未来からの訪問者 Part2
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最初に見たのは4歳の時。閉じていた瞼を開けるとそこは、辺り一面真っ白な空間だった。左右を見たり、後ろを振り返ったり、上の方を見上げても何もなかった。しかし、しばらく経つと何もない空間だった筈なのに、よく見ると遠くの方に黒いものがいた。そして黒いものは段々と大きくなってくる……それは姿を変え、化け物となって陽太を襲ってきたのだ。
化け物基呪いは、以前陽太を襲った呪いと同じ蜥蜴のような呪いだった。普通の蜥蜴サイズではなく、全長3mはあると思われる巨大な蜥蜴の呪い。幼い陽太からしてみると、非常に大きいのである。気をつけて避けなければ、その巨体に踏み潰されてしまうだろう。以前は父親である乙骨が呪いを祓ったから彼は無事だった。しかし、今は頼れる父親はいない……。
陽「にげなきゃ……!」
彼は後ろを振り向かず、ひたすらに小さな手足で走り抜ける。
「っ!!……。」
ここで捕まったらきっと……考えたくない!!
しかし、呪いはどんどん走るスピードをあげて迫ってくる。所詮幼子の足の速さなど、差して問題は無い。呪いは陽太へと一直線に向かってくる。
……しばらく走っていたが、もう体力の限界だった。彼の足が疲労でおぼつかなくなる。
陽「あっ!!……。」
ドサッ
足がもつれ倒れていく。立ち上がるよう体を動かすが動かない。今まで長い距離を走っていた為、陽太にはそんな体力は残されていなかった。
陽「痛い……!うぇええん!パパっ!ママっ……!」
ついに呪いは陽太の背後に立つ。その巨大な前足で陽太の頭上目掛けて大きく振り下ろそうとしていた。
陽「うわぁああああ!!!………………??」
彼は痛みを覚悟して叫んだ……しかし待てども待てども痛みは襲ってこない。不思議に思い、閉じていた目を開く……するといつの間にか、呪いの姿は消えており、一人の少女が立っていた。
?「もう大丈夫だよ…!あのおばけはいなくなったから……。」
陽「えっ……?ほんとだ!いない〜!」
しかし、それなら先程自分を追いかけ回していたおばけは何だったんだろうと考え込む陽太。その様子を見た少女がくすっと笑った。
?「陽太は、小さい頃の憂太にそっくりだね。」
陽「えっ??」
?「でも考え込むところは、憐に似てるかも。」
陽「??」
今、少女があげた人物の名前は……彼の父親と母親の名前と同じだ。自分を見て、その2人に似ていると告げた少女。一体この少女は何者なのか……。
陽「お姉ちゃんは、誰なの??」
陽太は、目の前の少女に名前を尋ねた。絹のような綺麗な黒髪に、紺色のワンピースを着た少女の名前は……────────────
?「……………………ひみつ。」
────────────────────────
陽「これが、俺が初めて夢で見た少女の話です。」
陽太くんから語られた夢の出来事……それはこちらの想像を遥かに上回るものだった。そこから、陽太くんは自分が見た女の子について、他に見た夢の出来事を詳しく語り出した。顔も名前も知らない、見たこともない女の子。なのに、何故だか最初の夢をきっかけに、度々夢の中に現れては、陽太くんのことや私や憂太の話を聞きたがるらしい。陽太くんも呪いから自分を救ってくれて優しくしてくれたから、特に何も気にせず話していたのだとか。それから月日は流れ、陽太くんが16歳になっても、その女の子と交流は続いていた。不思議な事に女の子の見た目が最初に会った時と変わらない、少女のままらしい。私や憂太の名前を頻繁に出し、私達や自分の過去の幼少期の話をしてくれるので陽太くんも段々この女の子の素性が気になってきて、高専で資料を調べていたと。その時に倉庫で〝時限の鏡〟を見つけ、吸い込まれて今に至ると……。
陽「……こんな感じですね。」
そんな軽く言うことではない気がするけど、一つ疑問がある。
貴「その女の子の事、未来の私達に相談しなかったの??」
10代前半の少女が私や憂太の名前を頻繁に出すなんて、私達の知り合いなのかもしれない。今の私達にそんな少女に該当する子はいない。でも未来の私達ならあるいは……─────────
陽「聞きました……だけど、教えてくれなくて……。」
乙「教えてくれない?」
貴「なんで……?」
私と憂太はお互いに顔を見合わせて問いただす。
陽「高専入る少し前に母さんに聞いたんです……でも、母さんは俺の話を聞くや否や泣き出してしまって……父さんが帰ってくるまで、ずっと泣いていました。」
貴「未来の私が……泣いてた……。」
どういうことだろう……何故、未来の私は陽太くんの話を聞いた途端に泣いてしまったんだ……。
陽「泣いている母さんを見て、父さんもびっくりして……だけど、冷静に俺に何があったのか尋ねてきました。だから今と同じように話したんです……そしたら父さんも目を伏せてしまって……それで、泣いてる母さんを部屋で落ち着かせた後、1人戻ってきて俺に告げました。」
陽『父さん!母さんは……』
乙『今は落ち着いて、寝室で休んでる。』
陽『良かった……ごめん、父さん……俺、母さんを泣かせるつもりなんかなくて……、ただ俺に起きている不思議な夢が何なのか知りたくて……』
父さんは俺の肩に手を置き、懇願するような瞳で見つめていた。
乙『分かってる……陽太は悪くない。ただこれは、僕と憐の問題なんだ。ごめんね、陽太……。いつかちゃんと君に話すから……それまで待っててくれないかな。』
陽『え??』
乙『大丈夫、その子は君の味方だから。』
陽「父さんも母さんは、その〝少女〟と確実に関係があって、その正体も知っている。……話を聞いた母さんがずっと泣いてたんだ……ただの知り合いじゃない。きっと何か深い関係にある人物。」
貴「……ねぇ、陽太くん。」
陽「はい、なんですか?」
貴「その女の子は、どんな見た目の子なの……?」
乙「……。」
未来の私が話を聞いただけで、ものすごく泣いていた。少女が語るは私や憂太、自分の幼少期の話ばかり。陽太くんを見て、私や憂太に似ていると言った発言……もしかして……、もしかして……─────────
憂太が私の手を握る……あぁ、彼もやっぱり気づいた……─────────
陽「……長い黒髪で、紺色のワンピースを着た小学生くらいの女の子です。正式に名前は教えて貰ってないので、本当の名前なのか分からないですけど、たまに出る一人称が〝リカ〟なので……恐らく名前はリカだと思います。」
───どうして、陽太くんの夢に現れるの……里香。