未来からの訪問者 Part2
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乙「……本気で言ってる?」
なんか不穏な空気になってるぞ?……何故だ?俺は父さんと母さんを褒めたつもりだったんだけど。
貴「っ!……ごめん、偶にだから!!私、あんまり呪術師として強くないし、憂太の足引っ張ってるから、憂太に申し訳なくて……里香なら、きっと憂太の力になってただろうなって……現に今も憂太の力になっているからさ。」
乙「そんなこと言わないでよ!!僕がどれだけ憐の存在に救われたか……。里香ちゃんの存在だけじゃない……憐だって僕の力になってるよ!憐のおかげで僕は辛い過去も、あの人との戦いも乗り越えて、こうして君と今を生きていられているのに……。」
陽「あの……」
貴「そんなことないよ!憂太は私の存在が無くてもきっと呪術高専に来て、里香の事も乗り越えていた……立派な呪術師になっていたよ!私も少しは力になっていたかもだけど、あっても無くても変わらないよ。それに憂太が頑張って努力したから〝今〟があるんだよ!
自分の功績を他人のせいにしないで……!」
陽「話を……」
乙「それは憐だって同じじゃないか!交流会の時、君は虎杖くんを京都校の人達の襲撃から身を呈して守ってたよね?それだって君が強くなきゃ出来なかったことだよ!それに、憐は分かっていないようだけど、苦手な体術だって、真希さん達との特訓で上達しているのに……どうして自分を認めないんだ……!!どうして僕を信じてくれないの……。」
貴「……!憂太こそ、どうしてこんな弱い私を信じられるの……。」
陽(……喧嘩?!)
母さんのちょっとした言葉から始まった、夫婦喧嘩みたいなもの……いやまだ夫婦じゃないのか……いやもうどうせ結婚するんだから夫婦でいいだろ。このある意味惚気?とも取れる会話だが、二人は至って真剣に言い合いをしている。互いのことを想い合っているのになんでそんな拗れるんだ。
……ってそんな悠長にしてる場合じゃない!早くこの不毛な言い合いを止めないとね。
陽「憂太さん!憐さん!一旦ストップです!!」
貴/乙「「……!!」」
ヒートアップしていた父さんと母さんは俺の一声で言い合いを止めた。しかし、お互いの顔を見るなりそれぞれ別の方向に顔を逸らす二人。
陽「落ち着いてください!どうして言い合いになっちゃうんですか……!憐さんも、憂太さんもお互いを想って言ってるのは俺でも分かるんですから、二人ともとっくに分かってますよね?」
貴「それは……」
乙「……。」
母さんが何か言いたそうにしていた。母さんの方を見るとブラウンの瞳を潤ませながらたどたどしく話し始めた。
貴「……分かってるよ。でもね、実際私は他の同僚達から、何て言われてるか知ってる?……〝特級のお荷物〟とか、〝特級の腰巾着〟とかだよ。交流会の打ち合わせの時に真依さんにも言われた。」
乙「何……それ……。」
貴「言われても仕方ないよね。だって実際階級は3級のままだし、その通りだから。いつまで経っても私は弱くて……、憂太の傍に居てもいいのかな。」
呪術師の持つ生得術式は個々に人が生まれ持った物、後天的に使用することは非常に難しく、努力だけではどうしようもないことがある……。母さんは努力家だ……だけど、今の段階では実りがないらしい……。自分の術式に自信が持てていない。それは俺もそうだけど、ここまでとは思っていなかったのだ。
陽「……だとしても、だからって卑屈になるのは違うんじゃないですか?」
母さんは力なく笑う。でも、悲しいことを言って欲しくなくて俺はつい口を出してしまった。
貴「……貴方に何が分かるのよ。」
陽「分かりますよ、俺もそうですから。」
俺も両親の術式を受け継いでいる人間。だが本家が凄すぎて、扱う人物が違うだけでこうも強さが違うのかと驚いたぐらいだ。
陽「だって憐さん、憂太さんも分かるほど一生懸命鍛錬してるんじゃないですか。術式は才能かもしれないけど、その他は自身の努力で補えるものです。本人は分からなくても見てる人には進歩が分かるんですよ。例えそれがちょっとずつでも前に進んでいれば大丈夫なんです!
