𝑀𝑒𝑟𝑟𝑦 𝐶ℎ𝑟𝑖𝑠𝑡𝑚𝑎𝑠
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乙骨side
急遽入った任務を手短に済ませ、彼女と待ち合わせた場所まで伊地知さんの車に乗せてもらい、なるべく早いスピードで向かうようお願いをした。伊地知さんは察しのいい人で、きっと僕が何故こんなに早く街へ向かうのか……、普段よりも僕の気分が高揚しているのか……分かっている。だから僕のお願い事にも快く応じてくれた。
伊「着きました……ここから歩けば、目的地に辿り着きます。」
乙「ありがとうございます、伊地知さん。」
車の扉を開け、降りながらお礼を伝える。
伊「楽しんで来てくださいね……。」
乙「はい……!」
伊地知さんに見送られ、黒い車から降りた僕は、急いで彼女が待つ広場へと向かう。
(約束の時間まであと少しだ……。憐はもう来てるよね……急いで見つけないと。)
自分を待つ最愛の彼女の元へと急ぐ。有名な場所とあって人が多い。すれ違う人を避け、辺りを見回しながら進んでいく。人混みの中、ある女の子達の会話が耳に入ってきた。
「ハチ公像のそばにいた女の子……どこかの学校の制服着てたから、ウチらと同じJKっぽかったけど、左手の薬指に指輪してたよね?!もう結婚して旦那がいるのかな〜。」
「えっー?!そうだったら早いわ〜!でも分かる……だってあの子、可愛いじゃん!腰まであるのに、傷んでない素敵な茶色の髪で、肌は雪みたいに白かったし、とてつもなく整ってたよ!きっと相手の人もかっこいい人なんだろうな〜。」
「そうかもね〜!うわ〜そうしたら相手が来るまで待ってたら良かったのに!」
「言えてる〜!」
内容は、広場にいたとある女の子の話。察するに知り合いではないが、余程驚いたのか話題に出されているようだった。普段は気にならない内容だが、今日は何時もと違った……何故だか無性に気になるのだ。
「でも、大丈夫だったかな〜。」
「あ〜……チャラそうな男二人に絡まれてたもんね。」
「そうそう!笑顔で対応してたけど、少し引きつってたし絶対嫌がってたよね〜。」
「だよね〜……相手複数だったし、チャラチャラしてて首に刺青入ってたから怖かったもんね。他の人も面倒事に巻き込まれたくなくて避けてる感じだったし……。」
「まぁ、ウチらにはどうにも出来なかったし早く相手が合流するのを祈るしかないね。」
「だね〜。そういえばここのデザートどう〜?……。」
軽そうな男性二人に絡まれていたが、助けられなかったことを悔いつつも、話題は別の話題へ。その二人の会話を聞いて僕は引っ掛かりを覚えていた。
(腰まである茶色の髪を持つ、左手の薬指に指輪をはめた10代の女の子……、そういえば今日の憐、里香ちゃんの指輪を左手にはめてたっけ…………まさか?!)
二人の会話に出ていた場所へと足を急ぐ。目的の場所に近づくにつれて、人がいなくなっている。悪い予感がしながらも、その予感が外れて欲しいと願っていた。……しかし、その願いは無惨にも儚く消える。自分が予想していた出来事が待っていた。
(憐……!)
