戦慄の楽譜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「「「「帝丹 帝丹 帝丹小学校〜〜♪」」」」
暖かな日差しの中、ある小学校の音楽室で子ども達が自分達の校歌を元気よく歌っている。子ども達の声に合わせて、蘭がピアノを弾いて、私が指揮を取り、園子が子ども達の歌を聴き比べて指導する。
「「「「歌ってる笑顔で眩しい太陽〜♪心に刻もう未来を掴め〜〜♪」」」」
コナン君達が通う帝丹小学校では、もうすぐクラス対抗合唱大会があるらしくその歌唱指導をする事になった。
歩美ちゃんに「憐お姉さんお願い〜!」と可愛く頼まれたら誰だって引き受けると思う。光彦くんからも「憐お姉さんの歌は凄く上手だったので是非僕らのクラスの歌唱指導してください!」と熱心に頼まれた事も私が動かされた要因のひとつ。
「「「「帝丹 帝丹 帝丹小学校〜〜♪」」」」
それで私、蘭、園子と3人で子ども達の歌唱指導をしようと集まったけど……
(蘭、園子、私の3人でって話じゃなかった?!あの髪の長い女の人は誰?!)
私は子ども達の歌を聞きながらも、窓辺に立って外を見ている謎の女の人のことを考えていた。私以外の皆はこの人と知り合いなんだろうけど、それにしては、あまり話しているようには見えなかった。……この人自身、人付き合いが苦手な人なのだろうと印象を受けた。それに何だか無愛想で視線が冷たい……蘭達はどうやってこの人と知り合ったの?!
「「「「帝丹 帝丹 帝丹小学校〜〜♪」」」」
そんな事を考えている内に、子ども達の声とピアノの音が止まる。あっ……歌唱指導をする目的で来たのに、歩美ちゃん達以外の子達の声をちゃんと把握出来ていない……!
蘭「どうでした?子ども達の歌……」
内心慌てていると蘭は私ではなく、外を見ていた髪の長い女の人に声をかけた。
秋「そうねぇ……まず君!」
今まで外を見ていた女の人は、子ども達の前へとやってきてキツい口調で言い始めた。
秋「声、でかすぎ!もっとみんなの声と合わせて!!」
元「てへへへ……」
秋「そして隣のそばかすくん!!」
光「!?」
秋「君は音程は合っているけど、時々気持ちがお留守になる……斜め前の女の子の横顔に見とれてるからかしら?」
光「ひっ!!」
元「斜め前って灰原じゃねーか!!」
秋「で、その彼女……歌は上手だけど、もっと子どもらしく歌いなさい!!」
哀「私、子どもじゃないから……」
(す、凄い!!一人一人、的確にアドバイスしてる……私が言いたかった事、全部言葉に表して言ってくれてる!!外見てたのに、ちゃんと子ども達の歌を聞いてたんだ……)
視線はずっと外を向いていたのに、どの子の歌かちゃんと聞き分けて、的確な助言をしていた。
貴「ねぇ園子」
園「何よ」
貴「あの人何者なの?……」
園「アンタ知らないの??有名なソプラノ歌手、秋庭怜子さんよ」
貴「うーん……ごめん分かんない」
思わず園子に彼女を素性を聞いたけどイマイチピンと来ない。
園「何で知らないのよ〜……ってそういえば憐はこの前のコンサートのリハーサル、来てなかったわね……」
貴「園子が前に誘ってくれたやつだよね?ごめんねあの時は……」
園「良いわよ別に……だって憐、風邪ひいてたもんね〜無理もないわ」
何でも園子が言うには、以前爆発事件が起こった音楽ホールを新しく建設した記念にこけら落としのコンサートが行われる。そのホール建設に携わったのが園子のご両親の会社、鈴木財閥の鈴木建設……その為園子の口利きで私もそのコンサートのリハーサルに誘われていたけど、生憎風邪を引いてしまい、外に出られる状態ではなかった為断った。どうやらその時に知り合った人らしい。
貴「プロの歌手に指導して貰えるなんて滅多にないことじゃない!凄いねコナン君達!……でもさ、なら事前に私にも言っといてよ!知らない人がいてびっくりしちゃって落ち着かなかったんだから〜……」
私は横目で歩美ちゃんがその秋庭さんに褒められているのを見ながら、園子に軽く文句を伝えた。
園「それは悪かったわね……だってさ〜そのリハーサルだけならまだしも、そのコンサート本番にも行けないってどういう事よ!」
私の不満をものともせず、園子は大きい声で言い返した。その様子に子ども達含め、秋庭さんも驚いたようにこちらを見ていたので、慌てて「すみません!私達には気にせず続けてください!」と手を振った。
貴「も、もう〜それは言ったでしょ?その日は先に約束してた人がいるって……」
園「……いつもの憐なら何で断るのか詳しく教えてくれるのに、今回は全然教えてくれないじゃない……」
貴「そ、それはその……というか今は関係ないでしょ!私達は今、子ども達の歌唱指導で来てるんだよ!私達も指導しなきゃ!」
