黒のキャミソールで体のシルエットがはっきりとするマーメイドタイプのワンピースを着ていた。
青「あの時はびっくりしたよ〜!まさか急に憐からショッピング行こうなんて言うからさ〜」
青子はケタケタ笑っていた。基本的にショッピング等誘うのは青子からが多い。最新のトレンドに追いついている青子がよく憐に教えている光景を目にする。そこで定期的に青子から憐を誘ってショッピングに行っているが、今回は憐の誘いからだった。
貴「そうだよね……あの時凄く焦ってたから」
『青子ぉ〜助けて……!』
『ど、どうしたの憐?!』
『……なんかよく分からないけど服がいるの!今すぐ買いに行かなきゃいけないの!お願い、着いてきて!!自分に合う服とか分からないからぁ〜……!』
青『どういう事よ!それじゃ分かんないよ〜!もう〜!!なら今すぐ行くよ!!』
貴「あの時は本当にありがとうぉ〜……!」
青「いえいえ〜!青子に任せて正解よっ!!憐の魅力を一番よく分かってるのは青子だからね!」
青子は胸に手を当てて、自信満々に笑った。その様子に憐が微笑んでいると、青子は意味ありげな笑みを憐に見せる。
青「今回憐が慌てて服買ったのって快斗から誘われたからなんでしょ〜?二人っきりのデートに♡」
貴「はぁ?!もう馬鹿!!違うったら!!アイツは別にそんなつもりないって……!」
青子の言葉に、憐は大袈裟に否定する。照れ隠しだと分かっているから、青子は気にせず問いかけた。
青「じゃあ快斗に何て言われたの?」
青子の疑問に、憐は頬を赤く染めながら語り出した。
────────────────────────
────── 1週間前
貴『〜〜〜♪』
この日、憐は上機嫌だった。なんてことはない、通常よりも授業が早く終わったことだったり、その為に学校帰りに期間限定のスイーツを楽しめるカフェに行く予定が出来た事だったりと少しの幸せが積み重なり、彼女の心は満たされたのだった。
蘭達とカフェに赴いた後、帰宅した憐は無意識に鼻歌を唄っていた。これは機嫌が良いと行われる憐の癖だった。鼻歌で唄っている曲は、昔彼女が偶然聞いたものだった。
蘭達にも話した中学2年生の時の苦くて甘い記憶……もう姿も声も朧気ではあったが、繰り返し何度も唄う事により、音だけはかろうじて覚えていた。結局今だに見つからず、あの時唄っていた女性の素性も、歌の意味も分からずじまい……
貴『……あの人は誰だったんだろうな……この歌の意味も謎だし……』
すると、彼女の携帯が鳴り響いて彼女の呟きは中断される。着信に設定された曲を聞いて、電話の相手を悟った憐は戸惑うことなく、電話に出た。
貴『もしもし……』
快『憐お前、今一人か??』
電話をかけてきたのは彼女の幼馴染の黒羽快斗だった。質問の内容に彼女はやや不思議に思った。何故そんな事を聞くのか気になりつつも素直に答えた。
貴『今私一人だけど……?』
それを聞いた快斗は、少し間を開けて話し出す。その間、彼の心臓は激しく動き心拍数が上昇している……柄にもなく彼は緊張していた。
快『……来週の火曜日、お前空いてるだろ』
貴『来週の火曜日?うん、空いてるけど……って何で決めつけてるのよ。私だって予定くらいあるわよ』
さも当然のように告げる快斗に対して憐は顔を顰めて反論する。しかし、反論も計算のうちだった快斗は、用意していた答えを彼女に伝えた。
快『別に決めつけてねぇよ。俺はこの日お前がフリーだって事、知ってたからな。少し前に玲於と青子と、あと眼鏡の坊主にお前との予定あるか聞いた時にそれぞれないって答えてたし……それにお前もさっき答えてただろ?予定はないって……』
貴『それはそうだけど……でも眼鏡の坊主ってコナンくん?コナンくんにまで聞いたの?』
玲於と青子に予定を確認する意図は分かる。いつも一緒にいるメンツだからだろう。ただ小学生1年生に予定を確認するなんてどういうつもりなのか。
快『あの坊主は憐の友達の家に住んでんだろ?お前らの予定が入ったら、その子は眼鏡の坊主に共有するだろうからな。だから聞いたんだよ』
貴『なるほど……なんか用意周到ね。それで来週の火曜日がどうかしたの……?』
本題に戻すように憐は問いかけた。問いかけられた快斗は、再び激しさを増す自分の鼓動を聞き、普通を装いながら口にする。
快『……その日ぜってー空けとけよ!』
貴『えっ?……良いけど、どうして……?』
