戦慄の楽譜
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────── テニスコート
パコーンとテニスボールが目の前で景気良く飛び交っている。目の前で行われているのはシングルス、ワンセットマッチで互いのどちらかが4ポイントを取得すれば勝てるスポーツだ。私は今、友人である蘭、園子と一緒にテニスをする為このテニスコートにやってきていた。私はテニスの経験があまりない為、園子達に誘われた時はどうしようか悩んだけど、彼女達がルール含めやり方を教えてくれる言ってくれたのでそれならと参加を決めた。テニスを教えて貰うにあたって、まずはどうやってやるのか、蘭と園子が実際試合をしてくれて、それを私がベンチに座って見学させてもらっている。
貴「2人とも凄いな〜……園子はテニス部だから上手いのはともかく、蘭も運動神経が良いから経験者園子相手にラリーが続いてる……」
テニスやバレーといった球技は互いに上手ければ上手いほど、ボールのラリーは続き1試合終わるのに時間がかかったりする。現に蘭も園子も全然終わる気配がないくらいにはラリーが続いていた。
しかし、経験者の園子の方が1枚上手だった。
園「それっ!!」
蘭「あっ!!」
園子がボールを遠くに打ち上げた。コートの前の方、サービスライン際で打っていた蘭は、素早く後ろに下がるも間に合わず、テニスボールは地面に落ちる。
園「ラ〜〜ブサァ〜〜ティ〜〜♡」
蘭「も〜素人相手に本気にならないでよね」
(その経験者に負けてない蘭が〝素人〟だなんて同じ素人でも私からしたら信じられないんだけど……💧)
蘭レベルで素人なら私みたいな素人は何になるのだろう?……ド素人?
園「オ〜〜〜ホッホッホ!!獅子は兎を追う時も全力を尽くすものよ!!」
園子が全力で高笑いしているのを見て苦笑いをしてしまう。蘭には気の毒だけど、園子がこれまでにないほどにイキイキしている。凄い楽しそう……
蘭「はいはい、どうせ私は兎ですよ〜」
貴「蘭頑張れ〜〜!!」
蘭「憐ありがとう〜!!」
蘭に声援を送ると、蘭はサーブを打つ手を止めて振り返してくれた。しかし園子の文句が私に飛んでくる。
園「ちょっと憐!?何で蘭だけ応援すんのよ!!私には何も無い訳?!」
貴「そんな事ないよっ!園子も応援してるよ〜!ただ園子の方が優勢だったから……」
何だろ修羅場みたいに詰められてるのは何故……?蘭に声援を送ったのは、蘭の方が少し劣勢だったから。勝負なんて最後まで分からないものだけど、もしかしたら私の声援で、蘭のやる気が漲って経験者の園子に勝つかもしれない!そうしたら素人の私にも少し希望は見えてくる……なんてまぁ、どっちも勝って欲しい気持ちがあるから、劣勢になった方を声に出して応援してるだけなんだけどね。
園「な〜んだそういう事ね……良いわ、この園子様のスーパーショットを見せてあげるから!蘭も憐も覚悟なさい!」
貴「アハ…ハハ……💧(ごめん蘭……その気にさせちゃったよ)」
……手加減どころか園子のやる気を更に上げさせる結果となってしまった事に少し罪悪感を抱いた。しかし、園子はとんでもない事を言い出す。
園「そうだ今度はミックスダブルスやろうよ!真さんと新一くん呼んで!憐!アンタもちゃんと来るのよ!」
……理解するのに時間がかかってしまった。何言ってるの……?!
貴「ちょ、ちょっとタイム!!」
園「何よ!」
試合途中だけど、それを承知で立ち上がった。園子は意地悪そうな笑みを浮かべていた。
貴「何で私まで呼ぶの?!どう考えても人数が可笑しくない?!」
今回みたいに1:1で行うシングルスではなく、2:2のダブルス、しかもミックスならば男女混合。蘭&工藤くんのペアと園子&京極さんのペアで組むはずだから……そこに私…………
……どう考えても1人多い!
