バレンタイン
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憂太の問いかけに一瞬自分の中で、時が止まったような気がした。
貴「……!?」
……なんでバレたの?!今の制服は冬服で長袖だし、包帯だって見えない範囲で巻いているのに……。
私があげた物は憂太の宝物になっているという、私にとって嬉しい事実に喜んでいて反応が遅れたけど、なんで私が怪我した事分かったの?!しかもチョコレートを作った時だって事もバレてる……。
乙「やっぱりそうだったんだね……。憐ちゃんが朝珍しく、遅れてきたのは、夜にチョコレートを作っていたからなんだよね?遅れて席に座った時も、左腕を庇うような動作しながら座っていたし、昨日の時点では巻いてなかった包帯がチラッとだけど見えたからね。」
貴「えー……と。」
朝にじーっと見てきたのって私が怪我している事に気づいたからなの?
乙「……何で怪我をしたのか、それを隠しているのか聞こうと思ったけど、憐ちゃんは言いたくなさそうに笑ってたから聞かなかった。でも今日君がバレンタインって言っていたのを聞いて腑に落ちたよ。きっとチョコレートを作っている時に出来た怪我なのかなって。」
名探偵ユウタくんがここにいらっしゃいます。凄い……まるで全部見ていたかのように語る憂太。
乙「僕は別に怒ってるわけじゃないよ。ただ……隠して欲しくなかっただけ。例えそれが、憐ちゃんにとって小さな傷だったとしても……。なるべく君の事は知っておきたいんだ……僕の我儘でごめんね。
小さな傷でも悪化して大事になる前に、僕が反転術式で治せば憐ちゃんが苦しむ時間も減るし、僕も安心だからね。」
貴「……凄いね、憂太。上手く隠せてると思ったけどな。」
諦めて袖を捲り、左腕を見せる。そこには白い包帯が巻かれている。包帯の中には、昨夜のチョコレート作りの際、不注意で腕を鍋に当ててしまって出来た火傷がある。任務で出来た怪我ではなく、個人的な事で出来た怪我だから、そんな事で硝子さんに反転術式を使ってもらうのも申し訳ないし、包帯を巻いておけば直に治ると思っていた。普通に生活はできるから、黙っておけば皆にもバレないと思っていたけど、まさか憂太にバレるなんて……一番バレたくない人にバレてしまった。
(憂太は優しいから、余計な心配かけさせたくなかったのにな……。それに、不器用だってこと知られたくないし……。)
貴「ごめんなさい……。でもこんな事で硝子さんに反転術式を使わせるのも申し訳なかったし、これくらいなら包帯巻いておけば大丈夫かなって思ってたの……。憂太にも余計な心配をかけさせたくなくて……、本当にごめんなさい。」
乙「教えてくれてありがとう。さっきも言ったけど、僕の反転術式で治せるから家入さんの所に行かなくてもいいよ。君の痛みは僕の痛み、君の傷は僕の傷だ……君が負った傷は全部僕が治すよ。だから、些細な傷でも隠さずに僕に教えてね。」
憂太は私の左腕を優しく掴み、反転術式を用いて治しながら言った。憂太のおかげで、左腕の鈍い痛みも消えていった。包帯を解いてみると、赤みがかった痕は綺麗になくなっていた。
貴「……私の傷は自分の傷なんて大袈裟ね。でも分かったわ。憂太がそこまで言うなら、これからは憂太に治してもらうよ。ただし、憂太が怪我した時もちゃんと教えてよ?貴方は自分で治せるからって言わなさそうだもの。私だって憂太の事に関してなら、ちゃんと知っておきたいから。」
乙「うん!僕もちゃんと憐ちゃんに言うから。」
私と憂太の間に大事な約束がまた出来た。こうして2人で一緒に過ごす為の決め事が増えていくのね。なんだか嬉しいようなちょっぴり照れくさいような.......。でもこれも幸せのうちね。
憂太は改めて箱の蓋を開け、中に入っていたチョコレートを取り出す。
少し歪な形をしたハート型のチョコレート。お菓子作りの上手い姉さんや、お店のレベルに比べてみたら見た目も味もまだまだな出来前。だけど、憂太はそのチョコレートを食べて嬉しそうに笑ってくれた。
乙「このチョコレート……すっごく美味しいよ!」
この一言だけで私は、頑張って作った甲斐があるなと思うのだ……。