目的地に辿り着くと、そこには二人の男性に絡まれている憐の姿があった。一人の男に腕を掴まれて、広場から離れようとしていた。
(ここは人の目が多い……だから派手なことは出来ない……どうするべきか。)
呪いあるいは呪詛師なら、周囲は気にせずに祓うだけだが、相手は非術師の一般人。僕ら呪術師が守らなければならない対象の人達……考えて行動しなければ。
そう考えていたが……────────────
(憐が泣いてる……あの二人のせいで……。)
憐の目には涙が浮かんでいるのが見えた。……その瞬間、自分の中のごちゃごちゃした思考は消えた。周囲の人間だとか、相手は非術師とか手を出さないで穏便に対処しようとか、気にしている場合じゃない。憐や真希さん達は僕の事を優しいとか、甘いとか言ってくれるけど、自分ではあまりそう思わない……だって僕は、自分の大事な人達を傷つけるものには容赦しない。大切な仲間の為なら……何よりも愛する君の為なら……──────────────
(憐を傷つけた……ならもう容赦はしない。)
────── その〝優しさ〟を棄てて、非情な人間になれるのだから……。
頭の片隅にある少しの理性によって、リカを出すことはしなかったが、彼らへの配慮は消えた。憐の手を掴んだ男よりも、先に無防備に立っている男の前に瞬時に立ち、素早い動きで腹部に拳を入れた。
「ウガッ!」
男は僕の存在に驚く暇もなく、腹部の強烈な痛みに思わずコンクリートの上に蹲った。その男を冷めた目で見下ろす。そして、そばに近づくであろうもう一人の男の出方を待つ。仲間の不自然な声に、心配して近寄ってくるはずだ。
「は?!いきなりどうしたんだよ……!しっかりしろ!」
案の定予想通りの行動をした。その男に手を振りほどかれたせいで、憐は呆然と立ち尽くしていた。男達は僕の動作が見えていなかった為、原因を探すはず……。その間に憐を保護すればいい……もし、憐に敵意を向けようものならすぐ反撃出来るようにと、憐の前に立つ。
「何なんだよ一体……!おいクソ女 !!一体コイツに何しやがっ……?!」
ドカッ!
考えるよりも先に拳が男の腹に打ち込まれた。僕の大切な最愛の人に汚い言葉を使うな……、汚い手で触れるな……。
乙「これ以上……彼女に近づかないで貰えますか。」
何よりこれ以上、彼女に近づくことは許さない。僕の大切な人を傷つけて……楽になれると思うな。
貴「憂太……。」
心震わすその声に、後ろを振り返る。そこには涙を流す憐の姿があった。……こんなはずじゃ無かった。彼女の心に残るものを贈りたかっただけ……幸せな思い出を作りたかっただけなのに。
憐の涙をそっと手で拭き取り、その体を優しく覆う。周囲の人間への配慮などとうに消え失せている。
乙「怖かったよね、憐。ごめんね、早く来られなくて……。」
憐に声をかける男も悪いが、そうなるリスクを甘く考えていた僕も悪い。
(……こうなるなら、あの時ちゃんと伝えれば良かったな。)
それは、今日の午前、急遽任務が入り、憐と時間を調整した時のこと。憐は僕に気を遣って、外で待ち合わせをしようと言ってくれた。僕が高専に帰るよりも、現地で待ち合わせした方が負担もかからず、時間も早くなるからだ。その案に反対しようとしたけど、憐は僕の為にと言ってくれているのは分かるから、それならと気持ちは進まないが了承したのだ。また反対した理由だが、外で待ち合わせをした場合、必ず彼女に声をかけてくる人がいると考えていたから。
憐は、とても素敵な女の子だ……。贔屓目なしに断言出来る。でも、本人は微塵も思っていない……小さい頃から、姉の凛先生の方が綺麗だって自慢していたくらいだから。
僕から見た憐は、不器用で、方向音痴で、料理が苦手な子……でも、苦手な事には一生懸命挑戦し、克服しようとしたり、周りに気を遣って一人で抱え込む頑張り屋さん。僕には、人の顔の美醜はよく分からないけど、そんな僕でも分かる……憐は可愛いくもあり、美しくもあり、優しくて綺麗な心を持つ……世界で一番好きな女の子、僕の大切な最愛。こんなにも愛されてる彼女なら、他の人間が無意識に惹かれてしまうのも無理は無い……まるで街灯に群がる虫みたいに……。彼女の友達、仲間が増えるのは大歓迎……だけど彼女の〝特別〟を享受できるのは自分だけで十分だ。
(男の人や女の人でも関係ない……憐を好きになってしまうのは仕方ない……それだけ素晴らしい女の子だから。だけど、僕の憐への想いは誰にも負けない……僕の最愛は憐であり、憐の最愛は僕だけ……それ以外認めない。)
乙「憐は悪くない……悪いのは全部、この人達だ。」