もしペア変えしたとしても園子と工藤くんは蘭と同じく幼馴染だから、なんだかんだいいコンビだろうし、京極さんと蘭のペアだとしてもお互い空手をやっているから話は合うだろうし……うんやっぱり私要らないでしょこれ!!
……と安直に考えた私だけど、すぐさま考え直す。園子の思惑が分かってしまった……。
貴「あっ分かった!私を呼ぶ理由は審判ね!そっかそっか〜……でも素人の私に審判させるの不安じゃない……?」
ダブルスでやってたら審判出来る人がいないもんね。そしたら確かにもう1人いるわ……私か。納得して座り直したんだけど、園子が眉を釣り上げて叫んでいた。
園「何言ってんのよ!審判させる為だけに憐を呼ぶ訳ないじゃない!!アンタ何にも分かってないのね〜……」
肩を竦めた園子に、私は更に首を傾げた。これじゃなければ何なのよ……
園「ミックスダブルスなのよ!男女混合!ペアで参加のルールなの!憐もパートナーを連れてくるのよ!」
貴「パートナーなんて……………あっ!!まさか!!……」
園「そうよん♡ 蘭も新一くんっていう旦那を連れてくるんだから、アンタも旦那の幼馴染くんを連れてくるのよ〜!!」
貴「だ、だからアイツは違うってば〜〜……」
もはやお決まりの否定台詞を園子に伝えたけど、以前に比べてその声量は小さくなった気がする。それはきっと今迄の経験とによって現れた心境の変化。これまでに何度か命の危機に晒されたり、殺人事件に遭遇し、今の自分の生活が決して当たり前に送れるものではないと分かったから。
……もういい加減、彼女達友人の前でも認めても良いのかもしれない……。
(本当は小さい頃からずっと……
自分の気持ちに整理をつけていた時、やけに静かだなと思った。……さっきから私と園子の声しか聞こえてない。
(そういえば蘭は…………えっ?!?!)
蘭の様子を伺うと、先程の彼女と明らかに様子が違った。指が食い込むぐらいテニスボールを強く握りしめている……。
(……蘭、めちゃめちゃ怒ってない?!何で?!?!)
今の私達の会話に怒る要素あった……?!
蘭「新一?……」
園/貴「「……えっ??」」
蘭は低いトーンで工藤くんの名前を呟くと、一気にテニスボールを上にあげた。
蘭「あんな推理オタク……はぁっ!!」
────── ドゴーンッ!!
盛大に振りかぶり、最大の力でサーブを打ったであろう球は風を切り、園子の傍を横切ったのだろう。球は見えず、気づいたら園子の背後にあったフェンスの穴にハマっていたのだから。
園「……ウソ」
貴「蘭が怒ってる原因……もしかして工藤くんか〜」
心の中で安堵の息を吐く。蘭の言葉からして、彼女の怒りの原因は彼女の幼馴染の探偵くんが原因らしい。丁度良い時間でもあるし、私は園子と蘭に休憩するよう呼びかけた。
────────────────────────
園「な〜んだ、新一くんと喧嘩したんだ。夫婦喧嘩は犬も食わないってね……」
蘭「そんなんじゃないよ!!」
園子、蘭、私で仲良く横並びにベンチに座る。やっぱり蘭が怒っていた原因は工藤くんの事で、どうやら蘭と工藤くんは喧嘩しちゃったらしい……
貴「……割とそれ、いつもそうじゃないの?」
園「そうよ……でもよくやるねぇアンタ達……しょっちゅう喧嘩しちゃあ仲直りして……」
……まぁ青子と快斗みたいな喧嘩をよくやってるなと高校からの付き合いの私でも思っていた。それくらい私達の間では蘭と工藤くんの喧嘩は日常茶飯事のことだった。
園「あっ……でもあん時は長かったなぁ……1週間くらい口聞かなかったんじゃない?」
蘭「……え?いつの事?」