快斗から語気を強めて言われた憐は持っていた携帯に力を込める。電話口の向こうの快斗の気迫が憐に伝わった。息を呑んで静かにその時を待っていると快斗は再度口を開いた。
快『それは……当日になってからのお楽しみってやつだな!!』
貴『…………えっ??』
予想外の返答に思わず携帯を落としそうになった。かろうじて落とさなかった携帯をもう一度しっかりと握り直した憐は再度問いかける。
貴『ちょっと待ってよ!別に空けとくのは全然良いんだけど、誰と何処で何をするかぐらい教えてよ……!』
彼女の訴えも最もである。いつ、何処で、誰と、何をするか……人によって、場所によって、時間によってその後の対応が決まる。彼女の場合、彼からの誘いは基本断らない。明らかに誰かを傷つけるような展開にならない限り……。
貴(別に快斗からの誘いは良いけど、せめて誰と何するくらい教えて欲しい……)
切実な彼女の訴えに、快斗は上機嫌な様子を一変させて、たじろいで言葉を紡ぐ。
快『そんな不安にならなくても大丈夫だって〜……憐の苦手なお化け屋敷とか行く訳じゃねぇから!』
貴『じゃあ何処に行くのよ?誰がいるの……?』
快『だ、だからそれは当日のお楽しみだって……』
いくら聞いても詳細を教えてくれない快斗に痺れを切らした憐は諦めたように呟く。
貴『……もう良い!どうしてか知らないけど、何も教えてくれないなんて酷いじゃん!それなら行かないわよ……!』
快(ヤベェ……!それはまずい!!)
快『だからその……あーもう行くのは俺とお前だけだよ!!』
憐の返答に最悪な展開に行き着くことを恐れた快斗は、つい口走って新たな情報を提示した。しかし、憐は彼の発した言葉に驚き思考が停止した。内容を噛み砕くのに少し時間がかかったが、一瞬訪れた静寂は瞬きの間に崩れさる。
貴『私と……快斗の二人……だけ??』
快『あぁ、そうだよ……』
貴『そ、そう……』
快(何だ今の憐の反応……ど、どっちだ?!良いのか?!悪いのか?!)
今の自分は携帯を持ちながら百面相をしていることだろう。鏡など見なくとも分かる……しかし、彼女の返答がどっちつかずでこの後の言葉を何にしようか悩んでいると、憐が恐る恐る口を開く。
貴『……良いよ』
快『……へっ?』
貴『だから……良いよって言ってるの!』
耳元で大きな声が聞こえて、思わず仰け反ってしまった快斗。それでも憐はぶっきらぼうに話し始めた。
貴『目的が分からないけど、快斗となら別に良いよ……その代わり変な事じゃないでしょうね……?』
快『バ、バーロー!!変な事ってなんだよ……!!』
貴『だって快斗だし……女の子が居ないと入れないような場所に連れてってとかだったら嫌だしねー……』
快『憐……お前俺に対して失礼すぎだろ!!』
貴『あははっ……!でも良いでしょ?ちゃんと快斗の為に予定空けとくからね』
流石に自分の扱いが酷いと思った快斗は、憐に対して文句が出た。しかし、文句を言われることも想定内だった憐は気にせず無邪気に笑っていた。
快『ったく……あっそうだ。この日は普段着で来るなよ』
貴『えっ?どうして……?』
快『俺らが行く所は、それなりの場所でドレスコードがあるからな』
貴『ちょっと快斗大丈夫?ドレスコードがある場所なんて、もしかして高いんじゃ……』
快『大丈夫だって!余計な事は考えるなよ……これはこの前のお礼なんだからな』
貴『この前のお礼って……?』
快『トロピカルランドに誘ってくれた礼だよ……』
貴『っ!!……あ、あれは……』
途端に憐の勢いが萎んでいった。無意識に唇を噛み締める。あれは……純粋な誘いではなかった。彼に対する〝疑い〟を晴らすために半ば強引に誘ったもの、思惑が絡んでいた。結果的に自分の不自然な行動に彼を不快にさせてしまったのも事実。礼を言われるようなことではないと彼女は自責感に駆られていた。
急に静かになった憐の様子を踏まえて、彼は穏やかな口調で話しかける。
快『オメーがどう思ってるのか知らねぇけど、俺は楽しかったんだ……その礼なんだから素直に受け取っとけよ』
自分に対する〝疑い〟も彼女の〝願い〟も彼は理解していた。単なる遊びに誘われた訳ではない事も分かっていた。ただそれでも……彼はある程度理解した上で、あの時間を〝楽しかった〟と表現した。それは相手が他ならぬ自分が好意を抱いている〝憐〟だったから……その彼女が抱えている罪悪感を払拭したかったから。彼は柔らかな微笑みを浮かべて憐に伝えた。
