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快斗side
────── 日曜日 トロピカルランド
時刻は昼の11時55分。もうすぐ全ての時計の針が頂点にさす頃、俺達は約束のトロピカルランドへとやって来ていた。
そう〝俺達〟なのである……
(憐の奴、何で〝二人きりのデート〟で誘わないんだよ……!)
玲「いや〜……なんかごめんね。せっかく姉さんと〝二人きりのデート〟だと思ってたのに、僕が一緒に着いてきちゃって……」
俺は何も言葉を発していないのに、玲於は申し訳なさそうに言いながら、隣を歩いている。いきなり何を言い出すかと思えば……まさかコイツ、俺の心の中を読んだのか……?
快「な、何言ってんだ〜?俺はそんな事思ってねぇけど〜?」
玲「ふーん、意外と気づかないもんなんだね……今の君の表情、残念だな〜って顔してるよ?」
快「な!……勝手な事言うな!」
玲「まぁ珍しく姉さんからデートのお誘いだったのに、何故か青ちゃんから僕宛てに電話かかってきて、青ちゃんからも来週の日曜日、トロピカルランド行こうって誘いのデートだったから、どうせなら一緒に行こうって話になったんだよね」
快「だから俺は別に期待なんかしちゃいねぇよ……」
そう、期待なんかしていない……珍しくアイツからの誘いだった事、誘いの内容もデートだった事も、場所がトロピカルランドだった事も……二人きりのデートだと一瞬でも考えたがすぐその考えは否定されたから……。
玲於が説明した通り、憐からの電話の後、何故か青子から玲於宛に電話がかかってきて、内容は憐と同じく来週の日曜日、トロピカルランドにデートに行こうという誘いの電話だった。このタイミングで内容も憐と同じとなると、絶対憐も一枚噛んでいる。玲於も同様の事を考えたのか、それとなく青子に、今回のデートは憐も関係しているのか聞いた所、笑って誤魔化されたのだと言う。……でもこれで原因が分かった。
青子の様子が変だったのは俺のせいだった。恐らく憐かもしくは警部に怪盗キッドの正体は黒羽快斗であると言われた可能性が高い。警部からキッドの予告の日を聞き出して、憐と結託して今回の計画が実現された。
……このデートも仕組まれたものだ。現に憐は〝デート〟をしようと誘ってきたが、一言も〝二人で〟とか〝二人きり〟などの言葉を口に出さなかった……つまりそういうことである。
(……まぁ、玲於を協力者として秘密で連れて来ようと思っていたから、別に最初から二人きりじゃねぇから良いんだけどよ……それでも、アイツからの誘いが俺の疑いによって計画されたもので、最初から〝二人きり〟を想定していないのが、なんかムカつく)
……せめて誘う時に二人きりじゃないなら〝デート〟なんて単語使うなよと軽い文句が溢れ出そうになるのを堪えて、頭を切替える。
快「玲於。今日の予定は分かってんだろうな?」
玲「分かってるよ。基本は快くんのサポートだけど、予告時間30分前に君と入れ替わる。長時間は難しいけど、30分という短時間なら変装できる。その間君はキッドの仕事をして、青ちゃんにはどこかで眠ってもらって、ランドのスタッフさんに見てもらう事により、僕が快くんと入れ替われるようにする。基本姉さんとの会話は相槌のみ。できる限り会話を想定して録音した快くんの声を使って、君が帰ってくる間まで何とか乗り切る!頑張って時間を稼ぐから!快くんも頑張ってね!」
いつになく真剣な表情で話す玲於に、俺は背中を思いっきり叩いた。
玲「いっっ!?……え?!なんで?!」
快「概ね合ってる……だけど、お前は自分の事優先しろよ」
玲「そんな事言ってる場合?!君は疑われてるんだよ?!」
快「んなもん分かってる!でもこの状況は、俺のミスによって起きてしまったもの。勿論お前の手も借りたいと思っていたが、あくまで俺のサポートだ!少し手を貸してくれるだけでいい。後は俺に任せてくれ!」
玲於は何も言わず、何か言いたげな表情を見せながら黙っている。不安になる気持ちも分かるが、コイツには他にやらなくちゃいけないことがある。
快「せっかくあっちから機会を作ってくれたんだ……早いとこ仲直りしていつものお前らに戻れよな」
……元はと言えば、俺のせいでこんな面倒な事になった。憐に正体がバレかけ、中森親子にも疑われ、俺のせいで青子達が変な態度になり、玲於にも迷惑かけている。俺が言えた義理ではないが、せめてもうこれ以上こいつらの仲が拗れるのは見たくない。
玲「……快くんのその全部一人で抱え込む所、僕は好きじゃない」
快「そんな事ねぇよ。頼りにしてるぜ相棒!」
玲「……全く。調子が良いんだから」
……鬱陶しそうに前髪を払って、腕を組むその仕草、少し棘を感じるその言い方……
快「お前らやっぱり姉弟だよな……」
────── 不機嫌なアイツの言い方にそっくりだった
玲「……姉さんを思い出してるところ申し訳ないけど、待ち合わせ時間過ぎてるんだよね」