俺も上手く術式が扱えず、父さんには出力は劣りますけど、体術は良いところまで張り合えるんですよ!」
貴「……陽太くん。」
陽「だから認められるところは素直に認めましょう!それに周りが何言ったっていいじゃないですか……だって憂太さん本人はそんなこと一言も言ってないでしょ?本人が言ってないことを気にしたってしょうがないですよ。」
貴「……。」
陽「俺も母さんによく言われました。周りなんか気にするな!見てる人はちゃんと見てる……一歩ずつで大丈夫って。」
この励まし方が合ってるのか分からないけど、かつて父親の偉大さに、プレッシャーで押し潰されそうだった自分をいつも励ましてくれたのは母さんだ。だから今度は俺が役に立ちたい。
乙「陽太くんの言う通りだよ。憐は一歩ずつ前に進んでいる……今はそれで良いんだよ。」
傍で見ていた父さんが俺の言葉を後押ししてくれた。
乙「憐と任務をやるとね、憐は僕の事をよく分かってくれているから、僕に動きを合わせてくれる……そのおかげで僕も動きやすい。僕だけじゃない、真希さんや虎杖くん、他のみんなだって憐が相手だと任務がやりやすいって言ってたよ!」
貴「!!」
乙「それって憐の強みでもあるんじゃないかな。」
貴「……憂太ぁ……、私……。」
母さんの眼には大粒の涙が溢れ出ている。そんな母さんをすかさず抱き締めた父さん。
乙「それに僕らのことを一番応援してくれてたのは、他ならぬ里香ちゃんだよ。里香ちゃんのことは勿論大好きだけど、それは憐も同じだよね。里香ちゃんにしか出来ない事があったように、憐にも憐にしか出来ないことがあると思うんだ。」
貴「そうだったね、里香は私達を繋ぎ止めてくれた大事な女の子。比較するのも里香には失礼だよね。そして里香には里香の、私には私の……それぞれ個々にしか出来ないことがある。」
陽(……〝里香ちゃん〟ってもしかして……)
二人が出している女の子の名前……その名前には聞き覚えがあった。だけど今はこの二人の行く末を見守ろう……。
乙「他の人なんか気にしないで……、僕を見て……、僕を信じて……愛しているよ、憐。
ずっと僕の隣で笑っていてほしいな……君にしか出来ないことだよ。」
陽(……うん、仲良きことはいい事だけどなんだろ……、やっぱり過去の両親達だからかな……、恥ずかしいような微笑ましいような。)
今更だけど、俺の目の前で行われている恋愛作家も逃げ出しそうなロマンス劇……バッチリ見てしまってもいいのだろうか。
貴「私も、愛してるよ憂太……これからも頑張るから、ずっと私のそばにいてね。」
他人なんかお構いなく抱き合う二人……幻覚かな?室内なのに二人の周りには、綺麗な花がそこら中に咲いているように見える。そういえば五条先生が昔そんな技を出した呪霊がいたとかどうとか……俺には少なくともそんな風に見えていた。というか俺の時代の父さんも母さんも、喧嘩した後はいつもこんな感じで仲直りしてるけど、ここでも一緒か〜……既視感を強く感じた。
陽「……何はともあれ、ひとまず一件落着〜!!」
俺はとりあえず無事終了した喧嘩?を見て、湧き出ていた汗を、そっとぬぐいさるのだった。
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陽「落ち着きました?」
貴「うん、ごめんなさい!陽太くんの前でも号泣してしまったよ〜恥ずかしい。本当にごめんね!……あとありがとう!励ましてくれて……嬉しかったよ!」
父さんの腕の中で泣いていた母さんが泣き止んだようだ。眼は少し赤くなっているが、それも徐々に引いていくことだろう。
乙「ありがとう、陽太くん。おかげで憐も元気になったよ。」
陽「いえいえ、俺のことは気にしないでください。」
乙「本当にありがとう……でも、自分の噂なんて気にならないから、僕に関連して憐の事まで言われてるなんて全く知らなかったな。そこは僕も反省しなきゃね。」
やっぱり過去の父さんも自分に対しての興味が薄い。気がついていない様子から、自分の噂に関連して母さんの事がついてまわってるとは思わなかったんだろうな。
乙「僕のことならまだしも、憐の事を酷く言うなんて絶対許さない……。」
陽「……父さん?(小声)」
おっとまた雲行きが怪しくなってきたぞ……。
乙「……憐。」
貴「何、憂太?」
父さんは、母さんの頭を撫でながら笑顔でこう言った。
乙「憐の事を揶揄した人の名前を1人ずつ教えてくれないかな?」
陽「まさか……」
貴「え?なんで??」
乙「…………ちょっと話し合いをしたくて。」
父さんの清々しい笑顔を見ると背筋が凍る。ほわほわ笑う父さんがそんな笑い方するなんて、絶対怖い事が起きるからだ。これ絶対穏便に話し合いする気0だろ!
陽「その間は何ですか?!駄目だから!いくら母さんを貶されたからって相手を精神的に追い詰めたりボコボコにするのは駄目だよ!」
貴「そういうこと?!で、でも流石に憂太はそんな酷いことはしないと思うけど……」
母さんは考えが甘い……他ならぬ母さんの事だよ?基本自分の事すら無関心な父さんが、唯一執着とも呼べる想いを向ける母さんが貶されていたら、普段のストッパーが外れて暴走するかもしれない。
貴「私的には、憂太が分かってくれるならいいの……だから絶対他の人に手を出しちゃ駄目だからね!」
フォローしていた母さんだけど、少し考えて有り得そうかと思ったのか、一応父さんに他人に手を出さぬよう釘を刺していた。
乙「……分かったよ。」
父さんはすんなり頷いていたけど状況次第では暴れるかもね。
そして話が一段落ついた所で、俺はある事を聞きたくて話題に出す。
陽「話も一段落した所で掘り返すようで申し訳ないですが、お聞きしたいことがあります。
お二人が話されていた〝里香ちゃん〟について聞いても良いですか?」
俺が提示した話題……それは二人が先程話題にあげていた〝里香ちゃん〟についてだ。
貴「良いけど、里香に興味を持ったのは何で??」
母さんが疑問を持つのも当然か。この〝里香ちゃん〟は両親の小さい頃の幼馴染で、事故で亡くなったと聞いている。当然俺の生まれる前から既にこの世にいないので関わりはない。なのに何故俺が興味を持ったのか……。
陽「……実は俺、見知らぬ小さな女の子が出てくる夢をよく見るんですけど、もしかしたらその女の子……お二人の話す〝里香ちゃん〟じゃないかな〜って思いまして……」
俺の言葉を聞いた父さんと母さんは、とても驚いた顔をしていた。