園「ほら中2になったばかりの……」
蘭「あぁ、思い出した……!」
中2の時って事は私と出会う前か……じゃあ聞き役に徹しよう。私は彼女達の幼少期エピソードを聞くのが好きだった。だって私はこの頃の彼女達と一緒にはいない。私が快斗達と一緒に過ごして色んなことを経験していた時、蘭達はどんな風に生きて何を経験したのか……友達だから気になるし、蘭と工藤くんエピソードは少女漫画みたいにキュンとするから聞いていて凄く楽しい。私は口を挟まず、飲料水を飲んでいた。
蘭「あぁ、思い出した!あの時は……あれ?何で喧嘩したんだっけ……」
園「んじゃどうやって仲直りしたの?」
蘭「う〜〜〜ん……」
園「どっちも忘れたんかい💧」
中2になったばかりの時に蘭と工藤くんは1週間も互いに口を聞かないくらいに喧嘩をした。だけどその喧嘩の原因は何だったのか、どうやって仲直りしたのか、蘭は忘れてしまったようだ。
貴「頑張って思い出してよ蘭!工藤くんとの甘酸っぱい思い出〜」
蘭「もう憐ったら!そんなんじゃないって〜……あっでも確か……」
中2になったばかりの春の刻。夕陽に照らされて桜が咲き乱れる頃、蘭と工藤くんはそっぽを向きながら土手を二人で歩いていた……。
園「ストップストップ!!ちょっと待った!!」
蘭の説明に頭の中で情景を思い浮かべた時、園子の声で現実に引き戻される。
貴「もう〜〜何よ園子!まだプロローグだよ〜……」
園「だって喧嘩してんのに何で並んで帰んのよ!?」
園子の言い分に私も蘭もピンと来ずお互い顔を見合わせる。
園「何で蘭と同じ表情してんのよ憐!」
貴「う〜んだって私、変だと思わなかったし、その理由分かるもん……」
私は何も変だとは思わない。だって私も一緒だったからね……
園「え??何でよ……」
貴「まぁまぁ……今は蘭の話でしょ?蘭に聞いてみたら??」
園「……どうしてなの蘭」
蘭「……え?だって家が同じ方向なんだもん……」
……まぁ大体はこの理由よね。幼馴染あるある……お互いの家が近いから自然と帰る方向も一緒になる。
貴「……家が近いから帰る方向も一緒だし、結局一緒に帰る事になるよね(よく快斗と喧嘩した時、口聞かなくても言い合いしてても、結局いつも一緒に帰ってたの思い出すな〜……)」
園「…………いいわ……続けて……」
あれ、園子が項垂れちゃった……。世間一般的にはきっと別々で帰るだろうね。力無い園子の言葉を聞いて蘭は話を再開する。
中2になったばかりの春の刻。夕陽に照らされて桜が咲き乱れる頃、蘭と工藤くんはそっぽを向きながら土手を二人で歩いていた……
蘭「その時歌が……」
貴「……え?」
蘭「その時川の方から歌が聞こえてきたの……そう、それを聞いてる内に何となく……」
園「仲直りしちゃったんだ……で、何て歌?」
貴「歌で……仲直り……──────」
〝───── ─────♪〟
頭の中に浮かんできたのは、遠い過去の記憶……
今まで蘭達のエピソードとして聞いていたのに……さっきまでなんて事ないように聞いていた言葉が、だんだん……重要な単語として頭に思い浮かんでくる。
(中学2年生になったばかりの春……、夕暮れ時……、土手……、川原……、歌……。
────── 私も確かそこで歌を……)
貴「…………」
蘭「何だったっけ……有名な曲だったとは思うんだけど……」
園「おいおい……💧」
蘭「でも……何ていうか心の奥まで染み込むような歌だった……」
園「へぇ〜〜……」
話し終えた蘭はふと右隣に座っていた憐の方を見た。彼女は自分の視線に気づいていないのか、下を向いて一点を見つめていた。
