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玲於side
玲「それで……?何で快くんが変な態度だったのか教えてくれるよね??」
快「そ、それはだな……(立ち直ったのはいいが、こうなるとこれもまた面倒なんだよなコイツ……)」
あれからすっかり元に戻った僕は快くんに話を聞こうと快くん家にお邪魔していた。誰にも聞かれない場所って言ったら快くん家が一番なんだよね。うちだと姉さんや青ちゃんもいるかもしれないからね。なるべくプレッシャーをかけないように、にこやかに聞いてるのに何故か快くんは困ったように目を逸らしている。
快「青子の様子が変なのは分からねぇけど、憐のは多分俺のせいだ……」
玲「……何で姉さんのだけ理由がわかるの?」
快くんの中で、姉さんのだけきっと思い当たる部分がある。僕が訳を問えば、彼は一旦口を噤む。しかし、覚悟を決めたような表情で話し始めた。その内容を聞いて、僕は思わず大声を出して驚いてしまったのだ。
玲「え?!?!ほ、ほんとに……?」
快「……冗談でこんなこと言うと思ってんのか?」
玲「いや!いくらお調子者の君でも流石に冗談でそんな事言わないと思ってるけど……」
快「オメーなぁ!!」
玲「だって……それは君にとって一番のタブーだろ??」
────── 彼が何より恐れていること……
──────姉さん が危険にさらされること……
────── 自身の〝秘密事〟がバレてしまうこと……
快「アイツにバレちまったかもしれない……〝怪盗キッド〟の正体が〝黒羽快斗〟だってな……」
諦めたように笑いながら話す快くんの様子に、周囲の空気が重々しくなる……。
玲「……何で君は、姉さんに正体がバレたと思ったの?」
話す声のトーン、表情から快くんが冗談ではなく本気で言っていることはじゅうぶん分かっている。だけど何故その考えに至ったのか、僕は今だに分からずにいた。
快「…………」
きっと聡明な快くんの事だから、何か〝根拠〟があって言っているに違いない。じゃあその〝根拠〟って一体……?僕の追求に、快くんは一呼吸置いて悲しげな表情で訳を話してくれた。
快「……この前俺が天空の貴婦人 を盗みに飛行船に行っただろ」
玲「うん。鈴木相談役に挑戦状を叩きつけられた快くんは、受けて立ってやらぁ!って勢い任せてその飛行船に乗り込んでったよね」
快「……言い方が腹立つが、まぁそうだな……で、その飛行船には憐も乗っていた。ちょっとしたハプニングがあって憐の前で正体がバレそうになった俺は、無理やり〝工藤新一〟に変装したんだよ。工藤新一だったらちょっと髪型変えりゃ済む話だからな……でもそれが良くなかったんだろうな……」
玲「?」
快「あの変装と、名探偵の彼女の発言でアイツは〝怪盗キッド〟の素顔は〝工藤新一〟とそっくりだと気づいちまった」
玲「!?!?」
──────〝工藤新一〟
以前姉さんが言っていた天才……快くん同様圧倒的な頭脳を持ち、どんな難事件もあっという間に解いてしまう高校生探偵……
快くんは知らないが、彼が僕達の思い出を守る為に盗み出してくれた時計台の事件……あの時やたら快くんが手こずったのは、この工藤くんが銀三さん達警察に知恵を貸していたから。
その工藤くんは何の因果かなのか、快くんと非常に顔がよく似ているのである……僕は以前新聞で彼の顔を見たことがあったけど、本当に似ていた。僕ら双子よりも双子の兄弟だと言われてもおかしくないぐらいで、二人の顔、背丈、声、何もかもそっくりで、姉さんは工藤くんと初めて会った時、快くんと間違えてしまったと話してくれたことがあった。
玲「でも上手く騙せたんだよね?それなのにどうして気づかれたの……」
血の繋がりもない赤の他人同士である工藤くんと快くんが、何故あんなにも似ているのか……分からないけれど、今回起きたハプニングによって自分の正体がバレそうになった快くんは、咄嗟に〝怪盗キッドの正体は工藤新一だった〟と思わせる為に工藤くんに化けた。その結果、彼の思惑通り、姉さん達を上手く騙すことに成功した。でも結局は姉さんにも彼女さんにも気づかれてしまった訳だ。
快「彼女には態度の差でバレたみたいだぜ……ったく、憐への態度だって普通だぞ俺は〜……何でバレたんだよ」
玲「なるほどね〜……うーんとね、すっごく分かりやすいよ」
快「そんな事ねぇよ!!でもあの子に気づかれるなんて想定外だぜ」
快くんは工藤くんの彼女に気づかれたことが余程悔しかったみたいだけど、でもまぁ君と同じく幼馴染で好きな人だから、あの子も自分と姉さんの態度の差で分かったんじゃないかと密かに僕は思った。
(君は隠してるつもりだけど、隠しきれていないんだよな〜……姉さんを見つめる瞳や行動が、あまりにも優しくて、切なくて、甘さも含まれていて……少なくとも君を知っている人間は気づいてしまう、思い知らされる……)