園「あっ……逃げるなんて卑怯よ〜!」
私は園子の会話をそこそこで切り上げて、蘭の隣に移動する。……別に秘密にしとく理由なんてないけど、なんて説明すれば良いのか分からなくて伝えられずにいた。丁度子ども達の方では一番の問題児が指摘を受けていた。
秋「問題は……君!」
秋庭さんが指を指していたのはコナンくん。
コ「え?……は、はいっ!!」
秋「最初から最後まで外れっぱなし!!態とじゃないでしょうね?」
秋庭さんの指摘もうなずける。……一人だけずっと音が外れて歌っている子がいた。正直私がその子の隣だったら釣られて歌ってしまいそうになるくらいには酷い音の外し方をしていた。逆によく最後まで外しながら歌えるなと感心してしまった程だ。
その最初から最後まで外れっぱなしで歌っていたのがコナンくん……
(音痴な部分まで工藤くんと似てるんだ💧)
態とで出来る技術ではない。本当に苦手なんだね。天才少年にも苦手な物があったんだと考えていると、コナンくんの為に歩美ちゃんが大きな声でフォローする。
歩「わざとじゃないもん!コナンくんは音痴なだけだもん!!」
歩美ちゃんの言葉でドッと笑いが起きた。私も耐えきれず笑ってしまう。
(フォローになってないよ歩美ちゃん……)
コナンくんもそう思ったのか、引きつって笑っていた。
秋「最悪ね。ピアノも変だし……」
蘭「えっ?!」
貴「!?」
秋「全体的に音が下がってるわ……ちゃんと調律してないんじゃない?」
蘭「本当ですか?やだ気づかなかった……」
コ(俺もそう思った……この人……)
秋庭さんの指摘は子ども達だけではなく、ピアノの音にまで入る。凄い……そこまでは私も気づかなかった。流石プロのオペラ歌手……というかこの人……
貴「もしかして、絶対音感……?」
秋「!!」
心の中で思っていた言葉が気づけば口から出ていた。抑えた時にはもう遅く、本人にも聞こえてしまっていて、ピアノに向けていた視線を私に変えてそのまま見つめられた。
貴「あっ、すみません……」
秋「別に良いわ、間違ってないもの。持ってるわよ……絶対音感」
気を悪くさせたと思い、すぐ謝ったが秋庭さんはなんて事ないのように肯定する。
「何?絶対音感って……」
哀「ある音を聞いた瞬間にその音の名前、音名が言える能力のこと……例えば……」
すると子ども達の内、一人の子が絶対音感の意味について問いかけた。隣で聞いていた哀ちゃんが意味を説明しながらピアノの前まで移動し鍵盤を押す。
────── ポーン
秋「E5 ミ……」
────── ポーン/ポローン
秋「B3とF5 シとファ!」
先程とは違う音、そして2音鳴らしたとしてもぴったりと当ててしまう。まさに絶対音を外さない絶対音感……音痴のコナンくんを見てしまったから余計に凄いと思ってしまう。
光「凄い……それで歌が上手なんですね……」
秋「さぁ、どうかしら……絶対音感が音楽家にとってどうしても必要なものかどうかは分からないわ。私は生まれつきそうだったけど、訓練したら身につけられるって聞いたし……確か元ピアノ調律師の譜和さんもそのクチだったかな?ま、私からはそんな所……後は自分達で練習して!もっと上手く歌えるようになったら、また見てあげる!」
光「えぇっ!?帰っちゃうんですか?」
秋庭さんは一通り伝えたと言って、帰る支度をし始めた。子ども達の残念そうな表情に私自身も悲しくなるけど、こればっかりはしょうがないよね。プロのオペラ歌手が練習を見てくれるなんて凄いことだから。
哀「帰る前にお手本聴きたいわね」
「賛成ー!」
クールな哀ちゃんまで呼び止めようとするなんて珍しい……でも、みんなの為なのかな。
(分かりにくいけど、哀ちゃん優しいな〜)
哀ちゃんの対応に嬉しくなっていると秋庭さんは意地悪そうに微笑む。
秋「ふん……いくら払ってくれるの?」
「「「「えぇっ?!」」」」
蘭「……えっ!?」
秋「プロはね、お金貰わなきゃ歌わないの!」
秋庭さんの言葉は一理ある。いや確かにそうだけど、だからって頑張って歌った子ども達の為に、1回くらい見せてくれたっていいのに……
貴「あの、1回だけでも駄目ですか……?」
私も駄目元で頼んでみる。難しいと思うけど、せっかく子ども達が頑張って歌ったんだもの。ご褒美をあげたい……。
秋「駄目なものは駄目!……というか貴女が代わりに歌って教えてあげれば良いんじゃない?元々私は来る予定がなかったんだから、今回の歌の講師……別の人がやる予定だったんでしょ?それで元々のこの子達の歌唱指導をやろうとしてたのは、貴女だった……違うかしら?」
貴「どうしてそれを……!?」
秋「その子達が言ってたわよ……」
────── 数日前 堂本ホール
光『明後日の2時から学校の音楽室で練習することになってるんです!!』