それを受けた憐は、快斗の優しさに涙が込み上げてきて目の前が霞み始めた。彼の想いが伝わった……本当に自分を想っての言葉なのだと理解できた。
快『とにかく、お前は何も心配しなくて良いんだ』
貴『……うん。ありがとう……快斗』
直接会っていなくても声を聞けば、大体相手がどんな表情をしているのか分かる。憐は涙を零しながら少しこもった声でお礼を伝え、快斗は電話口から聞こえた憐の言葉を聞いて安心したように微笑んだ。
快『当日は俺が案内する。お前の家に15時頃に迎えに行くから……寝坊すんなよ〜』
貴『もう!そんなの当たり前でしょ!流石の私でも昼過ぎまで寝過ごすなんて事しないわよ!』
彼女が絶望的に朝に弱いことを揶揄っての言葉だった。快斗の馬鹿にするような態度に、ムキになって反論する憐。直接顔を見合せていなくとも、毎度このような彼らの言い合いは起こってしまう……いつもならこの流れで憐が怒って電話を切ってしまうことがあるが、今回は少し違った様子が見られた。
快『きっとこの日はお前にとって最高の一日になる!……約束する。ぜってー後悔させない!だから今は何も聞かず、楽しみに待ってろよ』
そう伝えた快斗の声があまりにも穏やかで優しさが滲み出ていたから、彼女は彼のらしくない様子に一瞬言葉を失った。しかし、すぐにクスッと笑って同じく穏やかに言葉を快斗に返した。
────────────────────────
青「なるほどね〜……(快斗って憐の前だとやたらかっこつけるよね〜……)」
本日の経緯を話してくれた憐に対して、青子は感心していた。数少ない情報のみしか与えられていなかったにも関わらず、憐はそれでもこの日を心待ちにしていた様子を見ていた。途中彼女は風邪引いてしまい、一時はどうなるかと思ったが何とか間に合った……。治すことにも全力だった憐を見て、不思議に思っていた青子はこの話を聞いてようやく納得したのだ。
貴(快斗……私、快斗が言った通り、ずっと楽しみに待ってたんだからね)
結局あの後詳細を聞いていないため、約束の当日になっても憐は、自分と快斗はどこに向かうのか……目的も場所も分からなかった。しかし、彼女はそれでも良いと考えていた。なぜなら……
────── 憐にとっての幸せは
────── 彼の傍にいること……
────── コンコン
突然憐の部屋の扉から音が鳴る。その音はこの部屋に新たな来訪者を告げた。
青「はーい!」
部屋の主に代わって青子が返事をすると扉が開けられた。扉を開けたのは憐の双子の弟玲於だった。
玲「時間だよ姉さん、青ちゃん」
青「あっほんとだ!もう良い時間だね……」
貴「玲於!?どうして……」
玲「何で僕が知ってるかなんて野暮だね。知ってるに決まってるでしょ?僕の情報網舐めないでね……」
揶揄いの視線を込めた玲於が憐達にそう伝えた。
青「ふーん……どうせアイツから聞き出してたんでしょ?」
玲「……その通り!何せさっき教えて貰ったからね!」
青「なら何でかっこつけて言うのよ……かっこつけて言えることじゃないでしょ〜」
玲「うぅ……青ちゃん酷いよ!こんな面白そうなことがあるなら僕にも教えて欲しかったよ!」
青「そんなこと言われても、青子だってさっき初めて聞いたんだから無理よ!」
玲於と青子は、主役の憐をそっちのけで話し始める。二人の会話を聞いてどんどん顔が赤らんでいく憐。恥ずかしさが頂点に達して思わず「ストップ!」と声を上げた。その声に反応して言い合いを止めた玲於と青子。ふと思い出したように玲於が憐に告げた。
玲「そうだ!僕は頼まれて姉さんを呼びに来たんだった!青ちゃんと言い合いしてる場合じゃなかったよ!」
玲於の慌てた表情に、青子は部屋にあった時計を見て自分も慌てた表情へと変えた。二人の慌てた様子に疑問に思う憐に対して、玲於は穏やかな顔つきでこう伝えた。
玲「迎えに来てるよ……姉さんお待ちかねの人がね」
青「憐行ってらっしゃい……!二人で楽しんできてね」
貴「ありがとう……青子、玲於!」
二人の言葉に憐は、はにかむように微笑み、礼を告げて、足早に自身の部屋を出て行った。
玲「さてさて、今回はどうなるかな……?結果が楽しみだね青ちゃん!」
青「そうね〜!二人が帰ってきたら早速どうなったか聞いちゃおうね玲於!」
駆けて行った憐の背中を見て楽しそうに笑っていた玲於と青子。二人が望むものは憐と同じく……大切な人達の未来に幸せを……──────