────── 姉さんだけは〝特別〟なのだと……
どちらにせよ二人の顔立ちが瓜二つだからこそ出来た土壇場での変装。銀三さん達は騙しきった事から、やっぱり彼の変装技術は素晴らしいものだ。
玲「姉さんにもバレた理由は何?」
僕の問いかけに、彼はゆっくりと自身の手のひらに視線を写した。その視線の動きが答えとなった。
玲「……手?」
理由が分からず、素直な気持ちを口に出すと、彼は静かに微笑んだ。……ただの微笑みではなく、これまた隠しきれていない喜びを含んだ微笑みだった。
快「憐に言われたんだ……俺の手は安心するって……。名探偵ではなく〝俺〟だからアイツは感じ取ったんだってよ。たったそれだけで、分かっちまうもんなんだな……」
自分の手を掴まれただけで、工藤くんに感じられなかった安心感を得てキッドの正体は、工藤くんではないことを当てた姉さん。内容が内容だけに手放しで喜べる状況ではないけど、姉さんの事を嬉しそうに語る本人を見て、僕は純粋に「良かったね」と快くんに同調するような言葉をかけた。
嬉しそうな親友の気持ちを察する。自分の目的の為、怪盗キッドでいる時は己を殺し、徹底的に怪盗を演じている彼の姿は完璧に作られた道化師のようだ。高校生ながらプロ意識が高く、宝石を盗み出す為に緻密にねられた作戦、どんな相手にもなれてしまう完璧な変装技術、それを可能とする頭脳と身体能力、それもまた彼にとって褒め言葉になるだろう。例え世間から厳しい目を向けられていたとしても、僕には怪盗キッドも快くんの一部分にすぎないのだから……快くんには言っていないけど、2代目怪盗キッドの最初のファンは自分だと思っている。……だから僕は常に彼を尊敬しているのだ。
それと同時に双子の姉に対しても尊敬の念を抱いた。怪盗キッドの正体が実はクラスメイトの工藤くんだったと誤った情報を与えられていたにも関わらず、最終的に自ら真実に辿り着いている。
快くんも姉さんと同じくらい天邪鬼だから……大切だから、巻き込まないためにも気づいて欲しくないけど、実は一番気づいて欲しいって思いもあったから……
(だから今、そんなに喜んでるんだよね……)
……互いに、不器用なりにも想い合っているのになかなか進まない二人に、ずっと僕と青ちゃんはヤキモキさせられてばかりだ。
玲「……でも分かってる?さっきも言った通り、この展開は君が恐れていたものだろう?」
神妙な顔をして黙り込む快くん。彼だって喜んでばかりはいられないことは承知しているはず。
快「あぁ、分かってる。最悪な状況だってことはな……俺が怪盗キッドだと高い確率で憐に疑われている。その疑いを晴らす為にどうする……」
玲「本当は僕が変装出来たら良かったんだけど……」
早い話、快くんと姉さんが一緒にいる時に怪盗キッドが別で現れれば良いのだ。僕がキッドもしくは快くんに変装出来ればその案が一番良いのだけど、僕には快くんほどの技術はない。仮に快くんに化粧してもらい、変装出来たとして、彼のように顔だけじゃなく、声や仕草までその人に完璧に真似出来る技術はない。
快「素人に変装させて上手くいく訳ないだろ。ましてや騙す相手は、お前の双子の姉の憐だ。すぐ違和感に気づいて、お前だとバレる可能性が高い」
いつもすんなり解決案を思いつく快くんも、今回は手こずっているようだった。お互い頭を抱えて今後の事に行き詰まっていると、突如携帯の着信音が鳴り響いた。
快「ん?誰だよ……げっ!!」
彼は自身の携帯の画面を見て苦い声をあげて驚いていた。僕が不思議に思っていると、彼は気を取り直して携帯の画面を押した。
快「もしもし……」
貴「私だけどその……来週の日曜日空いてる??」
快「来週の日曜日〜?その日は……駄目だな。先約があって無理だ」
……快くんの苦手な人が電話をかけてきたから彼は顔を顰めていたと思った。快くんがそんな顔をする相手といえば、白馬くんや小泉さんとか、一癖ある人が多い。
貴「……そう。無理を承知で言うね。来週の日曜日、時間を作って欲しいの」
快「だからその日は無理だって言ってんだろ〜……なら再来週の土日とかどうだ?その日だったら時間作れるからさ〜……」
貴「駄目!!来週の日曜日じゃなきゃ駄目なの……」
来週の日曜日と言えば、怪盗キッドが再び〝天使の王冠〟を盗みに行く大事な日なので、予定は空いていない。彼が断ったのにも関わらず、電話が終わらない様子を見ると、相手は余程の用事があるらしい。
快「……ちなみに、どうして来週の日曜日に時間作って欲しいんだよ」
貴「……その日、私とデ、デートして!!」
快「はぁ?!?!?!デート?!?!」
途端に大声を出して狼狽える快くん。だんだん表情も赤くなっているような……凄く焦っているようにも見える。
快「お前、意味分かって言ってるのかよ」
貴「……分かってるに決まってるじゃない!」
あんまり会話聞こえないけど……果たして僕はここに居ていいんだろうか?