歩『ピアノは蘭お姉さんが弾いてくれるんだけど……』
元『歌を教えてくれるヤツが問題でさぁ……』
園『コラ!ボウズども!!だーれが問題だって!?』
目の前で繰り広げられる会話を淡々と聞いている。どうやらこの少年達は自分に歌唱指導をして欲しいようだ。一応歌唱指導を担当する人はいるみたいだけど、あまりこの子達には信用されていないように見える。そしてもう一人の女の子はピアノ担当……怜子は納得しながらそれを表に出さないよう接する。
歩『本当は憐お姉さんにも頼んでるんだけど……』
秋『他にも宛があるんでしょ?なら私は必要ないわね……』
光『それが憐お姉さん……前に風邪をひいていたみたいなので、もしかしたら本調子じゃないのかもしれないんです……』
そばかすの少年含め、子ども達は落ち込んだ様子を見せる。
秋『……その憐お姉さんってどういう人なの?』
……いくら初対面とはいえ、子どもの気落ちしている姿は見たくない……だから適当に話題をあげた。そこに深い意味はなかった。
歩『憐お姉さんはね!とっても歌が上手なんだよ!!』
光『それに何故か憐お姉さんの歌を聞いてると心が穏やかになるんです!!』
元『そうなんだよな〜!なんか嫌なことがあったり、イライラしてたりしても憐姉ちゃんの歌を聞くと、その嫌な気持ちが無くなってスッキリするんだぞ!!』
思いの外食い付きが良い。彼らは目を輝かせながら嬉しそうに語った。そこに彼らだけではなく、女子高校生二人まで会話の中に入って該当の人物について語り出す。
園『あの子、誰よりも歌が上手いのよね〜うちのクラスの中でも一番!それで男共から人気だしね〜!』
蘭『そうなんです!憐の歌を聞いていると、感動して偶に泣きそうになるんです!新一にも見習わせたいくらい……』
ここには居ない人物、憐という恐らく女の子は余程歌が上手いようだ。気づけば自然と口角が上がっていた。他意は無い。ただ少し興味が湧いた……その憐という少女に……
しかしその情報だけで怜子は動かなかった。彼女を動かした要因はもうひとつ……子ども達の小学校が帝丹小学校で、彼女が帝丹小OGだったこと。表向きは同じ小学校のよしみで彼女は引き受けた……だがしかし、もうひとつの理由を彼女は伝えなかった……子ども達から慕われている歌の上手い憐という人物に、少し興味が湧いたということを……。
歌手を目指す人間はこの世に大勢いる。その中でもその道で暮らしていくには技術は勿論、もっと大切な部分……人を感動させる事が出来なければいけない。その部分は技術だけではどうにも出来ず、残りはその素質があるかどうか。彼らの言うその人物は歌で人の心を動かすことが出来るという……そういう人物なら会ってみたいのだ。歌唱のプロ、ソプラノ歌手、秋庭怜子は静かに考えて、歌唱指導の頼みを引き受けた……。
貴「そ、そうだったんですか……(皆が褒めてくれるのは嬉しいけど、プロの方にまで言ってたのね……恐れ多いよ)」
怜子はこの前あった出来事を憐に話した。その話を受けた憐は目を見開いて、気恥しそうに下を向いていた。その様子に怜子は想定以上に拍子抜けした。もう少し自分を主張してくるタイプだと思っていたが、この少女にはそれがない。それよりも彼女には自分にはない才能があった。
秋(……初対面の時から感じてはいたけど、この子雰囲気が柔らかい……一緒にいて悪い気がしない。きっと周囲から気にいられやすい存在なのね)
関わった時間はそう多くはないが、この数少ない時間の中で、他人に好印象を与えやすい雰囲気、仕草、表情をしている。そして本人は無意識なのだから感心してしまう。悪い気はしないからこそ絆されてはいけないと自分を律した。
秋「……とにかく私は帰るわよ。じゃあね……」
怜子は自分の荷物を持ち上げて帰ろうとした。
秋「あっ!こらっ!!」
元太が背中を向けて何かを行っていることに気づいた。悪戯に笑った彼は怜子の所持していた水筒を持ち出し勝手に飲み始めた。
元「いただ来ます〜♡」
─── ゴクゴク
貴「元太くんっ!!すみません秋庭さん……」
元太の勝手な行動に、憐は怜子に頭を下げる。しかし、事態は急変する。
元「ぐわっ!!あ゙おぉ……」
怜子の水筒からお茶を飲んだ元太が、突然呻き声を上げて水筒を落とした。
コ「どうした!元太!!」
ただ事ではない様子にコナンを筆頭に多くの人間が元太に駆け寄った。怜子だけは自分の水筒を持ち上げて、この事態の原因を探っていた。
コ「誰かがその中に何かを入れた……そう考えるよね……」
秋「バ、馬鹿ね……そんなはず……」
コ「とにかく病院に連れて行こう!」
蘭「うん……」
コナン達は事態の解明の前に、元太を病院に連れて行くことに決め、小学校を後にした。