憐の頭をゆっくり撫でる。無欲な自分が唯一望む彼女への、歪で純粋な愛……。それは底なし沼のように深く重い。そんな彼女に邪な思いを向けた男達に贈るは……慈悲なき黒い眼差し。
僕は憐を抱き締めていた腕を解き、彼女の前に立ち、いまだに蹲っている男達を見下ろす。男達は視線に気づいたのか、面を上げたが、僕の瞳を見て顔を歪ませる。そして、情けない声をあげながら泣いていた。
乙「……本当は僕の大切な彼女を傷つけた貴方達を、赦したくは無い。」
僕自身、全く赦すつもりはない。
乙「だけど優しい彼女は、僕が貴方達を傷つければ、更に自分を責めてしまう。……それはもっと許されない。」
こんな救いようのない人達だけど、それでも僕が傷つければ、憐が自分のせいで僕に嫌な事をさせてしまったと責めてしまう。それだけは絶対に阻止しなければならない。
「じゃ、じゃあ……俺達は一体どうすれば……。」
男達は自分達の状況を理解し、赦される方法を聞いてきた。
乙「まずは彼女に謝ってください。」
「「すみませんでしたぁあああ!!」」
貴「い、いえ……。」
与えられた条件を即座に実行し、地面に額をつけ、土下座で謝る男達。赦す、赦さない以前に悪いことをしたら謝る……謝罪は人として当たり前の事だ。憐は男達の対応に、引きながらも答えていた。
乙「そして……二度と彼女の前に現れないで下さい。もし次に憐の前に現れたら……僕は今度こそ、容赦なく潰す……。」
謝罪だけでは心許ないので、約束させる……二度目はないと分からせる。もし破ったとしても、殺さず相応の報いを受けてもらうだけなのだから、僕は優しい方なんだなと思えてきた。
「ほ、本当にすみませんでしたぁああああ!!」
「もう二度と近づいたりしませぇえええん!!」
二人の男は震えた足で立ち上がると、憐と僕に頭を下げ、走って離れた群衆に飛び込みその姿を消した。彼らの姿が消えたことを確認すると、僕は周囲の目から憐を守る為に、彼女の手を繋ぎ、逃げた男達とは反対方向に歩き出した。
急遽入った任務を手短に済ませ、彼女と待ち合わせた場所まで伊地知さんの車に乗せてもらい、なるべく早いスピードで向かうようお願いをした。伊地知さんは察しのいい人で、きっと僕が何故こんなに早く街へ向かうのか……、普段よりも僕の気分が高揚しているのか……分かっている。だから僕のお願い事にも快く応じてくれた。
伊「着きました……ここから歩けば、目的地に辿り着きます。」
乙「ありがとうございます、伊地知さん。」
車の扉を開け、降りながらお礼を伝える。
伊「楽しんで来てくださいね……。」
乙「はい……!」
伊地知さんに見送られ、黒い車から降りた僕は、急いで彼女が待つ広場へと向かう。
(約束の時間まであと少しだ……。憐はもう来てるよね……急いで見つけないと。)
自分を待つ最愛の彼女の元へと急ぐ。有名な場所とあって人が多い。すれ違う人を避け、辺りを見回しながら進んでいく。人混みの中、ある女の子達の会話が耳に入ってきた。
「ハチ公像のそばにいた女の子……どこかの学校の制服着てたから、ウチらと同じJKっぽかったけど、左手の薬指に指輪してたよね?!もう結婚して旦那がいるのかな〜。」
「えっー?!そうだったら早いわ〜!でも分かる……だってあの子、可愛いじゃん!腰まであるのに、傷んでない素敵な茶色の髪で、肌は雪みたいに白かったし、とてつもなく整ってたよ!きっと相手の人もかっこいい人なんだろうな〜。」
「そうかもね〜!うわ〜そうしたら相手が来るまで待ってたら良かったのに!」
「言えてる〜!」
内容は、広場にいたとある女の子の話。察するに知り合いではないが、余程驚いたのか話題に出されているようだった。普段は気にならない内容だが、今日は何時もと違った……何故だか無性に気になるのだ。
「でも、大丈夫だったかな〜。」
「あ〜……チャラそうな男二人に絡まれてたもんね。」
「そうそう!笑顔で対応してたけど、少し引きつってたし絶対嫌がってたよね〜。」
「だよね〜……相手複数だったし、チャラチャラしてて首に刺青入ってたから怖かったもんね。他の人も面倒事に巻き込まれたくなくて避けてる感じだったし……。」
「まぁ、ウチらにはどうにも出来なかったし早く相手が合流するのを祈るしかないね。」
「だね〜。そういえばここのデザートどう〜?……。」
軽そうな男性二人に絡まれていたが、助けられなかったことを悔いつつも、話題は別の話題へ。その二人の会話を聞いて僕は引っ掛かりを覚えていた。
(腰まである茶色の髪を持つ、左手の薬指に指輪をはめた10代の女の子……、そういえば今日の憐、里香ちゃんの指輪を左手にはめてたっけ…………まさか?!)