貴「私とそういう事するのが嫌なのも分かってる……でもお願い!この日だけで良いから……」
快「憐……べ、別に嫌だなんて言ってねーだろ!デートとなれば話は別っつーか………」
玲「!?(電話の相手、姉さんだったの?!どうりで快くんがすぐ会話を終わらせない訳だ……というか今の会話内容的に、姉さんが快くんをデートに誘ってるってこと?!姉さん史上、歴史的快挙だ……)」
あの素直じゃない姉さんが、自ら快くんをデートに誘うだなんて、明日は雨かな。いつもの僕だったらせっかく頑張った姉さんをサポートする流れだが、今回は何ともまぁ日が悪い。よりにも寄って何故キッドの仕事がある日に誘うのかな。
貴「じゃあお願い……今度の日曜日、トロピカルランドでね!」
快「はぁ?!だから無理だって……」
貴「約束よ!待ってるから……」
快「あっ!おい!……」
────── プツン
快くんは携帯を持った腕を無造作に下ろした。どうやら姉さんが一方的に電話を切ったらしい。
玲「今の電話、姉さんからだったよね」
快「あぁ。来週の日曜日、トロピカルランドにデートに行こうってな」
玲「だけどその日は、再度〝天使の王冠〟を盗みに行く日だよね……?」
僕がそう告げると、彼の顔は苦しそうな表情に変わった。
快「だから断ったのに、そんなの関係なしだ!それでもアイツが来週の日曜日に拘ったのは、俺を怪盗キッドと疑っているから!その日に予定を入れて真偽を見定めようとしているって所だろうな……全く鈍いんだか鋭いんだか」
玲「そんなの姉さんが一方的に取り付けた事だろう……?快くんは断ってるんだから行く必要ないよと言いたい所だけど、行かなかったら余計怪しまれるよね……うーん、でも快くんは承諾しなかった訳だから、姉さんも行かない可能性あるし、無理して行く必要ないと思うな」
今回の姉さんの強引な誘い。しかも相手の都合などお構い無しの横暴さ。行かなかったら余計疑われるリスクがあるけど、今回のは流石に目に余るものがある。僕は行かなくても良いと進言したけど、彼は穏やかな顔で呟いた。
快「いや、絶対アイツは行く。憐はやると決めたらやる女なんだぜ。きっとその日も、トロピカルランドで来ない俺を、不安になりながら待ち続ける……そんな事させたくない」
覗きはするし、女の子にセクハラするし、調子良い事言って軽い態度が目立つ君だけど
玲「本当にさ、危ない状況だって言うのにこんな時でも君は昔からずーっと……姉さんだけには特別優しいんだから」
改めて自分と比べて敵わないなと考えてしまう。血の繋がった家族よりも姉のことを理解している親友がかっこよくて羨ましく思えた。
快「!?!?……バ、バーロー!!勘違いすんなよ!俺はただアイツがキレると後々面倒な事になるから、早めに解決しときたいだけだ!」
素直じゃない物言い、そっぽを向いて表情を悟らせないようにしているが、見えている耳が赤くなっている。素直じゃない彼の精一杯の照れ隠しの言動であることは容易に読み取れた為、僕がクスクス笑っていると、快くんは余計に睨みをきかせて僕の方を振り返った。その言動が分かりやすいんだよ……。
快「とにかく!来週の日曜日、キッドの仕事と憐とのデートを両立させる必要がある……。なかなか骨の折れる仕事だぜ。どうすっかな……」
玲「僕も協力するからね!何でも言ってよ」
快「……お前、青子は良いのかよ」
快くんが心配そうにこちらを見ていた。彼の言うこともご最もである。
玲「……うん。青ちゃんの事も大事だけど、今は君の事が最優先だ。快くんの問題を解決したら、しっかり彼女と向き合うから大丈夫だよ」
何事も優先順位を決める必要性がある。快くんに理由を聞くまでは、青ちゃんの事を最優先に何とかしようと思ったけど、事態は思ったよりも深刻だった。だから今は快くん優先だ……だけどそれが終わったら必ず彼女の問題も解決する。……それまで僕のメンタルが持つか心配だけど、ここが踏ん張り時だよね。
────── PiPiPi……PiPiPi……
突如部屋に響いた着信音。今度は僕のポケットから響いている。僕はその場で携帯を取り出し、画面をスライドさせ着信相手を見た。そして唾を飲み込みながら出る。
玲「もしもし……僕だよ」
────────────────────────
青「来週の日曜日、トロピカルランドで待ってるから!…………」
────── プツン
はにかんでいた笑顔は途端に影を落とし、通話を切る。
青「……これで青子と玲於も行けるよ」
彼女は重々しい雰囲気を漂わせながら背後で聞いていたもう一人の少女に伝える。伝えられた少女は、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる……自分が変な態度をとって、余計な疑いを持たせてしまった事、そのせいで弟の仲をギクシャクさせてしまった事を。
