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あれからの私達の様子は、何とも言い難いものだった。
貴「見て快斗!象だよ!水をあんなに高く放って……凄いね〜!」
快「……ロボットだよ」
貴「!?……そ、そうよね!それはそうなんだけど……」
誘ったのは私なのだから、快斗には何とか楽しんで貰いたくて声をかけるけど、快斗の反応は芳しくない。私も気の利いた事言えれば良いけど、何を話せばいいのか分からない。何処となくぎこちない雰囲気だった。いつもの私達ってどんな事を話していたっけ……
貴「え、えっと……そうだ!ねぇここ入ろ!凄く楽しいって評判なんだよ!」
この空気を変えたくて、大して見ずに指を指した場所が……
快「楽しいって……俺はともかくお前には絶対無理だと思うけどな……」
貴「えっ?」
彼の言葉に違和感を覚え、改めて自分が指したものをじっくり見た……。
貴「ミステリーハウス!?!?」
ミステリーハウスとは幽霊が沢山住まう屋敷がコンセプトのアトラクションだ。ホラー苦手な私が楽しめるなんて言うわけない。快斗も変に思ったのか私の事を疑うような視線を送っていた。
……私がホラー苦手な事、知ってるのは快斗だけ。もうとっくにバレてるのだから、無理に隠す必要なんてない。だけど自分で言った手前、今更やめようなんて言い出せなくて……
貴「平気!……全然怖くないから!ほ、ほら行くよ……!」
本当は逃げ出したい気持ちを必死に隠して、最大限の笑顔を見せて彼の腕を引っ張って中に入った。
中に入ると、大きな部屋に他の人も含めて大人数が部屋の中心部に集められていた。どこか不気味な様子を漂わせながら、物語は進む。四方八方の壁にかけられていた絵が徐々に伸びている。おどろおどろしいナレーションと共に起こる怪奇現象にジワジワと湧き上がるこの感情。
『貴方達はもうこの部屋から出られません……』
(うぅ……あーもう私の馬鹿!……他にも楽しいアトラクションはいっぱいあったのに、何で1番苦手なアトラクションを選ぶのよ!周りをよく見ないからこうなるの……!)
自分の行動を後悔してももう遅い。部屋は暗く、パイプオルガンの不協和音が響き、恐怖心を煽る仕掛けが次々行われる。
『キャ〜〜っ!!絵が伸びてる!?』
誰かが部屋の壁にかかっていた絵の事を叫ぶ。その悲鳴にならって、私達は壁を見上げた。
貴「ひっ!?!?ほんとだ!何でさっき見た時よりも絵が伸びてるの……」
壁にかかっている絵が、少し前に見た時よりも下に伸びている。恐怖が最高潮まで達した私は傍にいた快斗の腕をギュッと掴んだ。
快「ったく……怖くないんじゃねぇのかよ」
貴「だって!この部屋不気味だし、絵が伸びてる理由も分からなくて、二重の意味で怖いよっ!」
快「……分からない憐に教えてやるよ。これは絵が伸びてるんじゃなくて、俺達のいるこの部屋自体が下にさがってるんだよ」
貴「な、なるほどね……でもこの部屋の仕組みが分かったとしても怖いものは怖いよ〜……」
快「……やっぱりオメーには無理じゃねぇか」
貴「そ、そんな事ないっ!……あっ!ほらみんな扉の方に向かってるよ!早く行こ!」
快「お、おい憐?!」
……本音を言うと、上手い言い訳が思い付かなかった。強がりも言い訳も彼の前では無意味だと分かっているはずなのに、癖のように出てしまう。
青子のように素直に甘えられればもう少し可愛げが出るはずなのに……何故私はこうも意地っ張りなのだろう。
快斗の呆れたような視線も、的を得た指摘も全て無視して、私は強引に彼の腕を引っ張りながら前の人へと続いていった。
己の恐怖心など気にもとめず、無我夢中で駆け抜けたホラーアトラクション、ミステリーハウス……
貴「やっと抜けられた……あーもう怖かった!」
あまりの怖さに、悲鳴を上げまくっていた私は肩で息をする一方で、快斗はという涼しい顔をして汗ひとつかかずにアトラクションを体験していた。
(……楽しくなかったのかな)
……いつもなら楽しげな反応見せてくれる快斗が、今回は淡々とした反応を見せていた。予想外の反応に思わず肩を落とす。
快「どうした憐……もうへばったのか」
ううん、落ち込んでいる暇はない。……私は今日、アンタの無実を証明しに来たんだから。
貴「何言ってるのよ……まだまだこれからよ!」
─── 色々な意味で最後に笑うのは……私達よ!