二人の会話に出ていた場所へと足を急ぐ。目的の場所に近づくにつれて、人がいなくなっている。悪い予感がしながらも、その予感が外れて欲しいと願っていた。……しかし、その願いは無惨にも儚く消える。自分が予想していた出来事が待っていた。
(憐……!)
目的地に辿り着くと、そこには二人の男性に絡まれている憐の姿があった。一人の男に腕を掴まれて、広場から離れようとしていた。
(ここは人の目が多い……だから派手なことは出来ない……どうするべきか。)
呪いあるいは呪詛師なら、周囲は気にせずに祓うだけだが、相手は非術師の一般人。僕ら呪術師が守らなければならない対象の人達……考えて行動しなければ。
そう考えていたが……────────────
(憐が泣いてる……あの二人のせいで……。)
憐の目には涙が浮かんでいるのが見えた。……その瞬間、自分の中のごちゃごちゃした思考は消えた。周囲の人間だとか、相手は非術師とか手を出さないで穏便に対処しようとか、気にしている場合じゃない。憐や真希さん達は僕の事を優しいとか、甘いとか言ってくれるけど、自分ではあまりそう思わない……だって僕は、自分の大事な人達を傷つけるものには容赦しない。大切な仲間の為なら……何よりも愛する君の為なら……──────────────
(憐を傷つけた……ならもう容赦はしない。)
────── その〝優しさ〟を棄てて、非情な人間になれるのだから……。
頭の片隅にある少しの理性によって、リカを出すことはしなかったが、彼らへの配慮は消えた。憐の手を掴んだ男よりも、先に無防備に立っている男の前に瞬時に立ち、素早い動きで腹部に拳を入れた。
「ウガッ!」
男は僕の存在に驚く暇もなく、腹部の強烈な痛みに思わずコンクリートの上に蹲った。その男を冷めた目で見下ろす。そして、そばに近づくであろうもう一人の男の出方を待つ。仲間の不自然な声に、心配して近寄ってくるはずだ。
「は?!いきなりどうしたんだよ……!しっかりしろ!」
案の定予想通りの行動をした。その男に手を振りほどかれたせいで、憐は呆然と立ち尽くしていた。男達は僕の動作が見えていなかった為、原因を探すはず……。その間に憐を保護すればいい……もし、憐に敵意を向けようものならすぐ反撃出来るようにと、憐の前に立つ。
「何なんだよ一体……!おいクソ
ドカッ!