青「憐のせいじゃない!……憐が話してくれる前に、お父さんも言ってたから……怪盗キッドの正体が快斗なんじゃないかってね。だから憐も同じ事を言ってて驚いただけなの……そうしたら快斗の前でも、どう向き合ったら良いのか分からなくなっちゃって……」
貴「そうだよね……私も今だに信じられない」
いよいよ本当に只事では無くなってきた事を実感する。今、アイツは多数の疑惑を持たれている。少なくとも銀三さん、青子……そして私だ。
世間を騒がす神出鬼没、変幻自在の大泥棒……物腰柔らかく紳士で親切だった怪盗キッドの正体が、幼馴染の黒羽快斗なんじゃないかと疑っている。あの日飛行船で助けられた時にその疑念を抱いた。
それからの私の態度はぎこちなくて、アイツとどう向き合ったらいいのか、青子達に話した方が良いのかと色々悶々と考えていたから、周りから見た私の態度は不自然に思えただろう。学校から帰ってきた青子に様子が変だと問い詰められた時も、否定出来なかった。その青子から玲於も学校でそう叫んでいたと言われたことからも、恐らくアイツにも私の態度の不自然さは伝わっている。
でも私だけで抱えるには大きすぎて、どうする事が正解なのか分からなくなってしまっていた。でも青子に打ち明けた時、少しだけ心が軽くなった。抱えていた重しを青子も一緒に抱えようとしてくれたから。しかし、それと同時に罪悪感もわいてくる。……こんな悲しげな表情させてしまうのなら、青子に詰め寄られたからと言って告げなかった方が良かったのかもしれない。
……でも銀三さんにまでも疑いが広がっているのなら、もう私だけの問題に留めておけないな。そうなると青子に相談したのは正解だったかもしれない。信じて貰えないかもしれないと思ったけど、青子は私の言う事に耳を傾けてすんなり信じてくれた。そして今後の事を相談した時に、二人で決めた。
快斗の疑いを晴らそうと……その為の作戦が、さっきの快斗をデートに誘うことだった。怪盗キッドが予告を出した来週の日曜日、20時に予告状を出した所とは異なる場所にいれば快斗の疑いは晴れる。予告状の時間に快斗のそばにいられたら、私が証人になれる。
(快斗が無実である事を証明する為とはいえ、青子が銀三さんに、快斗は予告状の日に私とデートの約束をしてると言い切ったと聞かされた時は驚いたけど、逆に動く理由を作ってくれたのだから青子に感謝しないとね)
アイツに好きな人がいる事を知っている身としては、少し申し訳ないと思うけれどこの一日だけで良いから……強引に電話を切ってしまったけど、アイツならきっと来てくれる……これは長年一緒にいる幼馴染だから分かるのだ。
青「ねぇ憐……」
貴「何……?」
青「もし……本当に怪盗キッドの正体が快斗だったらどうする……?」
貴「……」
青子の問いかけに思わず手を握りしめる。左の手首には、その快斗から貰ったミサンガと、彼の誕生石である白いムーンストーンが密かに輝いていた。
────── もし怪盗キッドの正体が快斗だったら……
再びこの問答に答えを出す時が来た……
貴「私はキッドの正体は快斗じゃないって信じてる。でも、真実がどちらでも変わらない……」
今迄の事も全部隠されて、嘘をつかれていた……彼のそばにいたのに、気づかなかった。そうなる前に止められたのではないかと後悔し、自分の不甲斐なさに怒り、隠されていた事に涙する。
貴「キッドは私の命を何度も救ってくれた恩人……私は彼の事を怪盗だけど善人として信頼している。そしてそれ以上に快斗の事を信じている……だからキッドが快斗でも、快斗じゃない別人だったとしても、私は変わらないよ……
─── 絶対アイツの手を離したりなんかしない……」
どんなに疑わしくても、例え裏切られていたとしても、私は変わらない……今迄一緒に過ごしてきた思い出が色褪せないように、彼への想いを色褪せないのだから。人生の大半を一緒に過ごしてきたアイツへの想いは昔からずっと変わらない。
────── 何があっても私は快斗の事が好き……
────── それだけは誰に何と言われても譲れない真実
秘めていた自分の気持ちを正直に伝えた。彼女の反発を食らうこと承知で打ち明けてみた。
青「……あははは!やっぱり憐は憐だね。何だか安心した!」
予想に反して青子は怒ることもなく、ただ嬉しそうに笑った。どうやら私の回答は、青子にとって
安心する材料の1つとなったのだろう。自分らしくを貫くって案外簡単なようで難しいから。
青「青子は青子、憐は憐……キッドの事は大嫌いだけど、憐の命の恩人ならちょっとだけ見直してあげてもいいかも……」
貴「うん!……青子は青子のままでいいから」
無理に受け入れる必要はない。それぞれ異なる考えを持ってたって私達なら大丈夫。
青「でもさ!キッドの正体が何であれ、快斗の手を離さないって事は、快斗の傍を離れない!って事だよね」
貴「!!……そ、それはその……」
しまった……勢いに任せて私はなんて恥ずかしい事を……
青「憐が言い切ってくれたから、青子安心したんだよ?やっぱり快斗の隣には、憐がいなくっちゃね……!」