デートはまだ始まったばかり……。
────────────────────────
『ようこそ!トロピカルランドへー!』
子ども達に風船を配っているうさぎの着ぐるみがいる。
貴「わぁ〜可愛い……」
ファンシーでメルヘンなうさぎが、小さな子どもに囲まれて和気藹々とした声が溢れ出ている。その様子を嬉しそうに見守る憐に対し、何処か冷めた目で見ていた快斗は、そのうさぎの着ぐるみに近づき匂いを嗅いだ。
快「わぁ〜汗くせー」
憐とは正反対な声をあげる。言うに事欠いて、汗臭いとは何でそんな失礼な事を言うのだろうか。見ていた子どもも言われたうさぎも、訝しげな目で快斗を見ていた。
貴「快斗……?」
周りの視線も、動揺して足を止めた憐の事も気にせず、快斗はスタスタ前を歩いていく。
貴「ちょ、ちょっと!ねぇ快斗!待ってよっ……!」
それでも彼の後を追いかけた憐は、大声で呼び止める。
貴「……もう我慢の限界!私が無理やり誘ったから、少しでも楽しんで貰いたくて頑張ってるのに、どうして意地悪な事ばかり言うのっ…!」
快「……」
感情的になって訴えかける憐に対して、微動だにせず背中を向けて立っている快斗。痺れを切らした憐は、目頭が熱くなるのを感じながら呼びかけ続ける。
貴「聞いてるの?!快斗ってば……」
快「よし!それでこそ憐!……そのほうが自然だぜ」
貴「へっ?」
憐から問い詰められていた快斗は笑顔で振り返り言葉を返した。憐は彼の発した言葉の意図が読み取れず困惑していた。
快「今日のお前、色々と態度が変だぞ!やたら俺を上げるような事を言うし、憐らしくないぜ!
俺はな……〝いつもの憐〟と〝デート〟したいんだよ……!」
貴「っ!?!?」
……彼は笑顔で答えた。馬鹿にするような笑みではなく、自然な形で楽しみたいのだと朗らかに笑っていた。その笑みを真正面から受けた憐は、すぐに意味を理解出来ずにジワジワと顔が熱くなるのを感じた。
快「ケケケッ!顔あっけぇな〜……もしかして、〝デート〟って言葉に照れたのかぁ?でもこの言葉って、お前から言い出したんだろ〜?」
貴「も、もうーー!!照れてないわっ!!からかわないでよ馬鹿!!」
─── ポカッ!
自分を揶揄うような態度の快斗の頭を思いっきり振りかぶった。星が飛び出るぐらい景気の良い音が響き渡る。
快「ってぇ!!何すんだよ阿呆!!」
貴「快斗が悪い!人を揶揄うような事言うから……!!アンタが時間を割いて来てくれたんだから、楽しませようとした私の純粋な気持ちを返して」
……純粋な気持ちではなく、彼にかかっている疑惑を何とか晴らしたい、そんな思いで誘ったから罪悪感はあった。時間を作ってくれた彼に楽しんで貰いたいという思い、そして自分の罪悪感軽減の為、何とか盛り上げようとしたけど、上手くいかずにお互いの雰囲気は何処かぎこちないものに。……だからといって揶揄われるのは心外だった。
快「無理に楽しませようとしなくたっていい……ありのままのお前が良いんだ……!だって俺は憐といて……」
貴(快斗……)
だけど元々ぎこちない雰囲気になった原因は無理をしていた自分……憐はようやく素っ気ない快斗の態度に納得がいった。だから態と怒らせるような事を言ったんだと理解する。
快「退屈だって感じた事ないからなっ!」
……屈託のない笑みを快斗から向けられた憐は嬉しそうに笑った。
貴「!!……私も……アンタといて退屈だった事なんてないからっ!」
彼女の言葉を受けて、更に嬉しそうに笑う快斗。小さい頃から長年一緒にいる幼馴染同士。これまでの日々を振り返ると、その日々の中には下らない喧嘩もしたり、時には相手を悲しませてしまったりと順風満帆とはいかないけれど……それでも一緒にいる理由を敢えて述べるとしたら……
────── 退屈しないから……
この言葉に嘘偽りはないが、本心かと問われれば二人は揃って否と答えるだろう。これは今の二人が相手に伝えられる精一杯の〝表向きの理由〟にすぎない……
────── 〝全て〟の想いを告げられるのまだ先……
────────────────────────
────── 海のレストラン