玲於の言葉にハッとして、気を引きしめなおす。コイツの言動に憐の存在を感じている場合ではない。今回は只のデートではなく、絶体絶命のピンチ、俺の人生がかかっているデートなのだ。何としてでもこのデートを乗り切って、盗めなかったお宝を今日こそ盗み出す。
────── 完璧に欺いてみせる。怪盗キッドの名にかけて……
────── 中森警部も、青子も……
────── 憐も……
快「早く行かねぇとアイツらに文句言われるな。さっさと行くぜ!」
────────────────────────
ここは東都の人なら誰もが知っている有名な遊園地、トロピカルランドだ。スリル満点なミステリーコースターに、ホラー強めのミステリーハウス、高所からの景色を楽しめる観覧車、大きな西洋風のお城などなど、非日常を楽しめる素敵な場所……そんな大好きなトロピカルランドに、私と青子は今、この場所に似つかわしい雰囲気で、ある人物達を待っていた……。
青「遅いなー快斗と玲於」
貴「……快斗も玲於も承諾していないんだから、来ない可能性が高いよ」
青「分かってるよ……でも来ないと益々怪しくなるよね?」
貴「……そうね」
この日曜日にトロピカルランドに快斗を誘う事に意味がある……青子から聞いたけど、〝今週の日曜日〟に怪盗キッドは予告状を出している。何でも先週盗めなかった物を再度盗む為らしい。キッド疑惑のある快斗を誘った時、予定があるから無理だと言っていた。寺井さんに、快斗にマジックショーの予定はあるのか聞いた時、あると言っていたから、その予定かもしれないし、もしくは寺井さんも実は知っていてその予定が実はキッドの仕事……という可能性もある。
(半ば強引に誘ったから、来なかったとしても仕方ないよ……でも、もういい加減モヤモヤした気持ちを抱えるのは嫌だ……快斗の事を疑いたくない。出来れば来て欲しい……それに勇気を出したデートの誘いだから、来なかったら来なかったでショックが大きいかも……)
青「憐大丈夫?」
貴「……うん、大丈夫!しっかりしなきゃね」
……心の中で弱音を吐いてしまった。でも声にでてなくて良かった……だって声にまで出てたら、きっともっと青子に心配かけてしまう。青子だって大好きな父親の銀三さんが、幼馴染の快斗をキッドとして疑っていると聞いた時、どんな気持ちになったかなんて想像にかたくない。
青子も心配だけど、快斗と仲の良い玲於のこともそう……キッドの正体がもしも快斗だったら、きっとショックを受ける。青子と玲於の為にも、キッドと快斗は別人であって欲しい……ささやかな願いを胸に私は、ひたすらに彼らを待っていた。
青「ねぇ憐!来たよ!玲於と快斗よ!」
貴「!!」
青子の指さす方へと顔を向ける。休日のトロピカルランドは来場者も多く、見渡す限り人に溢れている。それだから合流するのに苦労するだろうなと考えていた。家が隣だから一緒に行けば良いかとも一瞬考えたが、私達の雰囲気的に憚られた。
そんな訳で私と青子、快斗と恐らく玲於と別れて行くことになり、現地集合とした。
でも青子のおかげですぐに見つけることが出来た。……二人を見つけた瞬間笑いが零れてしまった。
青「憐?何で笑ってるの?」
青子は私が笑っている理由が分からないらしく、不思議そうに尋ねる。
貴「だってあの服……快斗も玲於も似たような柄シャツ着てるけど、あの柄凄くない?これだけ人が多いのに目立ってるのよ?」
快斗も玲於も似たような柄シャツを着ていたのだが、問題はその柄……凄く目立っている。快斗なんかわざわざサングラスまでつけちゃって……全く、かっこつけすぎよ。青子も私の訳を聞いて「そうだね」と小さく笑ってくれた。
快「よっ!待たせたな……」
玲「ごめんね。準備してたら遅れちゃった」
快斗と玲於の軽い挨拶に、青子はポツリと言葉を漏らす。
青「信じてたよ……来てくれるって……」
玲「……僕が青ちゃんとのデートをすっぽかすなんて、天地がひっくり返っても有り得ないから安心して」
明らかに誰に向けられた言葉なのか分かる。そしてその気持ちはちゃんと理解伝わるべき人間に伝わったのだろう。いつの間にか隣に並んだ快斗と一緒に、玲於と青子のやり取りを静かに見守っていた。
玲「じゃあ僕らは僕らで先に行くね」
青「……えっ?」
快「……ん?」
貴「うん!行ってらっしゃい。楽しんできてね、青子!」
青「憐!?」
青子の手をサラッと握った玲於は、私達に別れを告げて賑やかな声がする方へと歩き始めた。青子は状況把握出来ないまま、玲於に連れられて歩き出す。私の方へとチラチラ顔を向けるが、私は手を振って見送っている。私は昨夜玲於にちょっとしたアドバイスをしていた。
────── 回想 昨夜
貴『玲於。明日のトロピカルランド、青子と二人で抜け出していいよ』
玲『……何で?』
貴『青子とギクシャクしてるでしょ。私が気づいてないとでも思った……?』
玲『……やっぱり姉さんは分かってたんだね』
貴『当たり前よ……だって私はアンタの姉で、あの子の親友なんだから!