……恥ずかしいけど、今の青子を笑顔にさせられたのなら、良かったかなと思う。
貴「とにかく……来週の日曜日が勝負!快斗の疑いを晴らして、青子も玲於と仲直りする……これが私達のMISSIONよ」
青「うん!頑張ろうー!」
改めてお互いの意志を統一した所で、今回はここでお開きとなった。次はいよいよ、約束の日曜日へと時は動き出す。
玲「それで……?何で快くんが変な態度だったのか教えてくれるよね??」
快「そ、それはだな……(立ち直ったのはいいが、こうなるとこれもまた面倒なんだよなコイツ……)」
あれからすっかり元に戻った僕は快くんに話を聞こうと快くん家にお邪魔していた。誰にも聞かれない場所って言ったら快くん家が一番なんだよね。うちだと姉さんや青ちゃんもいるかもしれないからね。なるべくプレッシャーをかけないように、にこやかに聞いてるのに何故か快くんは困ったように目を逸らしている。
快「青子の様子が変なのは分からねぇけど、憐のは多分俺のせいだ……」
玲「……何で姉さんのだけ理由がわかるの?」
快くんの中で、姉さんのだけきっと思い当たる部分がある。僕が訳を問えば、彼は一旦口を噤む。しかし、覚悟を決めたような表情で話し始めた。その内容を聞いて、僕は思わず大声を出して驚いてしまったのだ。
玲「え?!?!ほ、ほんとに……?」
快「……冗談でこんなこと言うと思ってんのか?」
玲「いや!いくらお調子者の君でも流石に冗談でそんな事言わないと思ってるけど……」
快「オメーなぁ!!」
玲「だって……それは君にとって一番のタブーだろ??」
────── 彼が何より恐れていること……
──────
────── 自身の〝秘密事〟がバレてしまうこと……
快「アイツにバレちまったかもしれない……〝怪盗キッド〟の正体が〝黒羽快斗〟だってな……」
諦めたように笑いながら話す快くんの様子に、周囲の空気が重々しくなる……。
玲「……何で君は、姉さんに正体がバレたと思ったの?」
話す声のトーン、表情から快くんが冗談ではなく本気で言っていることはじゅうぶん分かっている。だけど何故その考えに至ったのか、僕は今だに分からずにいた。
快「…………」
きっと聡明な快くんの事だから、何か〝根拠〟があって言っているに違いない。じゃあその〝根拠〟って一体……?僕の追求に、快くんは一呼吸置いて悲しげな表情で訳を話してくれた。
快「……この前俺が
玲「うん。鈴木相談役に挑戦状を叩きつけられた快くんは、受けて立ってやらぁ!って勢い任せてその飛行船に乗り込んでったよね」
快「……言い方が腹立つが、まぁそうだな……で、その飛行船には憐も乗っていた。ちょっとしたハプニングがあって憐の前で正体がバレそうになった俺は、無理やり〝工藤新一〟に変装したんだよ。工藤新一だったらちょっと髪型変えりゃ済む話だからな……でもそれが良くなかったんだろうな……」
玲「?」
快「あの変装と、名探偵の彼女の発言でアイツは〝怪盗キッド〟の素顔は〝工藤新一〟とそっくりだと気づいちまった」
玲「!?!?」
──────〝工藤新一〟
以前姉さんが言っていた天才……快くん同様圧倒的な頭脳を持ち、どんな難事件もあっという間に解いてしまう高校生探偵……
快くんは知らないが、彼が僕達の思い出を守る為に盗み出してくれた時計台の事件……あの時やたら快くんが手こずったのは、この工藤くんが銀三さん達警察に知恵を貸していたから。
その工藤くんは何の因果かなのか、快くんと非常に顔がよく似ているのである……僕は以前新聞で彼の顔を見たことがあったけど、本当に似ていた。僕ら双子よりも双子の兄弟だと言われてもおかしくないぐらいで、二人の顔、背丈、声、何もかもそっくりで、姉さんは工藤くんと初めて会った時、快くんと間違えてしまったと話してくれたことがあった。
玲「でも上手く騙せたんだよね?それなのにどうして気づかれたの……」
血の繋がりもない赤の他人同士である工藤くんと快くんが、何故あんなにも似ているのか……分からないけれど、今回起きたハプニングによって自分の正体がバレそうになった快くんは、咄嗟に〝怪盗キッドの正体は工藤新一だった〟と思わせる為に工藤くんに化けた。その結果、彼の思惑通り、姉さん達を上手く騙すことに成功した。でも結局は姉さんにも彼女さんにも気づかれてしまった訳だ。
快「彼女には態度の差でバレたみたいだぜ……ったく、憐への態度だって普通だぞ俺は〜……何でバレたんだよ」
玲「なるほどね〜……うーんとね、すっごく分かりやすいよ」
快「そんな事ねぇよ!!でもあの子に気づかれるなんて想定外だぜ」
快くんは工藤くんの彼女に気づかれたことが余程悔しかったみたいだけど、でもまぁ君と同じく幼馴染で好きな人だから、あの子も自分と姉さんの態度の差で分かったんじゃないかと密かに僕は思った。
(君は隠してるつもりだけど、隠しきれていないんだよな〜……姉さんを見つめる瞳や行動が、あまりにも優しくて、切なくて、甘さも含まれていて……少なくとも君を知っている人間は気づいてしまう、思い知らされる……)