何処かぎこちなかった雰囲気がいつも通りの和やかなもの戻った時、大きな腹の音が鳴った。その腹の主は誤魔化すように慌てて歩き出す。憐が止める間もなく、快斗が入った店は豊富な海鮮料理が楽しめる海のレストランだった。……この世で自分が最も苦手な〝魚〟が出てくるレストランだと彼が気づいた頃には、既に店員から空席へと案内される所だった。
……だからと言って快斗は、場所を変える事はしなかった。何食わぬ顔して内心焦りまくっていた。冷や汗が止まらず、憐に「大丈夫なの?」と心配されるも、「……ケッ!何言ってんだよ〜!こんくらい余裕だぜっ!!」と強気に返した。
……ちなみに憐の前で言い出せなかったのは、例え己の弱点が知られていたとしても、好きな異性の前でかっこ悪い所を見せたくなかったほんのちょっとした彼のプライドである。
比較的すんなりお昼のメニューを決めた憐と、悩みに悩み抜き苦渋の選択でメニューを選んだ快斗。暫く経つと、二人の目の前に料理が置かれた。彼女の前には脂ののった大きな〝魚〟が置かれ、彼の前には真っ赤に茹で上がった大きな〝海老〟が置かれた。
貴「……う〜んっ美味しい♡」
戸惑っている快斗を横目に、なんの躊躇いも無く魚を頬張った憐。
快「てめぇ、俺の目の前で魚食うことないだろ!?」
事情を分かっている癖に態と大袈裟な演技で食べ始める憐に、目玉が飛び出るほど驚きながら怒った快斗。だが、彼の勢いに負ける憐ではなかった。
貴「……」
快「な、なんだよ……!」
貴「べっつにぃ〜?私はただ海鮮料理が食べられるレストランで、美味しい魚の料理を食べているだけ!大体ここに率先して入ったのは快斗でしょ?それなのに私が食べてるメニューに口出ししてこないでくださーい!」
快「んにゃろ……(憐の言う通りなんだよな……クソ〜!俺も憐の事笑えねぇ!)」
喧嘩した時の言い合いは優勢に立つことが多い快斗が、ぐうの音も出ないほど言い返せていない珍しい状況が可笑しいと感じた憐は、上機嫌に残りの魚を口に入れた。
────────────────────────
快斗side
地獄のランチタイムを過ごした俺達は店を出て周辺を適当に歩いていた。今思い出しても鳥肌が立つ……俺はあの時間必死だったが、憐は違った。なんなら当てつけのように俺に見せつけながら清々しい笑顔で食べていた。
快(な〜にが「こんなに美味しいのに……美味しく食べられないなんて快斗可哀想……」だよ!!俺は魚なんか食わなくたって平気だっつーの!!)
魚料理を平らげた憐は笑顔で上の言葉を言い放った。俺がよく確認せずに入ったレストラン……そこは自分が苦手とする海の幸を提供する海のレストラン。そんな所のメインと言えば勿論〝魚〟を使った料理だ。憐の言う通り、このレストランは俺が指定した場所……そしてアイツも心配してくれていたのに、我を通したのは俺だ……アイツにだせぇ所を見られたくなくてついそのまま突っ切ってしまったが、やっぱりやめておけば良かったと後悔した。
苦労していた俺を可笑しく笑っていた憐に少し苛立ちが募る俺。しかし、憐はそんな俺を察してか、穏やかに言葉を紡ぐ。
貴「……揶揄われた腹いせに快斗の苦手な魚料理を頼んじゃったけどやりすぎたわ。ごめんね」
快「……へー……俺へのやり返しって訳か。成功して良かったな〜……」
貴「ほんとごめんってば〜……だから拗ねないで……?ほらこれ見てっ!快斗が好きそうなアトラクションがあるよ?」
そう言って持っていたトロピカルランドの地図を指さす憐。俺もチラッと目を向けて再び彼女へと視線を戻す。
貴「玲於と二人でよくやってるゲームに、こんな感じの車に乗って走るゲームがあるでしょ?折角だしこれ乗ろうよ……!」
気分が上がり紅潮した頬、宝石のようにキラキラと輝いている瞳……
(はぁ〜……やっぱり敵わねぇな)
────── ムーンストーンのような輝きを持つ瞳……
快「……あーもう、しょうがねーな!ほら行くぞー!手加減してやらねーからな〜っ!!」
貴「!!……うん!!」
……如何に俺がコイツに甘いのか玲於に言われなくともちゃんと理解している。だけど惚れた弱味に勝てる奴なんているのかよ。いつかその弱味に付け込まれて、とんでもない過ちを犯しそうだと考えたりもするが、だけど憐が居るから俺は臆すること無く己の道を歩むことが出来るのだ。
俺は憐の手を掴み、目的のアトラクションへと向かった。