考えるよりも先に拳が男の腹に打ち込まれた。僕の大切な最愛の人に汚い言葉を使うな……、汚い手で触れるな……。
乙「これ以上……彼女に近づかないで貰えますか。」
何よりこれ以上、彼女に近づくことは許さない。僕の大切な人を傷つけて……楽になれると思うな。
貴「憂太……。」
心震わすその声に、後ろを振り返る。そこには涙を流す憐の姿があった。……こんなはずじゃ無かった。彼女の心に残るものを贈りたかっただけ……幸せな思い出を作りたかっただけなのに。
憐の涙をそっと手で拭き取り、その体を優しく覆う。周囲の人間への配慮などとうに消え失せている。
乙「怖かったよね、憐。ごめんね、早く来られなくて……。」
憐に声をかける男も悪いが、そうなるリスクを甘く考えていた僕も悪い。
(……こうなるなら、あの時ちゃんと伝えれば良かったな。)
それは、今日の午前、急遽任務が入り、憐と時間を調整した時のこと。憐は僕に気を遣って、外で待ち合わせをしようと言ってくれた。僕が高専に帰るよりも、現地で待ち合わせした方が負担もかからず、時間も早くなるからだ。その案に反対しようとしたけど、憐は僕の為にと言ってくれているのは分かるから、それならと気持ちは進まないが了承したのだ。また反対した理由だが、外で待ち合わせをした場合、必ず彼女に声をかけてくる人がいると考えていたから。
憐は、とても素敵な女の子だ……。贔屓目なしに断言出来る。でも、本人は微塵も思っていない……小さい頃から、姉の凛先生の方が綺麗だって自慢していたくらいだから。
僕から見た憐は、不器用で、方向音痴で、料理が苦手な子……でも、苦手な事には一生懸命挑戦し、克服しようとしたり、周りに気を遣って一人で抱え込む頑張り屋さん。僕には、人の顔の美醜はよく分からないけど、そんな僕でも分かる……憐は可愛いくもあり、美しくもあり、優しくて綺麗な心を持つ……世界で一番好きな女の子、僕の大切な最愛。こんなにも愛されてる彼女なら、他の人間が無意識に惹かれてしまうのも無理は無い……まるで街灯に群がる虫みたいに……。彼女の友達、仲間が増えるのは大歓迎……だけど彼女の〝特別〟を享受できるのは自分だけで十分だ。
(男の人や女の人でも関係ない……憐を好きになってしまうのは仕方ない……それだけ素晴らしい女の子だから。だけど、僕の憐への想いは誰にも負けない……僕の最愛は憐であり、憐の最愛は僕だけ……それ以外認めない。)
乙「憐は悪くない……悪いのは全部、この人達だ。」
憐の頭をゆっくり撫でる。無欲な自分が唯一望む彼女への、歪で純粋な愛……。それは底なし沼のように深く重い。そんな彼女に邪な思いを向けた男達に贈るは……慈悲なき黒い眼差し。
僕は憐を抱き締めていた腕を解き、彼女の前に立ち、いまだに蹲っている男達を見下ろす。男達は視線に気づいたのか、面を上げたが、僕の瞳を見て顔を歪ませる。そして、情けない声をあげながら泣いていた。
乙「……本当は僕の大切な彼女を傷つけた貴方達を、赦したくは無い。」
僕自身、全く赦すつもりはない。
乙「だけど優しい彼女は、僕が貴方達を傷つければ、更に自分を責めてしまう。……それはもっと許されない。」
こんな救いようのない人達だけど、それでも僕が傷つければ、憐が自分のせいで僕に嫌な事をさせてしまったと責めてしまう。それだけは絶対に阻止しなければならない。
「じゃ、じゃあ……俺達は一体どうすれば……。」
男達は自分達の状況を理解し、赦される方法を聞いてきた。
乙「まずは彼女に謝ってください。」
「「すみませんでしたぁあああ!!」」
貴「い、いえ……。」
与えられた条件を即座に実行し、地面に額をつけ、土下座で謝る男達。赦す、赦さない以前に悪いことをしたら謝る……謝罪は人として当たり前の事だ。憐は男達の対応に、引きながらも答えていた。
乙「そして……二度と彼女の前に現れないで下さい。もし次に憐の前に現れたら……僕は今度こそ、容赦なく潰す……。」
謝罪だけでは心許ないので、約束させる……二度目はないと分からせる。もし破ったとしても、殺さず相応の報いを受けてもらうだけなのだから、僕は優しい方なんだなと思えてきた。
「ほ、本当にすみませんでしたぁああああ!!」
「もう二度と近づいたりしませぇえええん!!」
二人の男は震えた足で立ち上がると、憐と僕に頭を下げ、走って離れた群衆に飛び込みその姿を消した。彼らの姿が消えたことを確認すると、僕は周囲の目から憐を守る為に、彼女の手を繋ぎ、逃げた男達とは反対方向に歩き出した。