────── 姉さんだけは〝特別〟なのだと……
どちらにせよ二人の顔立ちが瓜二つだからこそ出来た土壇場での変装。銀三さん達は騙しきった事から、やっぱり彼の変装技術は素晴らしいものだ。
玲「姉さんにもバレた理由は何?」
僕の問いかけに、彼はゆっくりと自身の手のひらに視線を写した。その視線の動きが答えとなった。
玲「……手?」
理由が分からず、素直な気持ちを口に出すと、彼は静かに微笑んだ。……ただの微笑みではなく、これまた隠しきれていない喜びを含んだ微笑みだった。
快「憐に言われたんだ……俺の手は安心するって……。名探偵ではなく〝俺〟だからアイツは感じ取ったんだってよ。たったそれだけで、分かっちまうもんなんだな……」
自分の手を掴まれただけで、工藤くんに感じられなかった安心感を得てキッドの正体は、工藤くんではないことを当てた姉さん。内容が内容だけに手放しで喜べる状況ではないけど、姉さんの事を嬉しそうに語る本人を見て、僕は純粋に「良かったね」と快くんに同調するような言葉をかけた。
嬉しそうな親友の気持ちを察する。自分の目的の為、怪盗キッドでいる時は己を殺し、徹底的に怪盗を演じている彼の姿は完璧に作られた道化師のようだ。高校生ながらプロ意識が高く、宝石を盗み出す為に緻密にねられた作戦、どんな相手にもなれてしまう完璧な変装技術、それを可能とする頭脳と身体能力、それもまた彼にとって褒め言葉になるだろう。例え世間から厳しい目を向けられていたとしても、僕には怪盗キッドも快くんの一部分にすぎないのだから……快くんには言っていないけど、2代目怪盗キッドの最初のファンは自分だと思っている。……だから僕は常に彼を尊敬しているのだ。
それと同時に双子の姉に対しても尊敬の念を抱いた。怪盗キッドの正体が実はクラスメイトの工藤くんだったと誤った情報を与えられていたにも関わらず、最終的に自ら真実に辿り着いている。
快くんも姉さんと同じくらい天邪鬼だから……大切だから、巻き込まないためにも気づいて欲しくないけど、実は一番気づいて欲しいって思いもあったから……
(だから今、そんなに喜んでるんだよね……)
……互いに、不器用なりにも想い合っているのになかなか進まない二人に、ずっと僕と青ちゃんはヤキモキさせられてばかりだ。
玲「……でも分かってる?さっきも言った通り、この展開は君が恐れていたものだろう?」
神妙な顔をして黙り込む快くん。彼だって喜んでばかりはいられないことは承知しているはず。
快「あぁ、分かってる。最悪な状況だってことはな……俺が怪盗キッドだと高い確率で憐に疑われている。その疑いを晴らす為にどうする……」
玲「本当は僕が変装出来たら良かったんだけど……」
早い話、快くんと姉さんが一緒にいる時に怪盗キッドが別で現れれば良いのだ。僕がキッドもしくは快くんに変装出来ればその案が一番良いのだけど、僕には快くんほどの技術はない。仮に快くんに化粧してもらい、変装出来たとして、彼のように顔だけじゃなく、声や仕草までその人に完璧に真似出来る技術はない。
快「素人に変装させて上手くいく訳ないだろ。ましてや騙す相手は、お前の双子の姉の憐だ。すぐ違和感に気づいて、お前だとバレる可能性が高い」
いつもすんなり解決案を思いつく快くんも、今回は手こずっているようだった。お互い頭を抱えて今後の事に行き詰まっていると、突如携帯の着信音が鳴り響いた。
快「ん?誰だよ……げっ!!」
彼は自身の携帯の画面を見て苦い声をあげて驚いていた。僕が不思議に思っていると、彼は気を取り直して携帯の画面を押した。
快「もしもし……」
貴「私だけどその……来週の日曜日空いてる??」
快「来週の日曜日〜?その日は……駄目だな。先約があって無理だ」
……快くんの苦手な人が電話をかけてきたから彼は顔を顰めていたと思った。快くんがそんな顔をする相手といえば、白馬くんや小泉さんとか、一癖ある人が多い。
貴「……そう。無理を承知で言うね。来週の日曜日、時間を作って欲しいの」
快「だからその日は無理だって言ってんだろ〜……なら再来週の土日とかどうだ?その日だったら時間作れるからさ〜……」
貴「駄目!!来週の日曜日じゃなきゃ駄目なの……」
来週の日曜日と言えば、怪盗キッドが再び〝天使の王冠〟を盗みに行く大事な日なので、予定は空いていない。彼が断ったのにも関わらず、電話が終わらない様子を見ると、相手は余程の用事があるらしい。
快「……ちなみに、どうして来週の日曜日に時間作って欲しいんだよ」
貴「……その日、私とデ、デートして!!」
快「はぁ?!?!?!デート?!?!」
途端に大声を出して狼狽える快くん。だんだん表情も赤くなっているような……凄く焦っているようにも見える。
快「お前、意味分かって言ってるのかよ」
貴「……分かってるに決まってるじゃない!」
あんまり会話聞こえないけど……果たして僕はここに居ていいんだろうか?