青子はね……私を心配して明日のデートを私達と一緒の場所にしてくれた。でも私は大丈夫だから!快斗は私が誘ったんだもの……私が面倒見るから、玲於は青子と楽しんできなさいね。それで早く仲直りしなさいよ』
玲『……うん。ありがとう、姉さん』
────────────────────────
貴「頑張ってね、玲於……」
快「なるほどな〜……お前の入れ知恵か?」
貴「……さぁね」
快「……それより憐。お前、俺ら見て笑ってただろ。何だったんだよ」
玲於達を見送った後も、私達はそのまま同じ場所に立ち続けていた。すると快斗がムスッとした表情で問いかけてきた。笑われていたことに気づいてたらしい。
貴「べっつに〜?……誰かさんの装いが凄く決まってて、人混みの中でもすぐ分かったから笑ってただけだよ」
快「それ褒めてんのか」
貴「褒めてるよ!それに、私も嬉しかったのよ!……強引に誘ったから来ないのも承知だった。でも、快斗は来てくれた……」
快「!!」
……例え怪盗の用事だとしても、今此処にいるのは〝その用事〟よりも優先して来てくれたんだもの。素直に嬉しいと感じていた。私が笑って返した言葉に、快斗はぶっきらぼうに言い放つ。
快「バーカ……俺が来なかったら、お前は泣くだろ」
予想だにしない言葉だった。
貴「なっ!……別に泣かないわよ!い、いきなり何言い出すの?!」
慌てて言い返す。来ないのも承知で無理やり誘ったんだから、泣く資格なんてない。
貴「子どもじゃあるまいし泣かないよ!」
快「……へぇ〜?」
貴「何でニヤニヤしてんのよ。本当よ!」
快「昔は人前でよく涙を見せていたのに、今じゃ隠れて泣いてるの知ってるからな」
貴「!?!?」
何でそれを……?!?!
快「固まってんなよ!ほらさっさと行くぞー」
貴「……」
快斗が前を颯爽と歩いていく。なんてことないように言いながらとんでもないことを口にしていた。……確かに私は昔からよく泣いていて、それこそ人前で構わず涙を流していた。あの時はまだ子どもだったから、悲しい事があると泣けてしまい、抑えようとしても抑えられなくて、自分の事なのにコントロール出来なくて、それも辛くて余計泣くことが多かった。周囲を困らせることは本意じゃなかった。その度に快斗がマジックを見せてくれて、泣いてもすぐ笑えることが増えていった。
でも成長するにつれて、あの時の自分の未熟さを恥じて、人前で泣くことを極力やめた。双子とはいえ私が姉なのだから、弟の前で泣いてなんかいられない思ったのだ。……でも私自身が強くなった訳じゃなくて、今もすぐ泣いてしまう癖は変わらなかった。それならせめて人前では晒さぬようその場で取り繕い、家へ帰り一人で静かに涙を流していた。
快『バーロー!!無理して強がらなくていい……玲於にも青子にも言えなくてもいい……だけどな……俺には言えよ!怖いなら怖いって!
俺はな!……無理してるお前の姿を見るのは嫌なんだよ!』
────── それも快斗のおかげで、快斗の前だと涙を見せるのに抵抗が少なくなったけど……
快『お前のどんなところも、俺は受け止められる。だから安心して頼ってこいよ』
────── 結局アンタには……
貴「……何もかもお見通しなのね」
────── どう足掻いてもアイツには勝てない……
……自分よりも自分の事を分かっている幼馴染に、じゃっかんの恐怖を覚えるも、今回の目的を再度思い出し気持ちを切り替え、少し先でこちらを振り返って待っている快斗の傍まで駆け寄る為に、止まっていた脚を動かした。