貴「私とそういう事するのが嫌なのも分かってる……でもお願い!この日だけで良いから……」
快「憐……べ、別に嫌だなんて言ってねーだろ!デートとなれば話は別っつーか………」
玲「!?(電話の相手、姉さんだったの?!どうりで快くんがすぐ会話を終わらせない訳だ……というか今の会話内容的に、姉さんが快くんをデートに誘ってるってこと?!姉さん史上、歴史的快挙だ……)」
あの素直じゃない姉さんが、自ら快くんをデートに誘うだなんて、明日は雨かな。いつもの僕だったらせっかく頑張った姉さんをサポートする流れだが、今回は何ともまぁ日が悪い。よりにも寄って何故キッドの仕事がある日に誘うのかな。
貴「じゃあお願い……今度の日曜日、トロピカルランドでね!」
快「はぁ?!だから無理だって……」
貴「約束よ!待ってるから……」
快「あっ!おい!……」
────── プツン
快くんは携帯を持った腕を無造作に下ろした。どうやら姉さんが一方的に電話を切ったらしい。
玲「今の電話、姉さんからだったよね」
快「あぁ。来週の日曜日、トロピカルランドにデートに行こうってな」
玲「だけどその日は、再度〝天使の王冠〟を盗みに行く日だよね……?」
僕がそう告げると、彼の顔は苦しそうな表情に変わった。
快「だから断ったのに、そんなの関係なしだ!それでもアイツが来週の日曜日に拘ったのは、俺を怪盗キッドと疑っているから!その日に予定を入れて真偽を見定めようとしているって所だろうな……全く鈍いんだか鋭いんだか」
玲「そんなの姉さんが一方的に取り付けた事だろう……?快くんは断ってるんだから行く必要ないよと言いたい所だけど、行かなかったら余計怪しまれるよね……うーん、でも快くんは承諾しなかった訳だから、姉さんも行かない可能性あるし、無理して行く必要ないと思うな」
今回の姉さんの強引な誘い。しかも相手の都合などお構い無しの横暴さ。行かなかったら余計疑われるリスクがあるけど、今回のは流石に目に余るものがある。僕は行かなくても良いと進言したけど、彼は穏やかな顔で呟いた。
快「いや、絶対アイツは行く。憐はやると決めたらやる女なんだぜ。きっとその日も、トロピカルランドで来ない俺を、不安になりながら待ち続ける……そんな事させたくない」
覗きはするし、女の子にセクハラするし、調子良い事言って軽い態度が目立つ君だけど
玲「本当にさ、危ない状況だって言うのにこんな時でも君は昔からずーっと……姉さんだけには特別優しいんだから」
改めて自分と比べて敵わないなと考えてしまう。血の繋がった家族よりも姉のことを理解している親友がかっこよくて羨ましく思えた。
快「!?!?……バ、バーロー!!勘違いすんなよ!俺はただアイツがキレると後々面倒な事になるから、早めに解決しときたいだけだ!」
素直じゃない物言い、そっぽを向いて表情を悟らせないようにしているが、見えている耳が赤くなっている。素直じゃない彼の精一杯の照れ隠しの言動であることは容易に読み取れた為、僕がクスクス笑っていると、快くんは余計に睨みをきかせて僕の方を振り返った。その言動が分かりやすいんだよ……。
快「とにかく!来週の日曜日、キッドの仕事と憐とのデートを両立させる必要がある……。なかなか骨の折れる仕事だぜ。どうすっかな……」
玲「僕も協力するからね!何でも言ってよ」
快「……お前、青子は良いのかよ」
快くんが心配そうにこちらを見ていた。彼の言うこともご最もである。
玲「……うん。青ちゃんの事も大事だけど、今は君の事が最優先だ。快くんの問題を解決したら、しっかり彼女と向き合うから大丈夫だよ」
何事も優先順位を決める必要性がある。快くんに理由を聞くまでは、青ちゃんの事を最優先に何とかしようと思ったけど、事態は思ったよりも深刻だった。だから今は快くん優先だ……だけどそれが終わったら必ず彼女の問題も解決する。……それまで僕のメンタルが持つか心配だけど、ここが踏ん張り時だよね。
────── PiPiPi……PiPiPi……
突如部屋に響いた着信音。今度は僕のポケットから響いている。僕はその場で携帯を取り出し、画面をスライドさせ着信相手を見た。そして唾を飲み込みながら出る。
玲「もしもし……僕だよ」
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青「来週の日曜日、トロピカルランドで待ってるから!…………」
────── プツン
はにかんでいた笑顔は途端に影を落とし、通話を切る。
青「……これで青子と玲於も行けるよ」
彼女は重々しい雰囲気を漂わせながら背後で聞いていたもう一人の少女に伝える。伝えられた少女は、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べる……自分が変な態度をとって、余計な疑いを持たせてしまった事、そのせいで弟の仲をギクシャクさせてしまった事を。
青「憐のせいじゃない!……憐が話してくれる前に、お父さんも言ってたから……怪盗キッドの正体が快斗なんじゃないかってね。だから憐も同じ事を言ってて驚いただけなの……そうしたら快斗の前でも、どう向き合ったら良いのか分からなくなっちゃって……」
貴「そうだよね……私も今だに信じられない」
いよいよ本当に只事では無くなってきた事を実感する。今、アイツは多数の疑惑を持たれている。少なくとも銀三さん、青子……そして私だ。
世間を騒がす神出鬼没、変幻自在の大泥棒……物腰柔らかく紳士で親切だった怪盗キッドの正体が、幼馴染の黒羽快斗なんじゃないかと疑っている。あの日飛行船で助けられた時にその疑念を抱いた。
それからの私の態度はぎこちなくて、アイツとどう向き合ったらいいのか、青子達に話した方が良いのかと色々悶々と考えていたから、周りから見た私の態度は不自然に思えただろう。学校から帰ってきた青子に様子が変だと問い詰められた時も、否定出来なかった。その青子から玲於も学校でそう叫んでいたと言われたことからも、恐らくアイツにも私の態度の不自然さは伝わっている。
でも私だけで抱えるには大きすぎて、どうする事が正解なのか分からなくなってしまっていた。でも青子に打ち明けた時、少しだけ心が軽くなった。抱えていた重しを青子も一緒に抱えようとしてくれたから。しかし、それと同時に罪悪感もわいてくる。……こんな悲しげな表情させてしまうのなら、青子に詰め寄られたからと言って告げなかった方が良かったのかもしれない。
……でも銀三さんにまでも疑いが広がっているのなら、もう私だけの問題に留めておけないな。そうなると青子に相談したのは正解だったかもしれない。信じて貰えないかもしれないと思ったけど、青子は私の言う事に耳を傾けてすんなり信じてくれた。そして今後の事を相談した時に、二人で決めた。
快斗の疑いを晴らそうと……その為の作戦が、さっきの快斗をデートに誘うことだった。怪盗キッドが予告を出した来週の日曜日、20時に予告状を出した所とは異なる場所にいれば快斗の疑いは晴れる。予告状の時間に快斗のそばにいられたら、私が証人になれる。
(快斗が無実である事を証明する為とはいえ、青子が銀三さんに、快斗は予告状の日に私とデートの約束をしてると言い切ったと聞かされた時は驚いたけど、逆に動く理由を作ってくれたのだから青子に感謝しないとね)
アイツに好きな人がいる事を知っている身としては、少し申し訳ないと思うけれどこの一日だけで良いから……強引に電話を切ってしまったけど、アイツならきっと来てくれる……これは長年一緒にいる幼馴染だから分かるのだ。
青「ねぇ憐……」
貴「何……?」
青「もし……本当に怪盗キッドの正体が快斗だったらどうする……?」
貴「……」
青子の問いかけに思わず手を握りしめる。左の手首には、その快斗から貰ったミサンガと、彼の誕生石である白いムーンストーンが密かに輝いていた。
────── もし怪盗キッドの正体が快斗だったら……
再びこの問答に答えを出す時が来た……
貴「私はキッドの正体は快斗じゃないって信じてる。でも、真実がどちらでも変わらない……」
今迄の事も全部隠されて、嘘をつかれていた……彼のそばにいたのに、気づかなかった。そうなる前に止められたのではないかと後悔し、自分の不甲斐なさに怒り、隠されていた事に涙する。
貴「キッドは私の命を何度も救ってくれた恩人……私は彼の事を怪盗だけど善人として信頼している。そしてそれ以上に快斗の事を信じている……だからキッドが快斗でも、快斗じゃない別人だったとしても、私は変わらないよ……
─── 絶対アイツの手を離したりなんかしない……」
どんなに疑わしくても、例え裏切られていたとしても、私は変わらない……今迄一緒に過ごしてきた思い出が色褪せないように、彼への想いを色褪せないのだから。人生の大半を一緒に過ごしてきたアイツへの想いは昔からずっと変わらない。
────── 何があっても私は快斗の事が好き……
────── それだけは誰に何と言われても譲れない真実
秘めていた自分の気持ちを正直に伝えた。彼女の反発を食らうこと承知で打ち明けてみた。
青「……あははは!やっぱり憐は憐だね。何だか安心した!」
予想に反して青子は怒ることもなく、ただ嬉しそうに笑った。どうやら私の回答は、青子にとって
安心する材料の1つとなったのだろう。自分らしくを貫くって案外簡単なようで難しいから。
青「青子は青子、憐は憐……キッドの事は大嫌いだけど、憐の命の恩人ならちょっとだけ見直してあげてもいいかも……」
貴「うん!……青子は青子のままでいいから」
無理に受け入れる必要はない。それぞれ異なる考えを持ってたって私達なら大丈夫。
青「でもさ!キッドの正体が何であれ、快斗の手を離さないって事は、快斗の傍を離れない!って事だよね」
貴「!!……そ、それはその……」
しまった……勢いに任せて私はなんて恥ずかしい事を……
青「憐が言い切ってくれたから、青子安心したんだよ?やっぱり快斗の隣には、憐がいなくっちゃね……!」
……恥ずかしいけど、今の青子を笑顔にさせられたのなら、良かったかなと思う。
貴「とにかく……来週の日曜日が勝負!快斗の疑いを晴らして、青子も玲於と仲直りする……これが私達のMISSIONよ」
青「うん!頑張ろうー!」
改めてお互いの意志を統一した所で、今回はここでお開きとなった。次はいよいよ、約束の日曜日へと時は動き出す。
